この世界で唯一の猫は俺~捕獲対象として賞金掛けられたが、相棒の黒龍(卵)とのんびり旅します

ロゼ

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旅の始まり

いざ、敵陣へ!

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 俺とギースがデビル・ブラザーズに変化してしばらく経った頃、あの男がやって来た。

「上手くいったか?」

 目玉だけが妙にギョロっとした三十代後半くらいの男だ。

「俺らが失敗するわけがねぇ! な、ドゥッキー」

「違いねぇ!」

 俺がギースに話を振ると、ギースは上手いこと乗ってくれた。

「で? カバンは? どこだ?」

 男が辺りをキョロキョロ見渡しているが、そのカバンは俺が持ってるので出せるわけがない。

『どうすんだよ!?』

『慌てなくても良い。我に考えがある。アースはボスに会わせろと交渉せい。報酬が足りんとでもごねれば何とかなろうて』

 言われるままにジャッキーっぽく交渉を開始してみた。

「久々にあの豚の顔を拝みてぇ気分だよなぁ、ドゥッキー? 最近のしみったれた報酬金額について、じーっくりと話がしてぇと丁度話してたところだしなぁ」

「だよなー、ジャッキー。俺らを飼うってのがどんなことなのか、忘れちまったみてぇだしなぁ」

 上手く乗ってくれるギース……こいつ、本当に地龍なのか!? いや、地龍だからこそなのか!?

 デビル・ブラザーズの話し方なんて短時間しか聞いてはいないが、荒っぽく、馬鹿っぽく話せば疑われることはなさそうでホッとした。

「お前らをボスのところになんか連れて行けるわけがないだろう! 第一、町のやつらに見つかるのはマズイ! お前らは自分達がお尋ね者だという自覚があるのか!?」

 尤もな言い分に思わず頷きそうになった。

「見られたらるだけよ! なぁ、ジャッキー?」

 ギースが上手く話を合わせてくれて助かった。

『アースよ、そなた、演技が下手じゃの……ギースの方がよっぽど心得ておるぞ?』

 シャンテの嫌味が聞こえてきた。

「おうよ! こんな町なんか、小一時間で黙らせてやるぜ! ギャハハハ」

 ジャッキーが言いそうなことを考えながら話をするのはなかなか難しい。

 そもそもあんな思考はしていないので尚更だ。

 俺は至って普通なんだから。

「殺しはマズイ! あー、どうしたらいいか……」

「豚のところに連れてってくれたら、カバンは渡してやるよ」

 ギース、ナイスアシスト!!

 本当にギースは有能すぎる! 地龍にしておくのが勿体ない気がしてきた。……そもそも俺が頭が悪いんじゃないか? ってのは言わないでくれ。

「ほれ、どうするよ? カバンが欲しけりゃ俺らを連れてくしかねぇよ?」

 そう言うとギョロ目はますます慌て始めた。

「何ならお前をこの場で丸焼きにしたって構わねぇのよ! なぁ、ジャッキー?」

「ギョロ目の丸焼きか! いいねぇ!」

 本当に演技も返しも上手すぎるぞ、ギース!

「ま、待ってくれ! 私の一存では決められることではない! 一時間だ! 一時間だけ待ってくれ! ボスにお伺いを立ててみる!」

 そう言うとギョロ目は走り去っていった。

「カバン、どうするんだよ?」

『そこいらにゴミでも何でもいい、適当な大きさの物は落ちてはおらんか?』

 町外れの空き地のような場所にいる俺ら。

 辺りには背の低い草が生えていて、よく見ると不法投棄されたのか、ゴミもチラホラあった。

 手頃な物はないかと探していると、穴の空いた麻袋を見付けた。

『それが良い! それを拾ってくれ』

 シャンテも気付いたようで、その麻袋を拾った。

 いつから置かれていたのか、手に取ると袋の一部が簡単に崩れてしまった。

「こんなんでいいのか?」

『良い良い』

 そう言うとシャンテの卵が白く光り、手にしていた麻袋は俺のカバンそっくりに変わった。

 どう見ても俺のカバンだ。傷の位置、繕った跡まで同じである。

『それなら少しは騙せるじゃろ?』

 念の為カバンを開いてみると、中に何か入っているように見える。

「何か入ってるぞ!」

『そう見えるだけじゃ! 実際取り出すことも可能じゃぞ?』

 試しに手を入れて取り出してみると、ウサータがゴロンと出てきた。

「え? えぇ!? どうなってるんだ!? こんなことも出来るのか!? これ、幻影だろ!?」

『種明かしじゃ。ほれ』

 パンッと何かが弾けるような感覚がして、手にしていたカバンが麻袋へと戻った。

 ウサータだと思って出した物が足元に転がっている。

「は? 木桶?」

 底の抜けた木桶だった。

「いやいやいや、だって、空の麻袋!」

『空? よぉく見てみい』

 言われるまま麻袋を開いて覗いてみると、色んなゴミが入っていた。

「お前っ! もしかしてこの麻袋に収納魔法をかけたのか!?」

『さすがに中身を取り出すなんてことをされては誤魔化しがきかなくなるからのぉ。なーに、短時間で切れる簡素なものよ。造作もないわ』

 魔法の無駄遣いである。

「このゴミ全部に魔法を掛けてるのか?」

『まぁ、そうなるかの』

 しかも規格外である。こんなやつが野に放たれていていいのだろうか?

 今は卵だから問題なくても、孵ったら……まぁ、今まで引きもこっていたのだ、孵ったらまた引きこもるんだろうな、シャンテなら。

 一時間と少しして、ギョロ目が真っ赤な顔をして走ってきた。

 ずっと走ってきたのか息も絶え絶えといった感じだ。

「一時間って言ったのに遅刻か?」

 ギースよ、情け容赦ないな! でもデビル・ブラザーズならそう言いそうだ。

「余程死にたいようだな?」

 俺もそこに乗っかった。

「ハァ、ハァ、す、すまない! ボ、ボスが、席を外していてっ!」

「そんな言い訳はいらねぇよぉ! 約束は約束だろぉ? なぁ、ジャッキー?」

「だな、ドゥッキー」

 板につきすぎていて、ギースが本物のドゥッキーに見えてくる。

「ま、待て! 待ってくれ! ちゃんとボスに会える手筈は整えた! だから待てっ!」

 本当に殺されると思っているのだろう。気の毒なほど怯えている。

「命拾いしたなぁ。じゃ、早速豚のところに連れてけや!」

「そ、その前にっ! ボスの前ではくれぐれも『豚』なんて言わないでくれ! 頼むっ!」

「あぁ!? 豚に豚って言って何が悪い?」

「ボスは、自分をスリムな美男子だと思い込んでいるんだ!! 豚なんて言ったら、お前らだってタダじゃ済まないぞ!」

「「ギャハハハ」」

『び、美男子じゃと!? クッ……プッ……アハハハハ』

 俺らは多分、この瞬間、心から笑っていたと思う……人の容姿で笑うのは失礼だとは思うのだが。

 一頻り笑った後、遅れてやってきた窓のない真っ黒い馬車にのり、ドリスの宿へと向かった。

 宿屋の三階にあるドリスの部屋に入ると、ドリスはソファーに座り口や鼻にべっとりとチョコクリームをつけながらケーキを貪り食っているところだった。

『プッ! アハハハハ! シシーガじゃ! シシ!』

 シャンテが大笑いを初めてしまった。

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