まやかのスキルは魔王級 面倒な仕事は誰か他の人にやってもらいたい

けろよん

文字の大きさ
12 / 21

第12話 新しい朝

しおりを挟む
「行ってきます」

 次の日の朝、私は制服に着替えて家を出る。今日もこれから学校だ。
 毎日学校に通うのは面倒だが、座って授業を聞いていれば終わると考えれば楽かもしれない。私の何よりも苦手な人付き合いをしなくて済むからね。
 そんな事を考えていると後ろから菜々ちゃんに声を掛けられた。

「おはよう、まやかちゃん」
「おはよう、菜々ちゃん」

 彼女と通学路で会うとは珍しい。菜々ちゃんは朝から明るくて元気そうだ。この元気さはどこから来るのだろうか。ちょっとうらやましい。
 学校まではすぐだけど一緒に歩く事にした。

「まやかちゃんは昨日はよく眠れた?」
「うん、ぐっすりと。どうして?」
「いろいろあったから。ドラゴンが現れたり、正也君と一緒だったり」
「ああ、あったね。もうスキルマスターの人達には絡まれたくないよ」

 私が昨日あった疲れた事を思いだしていると、いきなり町に警報が鳴った。

「ええ!? こんな朝から!? 最近多くない!?」
「またドラゴンかな……?」

 菜々ちゃんはそわそわしている。みんな避難していくが、私まで行ってしまうと相手がドラゴンだった場合、逆に被害が大きくなってしまうので、敵の正体だけは見ておかないといけない。
 モンスター達は道の向こうからやってきた。コボルトやリザードマン達が道の中央を歩きながら止まっている車を斬ったり蹴ったりしながら向かってくる。
 ゴブリンよりは強いが、ミノタウロスとは比べるまでもないザコだ。

「地元のスライムやゴブリンじゃない。よそから来たのかな? 朝からこんな事をして何が楽しいんだろうね」
「まやかちゃん、どうしよう」
「放っておけばいいと思うよ。あいつら私達に興味がないみたいだし、倒すのはスキルマスターの仕事だから」

 私達は背景キャラだ。こっちが手を出さないんだからそっちも構ってこないでよと念を送って見守っておく。リザードマンの一人が気が付いた。こっちに向かってくる。
 私は面倒だなと思いながら逃げる為に菜々ちゃんの手を引っ張った。

「まやかちゃん……?」
「合図したらついてきて」
「うん」

 リザードマンぐらい敵ではないが、あまりスキルマスターの仕事を奪うのもどうかと思う。あいつらの仕事なんだからあいつらにやらせておけばいいのだ。自分達は学校へ行かせてもらう。
 菜々ちゃんが見ているので目立つスキルは使えない。私は不自然に思われないようなタイミングを計るが、その必要は無くなった。
 スキルマスターが自分の仕事をしにやってきてくれたのだ。

「俺の炎で燃えやがれ!」

 朝から威勢のいい声を上げて自転車で走ってきた正也君はモンスター軍団の中央に走りこむと、一気にコボルトやリザードマン達を薙ぎ払った。さすがはドラゴンとも戦った経験のあるスキルマスターだ。
 ザコモンスターなんてあっという間に片付けてしまった。

「さすが正也君、腕を上げたねえ」
「助けてくれてありがとう」
「お前ら、何で避難してないんだよ」
「えっと、足がすくんじゃって」
「怖かったよー」

 菜々ちゃんが私の腕にすがりついてくる。正也君が嘘つけって目で私達を睨んでいたが、のんびりしてると遅刻してしまう。
 私達はそれ以上余計な口論はせずに学校へ急ぐのだった。



 ドラゴンに壊されていた校門はもうすっかり直されていた。さすがはモンスターが現れるのも当たり前になった現代。修理の技術も上がっている。
 私達は教室に入る。朝からモンスターが現れる警報が鳴ったが、みんなきちんと登校していて偉いと思う。
 今時の中学生にとってはモンスターが現れるなんて面倒な避難訓練かちょっとした災害か学校に犬が現れるぐらいの感覚なのかもしれない。もう日常の一部になっているのだ。
 教室のみんなの会話もモンスターが現れたなんてありふれた物ではなく、昨日の番組とかもうちょっと刺激性のある物だった。
 さて、授業の準備をしよう。
 チャイムが鳴るとみんなが席について担任の教師が入ってきた。
 まずはホームルーム、適当に聞き流そうと思っていたら先生が気になる事を言ってきた。

「はい、皆さん静かにして下さい。今日は転校生を紹介します」
「転校生だって?」
「どんな子なんだろう」
「楽しみだね」

 教室が騒がしくなる。ぼっちの私が関わる事はないだろうが、一応どんな子なのかは気になった。先生は言う。

「みんな喜べ。スキルマスターだぞ。僕も試験の様子を見ていたんだが、リアルで『わたし何かやっちゃいましたか?』を体感してしまったね」
「ほう、新戦力。これは期待できそうですな」
「最近、相田君苦戦してたもんね。もう補充要員を回してくれたんだ」
「これで楽になるか」

 教室は歓迎ムードだ。仕事を任せられる相手が出来て正也君は喜んでいるかと思ったら、ムスッとしていた。
 自分の仕事が取られるのが面白くないのだろうか。私なら喜んで全部丸投げするところだが。先生は廊下に向かって呼びかけた。

「では、入ってきて」
「はい」

 教室のドアが開いて現れたのは……制服を着た少女だった。そりゃこの学校に通うんだから同じ制服を着ているに決まっている。
 違うのは雰囲気だ。スキルマスター達は戦力の足りない地域に転校する事が多いので、彼女もやはり地元の人とは違った雰囲気があった。

「初めまして、わたしの名前はセツナ・カガリビと言います。よろしくお願いします」

 賢そうな子だ。それに異国のような情緒を感じる。菜々ちゃんがほうと唸っていた。

「この教室に来たか。校長先生は正也君と組ませるつもりなのかな」
「菜々ちゃん、あの転校生と知り合いなの?」
「うん、昨日ね。まやかちゃんの事をちょっと話し合ったんだ」
「んん?」

 なぜスキルマスターが正也君でなく私の事を話し合うのかよく分からない。菜々ちゃんに訊き返す時間はなかった。
 セツナちゃんが自分の席へ向かう途中で私に目を付けてきたからだ。

「あなたがまやかさんですね。これからよろしくお願いします」
「あ、どうも……こちらこそよろしくです」
「菜々ちゃんも」
「よろしくねー」

 私はなぜ目を付けられているのだろうか。そんな大層な人物でもないのに。
 とにかく、これからより一層注意して生きていこう。そう思うのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

悪魔さまの言うとおり~わたし、執事になります⁉︎~

橘花やよい
児童書・童話
女子中学生・リリイが、入学することになったのは、お嬢さま学校。でもそこは「悪魔」の学校で、「執事として入学してちょうだい」……って、どういうことなの⁉待ち構えるのは、きれいでいじわるな悪魔たち! 友情と魔法と、胸キュンもありの学園ファンタジー。 第2回きずな児童書大賞参加作です。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

勇者と聖女の息子 アレン ランダムスキルを手に入れて愉快に冒険します!

月神世一
児童書・童話
伝説のS級冒険者である父と、聖女と謳われた母。 英雄の血を引く少年アレンは、誰もがその輝かしい未来を期待するサラブレッドだった。 しかし、13歳の彼が神から授かったユニークスキルは――【ランダムボックス】。 期待に胸を膨らませ、初めてスキルを発動した彼の手の中に現れたのは…プラスチック製のアヒルの玩具? くしゃくしゃの新聞紙? そして、切れたボタン電池…!? 「なんだこのスキルは…!?」 周りからは落胆と失笑、自身は絶望の淵に。 一見、ただのガラクタしか出さないハズレスキル。だが、そのガラクタに刻まれた「MADE IN CHINA」の文字に、英雄である父だけが気づき、一人冷や汗を流していた…。 最弱スキルと最強の血筋を持つ少年の、運命が揺らぐ波乱の冒険が、今、始まる!

#アタシってば魔王の娘なんだけどぶっちゃけ勇者と仲良くなりたいから城を抜け出して仲間になってみようと思う

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 ハアーイハロハロー。アタシの名前はヴーゲンクリャナ・オオカマって言ぅの。てゆうか長すぎでみんなからはヴーケって呼ばれてる『普通』の女の子だょ。  最近の悩みはパパが自分の跡継ぎにするって言って修行とか勉強とかを押し付けて厳しいことカナ。てゆうかマジウザすぎてぶっちゃけやってらンない。  てゆうかそんな毎日に飽きてるンだけどタイミングよく勇者のハルトウって子に会ったのょ。思わずアタシってば囚われの身なのってウソついたら信じちゃったわけ。とりまそんなン秒でついてくよね。  てゆうか勇者一行の旅ってばビックリばっか。外の世界ってスッゴク華やかでなんでもあるしアタシってば大興奮のウキウキ気分で舞い上がっちゃった。ぶっちゃけハルトウもかわいくて優しぃし初めての旅が人生の終着点へ向かってるカモ? てゆうかアタシってばなに言っちゃってンだろね。  デモ絶対に知られちゃいけないヒミツがあるの。てゆうかアタシのパパって魔王ってヤツだし人間とは戦争バッカしてるし? てゆうか当然アタシも魔人だからバレたら秒でヤラレちゃうかもしンないみたいな?  てゆうか騙してンのは悪いと思ってるょ? でも簡単にバラすわけにもいかなくて新たな悩みが増えちゃった。これってぶっちゃけ葛藤? てゆうかどしたらいンだろね☆ミ

美少女仮面とその愉快な仲間たち(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
未来からやってきた高校生の白鳥希望は、変身して美少女仮面エスポワールとなり、3人の子ども達と事件を解決していく。未来からきて現代感覚が分からない望みにいたずらっ子の3人組が絡んで、ややコミカルな一面をもった年齢指定のない作品です。

【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで

猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。 ※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。 ※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。 ※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。 ※2026.1.5に完結しました! 修正中です。

黒地蔵

紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。 ※表紙イラスト=ミカスケ様

処理中です...