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第13話
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どんな風に告白するかは散々シミュレーションしてきたのに結局なんの捻りもない言葉しか出てこなかった。言ってしまったからにはもう、いい返事をしてくれることを祈るしかない。
「ありがとう」
勅使河原さんは笑顔でお礼を言ってくれて、これはどっちなんだろうと緊張しながら続く言葉を待つ。少しの期待も抱いていたけど、勅使河原さんの表情は徐々に曇っていった。
「とっても嬉しいんだけど……ちょっと、考えさせてくれないかな」
最終的には明らかに困った顔でそう告げられたから、多分もうダメだと悟って、また涙腺が緩みそうになってしまった。
「いや、なんか、その、いきなりすみませんでした。返事はいつでもいいです」
俺はなんとかそんな言葉を絞り出した後、何度も頭を下げて逃げるように広場を後にした。一刻も早く気持ちを整理したくて時生に連絡したら幸いすぐに繋がった。
「お疲れー。どしたの?」
「えっと……勅使河原さんに告白したら、考えさせてほしいって言われた」
「えっ!?」
泣くのを我慢しながら現状を話すと、時生はこっちが驚くくらいの声量で驚いていた。
「これって遠回しにフラれてる?」
「うーん……それはとりあえずそのまま受け取っときなよ」
「わかった」
さっきの勅使河原さんの表情を思い出すと胸が痛いけど、付き合ってもらえる可能性もゼロではないと自分に言い聞かせることにした。
「今日もバイト?」
「うん」
「行けるの?」
「行くつもりだけど」
「じゃあ終わったらとりあえず飲も」
「ありがとう」
時生と少し話しただけでもさっきよりはかなり気持ちが落ち着いた。もしも連絡が付かなかったら道端で意味のない大声を出してしまっていたかもしれない。
家に着いたら気が緩んで、堰を切ったようにボロボロ泣いてしまった。やっぱり告白なんてしない方が幸せでいられたんじゃないかと悔やんでも手遅れだし、大人しく返事を待つことしかできない。
時生からはそのまま受け取れと言われたけど、勅使河原さんはイエスかノーかじゃなくて俺を傷付けない断り方を考えてくれているだけのような気がする。
もう何もする気が起きなくてベッドに寝転んでいたらいつの間にか寝てしまっていて、スマホの着信音で目が覚めた。誰かと思えば店長からで、時刻は出勤時間をとっくに過ぎていたから血の気が引いた。
「すみません、今起きました」
慌てて電話を取って正直に話したら店長は吹き出していた。間違いなく今までで一番笑われた瞬間だった。
「そっか。来れそう?」
「ダッシュで行きます」
「走んなくていいから気を付けて来てね」
こんな時でも店長は優しくて余計に申し訳なくなる。走らなくていいとは言われたけど、高校の体育の授業以来の全力疾走で店に向かった。
「遅くなってすみません!」
「いいよいいよ。生きてりゃ寝坊する日くらいあるって」
「本当に申し訳ないです。以後気を付けます」
到着早々謝罪したら店長からフォローされて更に申し訳なさが増した。土下座するのは逆に気を遣われそうだから可能な限り頭を下げた。
「事件や事故に巻き込まれたわけじゃなくてよかったよ」
「ご心配お掛けしてすみません」
勅使河原さんも笑顔で話し掛けてくれてほっとした。俺も普段と変わらず接したいという気持ちはあるけど、ちゃんとできているかはわからない。
「仕事始める前にちょっと、プライベートなこと話していい?」
「え、あ、はい」
店長に問い掛けられて、どう考えても俺が告白した件しかないと思いつつ頷いた。きっと困った勅使河原さんが店長に相談したんだろう。
「そこ座ってくれていいよ」
店長に促されて四人掛けのボックス席に座ると、店長と勅使河原さんも向かい側に座った。走って来たせいで軽く汗をかいたけど、今度は冷や汗が出そうだ。
「テシから事情は聞いたんだけど、このままじゃ気まずいだろうし一回ちゃんと話しといた方がいんじゃないかなと思って」
「申し訳ないです」
「謝ることないよ」
また頭を下げたら勅使河原さんは優しく声を掛けてくれて、俺が顔を上げると真っ直ぐ目を見ながらこう言った。
「健太郎くんが好きって言ってくれたの、ホントに嬉しかったし、俺も付き合いたいって思うくらい好きだよ」
「えっ」
「だけど、夏彦さんのことも好きで……だから、ごめんね」
付き合いたいという言葉に喜んだのも束の間、とんでもない理由でフラれてしまったことに呆然として涙も出なかった。勅使河原さんに好きと言われても店長は平然としていたから胸騒ぎがした。
「あの、もしかして、二人って、付き合ってます?」
恐る恐る質問してみると、勅使河原さんと店長はちらりと顔を見合わせた。短い沈黙の後、口を開いたのは店長だった。
「昨日付き合い始めたけど、ついさっき別れた」
そんな説明をされても理解が追い付かなくて何も言えなかった。
「まあ、要するに志村くんの告白でテシの気持ちが揺らいだって話だよ」
店長のその一言でぼんやりと全体像は見えてきたけど、二人がそんなに親密になっていたなんて衝撃的で、気が遠くなりそうだ。
「一旦整理させてもらいたいんですけど」
「うん」
「店長のことも俺のことも好きだから選べなくて、どっちとも付き合わないことにした、ってことで合ってますか」
「そうだね」
優柔不断さと誠実さが合わさってこうなったのかと考えると勅使河原さんらしい選択のような気がする。ただ、好きなのに付き合えないと言われるのは腑に落ちなかった。
これから店長よりも好きになってもらえるように頑張って恋人になれたら一番いいけど、今は奇跡的にイーブンだったとしても店長に勝てるとは到底思えない。
もう一回フラれる未来しか想像できなくて、それならかっこ悪くても食い下がった方がいいんじゃないかという結論に至った。
「俺のこと好きなんだったら、店長のことも好きなままでいいから付き合ってくれませんか」
「え?」
「やっぱ志村くんすげぇな」
自分でも頭がおかしい提案だと思っていたけど、勅使河原さんには困惑されて、店長からは感心された。
「志村くんと付き合うなら俺とも復縁してよ」
当然ながら、俺とだけ付き合うなんて都合のいいことを店長は許してくれないらしい。心なしか面白がった様子で勅使河原さんの肩を抱いているところを見て腸が煮え繰り返る思いがした。
「それって、3Pするって意味じゃないですよね?」
たじろいでいた勅使河原さんの口から思い掛けない単語が出てきて俺は思わず耳を疑った。この流れで急にゲームの話はしないだろうから、いかがわしい意味に決まっている。
「念のため聞くけど、志村くんは3Pってどう思う?」
「ありえないですね」
「俺もそう思う」
「ですよね。ちょっぴりドキドキしちゃいました」
俺と店長がきっぱり否定したら勅使河原さんは恥ずかしそうに俯いていて可愛かったけど、もしかしてしたかったのかなと疑いたくなってしまった。
「で、どうするつもり?」
「どうもこうも、二人とお付き合いするなんて絶対おかしいじゃないですか」
店長から尋ねられた勅使河原さんはすぐにそう答えた。常識的に考えたら断るのが普通だ。
「こそこそ二股すんのはどうかと思うけどさ、志村くんも俺も納得してるんだから問題なくない? 男同士なら万が一ってこともないし」
店長の言う「万が一ってこと」がなんのことか最初はピンとこなくて、意味がわかった時は結構生々しいことをさらっと言っていたのかと驚いた。
さっきの勅使河原さんもそうだったけど『付き合う=肉体関係』みたいなところはあるのかもしれない。
勅使河原さんはしばらく黙って考え込んでいた。どれくらいの時間が流れたかはわからないけど、俺には途方もなく長く感じられた。
「健太郎くんは本当に納得してる?」
「もちろんです」
ようやく発せられた言葉に頷くと、勅使河原さんはまた少し悩んでから、ついに答えを出した。
「じゃあ……不束者ですがよろしくお願いします」
こうして俺達は想像しようもなかった形で交際をスタートさせることになった。一応、勅使河原さんの彼氏になれただなんて全く実感が湧かない。
「俺はテシが志村くんを選んだとしても二人に対して不当な扱いはしないからそこは安心してくれていいよ」
「わかりました」
店長ならきっと仕事に私情は挟まないだろうから、その点に関しては全く心配していない。俺が嫉妬でどうにかならないかの方が問題だと思う。
「それじゃ、仕事は仕事ってことで、今日もよろしくね」
店長からそう言われて「はい」と返事はしたけど、雑念だらけで全く集中できなかった。気になることがあまりにも多過ぎる。
一日だけとはいえ勅使河原さんと店長が付き合っていたというのは本当にショックだった。勅使河原さんが店長を好きな可能性は考えていたけど、店長の態度からして逆はないと思い込んでいた。
雰囲気的にやっぱり一線は越えているんだろうかと思って、なんとなく裏切られたような気分になる。かといって、勅使河原さんのことも店長のことも嫌いにはなれない。
嫌なことにばかり意識が向いてしまうけど、勅使河原さんも俺のことを好きでいてくれているという事実は喜ばしいことだ。
これからは「好き」とか「可愛い」とか、その時思ったことを遠慮せずに伝えていきたいと思った。
「ありがとう」
勅使河原さんは笑顔でお礼を言ってくれて、これはどっちなんだろうと緊張しながら続く言葉を待つ。少しの期待も抱いていたけど、勅使河原さんの表情は徐々に曇っていった。
「とっても嬉しいんだけど……ちょっと、考えさせてくれないかな」
最終的には明らかに困った顔でそう告げられたから、多分もうダメだと悟って、また涙腺が緩みそうになってしまった。
「いや、なんか、その、いきなりすみませんでした。返事はいつでもいいです」
俺はなんとかそんな言葉を絞り出した後、何度も頭を下げて逃げるように広場を後にした。一刻も早く気持ちを整理したくて時生に連絡したら幸いすぐに繋がった。
「お疲れー。どしたの?」
「えっと……勅使河原さんに告白したら、考えさせてほしいって言われた」
「えっ!?」
泣くのを我慢しながら現状を話すと、時生はこっちが驚くくらいの声量で驚いていた。
「これって遠回しにフラれてる?」
「うーん……それはとりあえずそのまま受け取っときなよ」
「わかった」
さっきの勅使河原さんの表情を思い出すと胸が痛いけど、付き合ってもらえる可能性もゼロではないと自分に言い聞かせることにした。
「今日もバイト?」
「うん」
「行けるの?」
「行くつもりだけど」
「じゃあ終わったらとりあえず飲も」
「ありがとう」
時生と少し話しただけでもさっきよりはかなり気持ちが落ち着いた。もしも連絡が付かなかったら道端で意味のない大声を出してしまっていたかもしれない。
家に着いたら気が緩んで、堰を切ったようにボロボロ泣いてしまった。やっぱり告白なんてしない方が幸せでいられたんじゃないかと悔やんでも手遅れだし、大人しく返事を待つことしかできない。
時生からはそのまま受け取れと言われたけど、勅使河原さんはイエスかノーかじゃなくて俺を傷付けない断り方を考えてくれているだけのような気がする。
もう何もする気が起きなくてベッドに寝転んでいたらいつの間にか寝てしまっていて、スマホの着信音で目が覚めた。誰かと思えば店長からで、時刻は出勤時間をとっくに過ぎていたから血の気が引いた。
「すみません、今起きました」
慌てて電話を取って正直に話したら店長は吹き出していた。間違いなく今までで一番笑われた瞬間だった。
「そっか。来れそう?」
「ダッシュで行きます」
「走んなくていいから気を付けて来てね」
こんな時でも店長は優しくて余計に申し訳なくなる。走らなくていいとは言われたけど、高校の体育の授業以来の全力疾走で店に向かった。
「遅くなってすみません!」
「いいよいいよ。生きてりゃ寝坊する日くらいあるって」
「本当に申し訳ないです。以後気を付けます」
到着早々謝罪したら店長からフォローされて更に申し訳なさが増した。土下座するのは逆に気を遣われそうだから可能な限り頭を下げた。
「事件や事故に巻き込まれたわけじゃなくてよかったよ」
「ご心配お掛けしてすみません」
勅使河原さんも笑顔で話し掛けてくれてほっとした。俺も普段と変わらず接したいという気持ちはあるけど、ちゃんとできているかはわからない。
「仕事始める前にちょっと、プライベートなこと話していい?」
「え、あ、はい」
店長に問い掛けられて、どう考えても俺が告白した件しかないと思いつつ頷いた。きっと困った勅使河原さんが店長に相談したんだろう。
「そこ座ってくれていいよ」
店長に促されて四人掛けのボックス席に座ると、店長と勅使河原さんも向かい側に座った。走って来たせいで軽く汗をかいたけど、今度は冷や汗が出そうだ。
「テシから事情は聞いたんだけど、このままじゃ気まずいだろうし一回ちゃんと話しといた方がいんじゃないかなと思って」
「申し訳ないです」
「謝ることないよ」
また頭を下げたら勅使河原さんは優しく声を掛けてくれて、俺が顔を上げると真っ直ぐ目を見ながらこう言った。
「健太郎くんが好きって言ってくれたの、ホントに嬉しかったし、俺も付き合いたいって思うくらい好きだよ」
「えっ」
「だけど、夏彦さんのことも好きで……だから、ごめんね」
付き合いたいという言葉に喜んだのも束の間、とんでもない理由でフラれてしまったことに呆然として涙も出なかった。勅使河原さんに好きと言われても店長は平然としていたから胸騒ぎがした。
「あの、もしかして、二人って、付き合ってます?」
恐る恐る質問してみると、勅使河原さんと店長はちらりと顔を見合わせた。短い沈黙の後、口を開いたのは店長だった。
「昨日付き合い始めたけど、ついさっき別れた」
そんな説明をされても理解が追い付かなくて何も言えなかった。
「まあ、要するに志村くんの告白でテシの気持ちが揺らいだって話だよ」
店長のその一言でぼんやりと全体像は見えてきたけど、二人がそんなに親密になっていたなんて衝撃的で、気が遠くなりそうだ。
「一旦整理させてもらいたいんですけど」
「うん」
「店長のことも俺のことも好きだから選べなくて、どっちとも付き合わないことにした、ってことで合ってますか」
「そうだね」
優柔不断さと誠実さが合わさってこうなったのかと考えると勅使河原さんらしい選択のような気がする。ただ、好きなのに付き合えないと言われるのは腑に落ちなかった。
これから店長よりも好きになってもらえるように頑張って恋人になれたら一番いいけど、今は奇跡的にイーブンだったとしても店長に勝てるとは到底思えない。
もう一回フラれる未来しか想像できなくて、それならかっこ悪くても食い下がった方がいいんじゃないかという結論に至った。
「俺のこと好きなんだったら、店長のことも好きなままでいいから付き合ってくれませんか」
「え?」
「やっぱ志村くんすげぇな」
自分でも頭がおかしい提案だと思っていたけど、勅使河原さんには困惑されて、店長からは感心された。
「志村くんと付き合うなら俺とも復縁してよ」
当然ながら、俺とだけ付き合うなんて都合のいいことを店長は許してくれないらしい。心なしか面白がった様子で勅使河原さんの肩を抱いているところを見て腸が煮え繰り返る思いがした。
「それって、3Pするって意味じゃないですよね?」
たじろいでいた勅使河原さんの口から思い掛けない単語が出てきて俺は思わず耳を疑った。この流れで急にゲームの話はしないだろうから、いかがわしい意味に決まっている。
「念のため聞くけど、志村くんは3Pってどう思う?」
「ありえないですね」
「俺もそう思う」
「ですよね。ちょっぴりドキドキしちゃいました」
俺と店長がきっぱり否定したら勅使河原さんは恥ずかしそうに俯いていて可愛かったけど、もしかしてしたかったのかなと疑いたくなってしまった。
「で、どうするつもり?」
「どうもこうも、二人とお付き合いするなんて絶対おかしいじゃないですか」
店長から尋ねられた勅使河原さんはすぐにそう答えた。常識的に考えたら断るのが普通だ。
「こそこそ二股すんのはどうかと思うけどさ、志村くんも俺も納得してるんだから問題なくない? 男同士なら万が一ってこともないし」
店長の言う「万が一ってこと」がなんのことか最初はピンとこなくて、意味がわかった時は結構生々しいことをさらっと言っていたのかと驚いた。
さっきの勅使河原さんもそうだったけど『付き合う=肉体関係』みたいなところはあるのかもしれない。
勅使河原さんはしばらく黙って考え込んでいた。どれくらいの時間が流れたかはわからないけど、俺には途方もなく長く感じられた。
「健太郎くんは本当に納得してる?」
「もちろんです」
ようやく発せられた言葉に頷くと、勅使河原さんはまた少し悩んでから、ついに答えを出した。
「じゃあ……不束者ですがよろしくお願いします」
こうして俺達は想像しようもなかった形で交際をスタートさせることになった。一応、勅使河原さんの彼氏になれただなんて全く実感が湧かない。
「俺はテシが志村くんを選んだとしても二人に対して不当な扱いはしないからそこは安心してくれていいよ」
「わかりました」
店長ならきっと仕事に私情は挟まないだろうから、その点に関しては全く心配していない。俺が嫉妬でどうにかならないかの方が問題だと思う。
「それじゃ、仕事は仕事ってことで、今日もよろしくね」
店長からそう言われて「はい」と返事はしたけど、雑念だらけで全く集中できなかった。気になることがあまりにも多過ぎる。
一日だけとはいえ勅使河原さんと店長が付き合っていたというのは本当にショックだった。勅使河原さんが店長を好きな可能性は考えていたけど、店長の態度からして逆はないと思い込んでいた。
雰囲気的にやっぱり一線は越えているんだろうかと思って、なんとなく裏切られたような気分になる。かといって、勅使河原さんのことも店長のことも嫌いにはなれない。
嫌なことにばかり意識が向いてしまうけど、勅使河原さんも俺のことを好きでいてくれているという事実は喜ばしいことだ。
これからは「好き」とか「可愛い」とか、その時思ったことを遠慮せずに伝えていきたいと思った。
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