この世界で唯一の猫は俺~捕獲対象として賞金掛けられたが、相棒の黒龍(卵)とのんびり旅します

ロゼ

文字の大きさ
27 / 55
旅の始まり

捕物劇

しおりを挟む
 パープルダイヤは一千万で黒に金縁の仮面をつけた小太りのご婦人が落札した。

 次いで出てきたのは赤龍の鱗だったが、それを見た瞬間にシャンテが『偽物じゃな』と言った。

 それでも真偽など知らない会場のもの達は大いに盛り上がり、パープルダイヤほどの値はつかなかったが六百万で落札されていた。

『そろそろかの? 目くらましの魔法をかけるから、隅に移動せい』

 シャンテの言葉を合図に、俺達は会場の隅、出入口の扉の横に移動した。

 移動して少しすると外から複数の足音がし、扉が激しい音を立てて開かれた。

 そして二十人以上の兵士が会場内になだれ込み、あちこちから悲鳴が上がった。

 捕物の始まりだ。

 時は少し巻き戻る。

 俺がシャンテの指示の元ロットに頼んだのは三つ。

 一つは誰にも見られないように詰所まで行き、闇オークションが開かれていることを密告すること。

 もう一つは空き地に転がされているデビル・ブラザーズの身柄を拘束してもらうこと(魔法は解除済)。

 最後はこの町の少し先にある魔の森の手前の訓練兵の詰所に行き、応援を要請すること。

 この国は前世の警察の役割を国の兵士が担っており、ロットに聞いたところドリスと兵士の癒着はないようだったのでそこに走ってもらったのだ。

 こんな小さな町にいるのはせいぜい二、三人の兵士のみ。それではこのオークション会場を制圧することは難しい。

 デビル・ブラザーズを捕まえてもらうことも考えると、ロットに詰所まで走ってもらわなければオークションの時間内に兵士がこの場に集まることも不可能だとシャンテは考えたのだ。

「過去のオークションの証拠や、ハンターを襲わせていた証拠があります! それを持って行きます!」

 そう言っていたが、本当にその通り動いてくれたようだ。

 悪事に手を染めていてもそれを密告した場合罪に問われないことがある。

 悪事の程度にもよるのだが、ロット自身は手先となり動いていただけなので、密告したことでその罪はチャラになる可能性が高い。

「私のことはいいのです! 娘を助けていただいた御恩に報いるためならば、逮捕されても構いません!」

 密告なんて本当ならば怖いことだろうが、きちんと動いてくれて本当に助かった。

 さすがに俺が猫になってこの場で暴れたとしても、ドリスが捕まらなければこんなことが繰り返されるだけだ。

 あいつを捕まえるためにはきちんとした兵士に逮捕してもらうしかない。

 まぁ、他力本願ではあるが、何の権力もない俺にはこうするしかないし、そもそも目立ちたくもない。

 会場内では兵士に対抗しようと魔法が飛び交い始めたのだが、兵士には対魔法用の鎧や盾があるため大抵が跳ね返されていた。

 魔法が当たり前のこの世界、その対抗手段も色々と開発されている。

 でなければ治安を守る兵士は命をすぐ落としてしまうだろう。

『ほぉ……あやつ、雷系の魔法でも『震雷しんらい』を使うのか……面白いのぉ』

 シャンテが注目していたのは、なんとあの痩せた男だった。

 ドリス側ではなく兵士側で応戦している。

『あいつ、もしかして潜伏調査でもしていたのか?』

『そうやもしれんな』

 怒られていた時はひ弱そうにしか見えなかったのだが、魔法で制圧している姿は凛々しく見える。

 震雷とは大地が震えるほどの威力があると言われている雷魔法なのだが、威力を抑えているのか雷を打たれた相手が痺れてその場に倒れるだけで収まっている。

『さすがにこの狭い空間では本来の力は出せんよの。抑制の腕輪も付けているようじゃし、威力は十分の一といったところかの』

 ある程度の制圧が済んだのだが、ドリスはまだ壇上にいて、金に返る魔法を放ちまくっている。

 巻き込まれた客達が次々に金塊に変わっているが、兵士には当たっていない。

 痩せた男が腕輪を外すのが見えた。

『おぉ! 震雷が見れるのか!』

 シャンテが楽しげに声を上げた。

 ビリビリとした空気が室内を包むように広がり、ドリスの上に薄く黒い雲が広がった。

 雲の中にはチラチラと電気が走っているようで、あちこちから光が見える。

『そろそろじゃな! 来るぞ!』

 大爆発でも起きたのかというほどの轟音が鳴り響き、目も開けていられないほどの閃光の次に、立っていられないほどの揺れが起きた。

 下から突き上げられるような激しい揺れだったが一瞬で収まり、目を開けると少し焦げたようになったドリスが白目をむいて転がっていた。

『殺さぬように床を狙ったのじゃな』

 ドリスのすぐ近くの床には大穴が開いており、ステージと前の方の座席部分の床の半分以上が吹っ飛んでいた。

『直撃したら死んでるよな?』

『じゃろうな。それで生きておったら天晴れじゃな』

「僕なら大丈夫ですけどね」

 念話でシャンテとは繋がっているギースが涼しい顔でそう言った。

 そりゃそうだろ! と思ったが口には出さなかった。

 シャンテの念話はシャンテを中心にして互いに繋がっているが、俺とギースには念話の魔法がないためそこは繋がっていない。

 俺にはシャンテの声が届くがギースの声は聞こえないし、ギースもまた然りである。

 震雷を放った痩せた男はまっすぐ俺の前にやって来て、クルリと背を向けた。

「今のうちに会場を出てください。そんな見た目をされていますが、デビル・ブラザーズではないのでしょう? きっとここに兵をよこすように仕向けたのもあなた方なのでしょう?」

 俺らの姿が見えていることにシャンテが驚きの声を上げた。

『こやつ、本当にやりおるぞ! 人間としてはなかなか骨のあるやつじゃ!』

「あなた方のことはまだ私にしか見えていない様子。今ならばここから簡単に抜け出せるでしょう。じきに抗魔具を持った第二兵団がやってきます。そうなればその目くらましの魔法も解けてしまう。そうなる前に、早く」

「いいのか? 俺らを逃がしたらまずいことにならないか?」

「この捕物の功労者を逮捕する方が兵士としては恥です。さぁ、早く」

「すまない、ありがとう!」

「ココッタ、美味しかったです」

 痩せた背中が大きく見えた。

 俺達は兵士にぶつからないようにしながら地下会場から脱出し、アンリさんの宿屋に戻った。

「無事だったんですね! 何だか外が大変なことになっているので、巻き込まれていないかと心配していたんですよ!」

 戻った俺達を見て、アンリさんは涙目になっていた。

 きっと、情の厚い優しい人なのだろう。たった二泊しかしない、客でしかない俺達のことをこんなに心配してくれるほどに。

 

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

魔法筆職人の俺が居なくなったら、お前ら魔法使えないけど良いんだよな?!

川井田ナツナ
ファンタジー
俺は慈悲深い人間だ。 だから、魔法の『ま』の字も理解していない住民たちに俺の作った魔法筆を使わせてあげていた。 だが、国の総意は『国家転覆罪で国外追放』だとよ。 馬鹿だとは思っていたが、俺の想像を絶する馬鹿だったとはな……。 俺が居なくなったら、お前ら魔法使えなくて生活困るだろうけど良いってことだよな??

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

Gランク冒険者のレベル無双〜好き勝手に生きていたら各方面から敵認定されました〜

2nd kanta
ファンタジー
 愛する可愛い奥様達の為、俺は理不尽と戦います。  人違いで刺された俺は死ぬ間際に、得体の知れない何者かに異世界に飛ばされた。 そこは、テンプレの勇者召喚の場だった。 しかし召喚された俺の腹にはドスが刺さったままだった。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...