合法ロリと獣耳公爵の苦悩

守護竜の降臨

守護竜の降臨、この地は竜神と女神が守護する聖地であり、その竜神が数年に一度降臨し、一人の騎士に自らの加護を与える。
しかし、その年が魔物の大量発生や災害級の魔物の出現する年だったりと何かの予兆でもある為一概に喜んでもいられない。やっぱり世界というやつはどんな世界も世知辛い。

「今年は既に各地に大型の魔物が現れ被害の報告が上がっている。若しかすると今年は守護竜様が降臨されるかもしれないな。」
レオンが思案する様に言った。たぶん指揮を取る立場からの言葉だろう。軍師であるレオン様は次期将軍と噂されるお方で既に将軍は全権を任せる発言を繰り返しているが、レオンはまだ働けるでしょうと躱していると先程紹介された将軍様ご本人から聞いた。
将軍様はその昔守護竜の降臨により数回程加護を授かり三つの加護をお持ちなのだとか。確かにものすごくただ者ではないオーラが出ていた。恐ろしい。

ラヴィーニアは最前列でたぶん上座から数えると１２番目に立っていた。その内１０名は各国の王族とその国の代表として出席された大使様などでその次に将軍様、その次にレオン、そして次がラヴィーニアである。
やだよー！この席怖いよー！と、脳内では絶叫していたが、将軍様やレオンと話す内に周囲はさほどラヴィーニアを場違いの餓鬼め！などとは見ておらず、数名は嫉妬や不満の眼差しを向けてきたが大多数の者達からは将軍様の孫か、レオン様の子の様に仲良しで微笑ましいと笑ってくれていた。
やっぱり子供扱いかと鼻白むが仕方ない。今はその扱いバンザイである。

たぶんおおらかに笑ってくれているのはこのルリシエ大国の獣人の方々だと思う。

獣人、もしやおおらかな種族なの？いやいやそんな馬鹿な。獣人と言えば戦闘狂で知られる好戦的な種族である。

うーん。なぜだ。

「いよいよ始まるよ。」
「え？まぁ！本当だわ」
ラヴィーニアはウキウキして先程の疑問も忘れてしまった。

杖を手にした５名の神官が杖を振るい祭壇の前に巨大な魔法陣が光の魔法で描かれた。光の魔法は神殿の上位神官しか扱えない特殊な魔法であり数人掛りで魔法陣を維持している。
輝きを増しながら魔法陣が起動し、キラキラの光を振り撒き回転する。
祭壇前に並ぶ近隣諸国の優秀な騎士達はこの日のために腕を磨いたと言っても過言では無いだろう。
各国から選ばれし騎士は総勢１００名。ラヴィーニアはなぜレオン様はあそこに並ばないのかと聞くとレオンは若者には体力で負けたのだと言っていたが怪しいものだ。

彼等はキラキラの光を浴びながら希望いっぱいの眼差しで魔法陣を見つめていた。


『我が名はクーフォンヌ。我が加護を受けこの地を守護する竜星の騎士よ。そなたに加護を与えよう。』

約10年ぶりの加護は光と共に始まり一際眩しい光をラヴィーニアの隣でラヴィーニアの頭を撫でていたイケメンに宿すと光の収束と共に竜神様は消えて行った。
「あ、やっぱり？レオン様おめでとうございます！」
ラヴィーニアはうん、うん、やっぱりか！と納得してレオンを見上げる。レオンの方はやめてくれ！と言いたげに顔を引きつらせていた。まさかの参列する側からの選定となり一瞬ざわめきが起こったがレオンなら納得だと言う流れになったようだ。皆の盛大な拍手を受けレオンがしぶしぶ手を挙げつつ祭壇の前に向かっていった。


☆


今夜の舞踏会は開催中の中日ではあるが最大の参加者となり会場に入り切らない為に仕切りをとっぱらい前回の倍の広さの大ホールになっている。

ああ、視線が痛い。

ラヴィーニアは叔母とマリアナと居たのだが周囲はラヴィーニアを不躾に品定めする様に見ては鼻で笑い、更には時々よろけてぶつかってくる令嬢が後を絶たない。
地味に背中と腕が痛いです。

「ねえ？貴方が恥知らずにもライナルディ様にくっ付いていたご令嬢かしら？」
「…くっ付いていたというよりはレオン様にエスコートして頂いていた。の間違いでは…」
「な、なんですって！わたくしに、わたくしに口答えするつもり？さすが恥知らずな女だわ」
「恥知らずなのはこの会場で叫び声を上げてご自分よりも上位に当たるわたくしに言いがかりを付けているあなたの方ではなくて？あなたとても目立ってましてよ？浅ましいわ。」
ラヴィーニアは疲れていた。
つい素が出て嫌味な事を言ってしまう。
会場入りしてからずっと、この様な令嬢が後を絶たないのだ。レオン様どんだけモテるんだよ。
「あ、な、な」
そして皆様口をぱくぱくと真っ赤なお顔で退散されるのだ。
好戦的な種族なのは分かるが狡猾さはあまり無いようで助かってます。