【完結】結婚式から再スタート

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鬼畜が病んだ時─2

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結婚式当日に花嫁が逃げ出した。
そんな報告を受けた私が例えば病んだとして。
それは仕方の無い話だと思う。

漸く、漸く、手に入ると思った瞬間に、その報せはやってきた。

執事が目を泳がせながら「イラーリア様が家出をしたと報せがありました。どうやら早朝、野菜箱に入り、荷馬車で逃走したもようです」と報告して来た。

取り急ぎ、花嫁の体調不良を理由に結婚式は延期としておくしかない。

世間知らずの馬鹿む……イラーリアお嬢様が一人で家出など出来る訳が無い。彼女の協力者を早急に洗い出さなければ。

私から逃げ出すとは。
そうですか……
それ程までに。


だけど簡単には逃がしたりしない。必ず捕まえますよイラーリアお嬢様。

「イラーリア様の協力者がわかりました。ミアと言う名の、細身で茶髪の侍女とありますが。」
「………侍女……あぁ、あの女、ね」

やたらと距離が近かった鬱陶しい印象しか無い侍女を思い出す。

「セオ様、魔力が盛れております…」
「あぁ、すまない。私もまだまだだね」

意識を魔力に向けると魔力が暴走しかけていたのだと気付く。
昔はしょっちゅう暴走させてはぶっ倒れていたが、成長期を終えた今は魔力量がかなり増えてしまっている。暴走させれば辺り一面跡形もなく消えてしまうかも知れない。

危うく逃走したイラーリアお嬢様も永遠に失ってしまう所だった。

チラリと首から下げた魔石を見れば、ピシリと亀裂が走っているのを見て、本当に危なかったと、かなり動揺している自分を宥め、新たな石に取り替える。

これがあれば、まぁ、この屋敷が粉砕する位で済むだろう。

「居場所がわかった。迎えに行ってくるから。寝室の準備だけ、しておいてくれ」
「……はい。お気を付けて」

顔を引きつらせた執事を残し、魔力を慎重に出しながら指で魔法陣を描く。

とん、と床を蹴り、輝く魔法陣の中に飛び込むと、景色が切り替わった。

目の前には如何わしい建物が見える。

巫山戯ているとしか思えない。
私の妻をこんな場所に。

ふつふつと湧き出す不快感を、あまり溜め込んでしまえば本当に暴走しかねないと、足元に発散した。
ぼこっ、と音が鳴り、土が粉砕し、広範囲に渡って周囲の地面が20センチほど消失している。

ふぅ。

「な、なんだ、これは」
騒然とする周囲を無視して建物の中に入り「貴族の妻に手を出すとは、どうやら命が惜しくないらしいな」と、この娼館のオーナーらしい女の首を持ち上げた。

「……ひぃ!?貴族が、関わってる…なんて、聞いてない」

私は悪くないとほざく女を放り投げ、襲いかかってくる破落戸共を薙ぎ倒し、奥にいるイラーリアお嬢様の元へと向かった。

この娼館は潰してしまおう。イラーリアお嬢様を買い取るなど許せるはずも無い。


美しい私の妖精はポカンと口を開け私を見た。

怒りが全身を駆け巡り、早く彼女を自分のものにしなければこの破壊衝動は収まりそうにない事を理解した。

彼女が大切なのに。彼女が自分から逃げ出した事が許せず、全てが気に食わない。
全てを破壊し、彼女が絶望して私に縋る様を思い浮かべると漸く、少しばかり冷静さが戻ってきた。

けれど、突き飛ばすように私室のベッドに彼女を沈めると支離滅裂な感情で支配された。

艶めかし素足が視界を占領していた。
妖精の様だと、触れる事すら罪悪感を抱いた筈が。

今、自分の中を占める感情は、無茶苦茶にしたい。その身体を暴き、自分のモノを沈め、私無しではいられないようにしたいと言う欲で溢れている。

けれど、同時に、彼女を甘やかし、愛し慈しみたいと思った。

「貴女が他の男に触れられるなど考えたたけで可笑しくなりそうだ。なぜ、私から逃げたのです。馬鹿で無知な美しい娘など、格好の餌食では無いですか。」

はぁ、はぁ、と荒い息をつきながら彼女を抱き潰す。
涙を流す彼女を見たら堪らなくなって私の胸も痛み出す。

「私から逃げ出そうなんてもう二度と思い付かないように、身体に仕込んで差し上げましょう」
あぁ、泣きながら気持ち良さに我を忘れ悶え、戸惑う姿が堪らない。

彼女が居なければ、私は本当に生きていけそうもない。


全く厄介な感情だ。


魔力が混じり合い、怒り狂っていた私の魔力が狂ったように荒れ狂い大地に吸収される。

不思議な一体感だった。

あぁ、今なら時だって戻せるかも知れない。もし、二度目の朝を迎えたなら。イラーリアお嬢様はどうするだろうか。

ふと、そう思った。

その瞬間。
時が私とイラーリアの二人を残して逆巻出した。

不味い。本当に時戻りが起こっている。

慌てて彼女を抱えると、先程たくさん愛撫し、痕を付けた肌からその痕が消えてしまっている。

また一から彼女を愛せと言う事だろうかと薄らと笑みが溢れた。

次に逃げ出したら。

その時は本当に暴走しかねない。そうなる前に捉えてしまおうか。

さぁ、私のお嬢様。二度目の貴女はどちらを選ぶのでしょうね。

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