異世界に召喚された失格勇者はコンバットスーツで無双します ~いきなり俺を殺そうとした国王! てめえは許さねぇ!!~

三原みぱぱ

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第38話 異世界の火の勇者は経験済みだった

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 ナビちゃん、ナイスタイミング!
 俺は先手必勝とばかりに、レーザーブレードを抜くと炎夏の左肩から右腰にかけて切りつけた。
 しかし、全く手応えがなかった。まるで、ホログラフに切りつけたかのように、レーザーブレードがすり抜けた。

「え!」

 分身の術? 残像?
 俺が混乱した瞬間に、炎夏の槍は俺のコンバットスーツの胸の部分に刺さった。
 油断をしたとは言え、さすが火の勇者の武具だった。しかし、その刃は俺の身体を傷つけることなく、直前で止まった。
 ギリギリ、コンバットスーツの防御力が勝った。

「甘い!」

 俺が勝ったと油断しているであろう炎夏に切りつけようとした。その瞬間、炎夏はにやりと笑って叫んだ。

爆炎牙突槍ばくえんがとつそう!!!」

 コンバットスーツの内側に差し込められた穂先から、突然、炎が吹き出した。

「げ!」

 コンバットスーツの外ならば十分防げることが出来る炎。しかし、内側に入られては防ぐすべがない!
 俺がそう気が付いた瞬間、反射的に炎夏を蹴った。
 今度は手応えがあり、槍ごと炎夏は俺から離れた。

「あっち!」

 コンバットスーツ内に緊急消火と冷却が行われる。
 スキル名から炎を扱うのは分かっていた。そして同じ神器同士ならコンバットスーツを貫くことが出来るのも不思議ではなかった。それよりも、こちらの攻撃が通じなかった事が問題だ。
 炎夏が攻撃をしたときには俺の蹴りが当たった。普段は攻撃は効かないが、炎夏は攻撃をしている間は実体化して攻撃が当たるとかだろう。
 ならば、俺が取る手はひとつ。
 カウンターだ。
 俺は膝をついた。

「お! やっと毒が回ってきた? さっきは上手く避けられたけど、今度はどうかな?」

 炎夏は俺の姿を見て、槍を構えた。

「爆炎牙突槍。三の型、捻り龍!」

 長い炎が槍にまとわりつく。それはまるで炎の龍だった。
 
「ナビちゃん、胸に最大強度のバリア」
『了解!』

 俺はバリアを胸にまとわせて、立ち上がった。
 炎をまとった槍は回転しながら俺の胸に激突する。
 衝撃と爆音が響く。

「かかったな!」

 それと同時に俺はレーザーブレードで炎夏の肩からまっすぐ真下に切りつける。
 しかし、またもや手応えがなかった。

「かかったのはキミの方だ! 二の型、牙突斬!」

 炎夏の追撃にバリアは破壊されて、コンバットスーツを貫く。
 熱い。
 その攻撃は熱だけではない。
 槍の穂先が俺の胸を突く。

「一の型、爆炎牙突槍!」

 初めの穂先からの炎が出る奴だ!
 俺は思い切って前に出る。
 槍は俺の身体を貫き、穂先は俺の背中に出た。そして炎はコンバットスーツの外で舞い上がる。

「ちっ!」

 炎夏は舌打ちをして槍を抜こうとする。
 俺は引き抜かれないように右手で槍を押さえ、左のてのひらを背中の炎に向けて吸い込む。
 槍を媒体にして、俺と炎夏は綱引き状態になる。

「ナビちゃん、炎は消えたか?」
『吸収終了』

 俺は一度、グッと引っ張ると、炎夏がそれに抵抗するように引っ張り返した。その瞬間、俺は一気に押し出すと、炎夏はたたらを踏んだ。
 本来ならば、ここで攻撃に転じるのだろうが、思いのほか傷が深い。
 ナビちゃんがフル活動で傷を修復してくれているため、無駄な動きが出来ない。
 炎夏に攻撃が当たらないからくりを暴かなければ、傷口が広がるばかりで、手の打ちようがなかった。
 なにか、からくりがあるはずだ。
 炎夏はこの世界をゲームだと思っている。それが事実であるかどうかは、ここでは重要ではない。
 恐らく炎夏が使っているこのからくりが、ゲームに関係しているであろうことが推測出来る。
 無敵モード。
 攻撃が当たらないモード。
 しかし、それなら俺の蹴りも当たらないはずだ。何かがおかしい。
 全く当たらない訳ではない。
 当たる、当たらないの判定。あたり判定をいじっているのか?
 完全に当たり判定がなくなったわけではない。小さくなっているだけ何だろう。
 ならば、やり方はある。

「ナビちゃん、後どれくらいで応急処置が終わる?」
『動けるようになるまで、約五分』

 また、時間稼ぎが必要か?

「なあ、炎夏。お前の最大の技はその槍じゃないな。リライトコードだっけ? これが使えるようになったから俺の前に現れたな」
「……そうだよ。当たり前じゃないか。勝算がないのにわざわざ来るわけないじゃないか」
「その、リライトコードっていうのは自分のあたり判定をいじる能力だろう。だから俺の攻撃が当たったり、当たらなかったりした。それと見た目の変化か。どちらにしろ、それはお前自身にしか効力を発しないんだろう。出来るんだったらとっくに俺の鎧を剥ぎ取ったりしているもんな」
「……そうだよ。今はまだ自分自身のコードしか解明できてないけどね。でも時間さえあれば、このゲームの世界自体書き換えられるようになるさ」
「いや、ならないよ。この世界はゲームじゃない。だからお前がどれだけレベルが上がろうと、お前の能力はお前にしか効力を発しないのさ」
「そんなことない! 僕のレベルが足りないだけだ!」

 炎夏の慌てようから、どうやら俺の推測は的を得ていたようだ。

「まあ、そう思うなら思えば良い。ところで、その無敵のチートプレーヤー様はなんで、あんな王の下にいるんだ? お前で言うところのプレーヤーをいきなり殺そうとしたんだぞ。NPCとしては最低の部類だろう。アレが仕様なら、この世界はクソゲーだぜ」
「ああ、あれは、ただのチュートリアルだろう。結局、スキルを使ったじゃないか。土と水の勇者が先走ったから、キミが逃げちゃっただけで。あのまま、あそこにいたら闇の勇者も認められてゲームがスタートしたはずだ」

 炎夏はあの時、そんなことを考えていたから、特に手を出すでもなく、様子を見ていたのか。ある意味、あの中で一番冷静で客観的に見ていたのかもしれないな。
 しかし、俺にはノアール達がゲームのキャラとは思えない。そして、今現在進行中の傷の痛みがバーチャルだとしたら、どれだけ精巧なゲームなんだ?

「さて、さすがに毒と失血で身体が動かなくなってきているだろう。もう一度聞くけど、その鎧を僕に渡さない? 渡してくれたら命は取らないよ」
「そんなに、この鎧が欲しいか?」
「あっちこっち探したけど、そんな鎧は見つからなかったんだよ。コレクターとしては、欲しいに決まってるじゃないか」
「ちなみにお前は童貞か?」
「は!?」

 炎夏は予想外の俺の質問にびっくりしていた。そして、少し考えて眉をひそめた。

「何か時間稼ぎしている?」
「いいや、真面目な質問だ。お前がこの鎧を手に入れたとしても、童貞じゃないと着ることが出来ないぞ」

 炎夏は俺の言葉の真偽を探るように俺を見るが、全身をコンバットスーツに包んでいる俺の表情は炎夏から読み取れない。そして真偽を探ることを諦めたのだった。

「もしかして、僕を馬鹿にしている? 僕はもう中三だぞ、童貞なわけないじゃないか!!」

 炎夏は怒りをあらわにしていた。しかし、炎夏の言葉を聞いて俺に激しい怒りがこみ上げてきた。
 今時の中学生はみんな経験済みか? ふざけるな!

「炎夏! 死んでも文句を言うな!」
「ど、どういうこと?」

 俺の怒りの声に、炎夏はひるんだ。
 その隙に。俺は両腕を炎夏に向けた。

『マモル! あと三十秒待って!』
「ナビちゃん、待てない! マモルバスターギガマックス!!!!!!!」

 童貞の怒りをこめたマモルバスターが炎夏を飲み込む。
 炎夏が当たり判定を操作していたとしても確実に当たる。それは炎夏もすぐに理解した。
 炎夏はマモルバスターギガマックスを受け止めるように両手を前に出して叫ぶ。

「リライトコード! 絶対防御!」
「炎夏! てめえの絶対防御はノラリスのより硬いのか? 食らえ! マモルバスター!! 二重の極み!」

 俺は耐魔法能力の高い鎧をいつも身につけ、なおかつ予備を一式、予備の予備を一式を持っていたノラリスを倒したマモルバスター、二重の極みを放った。
 炎夏は轟音と光に包まれる。そしてマモルバスターが収まった後、そこに炎夏が立っていた。

「耐えたか……」

 俺は驚きの声を上げると、炎夏は地面に膝を突いた。

『マモルの処置のため、通常の七十%の出力でした』

 ナビちゃんが状況を説明してくれた。

「ナビちゃん、クールダウンは必要か?」
『ギリギリ、不要ですが、しばらくは出力の高い攻撃は避けてください』

 俺はレーザーブレードを抜いて、動きを止めた炎夏に近づく。

「悪いが、ここで決めさせて貰う」

 振り下ろしたレーザーブレードは、地面に刺さった。
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