いきなり騎士隊長の前にアナザーダイブなんて…これって病んでるの?もしかして運命とか言わないですよね?

はなまる

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 ふたりは早速話を始めた。

 「何度も貴国には書簡をお届けしたが、よい返事をもらえなくて困っていました。でも、こうしてわざわざ来ていただけるとは、無上の喜びです」

 「はい、わが国でも食料難や混乱が続いており、なかなかこちらのご要望にお応えすることに意見が別れておりましたが…ですが、こうして私が来たのは我が国から食糧援助をさせていただくためでして、明日色々なお話をさせていただくつもりではありますが、ぜひ先に国王陛下にそのお話をお知らせしたいと思いましたので」

 「ああ、レオナルド国王陛下ありがとうございます。これで国民も安心です。我が国からも出来る限りのことをするつもりでいますから、よろしく頼む」


 使用人が入ってきて飲み物をテーブルに置いた。

 「さあ、どうぞ。カーヒーという飲み物なんです。ヴァンドル帝国から仕入れているんです。ハーブとは違う香りがまたおいしいんです」


 レオナルドはカップを手に取った。

 真っ黒い液体に思わずげんなりしたが、香りはすばらしくいい香りがした。おもむろにカップを口に運ぶ。

 口に入れるとカーヒーの香りが鼻腔をくすぐった。何とも言えない香ばしい香りに思わず気持ちが安らぐ。喉を過ぎるときの少しの苦みも甘いお茶を飲むより良かった。

 「トラブロス国王陛下、すごくおいしいです。何だか気分が落ち着くような気がします」

 「ええ、まさにその通り。良かった。あなたが気に入ってくれて…ルカディウスもう下がっても構わん。わたしはもう少し彼と話がしたい。今夜は安心したせいか気分がいいんだ」

 「それは何よりです。では、わたしはこれで失礼します。レオナルド国王陛下、明日は我が国の議員たちと一緒に話を伺わせてください。実りのある良い一日にしましょう。では…」

 「はい、ルカディス宰相よろしくお願いします。では失礼」

 ルカディウスは部屋を出て行った。

 そしてトラブロスとレオナルドは互いの国の事を色々と話した。

 トラブロスもレオナルドと同じような考えで、これからは互いの国をもっともっといい関係にしたいと強く思っていることが分かった。


 最後にレオナルドはトラブロス国王に言った。

 「国王陛下、実は我が国に、つい最近300年前の言い伝えで起きたことがまた起きたんです。わたしは聖女と出会ったのです。わたし達は互いに深く愛し合うようになり、国王の怒りを買いました。あの言い伝えでは聖女は国王となった人と結ばれたので無理もありませんが…わたしは国王にそむいたとして一度処刑されました。でもその聖女がわたしを生き返らせてくれました。そして奇跡が起き聖女もまた生き返ったのです」


 「なに?それは本当か?本当にあの言い伝えの?」

 トラブロスの驚きようはすごかった。いきなり立ち上がりレオナルドに詰め寄った。

 「もしそうならば‥‥聖女であれば…もしや不思議な力が使えるとか?ならば私の病も治してはくれまいか。そうすれば安心して国家の為に働けるというものだが…」

 「はい、そのつもりで聖女である我が妻もこちらに向かっています。彼女ならきっと国王陛下の病を治せます。どうかご安心ください」

 レオナルドは自信たっぷりにそう言った。

 トラブロスの顔に輝きが戻ったようだった。


 その夜レオナルドは、これならプリンツ王国との話し合いもきっとうまく行くと自信を持った。

 明日は瑠衣もロペににやって来るだろう。レオナルドは、期待に胸おw膨らませて眠りについた。


 翌日、午後をかなり回ったころようやく瑠衣たちの一行は宮殿に着いた。門の前で近衛兵にロンダが告げた。

 「私共はアディドラ国の国王陛下の連れのものです」

 「はい、伺っております。どうぞ」近衛兵はすぐに門を開けて到着を宮殿に知らせに走った。



 ルカディウスは知らせを聞いてすぐに出迎えの準備をするように言った。だがレオナルドの所にはその知らせをしなかった。

 レオナルドは朝からプリンツの議員たちと話し合いをしていた。午前中には食料援助の事やプリンツ王国から得られる石炭や鉄鉱石の事、そして午後からは互いの国を自由に行き来できるようにしようとしていた。そして働く者にはその国の人と同じ賃金や雇用体系にするようにしたいと、熱弁をふるっていた。


 ロンダ達はそんな事も知らず宮殿内に入っていった。

 馬車は宮殿の広場の前に止まり、宮殿の出入り口からは人が出てきた。

 ロンダ達はその人に頭を下げる。

 「護衛ご苦労である。わたしはこの国の宰相、ルカディウスだ。聖女様はどちらに?」

 「はい、ルカディウス宰相、聖女様は馬車におられます。今こちらにお連れしますので」

 ロンダは瑠衣の乗った馬車に行くと、それを告げて馬車を下りるのを手伝った。



 ルカディウスは待ちかねたように瑠衣に駆け寄って来る。

 「これはこれはようこそお越しくださいました。レオナルド国王陛下のお妃である聖女様、それに護衛の者たちも…さぞ長旅お突けれになった事でしょう。さあ、部屋をご用意してありますので、ゆっくり休んで下さい。すぐにお茶の用意もさせましょう。食事の時間などはまた追ってご連絡しますので」

 「ありがとうございます。ルカディウス宰相。それでレオナルド陛下はどちらに?」

 瑠衣は馬車から降りるとしっかりと地面に立った。ずっと足を休めていたせいか、ずいぶんと足首は痛まなくなっていた。

 良かった。これなら歩いても大丈夫そうだわ。内心ほっとしたのも束の間レオナルドに言わなければならないことがあった。胸がずんと重くなると足首まで痛くなった気がした。


 「ほう、もう陛下のご心配か?これはご新婚でありますから仕方ありませんな…レオナルド国王陛下は、ただいまわが国の議員たちと会議をされておりまして、お出迎えが叶いませんでした。どうぞお許しを…聖女様たちは先にお部屋でお休みになっていただければ、もうすぐ会議も終わりましょうから…」

 「では、聖女様、そうさせていただきましょうか?」

 もうロンダまでかしこまって…仕方ないじゃない。彼はお仕事なんだから…

 「ええ、ロンダさんみんなもお疲れさまでした。ゆっくり休んでください。ではルカディウス宰相お言葉に甘えて先に休ませていただきます」

 瑠衣たちは何の疑いもなく部屋に案内された。

 瑠衣は恐る恐るゆっくりと足を踏み出したが、思ったほど痛くなくて安堵した。


 ここの宮殿もアディドラ国と同じように大理石の柱やレリーフ、高い天井には絵画が描かれていたり、大広間の向こうにはりっぱな螺旋階段が見えた。踊り場も広くその壁にはいくつもの絵画が飾ってある。

 瑠衣たちは長い廊下を歩いて何度も曲がってやっと部屋にたどり着いた。

 そこはレオナルドが案内された部屋だった。

 向かいの部屋に護衛の3人のはやがあって、ロンダ達は3人と合流した。

 一応ロンダは先に瑠衣の部屋に入るとあちこちを見て回った。何かあるといけないとでも思ったのだろう。


 「では、聖女様、わたし達は隣と向かいの部屋にいますので、何かあったらいつでも声をかけてください。きっと大丈夫とは思いますが、なにぶん異国ですので充分にお気を付けください」

 「ええ、わかってるわロンダ。もしレオナルドの事がわかったら知らせて」

 「はい、いちばんにお知らせしますから、ご安心ください。陛下はずいぶん張り切っておいでの様ですから、今宵はおふたりでごゆっくりなさってください」

 ロンダの意味ありげな言葉に瑠衣は真っ赤になる。

 「もうロンダ!おかしなこと考えてるんでしょう?知らない!」

 瑠衣はそう言うとドアをバタンと閉めた。表にはひとり護衛が立っている。


 やがて使用人がお茶を持ってきてくれた。ハーブティーとカーヒーとかいう二つの飲み物が用意されていた。そしてカステラのようなスポンジケーキや焼き菓子、フルーツはズーラ、それにスイカに似たようなものやイチゴのようなものがあった。

 瑠衣はカモダールを脱いだが、シルクのドレスはそのままにした。靴を脱いで足首に巻いた細い紐をほどくと、ソファーに腰かけた。

 そうよ。まずはお茶を飲んでから…そのうちレオナルドは帰って来るから、彼を見たら一番に話をしよう。もう他に方法はないんだもの…レオナルドはわたしを愛してる。きっと何も変わらないから…

 瑠衣はハーブティーを選んだ。赤い色はきっとローズヒップかしら?

 お茶を口に運ぶ。あれ?違ったみたい。ローズヒップならもっと酸味があるはずで……

 瑠衣はそのうちうとうとし始めた。



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