鳴かぬ蛍が身を焦がす

らすぽてと

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第18話(R18)

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「そろそろ、いいですか」
「うん……ちょっと待ってね」
 指が三本入るようになったところで尋ねてみると、勅使河原さんは起き上がって俺のそれにコンドームを着けてくれた。
「きつくない?」
「はい」
「顔、強張ってる」
 いよいよ一つになれるのかと思うと緊張してしまう。勅使河原さんはにこにこ笑いながら俺の頬をつついた。
「なんにも考えずに気持ちいいことに集中してね」
 もう一度抱き締めて背中をぽんぽんと叩いてもらったら少し落ち着いてきた。だけどふと、自分があやされている赤ちゃんみたいに思えてきた。
「寝かし付けようとしてません?」
「ここまで来て寝られたら困っちゃうよ」
 くすくす笑った後、首筋にキスされて心拍数が跳ね上がった。勅使河原さんは身体を離して、お尻の下に枕を挟む形で仰向けになった。
「健太郎くんの、ちょうだい?」
 そう言いながら両脚を抱える姿は扇情的で、すぐにでも突っ込みたいくらいだったけど、痛くしないように自分のモノにしっかりとローションを塗り付けた。
「入れますね」
「うん」
 いざ入れようとしてもツルツル滑って上手くいかなかった。まごついていたら勅使河原さんは「慌てなくていいよ」と声を掛けてくれた。気ばかり焦っていたけど、やっと入れることができた。
「うわ、ヤバ……」
 勅使河原さんの中はあったかくて気持ち良過ぎて、まだ半分も入っていないのに、これ以上動いたらもうダメだと思った。
「ちょっと、待ってもらってもいいですか」
「イッちゃいそう?」
「はい」
「我慢しないで出してね」
「もう少しこのままでいさせてください」
「うん」
 今は出したい気持ちよりもまだ繋がっていたい気持ちの方が強い。押しも引きもできずにいたら、勅使河原さんはそっと手を握ってくれた。
「健太郎くんの、太いから入ってるだけでも圧迫感で気持ちいいよ」
「ホントですか」
「健太郎くんも気持ちいい?」
「チンコ溶けそうです」
「そんなに?」
 思考回路はとっくにショートしていてバカみたいな感想しか出てこない。勅使河原さんの反応は驚きと喜びが半々くらいだった。
 ずっとこうしているわけにもいかないからかなりゆっくり腰を進めてみると、不意にキュッと締め付けられてすぐに限界が来てしまった。
「あぁっ、くっ、うぅ」
 目の前がチカチカするくらい気持ち良かったけど、全然何もできていなくて申し訳なかった。
「すみません」
「ううん。ちゃんと気持ち良かったよ」
 勅使河原さんは優しいから言わないだけで、絶対早漏だと思われたに違いない。落ち込みながらコンドームを外して捨てた。
「健太郎くんの、舐めてもいい?」
「へ?」
 そこで勅使河原さんから投げ掛けられた言葉には耳を疑った。
「嫌?」
「汚いですよ」
「汚くないよ」
 まだ出したものを拭いてもいない状態なのに、勅使河原さんはなんの躊躇もなく俺のモノを口に含んだ。
「うぁ……ちょ、待っ……」
 下から上に扱きながら先端を吸われると堪らなくて思わず腰が引けてしまう。時折こちらを窺うように見上げる様子が可愛くて、視覚的にも来るものがあった。
「もう元気になってる」
 勅使河原さんは簡単にギンギンになったそれにキスをして、また俺を見上げる。
「二回戦、する?」
 その問い掛けに俺はもちろん頷いた。ここまで早くリトライする機会がやって来るとは思っていなかった。
 二回目は少し余裕があって、さっきより奥まで入れることができた。ただ、途中で行き止まりに突き当たって戸惑った。
「痛くないですか」
「大丈夫だから奥まで入れて?」
 そう言われて恐る恐るモノを押し込んでみたらグポッと根元まで入って、勅使河原さんは「あっ」と声を上げた。先端を締め付けられて気持ちいい。
「無理してません?」
「うん。動いてくれてもいいよ」
 本当にこんなに奥まで入れて大丈夫なのかと思いつつ、ゆっくり出し入れを始めた。
「あっ、あぁ、あぁっ!」
 しばらくすると勅使河原さんの身体がビクビク震えて、奥も入り口も締まって強烈な快感が襲ってきた。
「イッちゃった……」
「俺もヤバかったです」
「奥、気持ち良過ぎて変になっちゃいそう」
 俺の背中に手を回しつつキスをせがむように顔を近付けられて、反射的にそれに応じた。舌を絡ませ合いながらピストンを再開する。
「んんっ、ふぁ、んぅ……」
 奥を突く度に気持ち良さそうな声を漏らすから、ますます興奮して腰を振ってしまう。勅使河原さんがイく度に締め付けられて、俺ももう我慢できなかった。
「もう、出そうです」
「俺も……イっちゃう……!」
 今度はほとんど同時に絶頂を迎えられた。白濁したものが勅使河原さんのお腹に掛かっているのを見て、勅使河原さんもちゃんと気持ちよかったんだなと思えて安心した。

 どうにか初体験を終えることができて、好きな人に受け入れてもらうというのはこんなに心が満たされることなのかと思い知った。
 裸のまま抱き合って多幸感に浸っていたら勅使河原さんはぽつりとこう言った。
「実はね、健太郎くんにとって嫌な思い出にならないか不安だったの」
「いい思い出でしかないですよ」
「よかった」
 安心した様子で笑う勅使河原さんが愛しくて、思わず抱き締めたらぎゅっと抱き締め返してくれた。
「今日死んでも後悔ないくらい幸せです」
「長生きしてくれなきゃやだよ」
「毎日ハグしてもらえたら長生きできると思います」
「ハグだけでいいの?」
 脚を絡ませながらじっと見つめられると、どうしたってさっきまでのことを思い出してしまう。
「それ以上のこともしたいですけど」
 俺が素直に答えたら勅使河原さんは艶っぽく笑ってキスしてくれた。それだけでまた硬くなってしまって恥ずかしい。
「健太郎くんって結構絶倫なんだね」
「ごめんなさい。がっつき過ぎですよね」
 自分は性欲が薄い方だと思っていたのに、もうすっかりタガが外れてしまったみたいで嫌になる。
「元気なのはいいことだよ。まだ頑張れそう?」
 勅使河原さんはコンドームの袋を両手で持って首を傾げた。その仕草にやられて気付けば「頑張ります」と即答していた。
 もう一回した後は勅使河原さんの肌の温もりと心地のいい疲労感でそのままうたた寝してしまった。

 軽快なメロディーに驚いて目が覚めて「お風呂が沸きました」という声でそれが給湯器の音だとわかった。
「びっくりさせてごめんね」
「いや、全然」
「お風呂、一緒に入る?」
「はい」
 勅使河原さんはまたバスローブを羽織っていたし、すぐ脱ぐとはいえ素っ裸で移動するのは気が引けて、俺も一旦パンツを穿いた。
「健太郎くんのお泊まりセット用意したから好きに使ってね」
「えっ、ありがとうございます」
 俺のためにタオルやパジャマや歯ブラシやコップを用意してくれていたなんて、さすがのホスピタリティだ。
 二人で浴室に入ってシャワーで汗を流したところで不意に頭を撫でられた。
「濡れ髪だと余計若く見えるね」
「何歳に見えます?」
「十五歳?」
「中坊じゃないですか」
 十代に見られるなんて心外だけど、そこまでいくと逆に面白く思える。
「なんだかいけないことしてる気分」
「合法ですよ」
「ふふふっ」
 勅使河原さんの脚の間に俺が座るような体勢で一緒に湯船に浸かった。ちょっと狭いけど後ろから抱きついてもらえるのは気分がいい。
「そういえば、なんでツルツルにしたんですか」
 勅使河原さんのすべすべした腕を撫でながら、疑問に思っていたことを聞いてみた。
「うーんと……師匠から『バーテンダーだと手や腕を脱毛してる人結構いるよ』って聞いて『じゃあやります』って言ったら『どうせなら全部いっちゃえば?』って言われたから」
 なんとなく予想していた通り、そこもやっぱり師匠の影響らしい。
「俺も無駄毛ない方がいいと思います?」
「あるのもないのも違う趣があっていいよね」
「趣ですか」
 少しでも好きになってもらえるなら俺も全部いってもいいくらいだけど、毛の有無で何かが変わることはなさそうだ。
 ゆっくり温まった後は髪と身体を洗い合った。泡のついた手で身体を撫でられるとムズムズするし、勅使河原さんが時々可愛い声を漏らすから変な気分になってきた。
「あのっ、下は自分でやります」
「遠慮しなくていいのに」
 これ以上触られたらまた歯止めが効かなくなりそうで、勅使河原さんの手を握って制止すると残念そうな顔をされた。
 勅使河原さんは優しいからどこまでも付き合ってくれそうだけど、このままじゃ堕落してしまう気がする。

 風呂から上がって勅使河原さんが用意してくれたパジャマを着てみたらジャストサイズだったから驚いた。
「わざわざ買ってくれたんですか」
「ここのパジャマ着心地良くて好きだから健太郎くんにも着てほしくて」
「貰ってばっかで申し訳ないです」
「俺が好きでしてるだけだから気にしないで」
「ありがとうございます」
 そうは言われても何かお返しはしたいから、俺も勅使河原さんが泊まりに来てくれた時用のパジャマを買おうと心に決めた。
「化粧水とか塗る?」
「いや、俺なんかにはもったいないです」
「そんなことないよ」
 顔や髪に色々と塗ってもらって何がなんだかよくわからなかった。俺がいい匂いだと思っていたのはシャンプーとヘアオイルが混ざった匂いだということだけはわかった。
「ドライヤーしてもいい?」
「えっと、じゃあ、お願いします」
 こんなに世話を焼いてもらうなんて忍びないけど、断るのもおかしい気がして頭を下げた。髪を触られていると心地良くてうとうとしてしまって、首がカクンと前に傾いた拍子に目が覚めた。
「すみません」
「先に寝ちゃってもいいよ」
「俺も勅使河原さんの髪乾かしたいです」
「無理しないでね?」
「もう眠気飛びました」
「そっか」
 自分からドライヤー係を買って出たのに、蓋を開けてみれば、熱くならないように気を遣い過ぎてなかなか上手に乾かせなかった。
「下手くそでごめんなさい」
「ううん。ありがとね」
 文句も言わずに終始嬉しそうな顔をしている勅使河原さんが可愛くて、こんな穏やかな日がずっと続けばいいのにと心から思った。
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