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12才の誕生日に兄ラファエルから蝶々の髪飾りを貰った。
リアルな、蝶の標本にありそうなあの、今にも動き出しそうな。
血のように赤い宝石箱に入れられたその髪飾りは、黒い羽が美しく。
赤や青、紫、そんな色とりどりの模様が美しい蝶々だった。
「……ひっ」
母の短い悲鳴を聞いても私はそんな事は気にならなかった。
あ、アゲハ蝶みたいだ。
空っぽな頭で、ただそれだけを思った。
しかし、そう思って、はたと思考が停止した。
アゲハ蝶ってなぁに?
私の空っぽだった頭の中にたくさんの情報(ゲーム知識)が流れ込んだ瞬間だった。
そうして思い出した前世は七割ゲーム知識だけで、あとの三割で平凡な女子高校生になりたての、乙女なゲームに日常生活すら脅かされた結果、寝不足で足を踏み外し階段から落下して享年16歳って言うなんとも申し訳ない最後を迎えた前世の記憶だった。
はぁ、もうなんとも言えないや。
そんなどんよりした前世の情報の中に一つ。
かなり…
いや、とても引っかかる情報があった。
そう、絵師様の絵に惚れて買った大好きな乙女なゲーム。
サイコな思考回路の、けれど恐ろしく美形なイケメン共がヒロインに仕留められる。
いや、サイコすぎて普通の乙女なゲームとは違うわね。
サイコなイケメン共が競い合う形でヒロインを捕縛するゲームだ。
うん、そっちのがしっくりくる。
そんなゲームの登場人物に、前世の記憶を思い出した私は、とある登場人物に、なぜか非常に心当たりがあった。
たまたまかな?とも思ったけれど。
同じ名前って珍しいな、と全力で目を逸らしたいけれど。
まずは私の家族構成をお話しよう。
私の家族は義父と母、義兄、私の四人家族だ。
私の母は昔から絶世の美女として有名な人だった。
私の元父がちょっと、いや、かなり歳若い少女と浮気をした瞬間、母はキレてわたくしも浮気してきますと今まで我慢していたストレスを発散するべく、夜遊びをしに出かけて。
戻って来た時には隣にハンサムな紳士が立っていた。
父曰く公爵様なのだとか。
公爵様は妻を亡くし、十年間も人に関心を持てなかったが私の母にはすこぶる関心を持てたのだとか。
母は何だか戸惑っていたが、父と公爵様は話し合い、お金を積みまくり。
気が付けば私の母は父と離縁。
私は父から要らないと言われたから母が公爵様に頼んで連れ子として連れて嫁いでくれたのだ。
有り難い。
伯爵家の跡継ぎとなる男児が欲しかった父は私には無関心で。
貴族らしい暮らしぶりの表舞台とは別の継ぎ接ぎだらけの使用人が出入りする屋敷の裏方に私は追いやられて過ごしていた。
私には教師が付けられていなかったから字が読めるくらいの学力しかなかった。
とはいえ、貴族の令嬢に求められているのはピアノやヴァイオリンが上手く弾ける事。それから美術品の評論会に出ても話についていけることだ。
母からはピアノやヴァイオリン、それから淑女のマナーを一通り習った。
けれどそれは貴族に嫁ぐことが出来なければ何の役にも立たない。
だから、放り出されていたら私は野垂れ死んでいただろう。
家庭教師すら男性が務める世界なのだもの。
一方、やって来た公爵家では、私は裏に追いやられることなく、お嬢様扱いを受ける様になった。
しかも、気の良い公爵様は私をちゃんと自分の子供にしてくれたのだ。
なので私の名前はウラリー・インファンティーノに変わることになった。
しかも、公爵様は別に難しい勉強などしないで好きな事をしていて良いと言ってくれた。
公爵様はなんでも買ってくれた。
ひとまずお馬鹿でも可愛ければだいたい生きていけるが、知識はある方が良いかもと母が言ったので一応音楽家の先生が週に二回来て、美術品の評論家とか言うよぼよぼのお爺さんも来てあれやこれやと教えてくれる。
私、音楽と美術だけは成績良かったんだよね。
おかげでこの勉強は楽しい。
公爵様は欲しい物は無いかといつも執事さん伝いに聞いてくれて、本や、リボンなんかをたくさん買っても怒られない。
ビバ天国!
そんな公爵様には一人息子がいる。
ラファエル様と言って私の四つ歳上の、何だか無表情な方だ。
こう、反応があまり無いタイプの。
ぶっちゃけ根暗だ。
でも、私は根暗は嫌いでは無かった。広く区切れば我が同士。どうやらそう思っていた節がある。
前世の記憶を思い出す前から私は前世の性格が出ていたのだと思う。
そんな根暗なラファエルお兄ちゃんは無関心がデフォルトらしく父、公爵様を見ても納得だけれども。
この屋敷には家族の交流が無い。
だから、わかった。公爵様が私に甘いのでは無い。
彼は極力関わりを持ちたくないと、けれど母ジェニファーが私を心配しているから優遇してくれているのだ。
これだけ与えればジェニファーと自分の邪魔はしないだろうと。
「ウラリー、誕生日おめでとう」
「……ありがとう。お兄ちゃん」
そして、この義兄こそがそのウラリーを亡きものにする。
乙女なゲーム『ブラッディ・ケージ』の攻略対象者全てを攻略すると接点が持てるラスボス的な隠しキャラ、ラファエル・インファンティーノなんだ。
紳士的なキャラに擬態するサイコなラスボス。
邪魔者は全て消す。
そう紹介欄に書かれていた。
うん、やっぱり兄はあの、ラスボス。
インファンティーノ公爵のご子息ラファエル様だよね?
そうなると、やっぱり私は主人公マリーに兄を取られまいと泣き落としで立ちはだかる邪魔者令嬢、ラファエルの義理の妹。
ウラリー・インファンティーノと言うことで。
そうすると……私は、あれかしら?
後三年で、兄ラファエルに殺されるわけなのかしら?
嫌だー!友香(オタ友)ちゃん助けてー!
リアルな、蝶の標本にありそうなあの、今にも動き出しそうな。
血のように赤い宝石箱に入れられたその髪飾りは、黒い羽が美しく。
赤や青、紫、そんな色とりどりの模様が美しい蝶々だった。
「……ひっ」
母の短い悲鳴を聞いても私はそんな事は気にならなかった。
あ、アゲハ蝶みたいだ。
空っぽな頭で、ただそれだけを思った。
しかし、そう思って、はたと思考が停止した。
アゲハ蝶ってなぁに?
私の空っぽだった頭の中にたくさんの情報(ゲーム知識)が流れ込んだ瞬間だった。
そうして思い出した前世は七割ゲーム知識だけで、あとの三割で平凡な女子高校生になりたての、乙女なゲームに日常生活すら脅かされた結果、寝不足で足を踏み外し階段から落下して享年16歳って言うなんとも申し訳ない最後を迎えた前世の記憶だった。
はぁ、もうなんとも言えないや。
そんなどんよりした前世の情報の中に一つ。
かなり…
いや、とても引っかかる情報があった。
そう、絵師様の絵に惚れて買った大好きな乙女なゲーム。
サイコな思考回路の、けれど恐ろしく美形なイケメン共がヒロインに仕留められる。
いや、サイコすぎて普通の乙女なゲームとは違うわね。
サイコなイケメン共が競い合う形でヒロインを捕縛するゲームだ。
うん、そっちのがしっくりくる。
そんなゲームの登場人物に、前世の記憶を思い出した私は、とある登場人物に、なぜか非常に心当たりがあった。
たまたまかな?とも思ったけれど。
同じ名前って珍しいな、と全力で目を逸らしたいけれど。
まずは私の家族構成をお話しよう。
私の家族は義父と母、義兄、私の四人家族だ。
私の母は昔から絶世の美女として有名な人だった。
私の元父がちょっと、いや、かなり歳若い少女と浮気をした瞬間、母はキレてわたくしも浮気してきますと今まで我慢していたストレスを発散するべく、夜遊びをしに出かけて。
戻って来た時には隣にハンサムな紳士が立っていた。
父曰く公爵様なのだとか。
公爵様は妻を亡くし、十年間も人に関心を持てなかったが私の母にはすこぶる関心を持てたのだとか。
母は何だか戸惑っていたが、父と公爵様は話し合い、お金を積みまくり。
気が付けば私の母は父と離縁。
私は父から要らないと言われたから母が公爵様に頼んで連れ子として連れて嫁いでくれたのだ。
有り難い。
伯爵家の跡継ぎとなる男児が欲しかった父は私には無関心で。
貴族らしい暮らしぶりの表舞台とは別の継ぎ接ぎだらけの使用人が出入りする屋敷の裏方に私は追いやられて過ごしていた。
私には教師が付けられていなかったから字が読めるくらいの学力しかなかった。
とはいえ、貴族の令嬢に求められているのはピアノやヴァイオリンが上手く弾ける事。それから美術品の評論会に出ても話についていけることだ。
母からはピアノやヴァイオリン、それから淑女のマナーを一通り習った。
けれどそれは貴族に嫁ぐことが出来なければ何の役にも立たない。
だから、放り出されていたら私は野垂れ死んでいただろう。
家庭教師すら男性が務める世界なのだもの。
一方、やって来た公爵家では、私は裏に追いやられることなく、お嬢様扱いを受ける様になった。
しかも、気の良い公爵様は私をちゃんと自分の子供にしてくれたのだ。
なので私の名前はウラリー・インファンティーノに変わることになった。
しかも、公爵様は別に難しい勉強などしないで好きな事をしていて良いと言ってくれた。
公爵様はなんでも買ってくれた。
ひとまずお馬鹿でも可愛ければだいたい生きていけるが、知識はある方が良いかもと母が言ったので一応音楽家の先生が週に二回来て、美術品の評論家とか言うよぼよぼのお爺さんも来てあれやこれやと教えてくれる。
私、音楽と美術だけは成績良かったんだよね。
おかげでこの勉強は楽しい。
公爵様は欲しい物は無いかといつも執事さん伝いに聞いてくれて、本や、リボンなんかをたくさん買っても怒られない。
ビバ天国!
そんな公爵様には一人息子がいる。
ラファエル様と言って私の四つ歳上の、何だか無表情な方だ。
こう、反応があまり無いタイプの。
ぶっちゃけ根暗だ。
でも、私は根暗は嫌いでは無かった。広く区切れば我が同士。どうやらそう思っていた節がある。
前世の記憶を思い出す前から私は前世の性格が出ていたのだと思う。
そんな根暗なラファエルお兄ちゃんは無関心がデフォルトらしく父、公爵様を見ても納得だけれども。
この屋敷には家族の交流が無い。
だから、わかった。公爵様が私に甘いのでは無い。
彼は極力関わりを持ちたくないと、けれど母ジェニファーが私を心配しているから優遇してくれているのだ。
これだけ与えればジェニファーと自分の邪魔はしないだろうと。
「ウラリー、誕生日おめでとう」
「……ありがとう。お兄ちゃん」
そして、この義兄こそがそのウラリーを亡きものにする。
乙女なゲーム『ブラッディ・ケージ』の攻略対象者全てを攻略すると接点が持てるラスボス的な隠しキャラ、ラファエル・インファンティーノなんだ。
紳士的なキャラに擬態するサイコなラスボス。
邪魔者は全て消す。
そう紹介欄に書かれていた。
うん、やっぱり兄はあの、ラスボス。
インファンティーノ公爵のご子息ラファエル様だよね?
そうなると、やっぱり私は主人公マリーに兄を取られまいと泣き落としで立ちはだかる邪魔者令嬢、ラファエルの義理の妹。
ウラリー・インファンティーノと言うことで。
そうすると……私は、あれかしら?
後三年で、兄ラファエルに殺されるわけなのかしら?
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