庭師の俺がなぜかお嬢様に誘われて領地に現れたダンジョンを探索しに行くことになった

けろよん

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第11話 覚悟の灯火

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 影は不気味に俺たちに選択を突き付けてくる。俺だけなら逃げる事はできるだろう。影の目的はこの町なのだから町を捨てて逃げればいいだけだ。
 だが、その後はどうする? 影の目的がこの町の支配だけに留まるとは思えない。いずれは俺の国や全世界をも呑み込んでいくだろう。抗う時はきっと来る。
 それにお嬢様がやる気だ。彼女はこの国を他者に蹂躙されるのを良しとしない。

「カナデさん……私は逃げる為にここへ来たんじゃありません。立ち向かう為に来たんです」

 マリアは一歩、不気味に佇む影へと進み出た。
 その姿は震えていたが、背筋はまっすぐに伸びていた。

「これは、私の領地で起きたことです。だから――私の手で終わらせたい」

 彼女の瞳には、決意の光が宿っていた。
 いつもは控えめで、危険なことには無理をしないよう俺が言い聞かせてきたお嬢様が、今はまるで別人のように、前を向いている。

「お嬢様……」

 何と毅然とした美しい態度だろうか。俺は言葉を失った。
 彼女がただの守られる少女ではなく、まさしく領主の娘として目覚めたのだと感じた。

「この地の人々が不安に怯えるのを、見たくないんです。カナデさん。私はこのダンジョンの力を、自分の手で御してみせます」

 俺は短く息を吐き、腰の剣を握り締めた。
 これ以上、止めることはできない。
 彼女の意思を、俺は支えるしかない。

「……わかりました。なら、俺も覚悟を決めます」

 マリアがこちらを見る。その表情には驚きと、どこか安堵の色が混じっていた。

「本当にいいのですか? 危険かもしれません」
「危険なんて、最初から覚悟の上です。俺は庭師ですけど――お嬢様の隣に立つ者でもありますから」

 その言葉に、お嬢様の目が少し潤む。
 けれど、すぐに顔を上げ、静かに微笑んだ。

「ありがとう、カナデさん。あなたがいてくれてよかった」

 その笑顔に、俺の胸の奥で何かが熱く燃えた。
 どんな敵が現れようと、この人を守り抜く。
 それが、俺がこの地に来た意味なのかもしれない。
 戦う覚悟を決めて身構えると、じっとマリアを見ていた影が不意に俺を見た。

「その娘を置いて去れ。この地に住まわぬ者に用はない」
「聞いていなかったのか? 俺はお嬢様とともに戦うんだって!」
「……来ます!」

 祭壇の上の光が強まり、闇が渦を巻く。
 影が空間から剣を取りだし、さらにその姿を戦闘態勢へと移行させていく。
 その目がさらに強く紅く輝き、声が空間を震わせる。

「お前の覚悟を認めよう。選ぶがいい、人の子らよ。ここでダンジョンの封印を解き、自らこの地でそれを目にするか……あるいは、ここで消えるか」

 マリアは一歩も引かない。
 祭壇の光が彼女の髪を照らし、まるでその身に神聖な光が宿ったようだった。

「私は、この地を守るために立ちます。あなたが何者であろうと、力で私の領地を脅かすことは許しません!」

 お嬢様の声が響く。
 その瞬間、彼女の手の中で、光が形を成した――
 まるで土地そのものが応えているかのように。

 それは、古代の紋章を宿す「鍵」のような装飾品だった。
 ダンジョンの核心に迫る“封印の媒体”――領主の血にしか反応しない力。

「これは……!」
「古の血塗られた民、我が力に対応する術も用意していたか」
「お嬢様、下がってください! こいつ、何かを仕掛ける気だ!」

 俺は前へ出て、剣を構えた。影が笑うように歪む。

「ならば見せてもらおう、人の覚悟というものを」

 空気が震え、闇が襲いかかる。
 だが、その時、俺の中にも光が宿った。

 お嬢様を守る――その想いが、何かを呼び覚ましたのだ。
 剣が淡く光り、風が渦を巻く。

「お嬢様、俺が影を押さえます! 隙を見てその鍵を!」

 マリアが頷き、祭壇の中心に走っていって鍵をかざす。
 勇敢なのは結構な事だが、相手の動きを見ないその行為は無謀だ。

「お嬢様! 焦らないで!」
「グレインフィールド……!」

 光と闇がぶつかり合い、轟音が響いた。

 ――俺とマリアは、運命の中に飛び込んだ。
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