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11話は大きくなって
しおりを挟む私はエミリア様と馬車に乗り一緒に王宮に向かった。
今日はメアリーはいない。
ルドルフは馬に乗りぴったりと後ろをついて来る。
最初はエミリア様に味方になると言われて喜んだが、こんな大ごとになると胃が痛くなった。
私はアルフォン殿下とふたりで解決出来ればいいと思っていたのに、いつの間にか話は大ごとになっている。
別にもう彼を責めようとも思わないし関りにならなければいいだけの話なのに…そんな気持ちはとっくに失せていた。
「ソルティ何も心配はいらないわ。みんなアルフォン殿下にはいい思いを抱いてないから。それに国王にも考えを改めてもらういい機会だと思うの」
エミリア夫人は上機嫌で言う。
「ええ、それはわかりますが、私はあまりことを荒立てようとは思っていないんです。出来れば穏便に敏速に解決できればいい事で…」
確かにエミリア様を頼りにはしているが、私が王宮に出向いて王妃たちに会うなんてまったくの予想外だ。
馬車は王宮の外門をくぐり抜けた。
すぐにお城が見えて来てあれよあれよと言う間に城の中庭にあるティールームに案内された。
もちろん今回はルドルフも護衛としてついて来ている。
王宮内で何かあった時のためだ。
「まあ、これはアンナ王妃。今日はお忙しい所申し訳ありません」
エミリア様は第1王妃であるアンナ様を見つけるとオーバーなリアクションで近づいた。
私も一緒に後に続く。
ルドルフは部屋の外で待機と言われた。
「フィアグリット婦人。お話を聞きましたわ。またわが王が余計なことを言ったみたいね。あら、そちらが例の?」
アンナ王妃が私を見た。
私は急いでカテーシーをする。
「本日はお招きありがとうございます。私はソルティ・ヴィオレッテと申します。この度は王妃様のお手を煩わせることになりまして申し訳ありません」
「いいのよ。アルフォン殿下の噂は何度も耳にしていました。その度に心を痛めていたのです。でもまさか、こんなことになるとは思いませんでしたわ。ねぇキャロン」
そう声を掛けられて挨拶をしたのは第2王妃のキャロン様だ。彼女はリスティーネ公爵家の方だ。
「まあ、あなたがソルティ?可哀想に婚約してからも大変な目にあって来たらしいわね。あのバカ。ほんと許せないわ」
「いえ、私は…」
「まあ、皆さんの腹立ちもわかりますけど、こうなったものは仕方がありませんわ。ジャネットはもう妊娠してしまったんですもの。遅かれ早かれアルフォン殿下の子供は授かることになったはずでしょう?それにソルティ嬢も破談になって嬉しいって顔をしてるじゃない。だったらジャネットがアルフォン殿下と結婚すればいい事じゃない。それなのに国王ったらジャネットは出戻りだからって、そっちのほうがひどいと思いません事?」
そう言って割って入ったのは第3王妃のマリー様。彼女はスベトラーナ子爵家の方でジャネットのおばになる。
「まあ、今はジャネットの事は置いといて…今日はソルティとアルフォン殿下と結婚を阻止することをお願いに来ましたの。皆さんの意見が一致となれば国王陛下も強気には出れないと思いますわ。アルフォン殿下は国王の言われるままにされると思いますし…」エミリア様が言う。
「もう、ほんとに自分の意志のない人ねぇ、これじゃソルティ嬢がほんとにお可哀想。4年もの時を無駄にしたって事ですのよ!」
腹を立てたのはキャロン王妃。
「それは殿下からきちんと謝罪と誠意を見せて頂かなくてはなりませんね。私たちも協力しますわ。書面で国王とアルフォンにソルティ嬢の婚約破棄と慰謝料の事を書きましょう」
アンナ王妃もひどく憤慨なさって自ら紙に国王あてに嘆願書を書く始めた。
続いてキャロン様、そしてマリー様も同意してサインを書いた。
それをエミリア様にみせる。
「まあ、早速行動していただいてありがとうございます。ソルティあなたからもお礼を言って」
「皆さまにこんなにご支援いただけるなんて…本当にありがとうございます。こうなれば一日も早い婚約解消と慰謝料支払いの話を進めるようにします」
「ええ、これから私が国王にこれを提出するわ。あなたにはまた呼び出しがあると思うけど、気持ちをしっかり持って私たちが付いているわ」
3人の堂々たる王妃が味方になると断言してくれたのだ。これほど心強いことはない。
「王妃様方、本当にありがとうございます。感謝してもしきれません」
そこにやって来たのは第1王子のアルパモント殿下と第3王子のアルガン殿下だった。
アルガン殿下は妻のミア様から話を聞いたらしくエミリア様に言った。
「母上。話は聞きました。私たちも父のやり方には反対です。ぜひ協力させて下さい」
「私も次期国王として女性問題を改めるときだと思います。この国も一夫多妻制度をやめて一夫一婦制にする時だと考えています。そのために議会で話し合いをするつもりです。今回の事はこれからの教訓としてアルフォンには責任を取らせるつもりです。もちろんジャネットを妻にして未来永劫他の女性との関係を持つことのないように誓約書を書かせるつもりです」
「アルパモント良く言ったわ。それでこそわが息子。これからのアルパード王国を担って行くのはあなたですもの」
アンナ王妃はわが息子を誇らしく褒めた。
「ええ、さすがですわ。やっぱり血筋がいいとこうも違うんでしょうかね。やはり平民の血が入っているというのは…」
キャロン王妃がつぶやいた。
「まあ、みなさん。アルフォン殿下はいずれはジャネットの夫。と言うことは私の義理の甥にもなりますので…これからはジャネットがきちんと手綱をひいて行く事でしょうから…」
そう言ったのはもちろんマリー王妃だ。
すかさず突っ込みが入る。
「あの殿下が?無理ですわ」キャロン王妃が。
「ええ、絶対無理です」エミリア様が。
「まぁまぁ母上。そこはこれからですよ」アルガン殿下が苦笑する。
「ええ、あなたの下半身はちゃんとしてるからいいんです。でも…あれは…無理じゃないかと…」アンナ王妃が頭を抱える。
「そうよ!まずはお手本にしっかりしてもらわなくてはいけません。私、こんなことはしていられませんわ。ではみなさんまた」
アンナ王妃はがばりとまるで王妃らしくない所作で立ち上がった。
「王妃どちらへ?」みんなが一斉にアンナ王妃を見た。
「もちろん!国王の執務室です。もう、女遊びはやめていただかなければ示しがつきませんから。今回こそはっきり言ってやるんです!では…」
私はとんでもないことになったと大きくため息を吐いた。
みんなも呆れかえってしばらく放心状態だった。
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