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旅の始まり
薬作り
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リュクとガラガの葉が必要だと言うとロックは驚いた顔をしたが、すぐにリュクの葉を採ってきてくれた。
ガラガの葉はギースが採ってくると言い、三十分ほどで戻ってきた。
『材料が揃ったのぉ。では作るとしようか。何も難しい工程はないからの、アースでも作れるよ』
シャンテの指示に従いながら鍋やカップ、すり鉢にすりこぎ棒などを用意してもらい、薬作りが始まった。
『まずはリュクを煮出す。鍋にリュクの葉と水をこのカップ三杯分ほど入れて、三十分煮出すのじゃ』
鍋にリュクの採ってきてもらった全部のリュクの葉を入れ、目の前にあったカップで三杯水を加え火にかけた。
『沸騰したらその後は弱火でじっくりと煮出すのじゃ。焦げ付かしたりせんようにして、弱火にかけ、葉から成分を全て取り出すのじゃ』
リュクの葉を煮出そうとしたところ、自分も手伝わせて欲しいとロットが言ってきたので任せることにした。
『ガラガの葉はさっと茹でてクタッとしたら細かく刻む。万寿草の根はそのまま良く洗ってから細かく刻んでくれ』
言われるままガラガの葉を茹で刻んでいると、ギースがキラキラした目でこちらを見ていた。
「やってみるか?」
「いいんですか!?」
嬉しそうにナイフを受け取ると、腰を曲げてまな板との距離が二十センチもないのではないかというほど顔を近付け、慎重に切り刻み始めた。
俺は万寿草の根を切り刻み始めたのだが、これがなかなか力のいる作業で、全部刻み終わる頃には手にナイフの跡が赤く付いていた。
腕はパンパンである。
俺が切り刻み終える頃、ギースも終わったようで「これでいいですか!?」と嬉しそうに尋ねてきた。
「上出来だ!」
そう言って頭を撫でてやると、ギースは嬉しそうに目を細めた。
本当に可愛すぎるんだよな、こいつ(中身は地龍)。
『では、ガラガの葉と万寿草の根を混ぜ合わせ、細かく摺るのじゃ』
「いや、もう俺、腕がパンパンなんだが」
『何? それくらいで腕がパンパンとな? ほんに脆弱じゃのぉ』
「じゃあ、僕がやってもいいですか?」
またしてもギースがキラキラした目でこちらを見ながら言ってきたのでお願いすることにした。
「うんしょ……うんしょ……あはっ、楽しい」
全く疲れた様子もなく、実に楽しそうに、そしてとんでもないスピードでゴリゴリとすり潰しているギース。
その様子を見ると「やっぱ地龍なんだよな」と思い知らされた。
粘り気のあるペースト状までに仕上がるのに五分とかからず、混ぜてすり潰されたそれはどう見ても食欲が一切湧かない茶色味の強い緑色をしていた。
「こんなもんでいいでしょうか?」
その頃には煮出す作業も終わったようで、それを清潔な布でしっかり濾すと、鮮やかな青い色水だけが残った。
『さぁ、仕上げじゃ! リュクの煮汁の中にそれを投入してよーく混ぜるのじゃ!』
『正気か!?』
『そうせんと薬は出来んよ?』
気が進まなかったが、青い色水の中にドロドロをぶち込み、木ベラでしっかりと混ぜていく。
『色が三段階変わるのでな、三段階目の変色で完成じゃ!』
混ぜた当初は泥水よりも汚い色をしていたのだが、混ぜていくと汚さが消え、綺麗な黄緑色に変化した。
それが第一段階らしい。
更に混ぜていくと手に伝わる重さが減り、色もオレンジジュースのような見た目へと変化した。
それが第二弾である。
そこから更に混ぜていくと、水を混ぜているかのように感触が軽くなり、どす黒さのある紫へと色が変わった。
『完成じゃ! それ以上混ぜるでない! 薬が変質してしまうでな』
手を止め、完成した液体を保存用の瓶へと移した。
『それを日に三度、大さじ一杯ずつ、十日ほど飲ませれば完治する』
さじにすくい少女の口元へと運ぶと、少女は嫌そうに目を細めたのだが、諦めたように息を吐き薬を飲んでくれた。
するとすぐに変化は現れた。
ベッドの縁にまで広がり目視出来ていた根っこが変色を始めたのだ。
『この病はの、人間が引き起こす病ではないのじゃ。「樹木蝶」が己の子孫を残すために生物に種を植え付けるのよ』
樹木蝶とは初めて耳にする生物だったが、シャンテが丁寧に説明してくれた。
樹木蝶は体長わずか一センチにも満たないほどの小型の蝶で、普段はこの辺りよりももっと暖かい地域の、大型魔物の傍で生息している。
本来は樹木などに卵を産み付けるようなのだが、適当な樹木が見つからないと生物に卵を産み付け、その際一緒に樹木蝶だけが生成する種も植え付ける。
卵が孵った際に餌となる樹木がなければ成虫にもなれないので、樹木蝶なりの親心なのだろうが、植え付けられた方はたまったもんじゃない。
樹木蝶がいる地域に住む魔物はその対処法としてリュクとガラガの葉を食べ、万寿草は根ごと食べるのだそうだ。
『樹木蝶は体が小さいのでな、極稀に嵐などで飛ばされた際に人間の住処の近くまで飛ばされてきてしまうのよ』
飛ばされてきた樹木蝶は寿命が尽きる前に手近にいる生き物に種と卵を産み付け、産んだと同時に命が尽きる。
生存本能のなせる業とはいえ、本当に迷惑極まりない話だ。
こんな病を引き起こしているのが、まさかそんな小さな昆虫だとは誰も思わないだろう。
卵を産み付ける際痛みを感じないのか疑問だったのだが、一種の麻酔成分のようなものも一緒に分泌しているため、産み付けられたことすら気付かないらしい。
しばらくすると少女の体から伸びていた根っこが灰色になりバラバラと崩れ始めた。
『一種の駆除剤なのよ、あれは』
根を枯らしてしまえば樹木は育たず、それ以上成長することもなくなる。
根が生える前に薬を飲めばすぐに駆除出来、何日も飲むことなく済むらしいのだが、樹木病は根が出るまで分からないため、気付いたら進行している場合が多く、そうなると何日も飲まなければなくなるそうだ。
『あそこまで進んでおるとな、しばらく飲まねば治らんさ』
「リル!」
「お父さん……」
少女の名はリルというらしい。
まだ皮膚は木の表皮のような見た目をしているが、根っこがなくなったことで動けるようになり、ゆっくりと身を起こした。
「私、動けるよ……」
「あぁ、あぁ、そうだな」
「うわぁぁぁぁああん」
リルは声を上げて泣き出した。
それを見たロックはリルを抱きしめ一緒に泣いている。
俺ももらい泣きしそうになり、そっと背を向けた。
ガラガの葉はギースが採ってくると言い、三十分ほどで戻ってきた。
『材料が揃ったのぉ。では作るとしようか。何も難しい工程はないからの、アースでも作れるよ』
シャンテの指示に従いながら鍋やカップ、すり鉢にすりこぎ棒などを用意してもらい、薬作りが始まった。
『まずはリュクを煮出す。鍋にリュクの葉と水をこのカップ三杯分ほど入れて、三十分煮出すのじゃ』
鍋にリュクの採ってきてもらった全部のリュクの葉を入れ、目の前にあったカップで三杯水を加え火にかけた。
『沸騰したらその後は弱火でじっくりと煮出すのじゃ。焦げ付かしたりせんようにして、弱火にかけ、葉から成分を全て取り出すのじゃ』
リュクの葉を煮出そうとしたところ、自分も手伝わせて欲しいとロットが言ってきたので任せることにした。
『ガラガの葉はさっと茹でてクタッとしたら細かく刻む。万寿草の根はそのまま良く洗ってから細かく刻んでくれ』
言われるままガラガの葉を茹で刻んでいると、ギースがキラキラした目でこちらを見ていた。
「やってみるか?」
「いいんですか!?」
嬉しそうにナイフを受け取ると、腰を曲げてまな板との距離が二十センチもないのではないかというほど顔を近付け、慎重に切り刻み始めた。
俺は万寿草の根を切り刻み始めたのだが、これがなかなか力のいる作業で、全部刻み終わる頃には手にナイフの跡が赤く付いていた。
腕はパンパンである。
俺が切り刻み終える頃、ギースも終わったようで「これでいいですか!?」と嬉しそうに尋ねてきた。
「上出来だ!」
そう言って頭を撫でてやると、ギースは嬉しそうに目を細めた。
本当に可愛すぎるんだよな、こいつ(中身は地龍)。
『では、ガラガの葉と万寿草の根を混ぜ合わせ、細かく摺るのじゃ』
「いや、もう俺、腕がパンパンなんだが」
『何? それくらいで腕がパンパンとな? ほんに脆弱じゃのぉ』
「じゃあ、僕がやってもいいですか?」
またしてもギースがキラキラした目でこちらを見ながら言ってきたのでお願いすることにした。
「うんしょ……うんしょ……あはっ、楽しい」
全く疲れた様子もなく、実に楽しそうに、そしてとんでもないスピードでゴリゴリとすり潰しているギース。
その様子を見ると「やっぱ地龍なんだよな」と思い知らされた。
粘り気のあるペースト状までに仕上がるのに五分とかからず、混ぜてすり潰されたそれはどう見ても食欲が一切湧かない茶色味の強い緑色をしていた。
「こんなもんでいいでしょうか?」
その頃には煮出す作業も終わったようで、それを清潔な布でしっかり濾すと、鮮やかな青い色水だけが残った。
『さぁ、仕上げじゃ! リュクの煮汁の中にそれを投入してよーく混ぜるのじゃ!』
『正気か!?』
『そうせんと薬は出来んよ?』
気が進まなかったが、青い色水の中にドロドロをぶち込み、木ベラでしっかりと混ぜていく。
『色が三段階変わるのでな、三段階目の変色で完成じゃ!』
混ぜた当初は泥水よりも汚い色をしていたのだが、混ぜていくと汚さが消え、綺麗な黄緑色に変化した。
それが第一段階らしい。
更に混ぜていくと手に伝わる重さが減り、色もオレンジジュースのような見た目へと変化した。
それが第二弾である。
そこから更に混ぜていくと、水を混ぜているかのように感触が軽くなり、どす黒さのある紫へと色が変わった。
『完成じゃ! それ以上混ぜるでない! 薬が変質してしまうでな』
手を止め、完成した液体を保存用の瓶へと移した。
『それを日に三度、大さじ一杯ずつ、十日ほど飲ませれば完治する』
さじにすくい少女の口元へと運ぶと、少女は嫌そうに目を細めたのだが、諦めたように息を吐き薬を飲んでくれた。
するとすぐに変化は現れた。
ベッドの縁にまで広がり目視出来ていた根っこが変色を始めたのだ。
『この病はの、人間が引き起こす病ではないのじゃ。「樹木蝶」が己の子孫を残すために生物に種を植え付けるのよ』
樹木蝶とは初めて耳にする生物だったが、シャンテが丁寧に説明してくれた。
樹木蝶は体長わずか一センチにも満たないほどの小型の蝶で、普段はこの辺りよりももっと暖かい地域の、大型魔物の傍で生息している。
本来は樹木などに卵を産み付けるようなのだが、適当な樹木が見つからないと生物に卵を産み付け、その際一緒に樹木蝶だけが生成する種も植え付ける。
卵が孵った際に餌となる樹木がなければ成虫にもなれないので、樹木蝶なりの親心なのだろうが、植え付けられた方はたまったもんじゃない。
樹木蝶がいる地域に住む魔物はその対処法としてリュクとガラガの葉を食べ、万寿草は根ごと食べるのだそうだ。
『樹木蝶は体が小さいのでな、極稀に嵐などで飛ばされた際に人間の住処の近くまで飛ばされてきてしまうのよ』
飛ばされてきた樹木蝶は寿命が尽きる前に手近にいる生き物に種と卵を産み付け、産んだと同時に命が尽きる。
生存本能のなせる業とはいえ、本当に迷惑極まりない話だ。
こんな病を引き起こしているのが、まさかそんな小さな昆虫だとは誰も思わないだろう。
卵を産み付ける際痛みを感じないのか疑問だったのだが、一種の麻酔成分のようなものも一緒に分泌しているため、産み付けられたことすら気付かないらしい。
しばらくすると少女の体から伸びていた根っこが灰色になりバラバラと崩れ始めた。
『一種の駆除剤なのよ、あれは』
根を枯らしてしまえば樹木は育たず、それ以上成長することもなくなる。
根が生える前に薬を飲めばすぐに駆除出来、何日も飲むことなく済むらしいのだが、樹木病は根が出るまで分からないため、気付いたら進行している場合が多く、そうなると何日も飲まなければなくなるそうだ。
『あそこまで進んでおるとな、しばらく飲まねば治らんさ』
「リル!」
「お父さん……」
少女の名はリルというらしい。
まだ皮膚は木の表皮のような見た目をしているが、根っこがなくなったことで動けるようになり、ゆっくりと身を起こした。
「私、動けるよ……」
「あぁ、あぁ、そうだな」
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