地味に転生していた少女は冒険者になり旅に出た

文字の大きさ
31 / 32

そろーり

しおりを挟む
今、私は国境警備隊の詰所となる砦に居た。

「それで、坊主は………ひぇっ!?い、いや!君は!なぜ、その、あちらの尊きお方に乗って来たのかな?あの、とんでもなく尊き方に…」

国境警備隊の詰所の窓から見える景色におっちゃんをはじめ、みんなが冷や汗を流し目を泳がせていた。



─────────


マッシモさんの代わりにとなぜかヒャッハー兄さんが教官代理として来ていたが初めの日にマッシモさんに召喚魔法だけ教えられるだろ?と言われたヒャッハー兄さんが浮かれて召喚魔法の授業をしてくれた。
確かに素敵な訓練だった。

召喚魔法は得意と言うだけあってヒャッハー兄さんは成功率100%で鼻高々。

しかしその後。

ほぼヒャッハー兄さんにマッシモさんは指示をしておらず。「……えー、では、各自自習を」と言ってほぼほぼ自習であったためカルテイラちゃんに「これ、ここに来る意味、無い。帰る。自宅自習でいい?」と言ってコテン、と首を傾げられヒャッハー兄さんは崩れ落ちシクシクしていたけど。

おかげでマッシモさんが戻るまでの間、養成所はしばらくは休みになった。

なので今日は朝から冒険者ギルドに向かった。まずは冒険者ギルド内で気配遮断をするとギルドマスターの部屋で現在のエタン達の戦況を探る為に。

一つの階層を進むのに普通のCランク冒険者達のパーティで一日から二日、最大で三日だとして、あのエタンやマッシモさん、イチイさん達が行ってももう三日目だ。

更にエタンが出て行ってしまってもう二週間近い。

エタンは大丈夫かな。なんて気になって仕方なかったのだ。

報告書を見つけ目を通すと、どうやらダンジョン内には冒険者達とアンバンシーブル騎士団の先鋭部隊や他団員達、総勢三百を超える人達でダンジョン内の『狂暴化』した魔物達に挑んでいる様だ。

しかも冒険者たちの報告の中に『覚醒者二名』と書かれていてビックリした。
覚醒すると化け物並に進化するとか聞いたことがある。

誰だろう、なんて思っていると、先祖返りのエタン以外にも規格外の力を解放した冒険者がイチイさんだと書かれていて、私は首を傾げた。

これを見るとエタンが既に覚醒した様に見受けられたからだ。

…エタンが覚醒?
それはエタンの怒りで世界が終わったりしないの?大丈夫?


なんて考えてしまった。だってエタンは今ですら規格外なのに。

そして、イチイさんもエタン程では無いが幻の種族と言われる鎌鼬だ。
だったらかなりの力を得たのだろう。

うん、ダンジョンの方は全く問題なさそう。

「………寝る時は帰って来てるんだ」
報告書にはダンジョン内は移動石で移動出来る為極力荷物を少なくして寝る時だけ一旦地上に戻っているとあった。

私はじわりとせり上がった悲しさを紛らわせる様に報告書を漁った。

次に見つけたのは国境線にいる騎士団や傭兵達の状況だ。

冒険者も傭兵の依頼を受けて向かっているらしく状況なんかも書かれていた。

『敵国の軍人達を一度捕縛したが、敵軍の大佐が呪いや獣人の聴覚障害をもたらす音を出して逃げ、一時撤退したが再度侵攻してきている。解呪の得意な者がいれば協力して欲しい』

その文を見て心臓が嫌な音を立てた。

この聴覚障害をもたらす道具に心当たりがあった。

鳥や害獣駆除に使う軍施設の魔道具が壊れていたから魔石の交換ついでに威力を上げられたら『休みと金をやる』なんて言われて回線を一つ増やし、同時に中に入れる魔石も増やした。
すると普通の野鳥だけで無く魔物の鳥まで落下し、弱い種の魔獣達もよろよろと逃げだしたと言っていた。

私としては逃げる為の、大佐の弱みを握る為の有意義な時間を持てて喜んだけど…

あれを使ったのかも知れない。

私は思わず呻きそうになった。

あれは破壊するしかない。破壊するにも魔法攻撃を魔石に当てなきゃならない。行こう。

あの魔道具を壊さなきゃ。


そっとギルドを後にした私は国境警備隊の詰所まで行く為開けた場所を探して走った。

国境警備隊の詰所がある砦付近が最前線だろう。途中にあるあの山を例え超えたとして十日はかかってしまう。だからここは奥の手で行くしかない。

「いでよ!ミニドラゴン!!召喚!!」

…魔法陣が光り出す。
召喚魔法は魔法陣を手で書くのでは無く脳内で魔法陣を作成して魔力を込めて出現させるのだ。

だから、馬鹿みたいに難しい!

ドラゴンが呼びたい!でも巨大なドラゴンなんて何年かかっても魔法陣の陣すら組めないと確信している。

なんで、ミニドラゴンを召喚して空を飛んでもらうのだ!

魔法陣を思い浮かべ魔力を手から細く出すと丸い円が現れキラキラとした緻密な古代文字が描かれていき、陣は眩く発光し金色に輝く。


キラキラした光の中から召喚されたミニドラゴンが……

「………ん?」

私はゴシゴシと目を擦った。前回訓練で成功した時は私と変わらない大きさだった気がするんだけど………

デカくない?

「漸く召喚魔法を使ったな。小娘よ」

光がおさまり、現れたのは金色のドラゴンだった。想像よりも硬質そうだな。

城くらいの高さに見える。

ドラゴン……およ?

「……あれ?あの、貴方様はミニドラゴンでは無く…て……。もしや、本物のドラゴン様だったり…」

「如何にも、我は天界の門番であるエンシェントドラ………」

「ひっ!ひぇぇー!!すいません!ま、間違えましたァァァ!」

おかしい!なんでなの?!

前に召喚して私が漸く運べるくらいの大きさのあの子をイメージしてたのに!?


この世界のドラゴンは地上にいる小さなコウモリみたいな羽付きの翼竜や竜騎などで地を走る小さな竜、地中に住む土竜(モグラ)っぽいヤツが大半で言葉を解す竜種は聖獣の分類になり、ドラゴンと呼ばれている。

神獣は半透明で触れないと言うが聖獣はどうなんだろう。

透けてはいないわね…

聖獣や神獣は基本的に地上の生物では無い。
魔界だ天界だ、と住む次元が違う場所にいるらしい。
その為良くゲームだとテイマーやら召喚士なんて職もあるけどこの世界には無い。彼らを従えるなんて有り得ない話だからだ。


召喚魔法は魔法陣に魔力を流し、その魔力に惹かれたミニ聖獣を魔力を与える代わりにと力をちょっとだけ貸してもらうのだ。

ミニドラゴンには抱っこさせて下さい!って言って抱っこさせてもらった。黒いドラゴンで円な赤い瞳が可愛かった!

そんなミニ聖獣達の召喚だけど成功率は魔法陣の出来次第。
しかもちょっとした願いのみしか叶えられない。
なのであまり召喚魔法を使う人もいないらしい。

もふもふがもふもふを呼び出しても楽しくないとカルテイラちゃんが言っていた。彼女は聖獣のミニフェニックスを呼び出してもふもふを楽しんでいる様に見えたのに。

私には耳も尻尾も無いからもふもふの為に召喚もありだ!

だけど、今はひとまず!

逃げなきゃ!?

じゃり、と後退するとドラゴンが反応した。

「むぅ、待て小娘。我を呼び出した挙句、放置するつもりではなかろうな」

不機嫌極まりない、その低い唸り声に私は首を一生懸命に振った。

く、喰われる!?

「よし、では何か願うが良い」
「…………へ?」

「なんだお主、我を呼び出したのは願い事を叶えてもらうためでは無いのか?願い事は、物理的でかつ、不殺生で、かつ、世界の脅威にならぬことで頼む。願い事を叶えたらそなたの魔力をちと貰う!それで良いな!!」

ちと、それはどのくらいなので?ちょっとだけ?ドラゴンのちょっとは私のたくさんだったりしないよね?

「………あ、あの。でしたら!私を国境警備隊の詰所まで連れて行ってもらえませんか!?」

詰所にはおっちゃんがいる。


「よかろう!」

ドラゴンがかがみ背に乗れと言われて「失礼します」と言って乗り込んだ。

魔法で私を保護しながら飛んでくれるらしくキンキラキンのシールドが現れた。

「よし!行くぞ!!」
途端に膨大な魔力が辺りにタレ流されてビリビリと空気さえ震え出す。

「まっ!待ってください!ドラゴン様!この状態で、ドラゴン様の力がダダ漏れの状態で行かれると敵だけじゃなく味方すら大混乱になるかもしれません!なので!」

「………う、うむ。なので、なんだ?」

「えっと、なので~………そろーりと、気配を消して頂いて行きたいのですが!」

「うむ。よかろう」


そんな訳で、私はすっかり忘れていた。気配遮断しても目の前に現れたドラゴン見たらそりゃー大混乱だ。

ついでに敵国は戦意喪失で一斉捕縛。

うん、私何しに来たんだろ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!

ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。 前世では犬の獣人だった私。 私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。 そんな時、とある出来事で命を落とした私。 彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

異世界で目覚めたら、もふもふ騎士団に保護されてました ~ちびっ子だけど、獣人たちの平穏のためお世話係がんばります!!~

ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした芽依は、お詫びとして大好きな異世界へ転生させてもらえることに。だが転生の際、またしても神のミスで、森の奥地に幼女の姿で送られてしまい。転生の反動で眠っていた瞳は、気づかないうちに魔獣たちに囲まれてしまう。 しかしそんな危機的状況の中、森を巡回していた、獣人だけで構成された獣騎士団が駆け付けてくれ、芽依はどうにかこの窮地を切り抜けることができたのだった。 やがて目を覚ました芽依は、初めは混乱したものの、すぐに現状を受け入れ。またその後、同じ種族の人間側で保護する案も出たが、ある事情により、芽依はそのまま獣騎士団の宿舎で暮らすことに。 そこで芽依は、助けてくれた獣騎士たちに恩を返すため、そして日々厳しい任務に向かう獣人たちが少しでも平穏に過ごせるようにと、お世話係を買って出る。 そんな芽依に、当初は不安だった獣人たちだったが、元気で明るい瞳の存在は、次第に獣人たちの力となっていくのだった。 これはちびっ子転生者の芽依が、獣人や魔獣たちのために奮闘し、癒しとなっていく。そんな、ほっこりまったり? な物語。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

処理中です...