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34リオン殿下役に立つ
しおりを挟むリリーシェは仕方なく部屋で休むことにする。
確かに身体は疲弊しているらしく身体じゅうが重だるくてまだ頭が割れるように痛かった。
そんな状態の時扉の外で声がした。
リオン殿下の声だった。
「いいから中に入れろ!」
「だめです。リリーシェ様はお疲れです。ただいま休まれていますのでご理解下さい」
「お前のような下っ端が何を言っている?私はピュアリータ国の王太子だぞ。言いから入らせろ。話はすぐに終わる」
「ですが…」
(ああ…うるさいのが来た。それにリオン殿下は言い出したら引き下がる事を知らないんだから…もう、部屋に入って話を聞いた方がゆっくりできるわ)
リリーシェはうるさくて落ち着いていられない。
「リオン殿下。皆さん困ってます。いいから中に入って下さい」扉を開いてリオン殿下に中に入るように言う。
「おお、リリーシェ。話が分かるじゃないか」
リオン殿下は嬉しそうに顔をほころばせる。
「殿下。私は疲れているんです。お話は素早く終わらせて下さいね」
「ああ、1分とかからない。ほら見ろ。お前らよりリリーシェの方が数万倍話が分かる。失せろ!」
リオン殿下は扉の前に立っていた護衛に向かって文句を言う。
「殿下。もういいですから…それでお話って?」
リリーシェはリオン殿下の手を引っ張って中に入らせる。
「まあ座れ。リリーシェは疲れてるんだろう。そうだ、これを持って来たぞ」
リオンがポケットから出したのはピュアリータ国の有名な菓子のひとつ竜の雫と言う前世の記憶で言うなら金平糖のような砂糖菓子だ。
「ほら、リリーシェはこれが好きだったろう?」
リオンの手のひらには、小さな入れ物に入った雫型の七色の菓子がある。
「どうしてそれを?」
「最初に会った時の茶菓子にあった。リリーシェは俺よりその菓子に興味をそそられていたじゃないか」
「あれは…神殿ではあのような甘い菓子がなかなか食べれなくてそれで…」
「じゃあ、好きではないのか?」
「いえ、いただきます」
リリーシェはその小さな入れ物を掴んで自分の手のひらに乗せた。そして中の菓子を指先でつまんで口に入れた。
甘い果実の味が口の中に広がってこれまでにことが走馬灯のように脳裏に広がった。
リスロートから帰って神殿で働くようになってリオン殿下の婚約者になって裏切られて、またリスロート帝国にやって来て、思わぬことで宝石デザインが認められて、ユーリが番だと思い出して、なのに肝心のユーリを助けることが出来なくて…
「あぁぁぁ…」
「なあリリーシェ。ピュアリータ国に一緒に帰らないか?俺が悪かった。アリーネみたいな女にうつつを抜かして…でも、あいつは俺に『番だまし』を飲ませていたから。いや、人のせいにするのはみっともないな。俺は王太子としてもっと自覚をもって行動するべきだとやっと気づいたんだ。ピュアリータ国にはリリーシェが必要だ。だから俺と一緒にやり直してくれないか?」
リオン殿下はものすごく真面目な顔でリリーシェにそう告げた。
リリーシェは最初こそ疑り深く彼を見ていたが、こんな顔でこんな事を言われるときっと少しは反省したのだろうとは思えた。が。
それは無理だろうと突っ込みたい。
あんな大勢の場所で大恥をかかされて、それに何よりリリーシェにはユーリと言う番がいる事もわかってしまった。
もう元に戻れと言われてもそれは無理としか言えない。
「殿下。お気持ちはわかりますが無理ですね」
リリーシェは白けた顔でスパッと言う。
「どうして?これだけ言ってもか?なぁ、今夜は聖夜なんだぞ。一年に一度どんな願いもかなう夢のような一夜だって言うのに、そんなのありか?」
「だったら私の願いだって聞いてほしいですよ。神様どうかユーリ様を助けて下さい」
「どうしてユーリなんだよ!そこは俺の名前を呼ぶべきじゃないのか?」
「殿下。あなたはもう私の婚約者ではありません。私とユーリ様は番同士なんです。だからこの話は無理です。わかったら出て行ってもらえませんか?さっき話は1分で終わると言いましたよね?」
「ああ、確かに言った。が…どうしてもだめか?」
リオン殿下はがっくりと肩を下げる。
「しつこいですよ」
リリーシェは即、拒否する。
「だがなぁ…父や神殿長がなぁ…リリーシェを連れ戻せとうるさくてなぁ…」
「諦めて下さい。殿下もそこまで自覚出来たんです。きっと国王や神殿長を説得できますよ。それに素晴らしい女性にも巡り合えると思いますよ。ピュアリータにはたくさんの素敵な女性がいます。きっと殿下のお眼鏡にかなう女性がいるはずです。だって殿下はすごく素敵ですもの」
(まあ、ここはぐっとこらえてリオン殿下を持ち上げてあげますよ。アリーネにいいように騙されてほんの少しですけど可哀想ですからね)
「そうか?リリーシェ。本当にそう思うか?」
「ええ、殿下ならきっと」
「リリーシェにそう言われるとそんな気がして来たな。よし、仕方ない。諦めるか」
「ありがとうございます。どうかリオン殿下にご加護がありますように」
リリーシェはそう祈るとリオンの身体が淡いピンク色の光に包まれた。
「ありがとうリリーシェ」
リオン殿下は機嫌よく部屋を出て行った。
リリーシェはほっとしてリオンがくれた竜の雫に目を落とした。
はっと閃く。
(今夜は聖夜。もしかしたら竜神の力を分けてもらえるかも知れないんじゃ?確か宮殿のすぐ近くに竜神の神殿があったはずだわ。
そういえば学園に通っている頃聞いたことがあった。
聖夜には竜の像の目から涙が零れ落ちるんだと、人々はその涙の雫が万病に効くと言ってありがたくその涙の雫を貰って帰ると。
それを病気の者に飲ませればどんな病気もたちどころに治るんだとか。
そんな事信じられないと思うけど今の私にはその奇跡にさえ縋りたいと思う。
今夜なら…もしかしたら…もしかしたら…
その竜神の涙の雫でユーリ様の呪いが解けるかも知れないわ。)
リオン殿下。初めてあなたに感謝です。私、聖夜だって事すっかり忘れてました。
うふっ、殿下が初めて私の役に立ちましたよ。ありがとうございます。
リリーシェは居ても立っても居られず部屋を飛び出した。
「リリーシェ様。待って下さい!どこに行かれるんです?部屋に戻って下さい!」
護衛達が後から追ってくるが、リリーシェは力を込めて防御の体制を取った。
そしてもっと早くと念じると一気にスピードが上がった。
護衛はすっかり後ろの方になっていた。
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