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しおりを挟む陽介は海南署の事件もほとんど片付き、吉村あかねもあれから陽介の事を相手にもしなくなっていっていた。
後は香月海斗の件が片付けば安心だ。
陽介は大きく深呼吸すると、時間に間に合ってよかったとほっとしながらはつねに電話をかけた。
携帯電話で連絡があってはつねは家の外まで迎えに出る。
「はつねさん遅くなってすまん」
「ううん、仕事は大丈夫?」
「ああ、今日は休日だしみんな引き上げたから」
「そう、良かった。今日海斗さんが来たの」
「あいつが?それではつねさん大丈夫だったか」
「あの人まだ結婚諦めないって…それでわたしつい、あなたなんか信用できないって言ったの。詳しくは言わなかったけど、彼すごく怒ってはっきり言ってみろって…恐かった陽介さん」
「それであいつはなんて?」
「あなたがどんな人かわからせてやるって…恐い」
はつねは陽介に抱きついた。
「大丈夫俺が付いてる。何があっても君を守る。約束だ」
「うん‥‥でも、陽介さん大丈夫?」
「もちろんだ。さあ、そんな顔で話する気か?」
「そうだったね。ごめん」
はつねは目の端っこについた涙を拭う。
そっと彼がその目尻にキスをしてくれる。
はつねは陽介を見つめて笑った。
「さあ、行こうか」
ふたりは一緒にはつねの実家の玄関を入っていった。
「パパ、ママ。彼が来たわ。話があるから上がってもらうね」
母が出て来た。
「こんばんは桐生と言います。今日は急にすみません。お嬢さんとのことでどうしてもお願いがあって来ました」
陽介さんは緊張しているのかいつもよりもっと無愛想な顔になっている。
「まあ、そんなところでは…いいから上がってもらいなさいはつね。それから結構なものを頂きましてありがとうございます」
「あっ、いいえ。はつねさんから伺って良かったら召し上がってください」
「さあ、どうぞ」
母がスリッパを出し始める。
そこに父が現れた。
「はつね、そちらの方は?」
「パパ。こちら桐生陽介さん。わたしの彼よ。今日は挨拶がしたいって見えたの」
「わたしの彼?どういうつもりだはつね。お前には海斗がいるんだ。そんなこと許さんぞ」
「わたしは最初から断ってるじゃない。それにパパに許してもらわなくてもいいから」
陽介さんがはつねの袖を引っ張る。
はつねは言い過ぎたことに気づく。
陽介さんが玄関に立ったままで父と顔を合わせた。
彼はまるでわたしの楯にでもなるようにはつねを後ろにして前に立ちはだかる。
「あの、申し遅れましたがわたし桐生陽介と言います。はつねさんとは結婚を前提をした真剣なお付き合いをさせていただくつもりで今日ご挨拶に参りました。どうかお父さん私たちの交際を認めていただけないでしょうか?」
「桐生さんとか言ったな。さっきも言ったはずでうちの娘にはもう婚約者がいる。悪いが諦めてくれ」
「それを承知でお願いに来ました。はつねさんはもう成人ですから、ご両親の許しがなくても僕と交際は出来ると思います。でも私はけじめをつけたいと思いましたので、でもそう言うことなら今日はもう帰ります。失礼します」
「君、失礼だな。大体君はノンキャリアだって聞いた。そんな奴がはつねと結婚しようだなんて、帰ってくれ!」
「わかりました。でも私たちは付き合いをやめたりしませんから、そのつもりで…はつねさんもそれでいいだろうか?」
陽介さんは苦しそうな表情ではつねに聞いた。
「もちろんよ。ごめんなさい陽介さん。せっかく来てくれたのに、こんなパパで…何よ。パパなんか」
「そんなこといいんだ。それより君が心配だ。ほんとにいいのか?」
「パパ、はっきり言っておきますけど。わたし彼との付き合いはやめないから、そのつもりでいてよね。ママにも悪いけど…わたし帰るから」
はつねは陽介にいきなり手を握られた。
「はつねさん帰ろうか」
優しい声がふわりとわたしを包んだ。
彼はどきりとするほど優しくわたしを見つめていた。
はつねは陽介の手をぎゅっと握り返した。
「はつね。そんな事許さんからなビックリおい、聞いてるのか?」
もう両親の声など耳に入らなかった。
そしてわたしたちは実家を後にした。
「はつねさん心配しなくていい。今日はあんな風になったが、しばらく様子を見てまた話をしに行こう」
「ううん、パパの考えは変わらないと思うから、あの人はエリート出身だとか出世コースとかそんな事しか興味がないから、どうせわたしも落ちこぼれだしね」
「君は落ちこぼれなんかじゃない。君は立派で素敵な人だ」
「陽介さんこそすごく素敵だもの‥‥例え認めてもらえなくたってわたしあなたと結婚したいから」
「はつねさん…ありがとう。この事件が片付いたら俺達婚約しないか?」
「よー、うす、け、さん…‥」
はつねはピタリと立ち止まった。
ここはマンションの帰り道で、
いつも通っている通りの真ん中で、
ロマンチックなどとは程遠くて、
それでもはつねの心は喜びでふるふる震えた。
うれしくて飛び上がるほど気持ちが高揚してはつねは叫びたくなる。
”よーすけさーん大好きです。わたしたち結婚するんですね。わたし幸せです”って…‥
その夜、陽介さんマンションに帰ったら、野獣のような彼にもうトロトロにされて半端なく愛された。
わたしほんとに幸せです。
でも困ったことが…首すじに赤いマークがいくつも残ってて‥‥
翌朝わたしたちは一緒に起きると朝食を食べて支度をした。
玄関を出るときはキスをしていて遅刻しそうになった。
だって陽介さんのキス甘すぎるんです。
はつねは保育園まで陽介と一緒に行くとそこで別れた。
「はつね、絶対に俺が来るまで保育園にいるんだぞ。わかったな」
「うん、わかってるから‥陽介さんこそ気を付けてくださいよ。海斗さんあんな事言ってたし…」
「ああ、もちろんだ。じゃあ行って来る」
「行ってらっしゃい」
まるで新婚さんみたい。はつねはクスッと笑った。
「何がおかしい?」
「だって…ラブラブだなって」
「当たり前だ。はつね…気を付けろ」
陽介さんは握っていた手にキスをしてくれた。
彼は照れ臭いのかもう振り返らなかった。
そんなあなたを愛していますから…はつねは彼の後ろ姿に悶えた。
そして夕方になった。6時を回りもう7時近いが陽介から連絡はなかった。
はつねは心配になって陽介にメールをしたが返事はなかった。
それで電話をかけてみたが留守電になった。
おかしい。何かあったならきっと彼の事だ、連絡してくるに違いないのに‥‥
はつねは何だか嫌な予感がした。
昨日海斗さんがあんなことを言ったのも気になった。
はつねは思い切って兄の流星に電話をしてみる。
「お兄さん、はつねです。忙しいところすみません」
「はつねか。どうした?」
「あの、桐生さんはどこにいるかわかりませんか?わたし彼と付き合ってるんです。それで今日は彼が迎えに来てくれるはずで待ってるんですけど連絡がつかなくて」
「お前が桐生と?海斗とはどうなったんだ?」
「わたし海斗さんとは結婚しませんから、最初からそう言ってるのにパパが聞かないから」
「まあそれはいいが桐生はだめだ。はつねを騙してるかもしれないんだぞ。あいつは今日拘束された」
「拘束ってどういう事です?」
「先日のはつねの暴行未遂の証拠品を勝手に処分したことが分かった。だから桐生がお前を襲った犯人かも知れない」
「何を馬鹿なことを。お兄さん彼はわたしを助けてくれたんですよ」
「それも自作自演かも知れん。コンビニのカメラにお前の後を追う桐生が映っていた。襲っておきながらはつねを助けたふりをしたのかもしれん」
「そんなはずないです。犯人は反対方向に逃げたんですよ。それに犯人がわたしを掴んでいる時声をかけたのが彼なんだから。もう警察は何してるのよ!」
「間違いないのか?」
兄が驚いた声を出す。
「間違いないから。そんなことを言ったのは誰なの?」
「いや、海斗が気づいたんだ。DNA保管庫からはつねの証拠がなくなっていると、それで指紋を調べたら桐生の指紋があった」
「それで、桐生さんはどうしてるの?」
「桐生は取り調べで一部を持ち出したことは認めた。持ち出すところから検査に送るところまでを録画していた。それを見たがそんなものどうにでも出来ることで‥‥」
「そう言えば陽介さんDNA検査に送ったって言ってた。それに陽介さんのDNAと合うか調べればわかるはずよ。実はお兄さん海斗さんが怪しいの。この前の夜だってわたしにお酒を飲ませてホテルの部屋に連れ込んで裸にしようとしたのよ。陽介さんが助けに来なかったら‥‥襲われた時にわたしに言った言葉だって同じことを言ったのよ。もしかしたら6年前の犯人も海斗さんかもしれないの。聞いてるお兄さん?」
「そんな訳ないだろう…言い過ぎだぞはつね」
「でも、絶対に状況証拠では海斗さんが一番怪しいんだから」
「そんな空想で物を言うな!それより桐生と付き合うのは許さない!いいな。もう切るぞ」
「待ってよ。桐生さんはどうなるの?」
「まあ、当分家には帰れないだろうな。悪ければ刑務所行き、良くても警察官ではいられなくなる」
「そんな…お兄さんいいから海斗さんを調べてよ…お願い」
「いい加減にしろ、じゃあ切るぞ」
それっきり電話は終わった。
もう何とかして陽介さんの容疑を晴らさなくちゃ‥‥
もうどうすればいいの?
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しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
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楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
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