ヤンデるサイコで乙女なゲームの世界にこんにちは

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ウラリーが渋々ウィリアムのリードで踊り出すとウィリアムは「なんだ、ちゃんと踊れるのか」と、それはそれは残念そうにボソリと呟いた。

なんだそれは!もしかして私がろくに踊れないとでも思っていたのだろうか?

だとしたら、この人、わざわざ人の目を集めるホールの中央で踊って私に恥をかかせたかったのだろうか?

なんて最低野郎なの。

しかし、ウラリーには無駄口を叩いている様な余裕は無い。

少しでも話したりすると途端に息があがる。
ハッハッ、からゼェゼェ、更にはハヒィーハヒィーとなってしまうのである。

対してウィリアムは騎士科のホープ。体力は無尽蔵に蓄えられているだろう。

ウィリアムは血濡れの騎士みたいなスチルが多い。

この人のルートだと大抵隣国に拉致されて救出に来たウィリアムは周囲の敵を全て殲滅させるのだ。

んで、めでたく、俺が作り出した安全な檻(屋敷)にって感じで無理やり既成事実作る為に犯してくるし、結婚した後もずっと監禁する。

イカレている。

しかし、前世の自分はそれがいい!と大喜びでこの人のルートを楽しんでいた。

だいぶいかれてる。

そして、そろそろ、一曲が終わりだ。

なのに、なぜ…あなたは追加のターンを入れたの?
さも、僕らはもう少し踊りますよと言わんばかりだ。

曲に従ってさっさと終わって欲しい。

「……………」
「見かけによらず、無口なのだな」

さっさと終わってくれ!と思ってじーっと見つめるとウィリアムがまた話しかけて来た。

「……………」
「なんだ?……あぁ」

どうやらやっと私の言いたい事が伝わった様だ。

そう、そうだよ、そうなのだよ!

今は貴方様と話す余裕など無い!

無駄口叩かずにさっさと終わらせましょう!と睨んでいたのだよ!

なのだが─

グイッと身体が引き寄せられて相手の胸にゴスっと頭突きをしてしまった。

しかし、筋肉の鎧をまとったウィリアムは全く意に返さず。

「これくらい近づけば話しやすいか?」

などと言って、更にグイッと腰を抱き寄せて来る。
頭突きした私は頭が痛い。

「どうした?しかめっ面で」

益々近くなったウィリアムは無口キャラが詐称だと訴えたくなるほど喋りたがる男だった。

詐欺だ。

本当はチャラ男だったと言うのか!?

机があればそこにバンバンと叩き付けていたかもしれない。

騙された気持ちで睨んだのにその生まれ持った舞い降りた天使とまで言われる可憐な美少女ウラリーでは、上目遣いの涙目で見上げてくる、なんだ、この無駄に可愛い生き物は!?と言う状態にしかなっていないのだった。

「……お前、その顔は不味いだろ」
「………………」

(ひっ、酷い!更に侮辱をぶっ込んで来やがるなんて!!むきー!)

もうコイツ嫌いだ。

「よし、まぁまぁだなー、上級者の枠にギリギリ入るな。」
這う這うの体でやたら動きの早いダンスを踊り切って戻るとマヌエルがまぁまぁだなー、と白けたようにウラリーを見て言った。

他の生徒の時となんか態度、違わない?

「次に進むぞ」
と言ってしれっと小馬鹿にした笑みを浮かべている。

くそぉ…

「……はぁ……はぁ……はい………」

そう言えば、さっきのダンスは最近兄ラファエルと踊っていたダンスだな。
そうか、アレって上級者向けだったんだ。
周囲を見るとダンスをした後は見学して他の子のダンスを見て色々と参考にしているようだ。

「よし、次は俺とだ」
「へ?」


なんて……呑気に構えていたら、気づけば手を引かれ、またホールの中央へと向かっていた。

ウソでしょ!

ウラリーは必死に頭を振って拒否する。
「まっ……」

無理無理無理!!

「ん?なんだ?息が上がってるな。あぁ、よし、短めのをやるか」

マヌエルはそう言うと魔術だろう。音楽を違う曲にササッと変えるべく、自動演奏の魔術をかけた。

「さ、やるぞ」

ニヤリと笑ったマヌエルの笑みはそれはそれは楽しげで、人の悪い笑みだった。

そう言えばこのマヌエルは鬼畜ヤンデレ俺様絶倫キャラだった。

はっきり言ってリアルだと一番苦手な人だ。

そんな鬼畜キャラが今日は随分と楽しそうですね。

そうウラリーが気づいたのは足がカクカクと鳴り、息がゼェゼェから、ハヒィーハヒィーに変わった後だった。

鬼畜先生はくつくつとウラリーを見て笑っていた。なんてヤツだ!

「よし!今日はここまで!各自苦手なステップなんかをちゃんと把握できたか?よし、まぁ良い。ちと早いが解散!」

も、無理。

私、歩いて教室まで帰れるのかな?

「行くぞ」

マヌエルはそう言うと無言で驚くウラリーを小脇に抱えて移動しようとする。

荷物扱いだ。完全なる小荷物だ。

ユラユラ揺れる…

吐く。吐きますぅ!

無言でバシバシとマヌエルの腕を涙目のウラリーが叩いてみるが、チラリとこちらを見たくせにマヌエルは何事も無かったかのように、意に返さないまま歩き出した。

「それ、俺が抱えて行きます」

そこに現れたウィリアムがマヌエルの腕にぐったりとしているウラリーを指差した。

「あ゙?」

最早、チンピラだ。

マヌエルに対する不信感でいっぱいだ。

この際兄でも良いから!助けてー!

ウラリーはちょっぴり、ラファエルに心の中で助けを求めてしまい、はたと我に返った。


兄に、あの兄に、一番私が用心すべき人に私は助けを求めたのかと愕然とした。


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