まやかのスキルは魔王級 面倒な仕事は誰か他の人にやってもらいたい

けろよん

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第6話 ドラゴンの襲来

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 避難しなくていいんだろうかと私が思いかけた時、部屋の扉が開いて菜々ちゃんが入ってきた。

「まやかちゃん、まだここにいたんだ」
「うん、正也君にここにいろって言われたから。多分モンスターを片付けたらすぐに会議を再開するんだと思う。菜々ちゃんは何でここに来たの?」
「まやかちゃんが連れていかれるから気になって。いったい何の用だったの?」
「私がミノタウロスを見てたからその時の話をして欲しいって」
「むー、あたしも見てたのに何でまやかちゃんだけ」
「私一人で十分だと思ったんじゃないかな。それに菜々ちゃんには部活があったし……そう言えば部活はどうしたの?」
「警報が出たから一旦休止になったよ。だからここへ来たの」

 なるほど、だから菜々ちゃんは体操服を着ているのか。部活が中断されて避難せずにそのままここへ来たようだ。
 ちなみに菜々ちゃんはテニス部に所属している。陰キャな私と違って実に健康的でうらやましい。
 その部活もモンスター退治が終わったら再開するのだろう。モンスターが当たり前に現れるようになった世界でこれぐらいの事で学校が休みになったりはしない。
 菜々ちゃんは不安そうに言う。

「大丈夫かな、またミノタウロスが現れたら……」
「大丈夫だと思うよ。今度は近所のスキルマスターが何人も集まってるし。逆に誰がミノタウロスを倒すかで揉める心配をした方がいいかもしれない」
「だよねー。ミノタウロスを倒せたらきっと一躍有名人だものね」
「そうだねー。あはは……」

 ここにまさしく有名人になって困っている人がいます。手柄を上げてさらに有名になりたいなんて変わった人達だと思う。
 誰にも構われずに気ままに過ごせた方が絶対に楽だと思うんだけど。
 そんな話を呑気に菜々ちゃんとしていると地震が始まった。
 最初は小さな揺れだったけどだんだんと大きくなってくる。ズシーンズシーンと何かが近づいてくるような音までする。

「何だろう、まやかちゃん。地震かな」
「地震とは違うような。これはまるで巨人が歩いてくるような……?」

 窓の外を見て私は驚いた。巨人ではなかった。ドラゴンだった。
 山か戦車のような威圧感。トカゲを大きくして獰猛な恐竜のような牙や角を生やしたそれはまさしくファンタジーで最強の生物と名高いドラゴンだ。
 それが校門の前の道路をまっすぐこちらに向けて歩いてくる。さすがの私も驚いてしまった。

「この学校、大丈夫なの?」
「正也君達は大丈夫なのかな?」

 私と菜々ちゃんでは心配するものが違っていたが。とにかく危機が迫っていた。



 正也は他校のスキルマスター達とともに校門近くで敵を待ち構えていた。
 ゴブリンやスライムならそれでいい。いつものように掃除を済ませるだけだ。ミノタウロスでもこのメンバーなら戦えると思っていたが、さすがにドラゴンが現れたのには驚いた。

「おい、なんだありゃ!?」
「嘘だろう? あんなもんどうやって倒すんだよ」
「逃げるか?」
「馬鹿野郎! 俺達が逃げるわけにもいかねえだろうが!」

 スキルマスター達は逃げ腰になっている。無理もない。彼らは自らのスキルを使いこなせるマスターに至った実力者といってもまだ中学生なのだ。
 この辺りには弱いモンスターしか現れないし、ミノタウロスすら見たのは初めてだ。
 それなりに経験を積んでいる正也でもさすがにドラゴンが現れたのには息を呑むしかなかった。
 ともかく迎撃しなければならない。校門が踏みつぶされる前に先手必勝だ。

「みんなで一斉攻撃を仕掛けるぞ!」

 みんなに檄を飛ばして炎のスキルを放つ。あのミノタウロスとの戦いからさらに修練を積んで強力になった炎だ。
 もう魔王にも馬鹿にさせないと頑張ってきた。

「ミノタウロスなら焼けるだろうがドラゴン相手ならどうだ!?」

 炎のスキルはドラゴンの顔面に命中。わずかに怯ませたがやはり通用しない。強靭な鱗を持ったドラゴンが相手では炎属性は分が悪い。
 怒ったドラゴンは校門目がけて突っ込んでくる。

「みんな! 奴をとめろ!」
「突っ込んでくるなら逆にやりやすい。トラップにかけてやる!」

 雷と氷の網、さらに土の壁で妨害を図る。だが、ドラゴンは全てを粉砕して校門を防衛装置ごと踏みつぶして入ってきた。

「こいつ、来たぞ!」
「飛んで火にいる夏の虫だ。一気に畳むぞ!」

 ドラゴンを広い校庭まで誘いだして、みんなで包囲してスキルで攻撃する。だが、ドラゴンはやはり固い。全てを受けながら、腕を振り払って反撃してくる。

「うわっ! こいつはすげえパワーだ!」
「怯むんじゃない! 奴を動かせるな! スキルは当たってる!」
「ここで押し切られたら校舎まで破壊されるぞ」
「分かってるけどよお」

 みんなは必死に戦うが、やはりドラゴンは強い。正也達のスキルがいくら当たっても、ドラゴンは平然としている。

「こいつ、スキルが効いていないのか!?」
「いや、効いているはずだ。ドラゴンの体力が高いんだ」
「ならばこのまま削り切って止めを刺してやる!」

 ドラゴンは校庭を踏み荒らしながら暴れまわっている。正也達はドラゴンをどこにも行かせないように包囲して攻撃を繰り返す。
 敵に狙いを絞らせてはいけない。前へ行こうとすれば後ろから攻撃してドラゴンの注意を上手く逸らせる。
 このまま奴をどこにも逃がさずに体力を削りきれるかと思った時、不意にドラゴンの姿が消えた。

「なんだ!? どこへ消えた!?」
「上だ!」
「え? うわあ!!」

 見上げると空から巨大な体が落ちてくるところだった。ドラゴンは飛んだのだ。そして、そのまま落ちてきた。正也達は慌てて逃げ出すが間に合わない。

「ぐあああっ!!!」
「きゃーっ!!」

 強烈な地震が辺り一帯を震わせ、その衝撃でスキルマスター達が吹き飛ばされる。ドラゴンの攻撃は終わらない。さらに口を開いてブレスの発射体勢に入っている。

「みんな! 避けろ! 避けてくれ!」

 正也が叫んでもどうにもならない。ドラゴンは体を回転させながらブレスを吐き、スキルマスター達のいる円周上を薙ぎ払った。



 私はその光景を会議室の窓から見ていた。菜々ちゃんはうろたえていた。

「どうしよう、まやかちゃん。みんな負けちゃったよ」
「大丈夫だよ。私がもうやらせないから」
「え……?」

 私は菜々ちゃんを眠らせる。魔王のスキルなら一般人を眠らせるぐらい簡単な事だ。
 あまり不用意にスキルを使いたくないんだけど、時間が無いし、スキルマスターが集まっているこの現場だと私一人の能力ぐらい目立たない事に期待したい。
 私は菜々ちゃんを椅子に座らせると、魔王の仮面とマントを身に付けてすぐに外へと飛び出した。



 その時の私は気づいていなかった。遠くの高い場所から魔法使いの恰好をした少女がこの校庭を見ていたことに。

「ここも高ランクモンスターを倒せる実力者のいる場所でしたね。果たして魔王はいるでしょうか。あの者達ではせいぜいオークの相手をするのが限界のように見えますが……」

 ドラゴンを放ったのはやりすぎに思えるが、みんな避難しているようだし、学校一つが壊れるぐらいなら構わないだろう。
 彼女は静かにドラゴンとスキルマスター達の戦いを見つめていた。
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