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第17話 僕と彼女のデートの終わり
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僕が目を覚ましたとき、視界に飛び込んだのは黒柳の心配そうな顔だった。
「目が覚めた? びっくりしたわよ。英里ちゃんが電車に乗るのを確認して戻ってみると、道路に倒れるんだもの。大丈夫?」
どうやら、彼女は今日一日、僕達をつけて来て、様子を見ていたのだろう。武田が電車に乗るのを見ていたというのなら、アレは誰だったのだろうか? すごく懐かしい感じがした。いや、それよりも僕達をつけていたと言うことは、お昼に聞こえた声は彼女の声だったのだろう。これも恋の魔女の仕事だろうか。彼女の膝から頭をおこしながら、そんな事を考えていた。
「ありがとう。もう大丈夫だよ。今日、慣れないことばかりで身体がびっくりしたのかな」
「慣れない事って? 初めて女の子に告白された事?」
「やっぱり見てたのか?」
「まあね。これも魔女の役目だから。ごめんね」
黒を基調にしたシックな装いの彼女は、全く悪びれる様子もなく謝った。彼女が着るとおしゃれだが、見方によっては魔女に見えなくもない。
今回の遊びに行くと分かった時点で、どこかから黒柳が見ている気がしていたから、特に気にしていなかった。
それよりも問題は武田の告白だった。
正直なところ、困っていた。
彼女が勇気を振り絞って告白してくれたのは分かっただけに、彼女を傷つけるような答えを返したくない。しかし、まだ恋愛感情という物が分からない僕が、そんな自分が彼女の思いに応えること自体、不誠実ではないだろうか。
そんな葛藤を抱いている僕に黒柳が話しかけてきた。
「それで、どうするの?」
「君は僕が告白を受ければ、それで試験は合格で終わりだろうけど、僕達はそれで終わりって訳じゃないんだ」
「あら、英里ちゃんのこと嫌い? 英里ちゃんみたいな子が好みだって言ってなかったっけ?」
「武田さんはすごくいい人だよ。なんで僕の事が好きだと言ってくれるのか分からないけど。問題は彼女じゃなくて、僕の方だよ」
「そう、だったら明日一日心の整理をする時間があるじゃない」
「まさか、彼女の告白も君の策略か?」
「策略ってひどいわね。ほんの少し勇気の背中を押しただけよ。明日、英里ちゃんが学校に来ないことを考慮して、出かける日を今日にした方が良いってアドバイスはしたけれどね」
「じゃあ、君は彼女がボクの事を好きだと言うことを知っていたのか?」
「……」
彼女は僕の問いには答えずに、無言で微笑んだ。
まあ、それが恋の魔女としての役割なのだろう。人の恋の悩みを聞き、その恋路が上手くいくようにアドバイスをする。まあ、恋愛専門の占い師と同じような物かも知れない。
「そう言えば、お昼ご飯の時助けてくれたのは、君か? ありがとう。助かったよ」
「どういたしまして。男の面子(めんつ)は立ちましたか?」
「ああ、彼女に気を遣わせなくてすんで、助かったよ」
「そう良かった。もう、身体も大丈夫そうね。それじゃあ、また明日ね」
それだけ言うと、黒柳は夕方の街に消えていった。
その背中を見送って、僕が倒れる前に助けてくれた人を知らないかどうか、聞くのを忘れていたことに気が付いた。
「まあ、明日も学校で会うし、いいか」
僕が生まれて初めてのデートと告白を受けた日は、こうして終わった。
「目が覚めた? びっくりしたわよ。英里ちゃんが電車に乗るのを確認して戻ってみると、道路に倒れるんだもの。大丈夫?」
どうやら、彼女は今日一日、僕達をつけて来て、様子を見ていたのだろう。武田が電車に乗るのを見ていたというのなら、アレは誰だったのだろうか? すごく懐かしい感じがした。いや、それよりも僕達をつけていたと言うことは、お昼に聞こえた声は彼女の声だったのだろう。これも恋の魔女の仕事だろうか。彼女の膝から頭をおこしながら、そんな事を考えていた。
「ありがとう。もう大丈夫だよ。今日、慣れないことばかりで身体がびっくりしたのかな」
「慣れない事って? 初めて女の子に告白された事?」
「やっぱり見てたのか?」
「まあね。これも魔女の役目だから。ごめんね」
黒を基調にしたシックな装いの彼女は、全く悪びれる様子もなく謝った。彼女が着るとおしゃれだが、見方によっては魔女に見えなくもない。
今回の遊びに行くと分かった時点で、どこかから黒柳が見ている気がしていたから、特に気にしていなかった。
それよりも問題は武田の告白だった。
正直なところ、困っていた。
彼女が勇気を振り絞って告白してくれたのは分かっただけに、彼女を傷つけるような答えを返したくない。しかし、まだ恋愛感情という物が分からない僕が、そんな自分が彼女の思いに応えること自体、不誠実ではないだろうか。
そんな葛藤を抱いている僕に黒柳が話しかけてきた。
「それで、どうするの?」
「君は僕が告白を受ければ、それで試験は合格で終わりだろうけど、僕達はそれで終わりって訳じゃないんだ」
「あら、英里ちゃんのこと嫌い? 英里ちゃんみたいな子が好みだって言ってなかったっけ?」
「武田さんはすごくいい人だよ。なんで僕の事が好きだと言ってくれるのか分からないけど。問題は彼女じゃなくて、僕の方だよ」
「そう、だったら明日一日心の整理をする時間があるじゃない」
「まさか、彼女の告白も君の策略か?」
「策略ってひどいわね。ほんの少し勇気の背中を押しただけよ。明日、英里ちゃんが学校に来ないことを考慮して、出かける日を今日にした方が良いってアドバイスはしたけれどね」
「じゃあ、君は彼女がボクの事を好きだと言うことを知っていたのか?」
「……」
彼女は僕の問いには答えずに、無言で微笑んだ。
まあ、それが恋の魔女としての役割なのだろう。人の恋の悩みを聞き、その恋路が上手くいくようにアドバイスをする。まあ、恋愛専門の占い師と同じような物かも知れない。
「そう言えば、お昼ご飯の時助けてくれたのは、君か? ありがとう。助かったよ」
「どういたしまして。男の面子(めんつ)は立ちましたか?」
「ああ、彼女に気を遣わせなくてすんで、助かったよ」
「そう良かった。もう、身体も大丈夫そうね。それじゃあ、また明日ね」
それだけ言うと、黒柳は夕方の街に消えていった。
その背中を見送って、僕が倒れる前に助けてくれた人を知らないかどうか、聞くのを忘れていたことに気が付いた。
「まあ、明日も学校で会うし、いいか」
僕が生まれて初めてのデートと告白を受けた日は、こうして終わった。
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