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第11話 魔王と賢者
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その夜、私は夢を見ていた。異世界の城で本物の魔王として君臨し、玉座に座る私の前では配下の四天王達が膝を付いて頭を下げていた。
さすが魔王の手下はモンスター達ばかり。みんな強そうだが、誰も私に逆らえたりはしない。
魔王である私は玉座に座ったまま静かに呟く。
「まだ王都を落とせないでいるようだな」
「はい、何分賢者の張った結界が物凄く強固で。某の魔法でも全くビクともしないのです」
王都とは人間の世界の中心。今は光輝くバリアで覆われていて魔物達の侵入を防いでいる。
私の言葉に四天王で一番魔法に詳しいと自負している大魔道士は肩を震わせて答えた。
「ほう、つまり賢者マム・レイハートの魔法力は魔王軍最強の悪魔大魔道士の力を遥かに凌ぐということか」
「いえ、決してそんな事はないと思うのですが。あのような結界すぐに破壊して某の実力の方が上だということを証明しましょう」
悪魔大魔道士は立ちあがって部屋を出ていく。私には結界なんてどうでもよかった。今、賢者マム・レイハートって言った?
あの本にある事無い事書きやがった著者の名前だ。一言文句を言ってやらなければ気が済まない。
夢の中で私は立ち上がろうとするのだが、夢の中だからか動く事はできなかった。
脳内で不思議なテレパシーのような声がする。
『ほう、余の事を夢で見るようになったか。同調が進んできているようだな』
「誰!?」
『お前はもう知っているはずだ。魔王だよ』
「魔王!? あれ? でも、魔王は私で……あれ?」
『まだ混乱しているようだな。まあよい、いずれ機会は訪れる。賢者はすでにこの世界を狙ってきている。その時に備えて今は力を蓄えておくことだ。我らの敵は共通なのだからな』
意識が遠くなる。気が付くと私はベッドで寝ていた。
「まだ夜じゃん……」
昼にあんな話を聞いたからこんな夢を見たのだろうか。王都とか賢者とかよく分からない。そんなのは学者だけで考えてほしい。私には明日も学校があるのだ。
もう一度寝る事にする。布団が気持ちよくて、私は夢の事なんてすぐに忘れてしまうのだった。
セツナは魔法で飛んで自分の屋敷に戻ってきた。魔法でこの世界に造った屋敷だ。
菜々にはスキルと言ったが、魔法とスキルは違うものだ。魔法は異世界の力、スキルはこの世界で目覚めた者達の力だ。
もっともあのエックスデイ以来、セツナの世界でもスキルに目覚める者達が現れるようになったのだが。それが魔法を習ってきたセツナとしては面白くない。
この現象は双方の世界が影響を及ぼし合うようになった結果なのだろうか。
あのモンスター達を封じていたマムなら知っているかもしれないが、セツナにはよく分からなかった。
部屋に入って水晶玉に手をかざす。弟子として異世界にいる先生に報告を行った。
「マム先生、魔王と思われる者を見つけました」
『ほう、よく見つけられたな』
自分は試されている。そんな緊張感を感じながらセツナは報告を続けた。
「魔王はドラゴンを容易く倒しました。その力はこの世界でも健在だと思われます」
『たかがドラゴンであろう。四天王を倒したわけではあるまい。それも魔王の手下に過ぎんがな」
そう、王国最強の賢者と名高いマム先生にとってはドラゴンなど大した相手ではないのだ。おそらく魔王ですらも。
だからこそ弟子である自分にこの状況を任せている。いつまでも頼らずに解決してみせよと試練を与えている。
セツナが黙っていると彼女は訊ねてきた。
『セツナ、そちらの世界はどうじゃ?」
「良い世界だと思います」
『良い世界か。それはいいな』
弟子として長く仕えながらもセツナにはまだマム先生の考えが読み切れないでいた。だが、未知の物への興味があるのは知っていた。それを語る時の先生は本当に楽しそうだったから。
「マム先生はこの世界に本をお送りになったのですよね?」
『うむ、何も知らぬでは右往左往しか出来ぬであろうからな。わしは蟻どもに道を示しておこうと思ったのじゃ』
「蟻……ですか?」
『言い方が悪かったか? それとも言った意味が理解できなかったか?』
「いえ、そのような事は」
『そちらの世界の事はお前に任せる。今更わしが魔王の相手をしたとて得る物は無いであろうからな。わしの弟子として使命を全うしてみせよ。期待しているぞ』
「はい」
異世界との通信を終えてセツナは屋敷のバルコニーに出た。夜空が綺麗で風が気持ちいい。
この世界は本当にいい世界だと思う。魔王の陰謀さえなければ落ち着いて過ごすこともできただろう。
もっとも封印されていたモンスターを別の世界に撒いてしまったのはこちらの落ち度なので大きな事も言えないのだが。
「あの日が無ければこの世界を知る事もなかった。痛し痒しというものですね」
町で出会った菜々という少女の事を思いだす。魔王との繋がりが深いと思われる少女だが、彼女自身は魔王の正体を知らないようだ。
優しい少女を傷つけない為にも行動は慎重に起こさなければならない。
魔王には気を付けなければならないが、菜々との再会を思えばこれからの生活は楽しくなるのではないか。そんな予感がするのだった。
さすが魔王の手下はモンスター達ばかり。みんな強そうだが、誰も私に逆らえたりはしない。
魔王である私は玉座に座ったまま静かに呟く。
「まだ王都を落とせないでいるようだな」
「はい、何分賢者の張った結界が物凄く強固で。某の魔法でも全くビクともしないのです」
王都とは人間の世界の中心。今は光輝くバリアで覆われていて魔物達の侵入を防いでいる。
私の言葉に四天王で一番魔法に詳しいと自負している大魔道士は肩を震わせて答えた。
「ほう、つまり賢者マム・レイハートの魔法力は魔王軍最強の悪魔大魔道士の力を遥かに凌ぐということか」
「いえ、決してそんな事はないと思うのですが。あのような結界すぐに破壊して某の実力の方が上だということを証明しましょう」
悪魔大魔道士は立ちあがって部屋を出ていく。私には結界なんてどうでもよかった。今、賢者マム・レイハートって言った?
あの本にある事無い事書きやがった著者の名前だ。一言文句を言ってやらなければ気が済まない。
夢の中で私は立ち上がろうとするのだが、夢の中だからか動く事はできなかった。
脳内で不思議なテレパシーのような声がする。
『ほう、余の事を夢で見るようになったか。同調が進んできているようだな』
「誰!?」
『お前はもう知っているはずだ。魔王だよ』
「魔王!? あれ? でも、魔王は私で……あれ?」
『まだ混乱しているようだな。まあよい、いずれ機会は訪れる。賢者はすでにこの世界を狙ってきている。その時に備えて今は力を蓄えておくことだ。我らの敵は共通なのだからな』
意識が遠くなる。気が付くと私はベッドで寝ていた。
「まだ夜じゃん……」
昼にあんな話を聞いたからこんな夢を見たのだろうか。王都とか賢者とかよく分からない。そんなのは学者だけで考えてほしい。私には明日も学校があるのだ。
もう一度寝る事にする。布団が気持ちよくて、私は夢の事なんてすぐに忘れてしまうのだった。
セツナは魔法で飛んで自分の屋敷に戻ってきた。魔法でこの世界に造った屋敷だ。
菜々にはスキルと言ったが、魔法とスキルは違うものだ。魔法は異世界の力、スキルはこの世界で目覚めた者達の力だ。
もっともあのエックスデイ以来、セツナの世界でもスキルに目覚める者達が現れるようになったのだが。それが魔法を習ってきたセツナとしては面白くない。
この現象は双方の世界が影響を及ぼし合うようになった結果なのだろうか。
あのモンスター達を封じていたマムなら知っているかもしれないが、セツナにはよく分からなかった。
部屋に入って水晶玉に手をかざす。弟子として異世界にいる先生に報告を行った。
「マム先生、魔王と思われる者を見つけました」
『ほう、よく見つけられたな』
自分は試されている。そんな緊張感を感じながらセツナは報告を続けた。
「魔王はドラゴンを容易く倒しました。その力はこの世界でも健在だと思われます」
『たかがドラゴンであろう。四天王を倒したわけではあるまい。それも魔王の手下に過ぎんがな」
そう、王国最強の賢者と名高いマム先生にとってはドラゴンなど大した相手ではないのだ。おそらく魔王ですらも。
だからこそ弟子である自分にこの状況を任せている。いつまでも頼らずに解決してみせよと試練を与えている。
セツナが黙っていると彼女は訊ねてきた。
『セツナ、そちらの世界はどうじゃ?」
「良い世界だと思います」
『良い世界か。それはいいな』
弟子として長く仕えながらもセツナにはまだマム先生の考えが読み切れないでいた。だが、未知の物への興味があるのは知っていた。それを語る時の先生は本当に楽しそうだったから。
「マム先生はこの世界に本をお送りになったのですよね?」
『うむ、何も知らぬでは右往左往しか出来ぬであろうからな。わしは蟻どもに道を示しておこうと思ったのじゃ』
「蟻……ですか?」
『言い方が悪かったか? それとも言った意味が理解できなかったか?』
「いえ、そのような事は」
『そちらの世界の事はお前に任せる。今更わしが魔王の相手をしたとて得る物は無いであろうからな。わしの弟子として使命を全うしてみせよ。期待しているぞ』
「はい」
異世界との通信を終えてセツナは屋敷のバルコニーに出た。夜空が綺麗で風が気持ちいい。
この世界は本当にいい世界だと思う。魔王の陰謀さえなければ落ち着いて過ごすこともできただろう。
もっとも封印されていたモンスターを別の世界に撒いてしまったのはこちらの落ち度なので大きな事も言えないのだが。
「あの日が無ければこの世界を知る事もなかった。痛し痒しというものですね」
町で出会った菜々という少女の事を思いだす。魔王との繋がりが深いと思われる少女だが、彼女自身は魔王の正体を知らないようだ。
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