シャロンは気づいていなかった最低なジェリーが最高のジェリーフィシュだったことに

はなまる

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 シャロンは、まともに彼のその笑顔を見たのはいつのことだっただろうと思った。付き合い始めたころは、彼の全てが好きでたまらなかった。 

 初めて彼と結ばれたのは、バーのトイレの中だった。彼はいきなりわたしを求めてきた。わたしは抗うことなどできなかった。熱いキスで頭は朦朧としていたし、彼の舌がわたしの口の中で暴れ回ってわたしはアドレナリンのたぎった入れ物みたいになっていたもの…彼の指がショーツの中に入ってきて、それだけでもうわたしの体は激しく燃え上がっていた。


 彼が洗面台の上に腰をかけさすと、いきなりショーツを引き下げ、自分の高まりをジーンズから出してわたしの中に突き入れた。


 わたしはいきなり太い塊で貫かれて悲鳴を上げた。痛みで体が焼け付きそうで…彼がキスしてくれなかったらわたしはきっと我慢できなかっただろう。

 そして彼がわたしがバージンと気づいたときにはもう手遅れだった。

 でもそれがきっかけでわたしたちは付き合い始めたのだから…



 シャロンはまだジェリーが好きだった。決して嫌いで別れたわけではなかった。彼があまりにも信じれなくなって、もう彼といることが辛すぎた。だからケンカになった時ジェリーに出て行ってくれと、離婚したいと言った。

 あの頃はただ彼といることが辛かった。でも別れると彼にもう会えないことが辛くてたまらなかった。

 でも彼とのことは過ちだった。そんなことわかってるはずよと自分に言い聞かせて来た。彼はわたしを愛していたわけではないのだから…




 シャロンは、ジェリーを見つめていた。彼の顔には、あの頃なかったしわが出来ていた。笑うと目尻には細かいしわがあった。それに前より痩せた気もする。それでもあの銀色のセクシーな瞳や筋の通った鼻、官能的な唇、少しカールした黒髪、どれも魅力的なままだった。


 シャロンは気づかないうちに、唇を舌で濡らした。舌を少し出して唇を舐めようとした唇を噛んだ。

 こんなこと思っちゃだめ!彼とはもう他人なんだから…ジェリーが何をしていようとわたしには関係ないことよ!




 わたしたちは部屋を出ると、ランチをするために近くのイタリアンレストランに入った。

 「シャロン、何にする?」バクスターはすぐに席につくと即座に聞いた。



 彼はシャロンのしぐさにぞくぞくする気持ちを抑えられなかった。さっき彼女が舌を出した時は…もう…思い出しただけで股間に血流が流れ込む。こんなことで興奮するなんてクッソ!どうかしている。そのせいですぐに席についた。

 「そうね…」イタリアンか…リゾットにする?それともパスタかしら?どっちが安いのかしら?ランチにお金をかけるなんてもったいない…

 「シャロンはエビとアボガドのジェノベーゼにしたら?僕も同じものにするから」彼は何か違うことを考えようとシャロンがまごついている間に話しかけた。



 シャロンは驚いた。それって…わたしの大好きだったパスタじゃない…ジュリーったら今でもそのことを覚えていたの?

 そんなことを思ったせいで顔が熱くなった。

 「シャロン君は今でも照れると頬を染めるんだな…」真向かいに座った彼がそんなわたしを見つめている。

 「ち、違うわ!バクスターわたしが好きだったものを覚えていたくらいで、いい気にならないで!わたしを手なずけようたってそうはいかないんだから…」わたしは顔を背けると、着ていたスーツの上着を脱いだ。確かに今日はいいお天気で、気温も高いからよ。



 濃紺のパンツスーツは、シャロンにしては珍しく大金をはたいて買ったものだった。ツイードの仕立ての良いスーツで、何かあるときはこれが重宝していた。




 「シャロン…」彼の声がつまった。彼女が好きだったジェノベーゼ。僕は自然にそれを頼んだのか…いつしかまじまじと彼女を見つめていた。

 「何よ!そんなに気安く呼ばないでよ!」彼にその名前を呼ばれるたびに、あの頃の甘い時間を思い出して、勝手に肌があわ立っていく。




 わたしはすっかり忘れていた、スーツの下にノースリーブの白いシルクのブラウスを着ていたことを…上着を脱ぐことはないと思っていた。

 それに右腕の上腕には、彼といれたタトゥーが今もはっきり残っていた。

 jyeryloveの文字がくっきりと…




 「それに…そのタトゥーも…」彼がTシャツの腕をまくった。彼の右腕にもsyaronloveの文字がはっきり残っていた。



 「当たり前じゃない。これは一生消えないのよ。あなたが恋しいわけでも何でもないわ」わたしはどぎまぎしていた。

 「後悔してるのか?僕の名前を入れたこと…」彼が銀色の瞳でわたしと視線を合わせた。

 ああ…もうやめて。どうしてそんな潤んだ瞳でわたしを見つめるのよ…



 「もうやめてそんな話をするのは、ここに来たのは仕事での付き合いだからで、個人的な話をするためじゃないわ」何を期待しているのよ!ジェリーとの間に何かあるなんて…そんなことあるわけないのに…



 その時、ウェイターが料理を持って来た。

 シャロンは頼んだ料理を食べずに帰るつもりはなかった。

 黙ってフォークを取ると、パスタをくるくる巻き付けて口に運んだ。

 エビとアボガドのジェノベーゼはたまらなく絶品だった。



 ジェリーとよく食べに行くのはもったいないからと、エビなしのジェノベーゼを作って食べた。あの頃はそれで幸せだったのに…

 突然そんなことが思い出されて、シャロンは慌ててその記憶を叩き潰した。



 彼も黙って食べ始めた。



 シャロンは、一気にパスタを食べ終わると、バッグを探り始めた。

 「何してる?もしかして僕に連絡先でも?」

 「お金を出してるに決まってるじゃない。なによ。あなたに連絡先を教えようなんて、そんなことあるわけないから…」

 「お金は僕が払う。誘ったのは僕だ」彼が怒ったように言った。

 「あら、お構いなく。そうだわ、ここは一緒に払って会社の経費にするから」シャロンは立ちあがると明細をつかんだ。

 「じゃあバクスター金曜日の午後に伺いますから。わたしはこれで失礼します」シャロンは足早にレジに向かった。


 「待てよシャロン。そんなに急いで帰らなくてもいいじゃないか。君を襲うほどぼくが女に困っていると思うか?僕が女に困らないことくらい知ってるだろう?」僕は彼女のよそよそしい態度に腹を立てていた。もしかしてまだ僕のことを…なんてあるはずがないじゃないか!

 ジェリーは自分の意外な反応に驚いた。何を考えているんだ。シャロンが僕を嫌っていることくらいわかっているはずだ。ああ、こんな女を愛した僕がばかだった。二度とシャロンを誘わないさ。


 「ええ、よく知ってるわ。あなたあの頃とちっとも変わってなさそうでよかったわ。わたしはあの時みたいな勘違いを二度とするつもりはないの。ジェリー急いでるんじゃないの。あなたが嫌いなだけ。じゃあ失礼するから…」



 シャロンは支払いを済ませると、領収書ももらわずに表に飛び出すと、急いで地下鉄の階段を駆け下りた。

 滑り込んできた電車に飛び乗ると、やっと後ろを振り返った。誰もいなかった。

 ばかみたい…ジェリーが追いかけてくるとでも思ったの?



 電車の椅子に座って、そんなことを期待していた自分が嫌になった。彼は今でもあの頃と同じよ。女はいくらでも言い寄ってきて…

 それにお金持ちで有名になったんだもの、前よりもっとプレイボーイに拍車がかかっているわよ。

 本当に嫌な奴!

 ジェリーなんか大っ嫌い!




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