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裏
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フロヒオンの火傷はかなり酷い状態で事件のあった日の夜にはかなりの高熱で苦しみ、三日経った今もなお生死の境をさ迷っている。らしい…………
「───フロヒオン様、確か今生死の境をさ迷ってらっしゃるんですよね?」
「うん?ああ、そうだよ?」
嘘つけ!ちょーピンピンしてるじゃないですか!!??
あの日あの時あの場所に居合わせた者達に敷かれた箝口令の内容までは知らないがきっとフロヒオンはあのまま医務室に運び込まれ…と言った具合に口裏合わせが行われた模様。
本来ならその中の誰かがついポロリと口を滑らせていてもおかしくないはずの緩い箝口令は、例の王女様があまりにも横柄な態度をとっていた為城の者達だけで無く居合わせた貴族すらあのまま居座られてたまるかとばかりに口を噤んだらしい。
まぁ、バレてもシラを切り通すそうだが国力の差が激しい小国の王女など、どうとでもしてみせる─と珍しく怒りに震えた父が黒く言っていた。
ジトっとした眼差しを向けるとフロヒオンが悪びれもせず楽しげに笑うものだから居た堪れない。
フロヒオンはどうやら他国の王女に酷い火傷を負わされたという体でその国に王女を強制送還し、抗議をしているところなのだとか。
この波に乗りフロヒオンに来ていた縁談を纏めて破談にしようと目論んでいるようだ。
現在生死の境をさ迷っているらしいフロヒオンはコンスタンティナからの献身的な看病で一命を取り留めた事にするべく部屋に引きこもっている。
そんな訳で私も城の、フロヒオンの部屋に留め置かれているので恐ろしくヒマなのである。
「もう、フロヒオン様!チェスもオセロも飽きましたー!あっ、フロヒオン様のとんでもチートでなんか面白いゲームとか作れないんですか?」
「……コンスタンティナ、それだとまるで俺がチートがなければ婚約者を楽しませてあげられない面白みのない男だと解釈されてしまうだろ!?」
「誰にですか!この部屋は防音で、部屋の外では厳戒態勢に入った近衛騎士達がウヨウヨいるのに。誰にもフロヒオン様が本当は面白みのない男だなんてバレてやしませんよ」
「いや、待てコンスタンティナ!それだとやっぱり俺が面白みのない男になってるじゃないか!お前、わざとだろ!」
「はぁ、フロヒオン様で遊ぶのも飽きましたわ」
「…………コンスタンティナ、お前転生してからいい性格になったよな」
なんのことかしら?
「そんな事より、フロヒオン様!この誓いですよ!なぜこんなヤバい誓いをチョイスしちゃったんですか!?」
コンスタンティナはほれほれとフロヒオンの目の前に手の甲を突き出した。
「そうは言うけど、この印、めちゃくちゃ便利な付属効果があるんだよ」
そう言ってフロヒオンがコンスタンティナの手を取り自分が座るソファーの隣に座らせた。
「付属効果?」
「そう、これコンスタンティナは鑑定できる?」
「いいえ、試したのだけど…」
「そっか、印にかかってる神の力が強いからダメだったのかもしれないな。…この印には互いに対する危険察知能力と瞬間移動の能力が備わってるんだ。それがこの印の付属効果。」
「なんだそのチート効果」
私はついつい成也の口調で言ってしまった。
「コンスタンティナw、口調」
フロヒオンのふにゃりとニヤけた顔を見てやっとあ!しまったと顔を顰めた。
「あっ!?………えっと、今のは無しで!」
「まぁ、俺も似たり寄ったりだし、お前も二人の時は気にするな」
「そう言う訳にはまいりませんの。お母様に再教育の必要が…なんて言われてますのよ?」
私のしかめっ面を可笑しそうに見ていたフロヒオンがさり気無く「どんなお前でも可愛いよ。さすが俺の嫁」なんて言って来るから私は鳥肌の立った腕をさすりジト目になる。
フロヒオンは「ちょwそこまで嫌がるか?」と言って笑っていたが、「いや、話を戻すぞ」と言いながら咳払いすると急に真面目な顔をした。
「知ってるか、コンスタンティナ。うちの国ってかなり恵まれた立地にあるんだ。しかも最近はこの国の軍の力も強くなり貿易でも栄えてきている。」
「…まぁ、一応そうらしいですね」
「そんな国の王子様がフリーで、しかも見目がよく頭も悪くないとしたらどうなる?」
「そりゃあ……あっ、なるほど以前からたくさんの縁談が寄せられてたんですね?」
地方貴族の令嬢達は兎も角、中央の貴族や他国の王族は放っておかないだろう。
「以前からしつこかったからちょっと一掃しようかな、と」
「でも!です!いくらなんでもフロヒオン様があんな火傷を負うなんて、無茶をし過ぎです!」
つまり、フロヒオンはわざと、あの王女様の攻撃を受けたのだ。そしてコンスタンティナに浮かび上がっている誓いの印を見て皆、納得するだろうシナリオを作り出す事にした。
むっつりした顔のコンスタンティナを見てフロヒオンが続けた。
「それに他国だけじゃ無い。自国の者も牽制するにはそれくらいしないとね。ソレにはそんな意味もあるんだ」
それ、と言ってフロヒオンが私の手の甲を指差した。なるほど……
「なるほど、それは理解できましたわ。うん…ただね?フロヒオン様。なんで勝手に騎士の求婚なんてヤバい誓いを私にしたんですか!?」
「え?だってコンスタンティナは産まれる前から俺の嫁だし。」
え?何当たり前なこと聞いてんの?と言いたげな眼差しだった。
「だが断る!!」
イラッとした私は悪くないと思うの。
「───フロヒオン様、確か今生死の境をさ迷ってらっしゃるんですよね?」
「うん?ああ、そうだよ?」
嘘つけ!ちょーピンピンしてるじゃないですか!!??
あの日あの時あの場所に居合わせた者達に敷かれた箝口令の内容までは知らないがきっとフロヒオンはあのまま医務室に運び込まれ…と言った具合に口裏合わせが行われた模様。
本来ならその中の誰かがついポロリと口を滑らせていてもおかしくないはずの緩い箝口令は、例の王女様があまりにも横柄な態度をとっていた為城の者達だけで無く居合わせた貴族すらあのまま居座られてたまるかとばかりに口を噤んだらしい。
まぁ、バレてもシラを切り通すそうだが国力の差が激しい小国の王女など、どうとでもしてみせる─と珍しく怒りに震えた父が黒く言っていた。
ジトっとした眼差しを向けるとフロヒオンが悪びれもせず楽しげに笑うものだから居た堪れない。
フロヒオンはどうやら他国の王女に酷い火傷を負わされたという体でその国に王女を強制送還し、抗議をしているところなのだとか。
この波に乗りフロヒオンに来ていた縁談を纏めて破談にしようと目論んでいるようだ。
現在生死の境をさ迷っているらしいフロヒオンはコンスタンティナからの献身的な看病で一命を取り留めた事にするべく部屋に引きこもっている。
そんな訳で私も城の、フロヒオンの部屋に留め置かれているので恐ろしくヒマなのである。
「もう、フロヒオン様!チェスもオセロも飽きましたー!あっ、フロヒオン様のとんでもチートでなんか面白いゲームとか作れないんですか?」
「……コンスタンティナ、それだとまるで俺がチートがなければ婚約者を楽しませてあげられない面白みのない男だと解釈されてしまうだろ!?」
「誰にですか!この部屋は防音で、部屋の外では厳戒態勢に入った近衛騎士達がウヨウヨいるのに。誰にもフロヒオン様が本当は面白みのない男だなんてバレてやしませんよ」
「いや、待てコンスタンティナ!それだとやっぱり俺が面白みのない男になってるじゃないか!お前、わざとだろ!」
「はぁ、フロヒオン様で遊ぶのも飽きましたわ」
「…………コンスタンティナ、お前転生してからいい性格になったよな」
なんのことかしら?
「そんな事より、フロヒオン様!この誓いですよ!なぜこんなヤバい誓いをチョイスしちゃったんですか!?」
コンスタンティナはほれほれとフロヒオンの目の前に手の甲を突き出した。
「そうは言うけど、この印、めちゃくちゃ便利な付属効果があるんだよ」
そう言ってフロヒオンがコンスタンティナの手を取り自分が座るソファーの隣に座らせた。
「付属効果?」
「そう、これコンスタンティナは鑑定できる?」
「いいえ、試したのだけど…」
「そっか、印にかかってる神の力が強いからダメだったのかもしれないな。…この印には互いに対する危険察知能力と瞬間移動の能力が備わってるんだ。それがこの印の付属効果。」
「なんだそのチート効果」
私はついつい成也の口調で言ってしまった。
「コンスタンティナw、口調」
フロヒオンのふにゃりとニヤけた顔を見てやっとあ!しまったと顔を顰めた。
「あっ!?………えっと、今のは無しで!」
「まぁ、俺も似たり寄ったりだし、お前も二人の時は気にするな」
「そう言う訳にはまいりませんの。お母様に再教育の必要が…なんて言われてますのよ?」
私のしかめっ面を可笑しそうに見ていたフロヒオンがさり気無く「どんなお前でも可愛いよ。さすが俺の嫁」なんて言って来るから私は鳥肌の立った腕をさすりジト目になる。
フロヒオンは「ちょwそこまで嫌がるか?」と言って笑っていたが、「いや、話を戻すぞ」と言いながら咳払いすると急に真面目な顔をした。
「知ってるか、コンスタンティナ。うちの国ってかなり恵まれた立地にあるんだ。しかも最近はこの国の軍の力も強くなり貿易でも栄えてきている。」
「…まぁ、一応そうらしいですね」
「そんな国の王子様がフリーで、しかも見目がよく頭も悪くないとしたらどうなる?」
「そりゃあ……あっ、なるほど以前からたくさんの縁談が寄せられてたんですね?」
地方貴族の令嬢達は兎も角、中央の貴族や他国の王族は放っておかないだろう。
「以前からしつこかったからちょっと一掃しようかな、と」
「でも!です!いくらなんでもフロヒオン様があんな火傷を負うなんて、無茶をし過ぎです!」
つまり、フロヒオンはわざと、あの王女様の攻撃を受けたのだ。そしてコンスタンティナに浮かび上がっている誓いの印を見て皆、納得するだろうシナリオを作り出す事にした。
むっつりした顔のコンスタンティナを見てフロヒオンが続けた。
「それに他国だけじゃ無い。自国の者も牽制するにはそれくらいしないとね。ソレにはそんな意味もあるんだ」
それ、と言ってフロヒオンが私の手の甲を指差した。なるほど……
「なるほど、それは理解できましたわ。うん…ただね?フロヒオン様。なんで勝手に騎士の求婚なんてヤバい誓いを私にしたんですか!?」
「え?だってコンスタンティナは産まれる前から俺の嫁だし。」
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