天使は愛を囁く

けろよん

文字の大きさ
22 / 29
第三章 聖魔の戦い

家に死神がやってきた

しおりを挟む
 ずっと思っていた初恋の彼女と再会できた。
 そんな大きな出来事を終えても、いつもの日常は続いていく。
 明日のために自分のするべきことをしておかないといけない。
 正樹は静かになった自分の部屋で勉強をすることにした。

「明日の勉強しなきゃな」

 呟きながら振り返って床を見た。
 そこは灯花に押し倒された場所だ。まだ彼女の匂いが残っているかのように思えて、正樹は変に意識してしまった。
 さっきまでここに灯花がいて、彼女と話をして押し倒されたのだ。それが随分と昔のことのように思えた。

「灯花さん、可愛かったなあ」

 久しぶりに再会できた彼女の姿を思い出す。
 始めて会った日より大人になっていた。
 あの日からずっと思っていたと告白された。
 自分だってあの日からの思いは同じだったはずなのに……

「はあ……なんで断ってしまったんだろう……」

 断ったのを今になって後悔して悶々としてしまった。

「灯花さんに会いたいなあ」

 さっき別れたばかりなのにもう思ってしまう。
 断ってしまった自分を殴りたくなってしまう。
 でも、思い直す。

「仕方なかったんだ。高校生なんだからさ。さて、勉強勉強」

 どうにもならない思いを振り払いながら、正樹は頭を切り替えて勉強に集中することにした。



 机に向かって勉強を始めた正樹は気づいていなかった。すぐ傍まで死神が来ていたことに。

「あそこか」

 メルトは灯花を付けさせていた目玉型の小悪魔ロボットを仕舞った。
 夜の空、星空の中でメルトは舌をぺろりと舐めて、正樹の部屋の窓を見た。
 明るい光はそこに人がいることを示している。

「トウカ、あんたの獲物をいただくわよ!」

 そして、メルトは鎌を振りかぶって飛び込んでいった。



 正樹が勉強をしていると、いきなり窓ガラスが派手にぶち割れた。

「うわ! なんだあ!」

 誰かが投石してきたのかと思ったが、黒い風を纏って少女が現れていた。
 黒いゴシック風の服を着た彼女は輝く金色の瞳をして正樹を見てきた。
 正樹の知らない少女だった。

「地獄の国からこんばんわあ。死神少女のメルトちゃんですよ。あなたの命をいただきに来たわ」
「死神……?」

 今日はハロウィンだっただろうか。
 思っている間に少女は鎌を振り上げる。騒ぎを聞きつけて、優とミンティシアがやってきた。

「お兄ちゃん!」
「これは……!」
「よせ! 来るんじゃない!」

 何だか知らないが、危険な鎌なのは確かだ。玩具ではない。
 煌めく刃を正樹は受けようとしたが、その前に優が侵入者に蹴り掛かっていた。
 鎌を動かすのを止め、優の蹴りを死神少女のメルトは片手で受け止めていた。
 ミンティシアをも吹っ飛ばした蹴りを止めるなんてかなりの実力者だ。
 正樹は相手の実力を読んでいた。
 メルトは面白そうに優を見た。

「あたしに挑戦しようって言うの? いいわねえ、お嬢ちゃん!」
「これ以上お兄ちゃんに……女は近づけさせない!」

 バトルだ!

 応援しようとして、ミンティシアは正樹に声を掛けていた。

「加勢しなくていいんでしょうか」
「いや、もう終わった」
「ふえ?」

 不思議な声を出してミンティシアは視線を戦いに戻した。
 優の拳がメルトの顔面に入っていた。
 殴られたメルトは後退したが、倒れはしなかった。

「いて! やりやがったな!」
「今のあたしは手加減なんて出来ないよ。家を壊さないうちにとっとと帰れ!」

 優の拳はやる気のあるオーラで燃えていた。
 メルトは殴られた顔を手で拭った。

「チッ、遊べればいいと思ったんだけどね。止めだ。さすがは天界の選んだ人間か」

 メルトは鎌を仕舞って踵を返した。
 元より彼女は遊ぼうと思ってきただけだ。遊びで終わりそうに無いならここにいる義理は何も無かった。
 最後に正樹の方を振り返って言った。

「お前を殺すのはあたしじゃない。覚えておくんだね」

 そして、窓の外の暗闇へと飛び去って行った。
 後に残ったのはただ窓の壊れた部屋だった。
 優は今度会ったら弁償させてやると思い、正樹は灯花の匂いが消えたのを虚しく思ったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...