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第一部 第三章
8 ライラという子。
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「すごい荷物だねー!」
ライラという少女は、佐知子が大きなカバンを二つ持ち、よろよろと歩いてくるのを笑いながら見ていた。
「あ、はい。何も持っていなかったんで、いろいろ買ったので……」
革のカバンをライラの隣の空いている絨毯の上に置くと、佐知子は息をついた。
「ここが……えっと、名前、なに? あたしはライラ」
「あ、タカ……サチコです」
「サチコ……サチでいい?」
「はい」
名前を聞かれ、高橋佐知子と名乗るのを何となく佐知子はやめた。
この村は名字のない人が多い様なので、それに合わせたのもあるが、長い名前だね。や、どれが名前? などと聞かれると面倒だからだ。
この世界ではサチコでいい。佐知子はそう思った。
「ここがサチのスペースね。まぁ、布団敷いて寝るスペースくらいしかないんだけど」
ぽんぽんっと手のひらで叩かれたスペースは、確かに両脇に私物の敷物が敷かれている間にぽっかりと空いた、絨毯が見える布団一枚分位のスペースだ。
「で、これが布団。あと、ここの棚自由に使っていいから」
手を置いたのは、壁の手前に置かれた白い薄い布団だった。毛布もあるようだ。そして壁は薄い黄土色のレンガで、二段の棚が大きく空いていた。
(あ、よかった。買った物ここに置ける)
そう思いながら佐知子は座る。
「新品のカンラだよね? いいなー! 今日買ったの?」
「あ、はい」
佐知子は着慣れないカンラに、少し照れくさくほほえみながらライラを見る。
目が慣れて来たのと近づいた事でようやくはっきりライラの外見がわかった。
ライラは褐色肌の同い年位の少女だった。長い黒髪を後ろで一本の三つ編みにしている。瞳は青く、珍しくて綺麗で、ついじっと見てしまいそうになる。服は作業着と呼ばれる、半袖のシャツに、ゆったりとしているが、裾はきゅっと締まったズボンを履いていた。
「えっと……荷物、棚に置いてもいいですか?」
佐知子は何となく、ライラに問う。
「え? ああ、うん! 邪魔してごめんね!」
「あ、いや! そんなことは!」
「あ、敬語つかわなくていいよ。歳、近いでしょ? いくつ?」
あ、荷物片付けながらでいいよ。と、ライラは付け加え、また寝転び佐知子を見上げる。
「今年、十七になりま……なるよ」
「あ、じゃあ、一個上だ。あたし今年十六ー」
「そうなんだ」
(いい子でよかったな)
佐知子はそう思いながら、革のカバンの荷物をレンガの棚に片付けていく。
「どこ出身? 外見からだとホン人ぽいけど」
「ホン人?」
佐知子は動かしていた手を止め、右斜め下で寝転ぶライラを見る。
「あれ? 違う? あ、詮索しちゃってごめんね。ここでは詮索はなしだよね」
ライラは手をひらひらと振って眉を下げる。
(ホン人……ホンって国があるのかな?)
佐知子はそう思いながらまた棚に荷物を置いていく。
「よっし、こんなもんかな」
革の大きなカバンは空になり、棚にはみっちりと物が詰まった。
「あ、終わった? じゃあハンム行く? 行ってないよね?」
するとライラが寝転がっていた体勢から起き上がり、絨毯の上に敷いた厚手の敷物の上であぐらをかく。
「ハンム?」
佐知子には何のことかわからない。
「お風呂だよお風呂! ひろーいお風呂! 行ったことないの?」
「……ない」
確か、広場でそんなような名前を聞いたような……と、佐知子は思いながら、銭湯みたいなものかな? と、思う。
「じゃあ、一緒に行こう! 案内するよ!」
ライラは支度を始める。
「あ、うん!」
ライラに言われて石鹸やタオル、着替えなどを一通り風呂敷のような大きな布に包むと、佐知子はライラと一緒に使用人小屋を出た。
ライラという少女は、佐知子が大きなカバンを二つ持ち、よろよろと歩いてくるのを笑いながら見ていた。
「あ、はい。何も持っていなかったんで、いろいろ買ったので……」
革のカバンをライラの隣の空いている絨毯の上に置くと、佐知子は息をついた。
「ここが……えっと、名前、なに? あたしはライラ」
「あ、タカ……サチコです」
「サチコ……サチでいい?」
「はい」
名前を聞かれ、高橋佐知子と名乗るのを何となく佐知子はやめた。
この村は名字のない人が多い様なので、それに合わせたのもあるが、長い名前だね。や、どれが名前? などと聞かれると面倒だからだ。
この世界ではサチコでいい。佐知子はそう思った。
「ここがサチのスペースね。まぁ、布団敷いて寝るスペースくらいしかないんだけど」
ぽんぽんっと手のひらで叩かれたスペースは、確かに両脇に私物の敷物が敷かれている間にぽっかりと空いた、絨毯が見える布団一枚分位のスペースだ。
「で、これが布団。あと、ここの棚自由に使っていいから」
手を置いたのは、壁の手前に置かれた白い薄い布団だった。毛布もあるようだ。そして壁は薄い黄土色のレンガで、二段の棚が大きく空いていた。
(あ、よかった。買った物ここに置ける)
そう思いながら佐知子は座る。
「新品のカンラだよね? いいなー! 今日買ったの?」
「あ、はい」
佐知子は着慣れないカンラに、少し照れくさくほほえみながらライラを見る。
目が慣れて来たのと近づいた事でようやくはっきりライラの外見がわかった。
ライラは褐色肌の同い年位の少女だった。長い黒髪を後ろで一本の三つ編みにしている。瞳は青く、珍しくて綺麗で、ついじっと見てしまいそうになる。服は作業着と呼ばれる、半袖のシャツに、ゆったりとしているが、裾はきゅっと締まったズボンを履いていた。
「えっと……荷物、棚に置いてもいいですか?」
佐知子は何となく、ライラに問う。
「え? ああ、うん! 邪魔してごめんね!」
「あ、いや! そんなことは!」
「あ、敬語つかわなくていいよ。歳、近いでしょ? いくつ?」
あ、荷物片付けながらでいいよ。と、ライラは付け加え、また寝転び佐知子を見上げる。
「今年、十七になりま……なるよ」
「あ、じゃあ、一個上だ。あたし今年十六ー」
「そうなんだ」
(いい子でよかったな)
佐知子はそう思いながら、革のカバンの荷物をレンガの棚に片付けていく。
「どこ出身? 外見からだとホン人ぽいけど」
「ホン人?」
佐知子は動かしていた手を止め、右斜め下で寝転ぶライラを見る。
「あれ? 違う? あ、詮索しちゃってごめんね。ここでは詮索はなしだよね」
ライラは手をひらひらと振って眉を下げる。
(ホン人……ホンって国があるのかな?)
佐知子はそう思いながらまた棚に荷物を置いていく。
「よっし、こんなもんかな」
革の大きなカバンは空になり、棚にはみっちりと物が詰まった。
「あ、終わった? じゃあハンム行く? 行ってないよね?」
するとライラが寝転がっていた体勢から起き上がり、絨毯の上に敷いた厚手の敷物の上であぐらをかく。
「ハンム?」
佐知子には何のことかわからない。
「お風呂だよお風呂! ひろーいお風呂! 行ったことないの?」
「……ない」
確か、広場でそんなような名前を聞いたような……と、佐知子は思いながら、銭湯みたいなものかな? と、思う。
「じゃあ、一緒に行こう! 案内するよ!」
ライラは支度を始める。
「あ、うん!」
ライラに言われて石鹸やタオル、着替えなどを一通り風呂敷のような大きな布に包むと、佐知子はライラと一緒に使用人小屋を出た。
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