8 / 50
悪役令嬢にされた日。
お友達は私が守る! リルベーラ救出計画、始動!
しおりを挟む
「はぁ~……」
寮に戻るなり、リルベーラは大きなため息を吐いた。
顔には疲労がにじみ出ている。肩の力も抜け、まるで外のざわつきを全部背負ってきたかのようだった。
(あの後、ホルト先生からの事情聴取に、周りからの視線に……大変だったものね……)
ヘルミーナが皆から見えない分、周りからはリルベーラが一人で歩いているように見えてしまう。
それもあってか、至る所で噂が独り歩きしていた。
そしてリルベーラを見る人、見る人……口をそろえて同じことを言う。
“悪女”と――。
(うーん……せっかくできた友人がこんなに困っているんだもの……私も何か手助けしたいわ。)
意気消沈しているリルベーラを見ながら少し考えると、ヘルミーナはとあることを思いついた。
(そうだ! グレインお兄様に相談してみましょう!)
ヘルミーナはベッドに腰を下ろしたリルベーラに、そっと書き置きを置く。
紙を置く指先が、ほんの少し強く震えていた。助けたい気持ちは高まっているのに、彼女には“姿を見せられない”現実が重くのしかかっていた。
それでも、ヘルミーナは小さく息を吸い、決意とともに扉へ手を伸ばす。
バレないように扉を開けてフレースヴェルグ寮へと向かった。
「大きな鷲ねぇ~。」
フレースヴェルグ寮に着くと、大きな鷲がお出迎えしてくれる。
石像とは思えないほど細かく彫られた翼が、今にも羽ばたきそうだった。
それを見上げてから、ゆっくりと寮の中へと入った。
「ふふ……こういう時だけは、この体質も役に立つわね。」
寮内に入っても誰ひとりヘルミーナに気づく者はおらず、彼女はスイスイとフレースヴェルグ寮の中を進んでいく。
床に響く足音すら周囲の耳には届かず、まるで風が通り抜けていくような静けさ。その静寂に、逆に彼女の足取りは軽くなった。
(どこも同じような造りでよかった。これなら早くグレインお兄様に会えそうだし……)
アルファルズ学園の各寮はどれも、中央に食堂や談話室がある。
そして、その共有スペースを挟むようにして左右に生徒の居住スペースが分かれている。
壁には学園の紋章が飾られ、掲示板には連絡事項が細かく貼られていた。男子寮の廊下は女子寮より少し雑然としていたが、その雑さがまた“生活の気配”を感じさせた。
(きっと左が男子寮よね。私の寮もそうだし……)
ヘルミーナは戸惑うこともなく、堂々と左の居住スペースへ向かった。
歩き続けてしばらくすると――
聞いたことのある名前が耳に入ってきた。
「聞いたか? ダーリン殿下がまた色々やらかしてるらしいぞ……?」
「あぁ~聞いた。婚約者と揉めてたらしい。」
(あれ? ダーリンって……確か、ローゼンクラフト先輩の恋人じゃなかったかしら。)
ささやき声は低いが、男子寮の廊下に反響してよく通る。
ヘルミーナは話をしている男子生徒の近くまで寄っていく。
「婚約者って……セレーネじゃなかったのか!?」
「セレーネ……? いや、違うぞ? 今年入学した黒髪でツリ目の、少し気の強そうな女性だったはずだ。」
黒髪に、ツリ目。
その言葉を聞いた瞬間――
ヘルミーナの中で、ぴたりとピースがはまった。
胸の奥でくるりと何かが回転するような感覚。
それは“理解”が落ちたときの、あの特有のひらめきだった。
「そう……そういうことだったのね……。」
(セレーネとダーリンが恋人じゃなくて……リルベーラが婚約者?じゃあ、あの執拗な嫌がらせって……)
ヘルミーナの小さな胸の内で、静かな怒りが芽を出し始める。
ひとり納得していると、
「おい、お前……そこで何をしているんだ?」
「ミーナ……? ヘルミーナ!? ……聞こえていないのか?」
「ヘルミーナさん、呼ばれていますよ~!」
(私と同名の人がいるなんて……初めて会ったかも。)
しかし、次の声はもっと近く、もっと“自分を知る者”の声だった。
「おい、ヘルミーナ! お前のことを言ってるんだぞ!?」
その言葉と同時に、ヘルミーナの肩を誰かがつかんだ。
「えっ……!? 触れられるのって、お兄様くらいのはずなのに……?」
そう思って後ろを向くと――
「えぇぇぇぇ……へぶっ……」
そこに立っていたのは、探し求めていた兄――グレインだった。
鋭い目つきで妹を見下ろしながら、その手にはしっかり“姿なき妹”の肩が収まっている。
「ん~……ん~……(何するんですか!?)」
「ちょっと静かにしろ……。お前が驚いたりすると、声だけ響き渡るんだぞ?」
彼女の耳元で、周りに聞こえない程度の小さな声で話すグレイン。
そしてそのまま、ずるずると引きずられるようにして空き部屋へと入った。
「ぷはぁ……急に何するんですか!?」
「はぁ? それはこっちのセリフだ! なんでお前がここにいるんだ?」
そう言うや否や、ヘルミーナの頭にゴツンとげんこつが落ちる。
「いったぁぁ~……」
ヘルミーナは、げんこつが落ちたところを手で軽くさすりながら、涙目でグレインを見た。
「グレインお兄様に相談があって来たんですよ~。」
「相談? 今のお前は不審者にしか見えないが……?」
ヘルミーナの今の服装は制服ではなく、全身真っ黒。
まるで影そのもののような姿で、顔も頭巾のような布で半分隠されている。
「えっ!? そうですか?」
「いや、ほめてないぞ?」
自分の変装をほめられたとでも思ったのか、ヘルミーナは満面の笑みでグレインを見た。
その笑顔がまたズレているのが、彼女らしくて憎めない。
グレインもそれ以上何も言えなくなったのか深くため息を吐くと同時に近くにあった椅子に腰を下ろした。
「はぁ…まぁいいか。で?相談とはなんだ?」
「あっ、そうでした。私…お友達ができたんです。でも、その子が今大変なことになっていて…」
ヘルミーナはこれまでにあったことを話す。
リルベーラが受けた嫌がらせ、誤解、噂、そして自分にしか見えない不便さ。
語れば語るほど、グレインの眉間の皺は深くなっていった。
「それで…彼女をどうにか助けたいと思っているんです!でも…私は証言ができない。どうしたらいいでしょうか?」
ヘルミーナに友達ができたことにも驚いたグレインだったが、それ以上に友達を助けたいといった彼女の言葉が胸に刺さった。
(ずっと一人だと思っていたが…経った数日でいろいろ変わるものだな…。)
しみじみとした面持ちでヘルミーナを見ていると、ふと真面目な声音で口を開いた。
「お前もずっと認知されないというわけではないだろ?」
その言葉に首を傾げるヘルミーナ。
「昔、一度だけ誰かに化けたことがあっただろ?」
どうやら記憶に残っていないらしい。
(そうか…あれは確か…遊び半分で誰かに化けただけだったもんな。)
「お前は記憶がないかもしれないが、方法がないわけじゃない。」
その言葉を聞いた瞬間、ヘルミーナの顔がパッと晴れた。
「ほ、本当ですか!?」
前のめりになって近づいてくる彼女を見て、グレインは軽く肩を押した。
「簡単な話だ。お前が化粧で化ければいいんだ。」
「えっ!? 化ける??」
ヘルミーナが聞き返すと、グレインはこくりと頷いた。
「そうだ。お前は気づいていないかもしれないが……認識されにくいのは“ヘルミーナとして”いるときだけだ。
そう、ヘルミーナ以外の何かに変装していれば、少しばかり認識されやすくなる。それを存分に使えばいいんじゃないか?」
ヘルミーナは、自分にも“見える方法”があると知って、目をぱちぱちさせながら希望に満ちた顔で身を乗り出した。
「そ、それ……もっと早く言ってくれれば……!」
だが、グレインはため息をひとつ落とした。
「言っても限度があるんだ。精々、もって一日十分が限度だろう。」
「じゅ、じゅ……十分……」
ヘルミーナは、その短さに肩を落とし、しゅんとしながら指先をもじもじさせる。
その様子に、グレインは少しだけ声を低くした。
「そうだ。その間に問題が起きなければ……何も変わらないことになる。わかってるな?」
ヘルミーナは、ごくりと喉を鳴らし、真剣な顔で頷いた。
と、同時に――
心の中で “十分で何をどうできるか” ぐるぐると考え始めた。
(今から……何ができるか考えておかないと……侍女とか……いや従者もよさそうだけど……)
頭の中で変装プランをぐるぐる回していると、グレインが腕を組み、低く呟いた。
「お前がその気なら……一つだけいいことを教えてやる。一週間後に新入生歓迎パーティーが行われる。」
ヘルミーナがぱちりと顔を上げたその瞬間。
グレインはゆっくりと口角を上げ、悪戯を思いついた兄そのものの顔になった。
「その時に、お前がその子のパートナーとして参加するというのはどうだ?そしたらダーリンとセレーネが現れるんじゃないか……?」
ヘルミーナはぽかんと口を開いたまま固まった。
「ど、どうしてそれを……?」
「フッ……これでもお前の兄を十数年やってるんだ。」
グレインは髪をかき上げながら、わざとらしく肩をすくめた。
「お前の考えていることなんて、お見通しに決まってるだろ。」
その様子に、ヘルミーナは口元を押さえながら、感激で胸をいっぱいにする。
「あ、ありがとうございます! グレインお兄様。これで少し先に進めそうです!」
それだけ言うと、ヘルミーナはそそくさとこの場を後にした。
走り去るその背中は、先ほどまでの迷いを感じさせないほど軽やかだった。
グレインはその背中を見送りながら、呆れと心配と、ほんの少しの誇らしさを含んだため息を吐く。
「……はぁ。面倒な妹を持ったな、本当に。」
寮に戻るなり、リルベーラは大きなため息を吐いた。
顔には疲労がにじみ出ている。肩の力も抜け、まるで外のざわつきを全部背負ってきたかのようだった。
(あの後、ホルト先生からの事情聴取に、周りからの視線に……大変だったものね……)
ヘルミーナが皆から見えない分、周りからはリルベーラが一人で歩いているように見えてしまう。
それもあってか、至る所で噂が独り歩きしていた。
そしてリルベーラを見る人、見る人……口をそろえて同じことを言う。
“悪女”と――。
(うーん……せっかくできた友人がこんなに困っているんだもの……私も何か手助けしたいわ。)
意気消沈しているリルベーラを見ながら少し考えると、ヘルミーナはとあることを思いついた。
(そうだ! グレインお兄様に相談してみましょう!)
ヘルミーナはベッドに腰を下ろしたリルベーラに、そっと書き置きを置く。
紙を置く指先が、ほんの少し強く震えていた。助けたい気持ちは高まっているのに、彼女には“姿を見せられない”現実が重くのしかかっていた。
それでも、ヘルミーナは小さく息を吸い、決意とともに扉へ手を伸ばす。
バレないように扉を開けてフレースヴェルグ寮へと向かった。
「大きな鷲ねぇ~。」
フレースヴェルグ寮に着くと、大きな鷲がお出迎えしてくれる。
石像とは思えないほど細かく彫られた翼が、今にも羽ばたきそうだった。
それを見上げてから、ゆっくりと寮の中へと入った。
「ふふ……こういう時だけは、この体質も役に立つわね。」
寮内に入っても誰ひとりヘルミーナに気づく者はおらず、彼女はスイスイとフレースヴェルグ寮の中を進んでいく。
床に響く足音すら周囲の耳には届かず、まるで風が通り抜けていくような静けさ。その静寂に、逆に彼女の足取りは軽くなった。
(どこも同じような造りでよかった。これなら早くグレインお兄様に会えそうだし……)
アルファルズ学園の各寮はどれも、中央に食堂や談話室がある。
そして、その共有スペースを挟むようにして左右に生徒の居住スペースが分かれている。
壁には学園の紋章が飾られ、掲示板には連絡事項が細かく貼られていた。男子寮の廊下は女子寮より少し雑然としていたが、その雑さがまた“生活の気配”を感じさせた。
(きっと左が男子寮よね。私の寮もそうだし……)
ヘルミーナは戸惑うこともなく、堂々と左の居住スペースへ向かった。
歩き続けてしばらくすると――
聞いたことのある名前が耳に入ってきた。
「聞いたか? ダーリン殿下がまた色々やらかしてるらしいぞ……?」
「あぁ~聞いた。婚約者と揉めてたらしい。」
(あれ? ダーリンって……確か、ローゼンクラフト先輩の恋人じゃなかったかしら。)
ささやき声は低いが、男子寮の廊下に反響してよく通る。
ヘルミーナは話をしている男子生徒の近くまで寄っていく。
「婚約者って……セレーネじゃなかったのか!?」
「セレーネ……? いや、違うぞ? 今年入学した黒髪でツリ目の、少し気の強そうな女性だったはずだ。」
黒髪に、ツリ目。
その言葉を聞いた瞬間――
ヘルミーナの中で、ぴたりとピースがはまった。
胸の奥でくるりと何かが回転するような感覚。
それは“理解”が落ちたときの、あの特有のひらめきだった。
「そう……そういうことだったのね……。」
(セレーネとダーリンが恋人じゃなくて……リルベーラが婚約者?じゃあ、あの執拗な嫌がらせって……)
ヘルミーナの小さな胸の内で、静かな怒りが芽を出し始める。
ひとり納得していると、
「おい、お前……そこで何をしているんだ?」
「ミーナ……? ヘルミーナ!? ……聞こえていないのか?」
「ヘルミーナさん、呼ばれていますよ~!」
(私と同名の人がいるなんて……初めて会ったかも。)
しかし、次の声はもっと近く、もっと“自分を知る者”の声だった。
「おい、ヘルミーナ! お前のことを言ってるんだぞ!?」
その言葉と同時に、ヘルミーナの肩を誰かがつかんだ。
「えっ……!? 触れられるのって、お兄様くらいのはずなのに……?」
そう思って後ろを向くと――
「えぇぇぇぇ……へぶっ……」
そこに立っていたのは、探し求めていた兄――グレインだった。
鋭い目つきで妹を見下ろしながら、その手にはしっかり“姿なき妹”の肩が収まっている。
「ん~……ん~……(何するんですか!?)」
「ちょっと静かにしろ……。お前が驚いたりすると、声だけ響き渡るんだぞ?」
彼女の耳元で、周りに聞こえない程度の小さな声で話すグレイン。
そしてそのまま、ずるずると引きずられるようにして空き部屋へと入った。
「ぷはぁ……急に何するんですか!?」
「はぁ? それはこっちのセリフだ! なんでお前がここにいるんだ?」
そう言うや否や、ヘルミーナの頭にゴツンとげんこつが落ちる。
「いったぁぁ~……」
ヘルミーナは、げんこつが落ちたところを手で軽くさすりながら、涙目でグレインを見た。
「グレインお兄様に相談があって来たんですよ~。」
「相談? 今のお前は不審者にしか見えないが……?」
ヘルミーナの今の服装は制服ではなく、全身真っ黒。
まるで影そのもののような姿で、顔も頭巾のような布で半分隠されている。
「えっ!? そうですか?」
「いや、ほめてないぞ?」
自分の変装をほめられたとでも思ったのか、ヘルミーナは満面の笑みでグレインを見た。
その笑顔がまたズレているのが、彼女らしくて憎めない。
グレインもそれ以上何も言えなくなったのか深くため息を吐くと同時に近くにあった椅子に腰を下ろした。
「はぁ…まぁいいか。で?相談とはなんだ?」
「あっ、そうでした。私…お友達ができたんです。でも、その子が今大変なことになっていて…」
ヘルミーナはこれまでにあったことを話す。
リルベーラが受けた嫌がらせ、誤解、噂、そして自分にしか見えない不便さ。
語れば語るほど、グレインの眉間の皺は深くなっていった。
「それで…彼女をどうにか助けたいと思っているんです!でも…私は証言ができない。どうしたらいいでしょうか?」
ヘルミーナに友達ができたことにも驚いたグレインだったが、それ以上に友達を助けたいといった彼女の言葉が胸に刺さった。
(ずっと一人だと思っていたが…経った数日でいろいろ変わるものだな…。)
しみじみとした面持ちでヘルミーナを見ていると、ふと真面目な声音で口を開いた。
「お前もずっと認知されないというわけではないだろ?」
その言葉に首を傾げるヘルミーナ。
「昔、一度だけ誰かに化けたことがあっただろ?」
どうやら記憶に残っていないらしい。
(そうか…あれは確か…遊び半分で誰かに化けただけだったもんな。)
「お前は記憶がないかもしれないが、方法がないわけじゃない。」
その言葉を聞いた瞬間、ヘルミーナの顔がパッと晴れた。
「ほ、本当ですか!?」
前のめりになって近づいてくる彼女を見て、グレインは軽く肩を押した。
「簡単な話だ。お前が化粧で化ければいいんだ。」
「えっ!? 化ける??」
ヘルミーナが聞き返すと、グレインはこくりと頷いた。
「そうだ。お前は気づいていないかもしれないが……認識されにくいのは“ヘルミーナとして”いるときだけだ。
そう、ヘルミーナ以外の何かに変装していれば、少しばかり認識されやすくなる。それを存分に使えばいいんじゃないか?」
ヘルミーナは、自分にも“見える方法”があると知って、目をぱちぱちさせながら希望に満ちた顔で身を乗り出した。
「そ、それ……もっと早く言ってくれれば……!」
だが、グレインはため息をひとつ落とした。
「言っても限度があるんだ。精々、もって一日十分が限度だろう。」
「じゅ、じゅ……十分……」
ヘルミーナは、その短さに肩を落とし、しゅんとしながら指先をもじもじさせる。
その様子に、グレインは少しだけ声を低くした。
「そうだ。その間に問題が起きなければ……何も変わらないことになる。わかってるな?」
ヘルミーナは、ごくりと喉を鳴らし、真剣な顔で頷いた。
と、同時に――
心の中で “十分で何をどうできるか” ぐるぐると考え始めた。
(今から……何ができるか考えておかないと……侍女とか……いや従者もよさそうだけど……)
頭の中で変装プランをぐるぐる回していると、グレインが腕を組み、低く呟いた。
「お前がその気なら……一つだけいいことを教えてやる。一週間後に新入生歓迎パーティーが行われる。」
ヘルミーナがぱちりと顔を上げたその瞬間。
グレインはゆっくりと口角を上げ、悪戯を思いついた兄そのものの顔になった。
「その時に、お前がその子のパートナーとして参加するというのはどうだ?そしたらダーリンとセレーネが現れるんじゃないか……?」
ヘルミーナはぽかんと口を開いたまま固まった。
「ど、どうしてそれを……?」
「フッ……これでもお前の兄を十数年やってるんだ。」
グレインは髪をかき上げながら、わざとらしく肩をすくめた。
「お前の考えていることなんて、お見通しに決まってるだろ。」
その様子に、ヘルミーナは口元を押さえながら、感激で胸をいっぱいにする。
「あ、ありがとうございます! グレインお兄様。これで少し先に進めそうです!」
それだけ言うと、ヘルミーナはそそくさとこの場を後にした。
走り去るその背中は、先ほどまでの迷いを感じさせないほど軽やかだった。
グレインはその背中を見送りながら、呆れと心配と、ほんの少しの誇らしさを含んだため息を吐く。
「……はぁ。面倒な妹を持ったな、本当に。」
90
あなたにおすすめの小説
王太子に理不尽に婚約破棄されたので辺境を改革したら、王都に戻ってきてくれと言われました
水上
恋愛
【全18話完結】
「君は中身まで腐っている」と婚約破棄されたエリアナ。
そんな彼女は成り行きで辺境へ嫁ぐことに。
自身の知識と技術で辺境を改革するエリアナ。
そんな彼女を、白い結婚のはずなのに「膝枕は合理的だ」と甘やかす夫。
一方、エリアナを追放した王都では、彼女の不在の影響が出始めて……。
異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 番外編『旅日記』
アーエル
ファンタジー
カクヨムさん→小説家になろうさんで連載(完結済)していた
【 異世界生活〜異世界に飛ばされても生活水準は変えません〜 】の番外編です。
カクヨム版の
分割投稿となりますので
一話が長かったり短かったりしています。
『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?
あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。
「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章をゆっくり更新中です。書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。
ラウリーは夢を見ない
ひづき
ファンタジー
公爵家に生まれたラウリーは失敗作だと両親に評価された。
ラウリーの婚約者は男爵家の跡取り息子で、不良物件を押し付けられたとご立腹。お前に使わせる金は一切ないと言う。
父である公爵は、ラウリーの婚約者の言い分を汲んで清貧を覚えさせるためにラウリーへの予算を半分に削れと言い出した。
「───お嬢様を餓死でもさせるおつもりですか?」
ないものを削れだなんて無理難題、大変ね。と、ラウリーは他人事である。
奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!
よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。
落ちこぼれ公爵令息の真実
三木谷夜宵
ファンタジー
ファレンハート公爵の次男セシルは、婚約者である王女ジェニエットから婚約破棄を言い渡される。その隣には兄であるブレイデンの姿があった。セシルは身に覚えのない容疑で断罪され、魔物が頻繁に現れるという辺境に送られてしまう。辺境の騎士団の下働きとして物資の輸送を担っていたセシルだったが、ある日拠点の一つが魔物に襲われ、多数の怪我人が出てしまう。物資が足らず、騎士たちの応急処置ができない状態に陥り、セシルは祈ることしかできなかった。しかし、そのとき奇跡が起きて──。
設定はわりとガバガバだけど、楽しんでもらえると嬉しいです。
投稿している他の作品との関連はありません。
カクヨムにも公開しています。
【完結】灰かぶりの花嫁は、塔の中
白雨 音
恋愛
父親の再婚により、家族から小間使いとして扱われてきた、伯爵令嬢のコレット。
思いがけず結婚が決まるが、義姉クリスティナと偽る様に言われる。
愛を求めるコレットは、結婚に望みを託し、クリスティナとして夫となるアラード卿の館へ
向かうのだが、その先で、この結婚が偽りと知らされる。
アラード卿は、彼女を妻とは見ておらず、曰く付きの塔に閉じ込め、放置した。
そんな彼女を、唯一気遣ってくれたのは、自分よりも年上の義理の息子ランメルトだった___
異世界恋愛 《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる