まやかのスキルは魔王級 面倒な仕事は誰か他の人にやってもらいたい

けろよん

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第13話 転校生が来た

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 朝早くからモンスターが現れたり転校生が来たりと慌ただしい日だったが、ここから先はいつも通りの授業だ。
 私は先生の話を聞きながらノートを取る。こんな勉強をして何の役に立つのか分からないが、やれというんだからやるだけだ。
 真面目にやっていれば文句も言われずに済む。当たり障りのない普通の生活。

「……」

 私はチラリと離れた席を見る。転校生のセツナちゃんも真面目に授業を受けていた。賢そうな子だ。私の順位はもしかしたら一つ落ちるかもしれない。

「……はぁ」

 ため息を吐いて鉛筆を転がしてしまう。授業は退屈だ。早く終わって欲しい。
 休み時間になると転校生のお約束のようにセツナちゃんはクラスメイト達に囲まれていた。陰キャな私としては休み時間は静かにしてほしいのだが、みんな賑やかでよく喋る。
 菜々ちゃんまでセツナちゃんにくっついているのが何か面白くない。私が自分の席で本を読んでいるフリをしていると、正也君が声を掛けてきた。

「休み時間まで勉強か?」
「まさか。適当に時間を潰してるだけ」
「お前は転校生と話にいかないのか? 日向は行ってるぞ」
「私は別に話す事はないから。正也君こそ話に行かないの? 同じスキルマスター同士で話すことがあるんじゃないの?」
「俺は別にあいつとつるむ気はないからな。魔王は俺の手で倒す」
「あ、そなんだー。頑張ってね」
「お前、俺が魔王を倒せるって信じてねーだろ」
「だって、ねえ」

 そんな実力があるならもっと私に楽をさせて欲しいものだ。正也君は悔しそうに唸った後で、諦めたように息を吐いた。

「ったくよぉ……。お前は相変わらずだよな。とにかく転校生も来た事だし、お前もこの学校の先輩としてしっかりとした態度を見せるんだぞ」
「うん、考えとくー」

 正也君は自分の席に帰っていく。結局、彼は私に何を言いたかったのだろうか。
 考えても私に他人の気持ちなんて分かるはずもないのだった。



 午前の授業が終わって昼休みになった。私は今日も屋上でお弁当を食べる。
 今日は菜々ちゃんが来ないなと思ったら、何とセツナちゃんを連れてきた。

「ど、ど、ど、どうしたの菜々ちゃん。そんな人気者を連れてきて」
「一緒に話をしたいなって思ったんだよ。大丈夫だよ、他には誰もいないから」

 私が恐れたのは転校生ではない。教室のみんながついてきて教室のような賑やかな地獄絵図が繰り広げられるのを恐れたのだ。
 ここが陽キャの巣窟になれば私は移動を余儀なくされる。校舎の陰かトイレか。いずれにしても不本意な形で。
 だが、確かに菜々ちゃんの言った通り、おかしな取り巻きとかはいないようだった。菜々ちゃんだって私が人付き合いが苦手なのは知っているはずなので気を使ってくれたようだった。
 だとしたら本当にこの転校生を私に会わせたかっただけなのだろうか。なぜなのか。私にはジョークの一つも言えないし学級委員でもないので理由がさっぱり分からなかったけれど。
 セツナちゃんは穏やかな笑顔で近づいてくる。うう、陽キャのオーラは眩しいなあ。

「まやかさん、ご一緒していいですか?」
「どうぞ。別に私の場所ではないけれど」

 私が場所を示してやるとセツナちゃんはそこに座った。菜々ちゃんも自分の位置に座る。
 仕方ないので三人で食べる事にする。さて、何を話せばいいのだろう。菜々ちゃんはニコニコしているだけで何も喋ってこない。
 まさか転校生とサシで話せというのだろうか。この私に。なら期待に応えてみせよう。

「あ……あの……学校はどう……?」

 見たか、この会話テクニック。泣きたくなるよ。他人から話しかけられて答えるだけならたまにやるけど、こっちから話しかけるのはもう本当に難しい。
 声を出せただけでも褒めて欲しいぐらいだ。とても口下手な私だったが、セツナちゃんは気を悪くした風もなく箸を止めて答えた。

「楽しいです。ここへ来る前は遠くの国にいたんですけどここも好きになってきました」
「そう、それは良かったね。さすがうちのクラスメイト達は人を歓迎するのが上手い。私と違って」
「まやかさんの事も知りたいです。よかったら話してくれませんか?」
「え? なんで私なんかの事を……」

 チラッと菜々ちゃんの様子を伺う。きっと彼女が大袈裟に話したんだろう。私なんて全然たいした事がないミジンコのような存在なのに、なぜか彼女は私を慕ってくれているのだ。
 ここで逃げてもしょうがない。菜々ちゃんの期待を裏切るわけにも屋上を明け渡すわけにもいかないのだ。
 追い詰められた私は仕方ないので話せる事を話す事にした。

「えっと、私の名前は天坂まやか。中学二年生。部活は美術部で絵を描いたり一人で出来る事が好きな普通の女の子なんだけど……」

 どうしよう、話せることがどんどん無くなっていく。もう話題が尽きかけている。私が焦っているとセツナちゃんから助け船を出してくれた。

「最近はどんな事をされているんですか?」
「正也君の家に行ったね。聞きたい事があって。それでちょっと仲良くなったかな」
「聞きたい事って?」
「えっと、マム・レイハートって人の書いた本のことで」
「マム先生の本!?」

 セツナちゃんがびっくりした顔をして身を乗り出してきた。私だってびっくりだ。こんなに反応されるとは思わなかった。
 それに先生って。やっぱり本を出すような偉い人だと先生と呼んだ方がいいのだろうか。私は気を落ち着けてから訊く。

「セツナちゃんもマム先生? ……の書いた本に興味があるの?」
「いえ、それよりもあなたがあの本の何に興味を示されたかの方が……」

 お互いに距離が近づいた時。いきなり警報がうるさい音を奏でた。

「また!? 最近モンスター現れるの多くない!?」
「魔王が現れた影響なのかもしれませんね」
「私の……いやいや、魔王のせいなの!?」
「……」

 危ない。うっかり私が魔王だと言いかけた。
 立ち上がったセツナちゃんが真っすぐ私を見下ろしてくる。うっかり口を滑らせたのを聞かれたのだろうか。私は気まずくなって目を逸らす。
 何を言われるのかと思ったが、セツナちゃんは頭を下げて謝ってきただけだった。

「ドラゴンの事はすみませんでした」
「え……?」

 なぜ謝られるのか分からない。私が理解する間もなくセツナちゃんは屋上のフェンスを跳び越えてしまう。

「ちょ、ここ屋上!?」

 私は慌てて駆け寄った。だが、スキルマスターに心配は不要であった。
 セツナちゃんは空中で魔法使いの帽子とマントを身に付けると、魔法で足場を作りだして校庭へと降りていった。
 菜々ちゃんも私の隣へきてその様子を見ていた。

「やっぱりスキルマスターはすごいねえ」
「うん」

 戦力が増えて戦いは楽になるはずだが、私はどこかで不安を感じていた。
 この不安はどこから来るのだろうか。今の私にはよく分からなかった。
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