二度目の人生は無難に引きこもりたい

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結局マクシミリアンとクリスティナが城での事情聴取から解放されたのは翌日の午後だった。
昨日は魔術師団の風変わりな団長様がクリスティナの治癒の規格外の力とマクシミリアンの異常な魔力量に度々聴取の邪魔をして一旦終わりにしようと言うことには成ったが、その時時刻は既に深夜だった。
夕食は聴取の合間に済ませていたが風呂と寝床は王宮の客間を有難く使わせてもらい翌日の朝からまた聴取が再開した。

「お帰り、クリスティナ」
「テオ兄様!迎えに来てくださったの?」
夕刻、漸く聴取が終わり城の馬車で送ると言っていたダグラスの姿をキョロキョロと探していたクリスティナは馬車止まりに立つテオファンの姿に駆け寄った。

「もちろんだよ。聴取は今日で終わりだと約束してもらったから明日からはゆっくり休むと良い」
クリスティナは相変わらずクリスティナに甘いテオファンにくすぐったい気持ちで笑顔を浮かべた。

「クリスティナ!」後方から風が駆け抜けて行く様な音が鳴り、誰かに呼ばれ振り向けば目の前にマクシミリアンが現れる。遅れて風が舞い上がり、瞬時に移動したのが分かった。


「…五分だ」
なぜか不機嫌な顔をしたテオファンがマクシミリアンに告げ「馬車を呼んでくるから」と去っていく。
「…マクシミリアン様」
あの告白以来の顔合わせでクリスティナはドキドキがおかしな鼓動に拍車をかけ挙動不審となっていた。

あわあわするクリスティナをマクシミリアンがガバッと抱き上げ、姫様抱きと巷で言われている横抱きにされ、足をプラプラさせながらもじもじとマクシミリアンを見る。

「クリスティナ、直ぐに迎えに行く。もう少しもお前を離したくないんだ。」
「マクシミリアン様…」
マクシミリアンが常とは違い何やら弱った声で、まるでクリスティナに懇願する様な眼差しを向けてくる。
ドキドキが喉元まで上がってしまった。
限界が来たクリスティナはカクカクと頷くので精一杯だ。

もう本当にいっぱいいっぱいだ。

「クリスティナ」と嬉しそうな声を出さないで頂きたい。悶えて死んでしまいそうです。
クリスティナがマクシミリアンに翻弄されている間にテオファンの乗る馬車が馬車止まりの下に到着する。不機嫌そうなテオファンが「じゃあ、マクシミリアン、クリスティナは連れて帰るよ。お見送りありがとぉ」と言って略奪する様にクリスティナをふわりと受け取る。
「テオファン、何もクリスティナを抱き上げて乗せる必要は無い」と言うマクシミリアンの言葉をサラリと無視して「では」とテオファンは手を振った。

クリスティナはハラハラオロオロと二人を見ていたが馬車の扉が行者により閉じようとしている事に気付き「マクシミリアン様!あの、」と慌ててご挨拶の内容を考えている内にサッと動いたテオファンによって扉は閉ざされた。

「あ!…も、もう!テオ兄様、酷い!わたくしまだご挨拶も途中だったのに」
クリスティナは恨めしげにテオファンを見るがテオファンはにっこりと微笑む。
「俺も父も母もクリスティナが心配でこの所食欲も湧かなかった。だから早く君の元気な姿を見せてあげたかったんだ。ごめんな、クリスティナ、ちょっと強引だったか?」
なんて小首を傾げ聞いてくる。そう言われては文句も引っ込んで行くしかない。


翌日、マクシミリアンからクリスティナの父宛てに婚姻の申し込みの手紙が届き、母が早くも婚礼衣装を手配しなくちゃと騒ぎ出しクリスティナは呼び出された父の執務室でポカンと口を開けて座っていた。
「クリスティナ、君がマクシミリアン様に嫁ぐ事を了承したと返事を書くけど…本当に良いんだね?私の可愛いクリスティナ!まだまだお嫁に行くのは先だと思っていたよ…」
何度目になるかわからない質問にクリスティナが再度頷くと父は悲壮感たっぷりに嘆いた。

「クリスティナ、マクシミリアン様の一族が暗黒龍の血を継ぐ者である事についてはマクシミリアン様から聞いていて?」
母の質問にクリスティナは「少しだけ」と言って母を見る。
「昔昔の童話があったでしょう?あのお話は真実に近いお話なの」
クリスティナは目を瞬き驚き戸惑った。

今のこの国の王は龍族の金龍の一族ではるか昔に生息していた完全なる人間と言う種族は滅び、竜人や獣人、鳥人や魚人などの種族のみとなってかなりの年月が経つ。

それを考えると『昔昔の童話』は、途方も無く昔の、はるか昔のお話を語り継いできた事になる。

「クリスティナ、龍族は唯一を得ると暫く妻を巣に隠してしまうって言うわ。婚姻したら暫く顔を見られないからって、お父様泣いちゃって」
本当に面倒臭いんだから、もう!と言いつつも愛しげに母は父を撫でた。父はそんな母にぎゅうぎゅうと抱きつき結局母に苦しいと叱られていた。

穏やかに愛を育む夫婦。私もマクシミリアン様とそんな風になれるのかしら。

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