番?そんなもの信じられません

はなまる

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33これで呪いが解けます!

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 医者やジェスが慌ててやって来た。

 そしてもうひとり竜帝であるフレバー様もユーリの容体を見にやって来た。

 事情を説明して侍女が薬湯を運んできた。

 「あの…私がやらせて頂いてもよろしいのでしょうか?」

 リリーシェはもちろん自分がやる気だったが、やはりこれは重要な役割だ。一応竜帝とお父様に伺った方がいいのではと思った。

 「ああ、番のリリーシェがやるのが一番いいだろう」

 みんながごくりとつばを飲む込む音が聞こえてくるほどの緊張した空気の中リリーシェは大きく息を吸い込んだ。

 「では…」

 小瓶の中の透明な結晶の欠片を数個ほど薬湯に溶かし込む。ちなみに結晶はあと数個残っている。万が一の時のためもう一回分を残したのだ。

 薬湯の入ったカップを一度サイドテーブルにきちんと置く。

 そしてそっとユーリに近づく。

 「ユーリ様…」

 微動だにしないユーリ様の頬をそっと撫ぜてその冷たい肌にまた胸が痛んだ。

 (しっかりして、きっとユーリ様は目を覚ます。レックス様だってあんなに後悔してこうすればいいと書き残してくれてたんだもの)

 不安でかき回されそうになる気持ちを鼓舞して成功をする事だけを信じる。

 ユーリ様の首の下に手を差し込みそっと顎を持ち上げる。唇を摘まむようにして開かせる。

 「カップを取って下さい」

 侍女が急いでカップを手渡してくれる。

 リリーシェはカップを唇につけて薬湯を少しずつ少しずつ流し込む。

 「だめ。ユーリ様。これを飲んで、飲まなきゃだめなの。お願い。ユーリ…おねがい」

 ひとりでにそんな言葉が零れ落ちる。カップの中身はユーリ様の唇から零れ落ち首筋に流れ落ちる。

 何とかして薬湯を飲ませようと何度か流し込むが薬湯はその度に喉元を伝い落ちて行く。

 まるで呪いにあざ笑われているかのように…

 リリーシェは泣きながら覚悟を決める。

 自ら薬湯を口に含むとユーリの口の中に薬湯を直に流し込む。

 ユーリの口の中に確実に薬湯を入れると唇を離し今度は薬湯が喉を通り過ぎるようにユーリの首を持ち上げる。

 そうやって何度も何度も薬湯を流し込んだ。

 その時知らず知らずのうちにリリーシェの頬伝った涙も一緒にユーリの口の中に入って行った。


 皆その行為を押し黙って見守る。

 誰も声を発することもなく、物音一つたてず、ただじっとそれを見守る。


 リリーシェは薬湯をすべて飲ませるとユーリから離れ首筋に布を当てて濡れた部分をきれいに拭いてきれいにした。

 そしてやっとユーリを見つめた。

 「ユーリ。目を覚まして。お願い。私の所に帰って来て…やっと思い出したの。やっとあなたが番だって思い出したの。だからいなくなったりしないで、お願いよユーリ…」

 「ユーリ!目を覚ませ。大切な番が待ってるんだぞ。いいからいつまで寝てる気だ?おい、ユーリ!」

 「そうよ。ユーリ。こんなに寝坊助だったなんて、私はあなたをそんな子に育てた覚えはないわよ。早く起きなさい。ほんとに。ユーリ!早く起きなさい…」

 「そうだぞユーリ。まったくお前は。いい加減にしろよ。ユーリ…」


 いつまでたっても目覚めないユーリにからかいのような声かけはいつしかすすり泣きに変わって行った。


 きっと目覚めるって信じてたのに…どうすればいいの?

 リリーシェの心はズタズタに引き裂かれそうになる。

 (レックス、あなたの考えた方法もだめなの?もう一度やってみたら…ううん。そんなやわなやり方ではユーリの呪いは解けないかも…私、ユーリを助けるためならなんだってする。私の命だって上げる。そうよ。レックスも書いてたじゃない。竜力でユーリに命を分ければいいんじゃないの?でも、そんな事が私にできるのかしら…でも、やるしかないもの。これは私にしか出来ない事なんでしょう?

 ねぇレックス様。

 あの時ユーリはどうやったのかしら?襲われて助けてくれた時のあの凄い力はどうやれば出せるの?)

 「セリーシア様、竜力を出すにはどうすればいいんですか?」

 「リリーシェあなたまさか…ダメよ。あなたは倒れたばかりで呪いがとけたばかりなのよ。そんな事出来るわけがないじゃない!」

 「でも、そんな事言ってる場合じゃありません」

 「ジェス止めさせて!」

 「ああ、リリーシェまだ無理だ。もしやるなら私がやる。そこをどいてろ」

 ジェスはその手があったとばかりにユーリの唇を開く。

 そしてジェスの身体が青白い炎に包まれてその光がユーリの身体に入って行くのが見えた。

 (ああ…あれが竜力なんだ)

 リリーシェはその光景を息をするのも忘れて見守る。


 「はぁ、はぁ、はぁ…これでどうだ?」

 みんながユーリを凝視する。だが、ユーリはピクリとも動く気配はない。

 「やっぱり番のリリーシェじゃないと効果がないのかもしれんな」

 竜帝がぼそりとつぶやく。

 「じゃあ、やっぱり私が…」

 リリーシェは掴まれた腕を振りほどいてユーリの上に手をかざす。

 ピンク色の光がリリーシェを包み込む。これまで何度も使って来た癒しの力

 一心に願いを込めてリリーシェは力を注ぐ。

 「はぁ、はぁ、はぁぁ…これでも?」

 リリーシェの身体が傾ぐ。

 セリーシアがぐっと腕を伸ばしてその身体を受け止める。

 「リリーシェ今のあなたはすごく弱ってるの。わかるでしょう?いつもより力が弱いはずよ。だからきっと無理なの。ねっ、お願い。今は休んだ方がいいわ」

 「そうだリリーシェ。もしやるとしても今日は無理だ。もう少し体力が回復しなければ…いいな?おい、誰かリリーシェを部屋に連れて行って休ませろ。いいか、絶対に部屋から出すなよ」

 リリーシェは護衛にしっかり固められて部屋に連れ戻された。


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