名もなき民の戦国時代

のらしろ

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第七章 公家の政

第二百五十八話 戦後の論功行賞

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 とにかく雪で動けなかったとはいえ、俺は一乗谷で頑張った。
 特に、逃げてくる難民の保護や、俺たちが抑えている西側の政の一新を図り、この春からも無事に作付けなどを行えるまでにはなっている。

 問題は東側だが、こちらは若狭が落ち着いたら兵をこっちに回してもらい、一挙に片づけよう。
 戦にはならないとは思うが、治安の維持と住民の保護だな。

 そんな感じで仕事をしていると、忍びさんたちが手紙を持ってくる。
 半兵衛さんからは金ケ崎の城に手を加えて、そこに若狭及び越前を領するための兵を入れたいとある。

 別に構わないので、俺はすぐに返事を書いた。
 福井で頑張っているはずの張さんから文をもらった。
 福井より少し先にある三国というところにできたばかりの三国神社でお世話になっているらしく、その地の港の整備をしたいと言ってきた。
 春になり雪が解けたら、公共事業として大々的にやりたいらしく、準備にかかりたいからと、俺の許可を求めてきている。

 この時代の海運といえば、日本海ルートが主流で、能登を出ると若狭湾までほとんど直通なので、あまり利用価値があるとは思えなくもないが、ここに拠点を構えるのならそれなりの価値は出る。
 それに何より公共事業としては住民救済の効果は絶大なので、それにも許可を出したが、果たして俺がそんな判断を出しても良いのだろうか。

 まだこの地を収める人は決まっていないのだが。
 そんなこんなで、無事に俺たちは冬を超え、雪解けを待って行動を開始した。
 まず半兵衛さんが孫一さんを連れてやってきたので、懸案だった東側の領地化をお願いしておく。

 で、俺はというとこの大戦の後始末のために一度安土に向かう。
 また、安土城で戦国チートを招いての打ち合わせだ。
 占領地の処理を話し合う。
 俺が仕掛けたことになるので、協力してくれた大名たちといっても九鬼さんを除くと弾正と信長さんの二人だ。

 彼らにどう報いればいいのか。
 というよりも、だれが若狭と越前を引き受けてくれるのかという問題がある。
 顔を合わせて開口一番に糞親父が言い放つ。

「中将殿。
 ひとまずはおめでとうと申し上げます。 
 若狭及び越前は中将殿の領地ということで私には異論がございません。
 弾正忠殿はいかがか」

「私は端からそのつもりでした。
 もし、差配する人が足りぬとあれば貸し出すこともやぶさかではないと言えればよかったのですが、あいにくうちも領地が増えたこともあり手が回りませぬ。
 余裕があればうちの丹羽でも応援に出せればよかったのですが、そのことだけは申し訳なく思っております」

「うちも状況は変わりませんな。
 せめて中将殿につけている本多をそのままお使いください。
 ですが引き抜きだけは勘弁してくださいな」

「え、俺……ではなく私にということですか。 
 ではお二方は、此度の応援につき何を望むと言われるのですか」

「領地や銭ではなく、できれば大砲を貸し出してくれるだけでも良いのでそのようにお願いできますか」

「お~お~、それは良きお考えで。
 では、今預かっている大砲の部隊をそのまましばらくということで」

 安土での話し合いは戦後の論功行賞の意味もあり、時間がかかると思われたのだが、絶対に俺のいないところで話が付いているらしく、九鬼さんが参加していなかったが、九鬼さんとしても了承しているらしい。

 どうも、俺と九鬼さんとの関係の認識がおかしい。
 今に始まった話ではないのだが、彼らの認識では伊勢の大大名の九鬼さんで間違いはないが、俺はその九鬼さんの上司になるらしい。
 確かに、一時はそんな感じではあったけど、九鬼さんが大名になった時に関係を修正したはずなのだが、修正が不完全だったのか、糞親父松永久秀や信長さんもそのように見ている節がある。

 そうでなければ、今回の話し合いであんなことにはならない。
 そもそも大砲についても、確かに開発製造から運用まで賢島で俺が面倒を見てはいたけど、一応あそこも九鬼さん傘下の領地で、豊田さんが親玉だったはずだ。

 もっとも賢島は商業が盛んで、実際の運用などは商館を中心に行っているようで、豊田さんよりもうちの幸の方が扱いは上らしい。
 正直言って、これはまずいのではと俺は思うのだが、幸の上司にあたる張さんも一切気にしていないので、そのままだ。

 まあ、あそこ賢島は商人以外では大名などの訪問はほとんどなく、たまに信長さんたちが堺に来るときに寄るくらいだったので、問題になっていないが、この時代の感覚からは大きく外れている。

 それよりも、今回の戦の応援に対する褒美にその賢島自慢の大砲部隊が当てられていることの方がさらに問題をややこしくしていた。
 そもそも今回の越前攻めは戦国大名の領地紛争の延長ではなく、朝廷の権威に対する懲罰的な遠征になっている。

 俺がそのようにしていたのだが、なのでいったん朝廷が領地を預かるのは良いとして、実際の政を俺にさせるのはどうかと考えてしまう。
 まあ、北畠のように公家が戦国大名化した例も無きにしも非ずなので、それほどのインパクトを周りに与えないらしいが、俺の方が驚いているよ。

 結局正式に俺が若狭に越前、それに京と若狭を結ぶ地の朽木谷を含む近江西側を領することになった。草津は信長さんがそのまま預かってくれるので助かるが。問題の多い坂本は俺の方に来た。
 当分は坂本を含む叡山関係には手を付けられないが、ここが落ち着いたら、絶対に叡山も対処する羽目になる。

 しかし、実際に俺の領地化が決まった両国だが、若狭に至っては見てもいない状況だ。
 すぐに若狭を訪問してどうにかしないといけないのだろうが、まずは越前の東、俺たちがまだ領していない地の平定が先だ。

 ほとんど俺たちに歯向かうようなというよりも歯向かえる勢力は存在しないが、暴徒と化した流民たちの処理が残る。

 まず、俺たちに従う意思のあるおとなしい流民たちにはいったん西側に移動させてそこで新たに領民とするが、一向宗にたぶらかされた連中や、一向宗の僧侶などたちは、俺たちに従わない限りそのまま根切の措置を取った。

 俺たちに従う一向宗については伊勢の三蔵村の上人さんに扱いを任せるが、どうも最近は一向宗の中に伊勢一派とか三蔵寺派などと言われるようになり、本願寺の一派から独立した感じになってきている。
 そういえば、加賀の一向宗も本願寺からの指示に従わなくなりつつあり、最近は別派の扱いを受けてもいるようだ。

 問題の多い一向宗が分裂して弱体化する分には歓迎するが、加賀の一向宗については歓迎できるようなもんではない。
 その加賀の一派もかなりこちらに入り込んでいるので、とにかく領内を安定化させるために、このあたりは三蔵寺派にしてしまう。
 そのために、三蔵寺から玄奘さんを招いてもいる。

 今は友人の本多さんと仲良く一向宗を取り込んだり、追い出したりなどしながら越前領内の治安を取り戻している。
 玄奘さんが、こちらに来るときに三蔵村で学んでいる孤児たちも多数連れてきてもらった。
 こっちの孤児たちの教育の関係もあり、彼らにも協力してもらう。
 労基署が乗り込んできそうな状況だが、幸いなことにこの時代には労基署は存在しないので、遠慮なく児童労働に駆り出す。

 もっとも、児童労働といっても彼らには年少者の保育や読み書きそろばんなどの教育を三蔵寺一派の寺の僧侶と一緒にしてもらうだけだ。

 それに、政を任せている公家たちにも数人子供たちを付けて手伝わせている。
 何せ公家たちは過去のしきたりなどにはやたらに詳しいが、計算などははっきり言って使い物にならないものが多くて、実務には彼らだけでは正直回らない。

 その分、俺が三蔵村で預かっていた孤児たちは、当初より張さんたちが教育してくれた関係で下手な商人よりも数字に強くなっているものが多い。
 あれは将来自分が使いたいために張さんが頑張った成果なのだろうが、そこを俺が横取りしている格好だ。
 その分、越前でも孤児たちを中心に子供たちを育てるから許してほしい。

 結局、安土の会議から一乗谷へ戻った後も、ここから動けず越前の内政に振り回される生活を秋近くまで続けた。
 その間何度も京に戻り、公家としての仕事もしていたのだが、俺って公家だったのかと今更のように思った。

 しかし、こういう時に本当に頼りになるのは家族というか、実家のしっかりとしたかみさんたちだ。
 京での仕事のうちで、特に朝廷関係や公家対応などのほとんどの段取りを結さんが仕切ってくれていたので、問題なく宮中行事もこなせた。

 ここ何年もの間で宮中行事も多くが廃れていたので、公家としての仕事ではそれほど忙しかった訳ではないが、それでも俺たちが京に入り治安を回復していたこともあり、いくつかのものは復活してしまっていたのだ。
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