【TS転生】どうやら異世界に転生したらしい

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口は災いの元

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お城で衝撃の事実に(エンブレム)気付かされた翌日。

私はまたもやお城に呼び出されていた。

昨日は結局私が驚き過ぎて脳内会議に忙しくマーガレットの話しも耳に入らない状態で何度か「コンスタンティナはどう思いまして?」とか「コンスタンティナの当日のドレスは白を基調としたものでしたわよね?差し色は青で花びらのように可愛らしいと聞いてますわ。…それならこちらね?これでどうかしら?」などど問い掛けられ慌てて「はい、素晴らしいお品ですわ」と言って頷く事を繰り返していたが……

いつの間にか自分の屋敷に戻り、いつの間にやら就寝時間になっていて。

あら?私いつの間に自分の部屋に戻って来たのかしら?しかもお風呂も着替えも終わってるわ。
え?待って待って、夕飯の晩餐はどちらで食べたの?
と泡食って侍女に確認したくらいには、心ここに在らずの状態だった。

だって、手の甲の印に目をやれば未だにそれはキラキラと主張する様に輝いている。
これがあるってことは、私はやっぱりフロヒオンと結婚をする訳で。

そしてフロヒオンは神に誓うと言うとんでもない古(いにしえ)の古い古い誓いを立てちゃってるから婚約破棄も離縁も、ついでに不貞もできないと…
こんな命を懸けた誓いをして下さるなんて、最近は騎士でもこの誓いをしたなんて話し聞いたことが無いわ、と母は喜んでいた。ちなみに父と兄達はコンスタンティナの新たなお相手探しをしなくて良くなったのに微妙な顔をしていた。

なんでそんな誓いを許可したのですか!国王陛下ぁぁぁ!?

ふぅ、ちょっと取り乱しちゃいましたわ。

今日は何だかいつにも増して人が多いなと思いつつ王妃様の侍女の先導で歩いていると前から歩く装飾品がやってきた。

「貴方がフロヒオン様の………納得いきませんわ!フロヒオン様はこんなちんちくりんのお子様がお好きなのですか?わたくしの方が10倍美しいですわ!」

ちんちくりんだと?

私はむくれて唇を尖らせた。
淑女にあるまじき姿だと母がいたら注意されていただろうが幸か不幸か今この場にはいないのでコンスタンティナとしては図体のでかい女性を睨み付けるように一瞬見て、ビックリして慌てて視線を逸らした。

唯一見れた場所は彼女の足元だ。

なぜならその人を見ると目が非常にチカチカしてしまったから。直視を避けたかった。

ま、眩しい!

「そんな地味なドレスを着て良くフロヒオン様にお会いして頂こうと思いましたわね!わたくしのドレスは──」

物凄くチカチカしたけど一瞬見たその姿をコンスタンティナは思い出す。頭の上から下まで、全てに所狭しと宝飾品を飾り付けた女性。
ドレスは彼女の話を聞くに、西の国の王家御用達の有名店とやらで仕立てたものらしく自慢げに話してくれた。

一級品だとわかるドレスは眩い黄金色だ。金に糸目をつけない、ある意味豪奢すぎる出で立ちだった。
淡い茶髪に新緑の鮮やかな緑色の瞳。顔は綺麗なのに。スタイルだって良い気がする(眩しくて見えてないけど)素材は良さそなのに勿体ない!

舞妓さんも真っ青なもはや黄金仮面と同レベルの厚く塗り固められた作り物のお顔。

はっ、そうか。ね?

コンスタンティナは斜め上を行く解釈をして納得した。

舞妓さん達の白塗りが標準設定の文化を持つ他国のお姫様。そんな方の前に普通のお化粧をした、ザ、普通!な令嬢がいたらそりゃあ違和感が半端ないだろう。もしかしたら露出魔と同等に思われてしまったかもしれない。

「申し訳ございません。私、まさか厚塗りのお化粧が西の国の淑女のマナーだと存じませんでした。肌が息苦しい気がして口紅だけで誤魔化しておりましたが、次回からはせめて白粉だけでも使う様に致しますわ。」

また会うこともあるかもしれないし。

「……なんですって!?あ、あなた、わたくしが厚塗りだと仰りたいの?!しかも御自分はお化粧すらしてなくても綺麗なのだと……そう仰りたいの!!??この、無礼者!!」

怒りの炎が目の前の女性から放たれた。
ゴウッ─

目を焼くような熱を感じたその瞬間。

私を庇うようにどこから現れたのかフロヒオン様がサッと私を抱きしめてきた。
「ぐっ…ぅぁ………」

ジュッ、と肌を焼く嫌な音と匂いがして─
「なっ!?やっ、フロヒオン様ぁぁぁ!?そ…な………」

女性の驚愕した声がふっと途切れる。暫し棒立ちになり驚愕の表情のままだった彼女はふらりとヘタリ込み呆然としていた。


え?何が起こったの?

目前に迫っていた、まるで生き物の様に襲って来ていた炎が、消えていた。
うめき声が微かに聞こえるのに。
抱きしめられた状態で視界が隠され、何が起こったのかわからなかった。

でも嫌な予感だけが私の脳裏に渦巻いていて─

「………フロヒオン…様…?」

震える私の呼びかけに私の体を抱きしめていたフロヒオンの腕に力がこもった。
痛いくらいに抱きしめられフロヒオンの苦痛に呻く声に次第に私の身体は震えだしていた。

「あっ………ゃだ、フロヒオン、様」

私はいきなり目の前が真っ赤になってしまった。目の前には辛そうなフロヒオンの顔と血肉が焼けた匂いと。

「やだやだやだ、フロヒオン様!!なんで!なんで!!」

私はひたすら涙を零してヒールを唱えた。
私のしょぼい魔力じゃとても1回では癒えなくて、でも私のしょぼい魔力じゃ2度もヒールなんて出来やしないのに。

無我夢中で、真っ青な顔をして、もう周りなんて見えなかった。

フロヒオンに攻撃した女性は近衛騎士である兄に連行されて既にいなくなっていた。傍には慌てて駆け付けた医師達だっていたのに。私をみんなが制止している。でも私はなけなしの魔力で絞り出す様にヒールを唱えていた。

ふわりと私の中に知らない魔力が流れてきた。
「コンスタンティナ、馬鹿だな。ほら、もう俺は大丈夫だから。」

そう言って優しい手が私の頭を撫でる。
でも状況が飲み込めない私はまたヒールを唱える。

するとまた知らない、けれどよく知る暖かい魔力が流れてくる。
「ほら、俺はお前のおかげで治ったんだよ。だから、もうヒールはしなくて良いんだ。深呼吸して。……そう。」

ぼんやりする痺れた頭がその言葉に少しだけ和らぐ。

「フロヒオン様…」

ボロボロ泣いていた私のばっちい顔を見たフロヒオンが少しだけ吹き出して、蕩けた顔で笑っていた。

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