【TS転生】どうやら異世界に転生したらしい

質問です

無理やり友人から口付けをされた。そんな時普通の令嬢ならどうする？

そんな問が頭に浮かぶ。

な、殴る？グーで？
いや、そんな令嬢はいないだろう。

んじゃぁ……
首を振ってぷはっと口付けから逃れた。

やっぱりこんな時

令嬢は


手を振り上げて

バチコーン！

「ぶほっ！！」

「あら？平手打ちって殴るのとあまり変わらない？」

振り上げた手をそっと下ろしたコンスタンティナは口付けの余韻に赤く色付く艶やかで潤んで蕩けた様な顔で、困った様に言った。

王子様に手を上げる事は不敬罪ではあるが未婚の令嬢は婚約者からであっても貞操を守る為の抵抗は容認されている。

この国は王侯貴族が婚姻の際に精霊教会の司祭から清廉なる祝詞を賜り婚姻を結び、その夜、純潔と純愛とを互いに捧げて愛の誓を交わすのだ。

なので貴族令嬢達の純潔を死守する事は最優先事項となる。

「酷い、口付けくらい大丈夫なのに…ぐすん」
「フロヒオン様？口調が」
「…コンスタンティナ、婚約者同士であれば貫通しなけりゃ何しても許されるんだよ？」
「フロヒオン様…言い方！」
「全く、成也もそうだったけど、本当にお前はウブだな」
「フ、フロヒオン様の、バカー！！」

怒りと羞恥に真っ赤になったコンスタンティナの顔を見てニヤリと笑うフロヒオンは至極楽しげに「まぁ、そんな反応は好きだけど」と言ってコンスタンティナの唇をぐいと、自分の指を這わせ拭う。

なぜそんな事を？と唇を拭った指の行方を見ていればペロリとフロヒオンが舐めた。

「激しく、口付けちゃったからね」

途端コンスタンティナは理解した。アレは自分の唾液が垂れていたのをフロヒオンは拭ったのだ、と。

その指を──

「ば、馬鹿なの？変態なの？！」

ポコポコとフロヒオンの腕を叩くコンスタンティナを見てフロヒオンは「反応がマジでツボなんですけどw」と楽しそうだ。

結局その日、フロヒオンは数時間ほど前屈みの王子様で過ごしていた。
万が一の時は司祭様に祝詞を賜りやってしまおうと考えたらしいフロヒオンによって司祭様が城の一室にて待機中だ。
ちょっぴり可哀想だな、なんて思ったけど、それを聞いた途端にコンスタンティナは執務室の窓際まで速攻で避難した。

それを見たフロヒオンが顔を引き攣らせていようとも、ひとまず避難を優先させたのだ。

危険物に近寄る勇気は生憎持ち合わせていないコンスタンティナはフロヒオンの執務室でエリザベスお勧めの小説を読んでリンが番とことを成すまで大人しく過ごしていた。

「……おぉー、やっと治まったわ」
「なにがですか？」
「発情期、やっと消えたっぽい」
「フロヒオン様、良かったですわね！あぁ、これで私もさっさとお家(屋敷)に帰れますね！」
「………コンスタンティナ、そこまで喜ばれると複雑なんだが」
「おっと、失礼」

コンスタンティナのにこにこ笑顔を頬を引き攣らせてフロヒオンが見ていたがコンスタンティナも未だ学生であり、間もなく卒業前のイベントに追われる時期に差し掛かると知っているので渋々帰りの手配をした。

できればもう少し自分の嫁を堪能したかった様な、後に取っておく楽しみが更に膨らんだ様な。

フロヒオンが見送りに出るといつの間にか城に来ていた令嬢達が遠巻きにこちらを見ていた。

「きゃぁ！フロヒオン殿下だわ！フロヒオン殿下、今日も素敵ですわ！」

「あの婚約者のご令嬢、コンスタンティナ様でしたっけ？毎日フロヒオン様に引っ付いてつきまとって居るのは本当だったんですね！！あんなにくっ付いて！」

「え？わたくしにはフロヒオン殿下がダリア公爵令嬢をガッチリ抱き締めにかかっているように見えますが」

「そうよね？わたくしはフロヒオン殿下のご看病に是非ともと請われてダリア公爵令嬢は学園もお休みなさってずっと付き添っていらしたと伺いましたわ？しかもフロヒオン殿下はダリア公爵令嬢にベタ惚れで騎士の婚姻の誓いまでなさったのだとか」

「羨ましいですわぁ」

「そんな！！その噂ってデマでは無いんですか！？」

と口々に騒ぎ出している。

どうやら彼女達は明日行われる予定の地方貴族が集まる地方議会の参加議員の娘達のようだ。地方に行けば行くほど不思議と薄化粧でスッキリした美を感じさせるのだ。なので彼女達の事は騎士団でも話題になっていた。
薄化粧、これ大事！と野太い歓声すらあった程だ。

地方議会の議員達は皆伯爵家であり、国境を守る砦を担う辺境伯以外は一年に四度開かれる王宮での地方議会に出席していた。

一人、伯爵家の令嬢にしては余りに常識外れな言動の者もいたが。