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16.本当の私は、本当の私の名は……。
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薬局に着くと、中にいた人達は私を凄い目で見た。
そりゃそうだろう。
血まみれで、ぜぇはぁ言っているのだから。
そんなことに構わず、私は財布を握りかごを持ち、何が必要かと考える。
消毒液……ガーゼ……脱脂綿の方がいいか?……あと包帯……大量に……お金足りるかな……。
そんなことを思いながら、またあふれて来た涙を拭いながらカゴに入れて行く。
あ!痛み止めと、可濃止めと、解熱剤も買って行こう!
あと食べ物と飲み物!!!
私はレジに行き、案の定お金が足りなくなったので、足りる分になるだけ食べ物を削り、両手にビニール袋を下げ公園へと急いだ。
店員さん凄い顔してたな。とか、彪斗くんまだちゃんといてくれるかな。とか、色んな事が頭に浮かぶ。
お願いだからいて!!!!
と、思いながら必死に両手に食い込む痛さを堪えて早足で公園へと急ぐ。
「いた!」
思わず声が出た。
彪斗くんはベンチに寝ててくれていた。
よかった……と、私はまた涙があふれ、その場に崩れ落ちそうだったけれど、何とか踏ん張って彼のもとへ行く。
「戻……戻ったよ……」
「ああ……」
彪斗くんは静かに瞳を開く。
公園の街灯で、改めて見た私の最推しは……最推しだった。
退魔師の一人だけど、一匹狼で、世間には隠れ、世間には認知されない存在。
一凛ちゃんを影から守り続ける……不愛想で不器用で……だけど過去の罪に苦しむ優しい人……。
「っ……」
私は涙があふれてきた……。
「何だ……どうした……」
「ううん!ごめんね!手当するね!」
「いい……自分で出来る……金払う……」
「いいから!おばさんに任せて!!!!寝てて!!!!」
私はしっかりしなきゃと彪斗くんと押さえつける。
「……お前……さっきから……」
「いいから黙ってて!手当に専念するから!!」
「…………」
彪斗くんは黙ってくれた。
こんなに人のいうこと素直に聞くキャラだっけ?
弱ってるからかな?
と、思いながら私は公園の水道でタオルを濡らし、彪斗くんの血まみれの体を拭く。
うめき声を少し上げたが、ごめんね、ごめんね、といいながら拭いた。
かまうな。と、言って耐えてくれる。まぁ、耐えるよね。これくらい。彪斗くんなら。
その後、消毒液を傷口にかけ、脱脂綿で消毒する。
これもうめき声を上げるが、私はもう何もいわなかった。
その後、脱脂綿をあて、包帯でキツく巻いて……私の出来る応急手当はここまで。
「はい……私が出来るのはここまで。あとは九五さんの所にでも行ってね。行きたくなかったら、化膿止めと、痛み止めと、解熱剤と、食べ物飲み物出来るだけ買ってきたから……何とか乗り切って」
私はベンチに横たわる彪斗くんを、ベンチの前に正座で座りながら少しほっとしながらも、心配でいっぱいな表情で見つめた。
「あんた……速水彩衣だろ……」
「へ!」
いきなり名前を呼ばれて、私は心底びっくりした。
「え、な、何で!?」
私が慌てていると、
「一凛の身辺調査はしてたからな……思い出した。いつも一凛と一緒にいるやつだ……」
「あ……」
そうか……と、私は納得した。
そうそう、彪斗くんはストーカーの様に、遠くから一凛を見てるんだよね。
だから私も見てたのか……だから知ってたのか……。
でもね、彪斗くん……私は……本当は……本当の私は……。
涙があふれてきた。
「お、おい……何、泣いてんだよ……!」
彪斗くんが焦っている。
いや……いい。
今は……というか、会って、会話が出来るだけで、ありがたいと思わなきゃ。
「なんでもない!彪斗くんが元気になったみたいだから嬉しくて!」
私は、へへ。っと無理して笑顔を作った。
「……変な女。」
「ふふ……変な女二回目いただきましたー!」
「……ッチ……さっきの聞こえてたのかよ……」
「やっぱり言ってたんだ……あ!もうこんな時間!やばい!私コンビニ行ってくるって家出たんだった!帰らなきゃ!」
「…………」
「……ずっとそばにいてあげたいんだけど……ごめんね。」
怪我や病気したときは……心細いよね……と、思いながら私は言う。
「そんなんじゃねぇよ!早く帰れ!」
「ふふ。」
彪斗くんらしいや。
あ!
私は血まみれになってしまったが着ていた少し薄手の上着を脱ぎ、折りたたむ。
「彪斗くん、これ、枕に使って!上にかけた方がいいならそうして!」
「……いらねぇよ……」
「いいから!おばさんのいうことは聞きなさい!!」
「……お前、俺より年下だろうが。おばさんじゃねぇだろ」
「いいの!ほら!頭の下に敷いたらきっと楽だから!敷いてみな?」
私は無理矢理、彪斗くんの頭を少し上げ、その下に滑り込ませる。
「あ!てめ!…………」
「……どう?」
「……悪くない……」
「ほらー」
「早く帰れ!……って!」
ムキになった彪斗くんが起き上がり、傷口が痛んだらしく、うめいてベンチにまた仰向けになった。
「あああ!帰る!帰るね!!!それじゃあ、お大事にね!!!隠密活動もほどほどにね!!!」
私はガサガサと荷物をまとめ、離れながら言う。
そして、言おうか言うまいか悩む言葉を思い切って口にする。
「またね!」
その後、血まみれで財布の中は空、上着なしで帰宅した私を、美女母と帰宅していたイケオジ父、溺愛イケメン兄が何事かと大慌ててで出迎えたのは言うまでもない。
言い訳は~……怪我していた野良犬らしき大型犬の手当をしてあげた。と言った。
あながち嘘ではない。ははは。
そりゃそうだろう。
血まみれで、ぜぇはぁ言っているのだから。
そんなことに構わず、私は財布を握りかごを持ち、何が必要かと考える。
消毒液……ガーゼ……脱脂綿の方がいいか?……あと包帯……大量に……お金足りるかな……。
そんなことを思いながら、またあふれて来た涙を拭いながらカゴに入れて行く。
あ!痛み止めと、可濃止めと、解熱剤も買って行こう!
あと食べ物と飲み物!!!
私はレジに行き、案の定お金が足りなくなったので、足りる分になるだけ食べ物を削り、両手にビニール袋を下げ公園へと急いだ。
店員さん凄い顔してたな。とか、彪斗くんまだちゃんといてくれるかな。とか、色んな事が頭に浮かぶ。
お願いだからいて!!!!
と、思いながら必死に両手に食い込む痛さを堪えて早足で公園へと急ぐ。
「いた!」
思わず声が出た。
彪斗くんはベンチに寝ててくれていた。
よかった……と、私はまた涙があふれ、その場に崩れ落ちそうだったけれど、何とか踏ん張って彼のもとへ行く。
「戻……戻ったよ……」
「ああ……」
彪斗くんは静かに瞳を開く。
公園の街灯で、改めて見た私の最推しは……最推しだった。
退魔師の一人だけど、一匹狼で、世間には隠れ、世間には認知されない存在。
一凛ちゃんを影から守り続ける……不愛想で不器用で……だけど過去の罪に苦しむ優しい人……。
「っ……」
私は涙があふれてきた……。
「何だ……どうした……」
「ううん!ごめんね!手当するね!」
「いい……自分で出来る……金払う……」
「いいから!おばさんに任せて!!!!寝てて!!!!」
私はしっかりしなきゃと彪斗くんと押さえつける。
「……お前……さっきから……」
「いいから黙ってて!手当に専念するから!!」
「…………」
彪斗くんは黙ってくれた。
こんなに人のいうこと素直に聞くキャラだっけ?
弱ってるからかな?
と、思いながら私は公園の水道でタオルを濡らし、彪斗くんの血まみれの体を拭く。
うめき声を少し上げたが、ごめんね、ごめんね、といいながら拭いた。
かまうな。と、言って耐えてくれる。まぁ、耐えるよね。これくらい。彪斗くんなら。
その後、消毒液を傷口にかけ、脱脂綿で消毒する。
これもうめき声を上げるが、私はもう何もいわなかった。
その後、脱脂綿をあて、包帯でキツく巻いて……私の出来る応急手当はここまで。
「はい……私が出来るのはここまで。あとは九五さんの所にでも行ってね。行きたくなかったら、化膿止めと、痛み止めと、解熱剤と、食べ物飲み物出来るだけ買ってきたから……何とか乗り切って」
私はベンチに横たわる彪斗くんを、ベンチの前に正座で座りながら少しほっとしながらも、心配でいっぱいな表情で見つめた。
「あんた……速水彩衣だろ……」
「へ!」
いきなり名前を呼ばれて、私は心底びっくりした。
「え、な、何で!?」
私が慌てていると、
「一凛の身辺調査はしてたからな……思い出した。いつも一凛と一緒にいるやつだ……」
「あ……」
そうか……と、私は納得した。
そうそう、彪斗くんはストーカーの様に、遠くから一凛を見てるんだよね。
だから私も見てたのか……だから知ってたのか……。
でもね、彪斗くん……私は……本当は……本当の私は……。
涙があふれてきた。
「お、おい……何、泣いてんだよ……!」
彪斗くんが焦っている。
いや……いい。
今は……というか、会って、会話が出来るだけで、ありがたいと思わなきゃ。
「なんでもない!彪斗くんが元気になったみたいだから嬉しくて!」
私は、へへ。っと無理して笑顔を作った。
「……変な女。」
「ふふ……変な女二回目いただきましたー!」
「……ッチ……さっきの聞こえてたのかよ……」
「やっぱり言ってたんだ……あ!もうこんな時間!やばい!私コンビニ行ってくるって家出たんだった!帰らなきゃ!」
「…………」
「……ずっとそばにいてあげたいんだけど……ごめんね。」
怪我や病気したときは……心細いよね……と、思いながら私は言う。
「そんなんじゃねぇよ!早く帰れ!」
「ふふ。」
彪斗くんらしいや。
あ!
私は血まみれになってしまったが着ていた少し薄手の上着を脱ぎ、折りたたむ。
「彪斗くん、これ、枕に使って!上にかけた方がいいならそうして!」
「……いらねぇよ……」
「いいから!おばさんのいうことは聞きなさい!!」
「……お前、俺より年下だろうが。おばさんじゃねぇだろ」
「いいの!ほら!頭の下に敷いたらきっと楽だから!敷いてみな?」
私は無理矢理、彪斗くんの頭を少し上げ、その下に滑り込ませる。
「あ!てめ!…………」
「……どう?」
「……悪くない……」
「ほらー」
「早く帰れ!……って!」
ムキになった彪斗くんが起き上がり、傷口が痛んだらしく、うめいてベンチにまた仰向けになった。
「あああ!帰る!帰るね!!!それじゃあ、お大事にね!!!隠密活動もほどほどにね!!!」
私はガサガサと荷物をまとめ、離れながら言う。
そして、言おうか言うまいか悩む言葉を思い切って口にする。
「またね!」
その後、血まみれで財布の中は空、上着なしで帰宅した私を、美女母と帰宅していたイケオジ父、溺愛イケメン兄が何事かと大慌ててで出迎えたのは言うまでもない。
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