【TS転生】どうやら異世界に転生したらしい

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ヤバさしか感じない

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「コンスタンティナ・クレーティ・ダリア!!もう我慢出来ません!フロヒオン様にこれ以上ご迷惑をおかけするのは止めてください!!」

正義感、それから少しばかりの高揚感を胸に一人の少女がコンスタンティナの前に立ち塞がっていた。

「……………コンスタンティナ知り合いかい?」
「え?!知らない方ですわ?フロヒオン様のお知り合いなのでは?」

「えっと、どちら様?」
「君は知り合いでは無いはずだか?」

はい、まるっきり嘘である。名前も社交界での彼女の評価もついでに彼女の父親の弱みもバッチリ把握済みだ。
それはコンスタンティナだけではなく、フロヒオンにも言えることなんだけど。
でも実際問題、コンスタンティナは彼女ルイーズから自己紹介を頂いていないので知らない、と答えた。


今日は学園の創立祭である。昨年は無かった祭りとあって学生達も気合いの入った装いでパートナーと参加していた。

この創立祭はこの魔法学園の創立者である三代前の国王であった賢王レオポルドを讃え、卒業生だけでなく王族も多く参加している為そこかしこに衛兵や近衛騎士の姿があった。

サッと寄ってきたフロヒオンの側近とフロヒオン付きの護衛騎士達がフロヒオンに目配せしたが、フロヒオンは馬鹿らしいと言いたげに首を振る。

「いちいち捕らえていたらコンスタンティナに私が非道な婚約者だと思われるだろう?」

とか聞こえてぎょっとしてコンスタンティナは護衛騎士の一人である兄を見た。

ついでにルイーズもぎょっとしてフロヒオンと護衛騎士達を見て「な、なぜですの!わたくしをご存知無いだなんて!」
と斜め上を行く着眼点を見せている。

「…ちっ」

お兄様!?今思いっきり舌打ちしませんでした?!

「君は何か勘違いしているんじゃないかな?コンスタンティナ私に迷惑などかけたりしないよ?第一私達は君から自己紹介をもらった覚えが無いからね?」

暗に迷惑なのはお前の存在だと言いたげな冷たい眼差しに、なんで?と驚いた顔をしている目の前の少女にコンスタンティナはゲンナリする。

目の前の少女、名をルイーズ・ジョイアと言って王都まで馬車で14日ほどかかる地方議会の議員をしている伯爵の娘なのだが。
「わ、わたくしはルイーズ・ジョイア!ジョイア伯爵の一人娘ですわ!」

「ルイーズ様ごきげんよう。私はコンスタンティナ・クレーティ・ダリア。ダリア公爵が長女にございます。」
「ご機嫌など、ぜん!ぜん!良くないわ!ぜん!ぜん!よ!」

この通り、彼女には常識が欠如しているのだ。
疲れる。

「ああ、フロヒオン様!お可哀相に、そんな我儘な方のお相手を─」
「ちょっと良いかな?」

「………はい!なんでもお聞きになって下さい!あっ、もしかして!?やっと思い出してくださったのですね?わたくし達の運命ので───」

「いや、ちょっと黙っててくれるかな?」

フロヒオンの温度の無い声にルイーズがえ?と不思議そうに眉を寄せる。それを見たフロヒオンは更に冷ややかな声で言った。

「まず、第一に。伯爵家の娘がなぜ公爵家の娘であり、私の婚約者でもあるコンスタンティナをフルネームで呼び捨てにしていたんだ?
第二に、私は君に敬称無しに名を呼ぶ事を許した覚えは無い。
第三に、私と、私のコンスタンティナに迷惑を掛けているのは君だ。私のコンスタンティナを。神が創りたもうた最高傑作(オプション装備)の、私の夢と希望を詰め込んだ(オプション装備)コンスタンティナを侮辱するつもりなら、覚悟して貰おう」

あ、アレ?フロヒオン様いつの間にかこっそりキレてらっしゃる?

中二病のポーズしながらのその笑い方はやめよう?と成也の部分が言っている気がしたが。フロヒオンは頭上に手を掲げ魔力の塊を形成しだしていた。

でっかいな……

当たれば王都まで吹き飛びそうな、真っ黒で禍々しいヤツである。

フロヒオンはルイーズがぎょっとした顔を引き攣らせ真っ青にして行くのを見て殺気を少しだけ減らしてニヤリと目だけが笑っている。実に楽しそうだ。


「フロヒオン様、行きましょう?もう良ろしいでしょう?何だか慣れてしまったし、第一、私気にしてませんし。」

「……今からが…」
フロヒオンはコンスタンティナにやっと聞こえるほどの小声でボソッと言った。

「いい所だったのは分かったから、この子面倒なんです!行きますよ!」

やれやれ、とコンスタンティナが耳打ちすればフロヒオンは仕方ないかと魔力をすっと収め、コンスタンティナの腰を抱くと少女を無視して歩き出した。

「はっ!待って下さいませ!分かりました!コンスタンティナ様は権力がありすぎな公爵家の令嬢だし、フロヒオン様…フロヒオン殿下も無下には出来ないから渋々─」

「消えるかい?」

フロヒオンの怒りに触れたと気づいた側近と護衛騎士をしている兄がルイーズ以外に防御を張るのが見えてコンスタンティナの頬が引き攣る。

いや、止めようよ!!お兄様!?マッフェオ侯爵子息!(側近その1)防御じゃなくて止めてよ!

「ひぃ!?な、なぜですの」
「君が目障りだからかな?」

ルイーズの言葉に間髪入れずフロヒオンは答えた。
どうやらこのルイーズに煩わされていたのはコンスタンティナだけでは無かった様だ。

でも、待って待って?とコンスタンティナはフロヒオンの腕に触れた。

「大丈夫、一瞬で片付けるから」
「大丈夫くない!それ、大丈夫くないから!」
キレてるフロヒオンは知ってる慶吾のキレ方に似ている様で似ていない。
明らかに以前よりも迫力が増してるのだ。正直怖い!

王子様の美しい外見にみんな騙されている。これは王子様の皮を被った魔王だと言われた方が納得がいきそうなヤバさしか感じなかった。
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