荒地に配属された食いしん坊聖女。いつの間にかラスボス認定されていたようです。

ゆずこしょう

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食いしん坊聖女。15歳になる。

急襲!?豚皇帝オークエンペラー!!

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"ドォーン"


「「「「キャーーー!!」」」」


あと少しで神殿にたどり着く…


そんな時だった。


神殿の方から、聖女たちの悲鳴と同時に大きなものが何かにぶつかるような音が聞こえた


「な、な、何事だ!?」


ダミアンたちにも聞こえていたようで、空耳ではないことが分かる。


アンネリーゼたちが急いで神殿に戻ると、そこには神殿よりも大きな、二本足で立つ豚の姿があった。


「え!?豚…なのかしら…?」


アンネリーゼのスピードについていけなかったダミアンは、数分遅れて息を切らしながら到着し、目の前の巨大な豚を見て腰を抜かした。


「はぁ…はぁ…あ、あれは!!魔物ランクSSのオークエンペラーではないか!!!!」


「「「オークエンペラー?」」」


豚の皇帝…ということだろうか。


皇帝らしくない姿に首を傾げていると、ダミアンが背中と頭を指さす。


すると、そこには……


ちょこんと頭に乗る王冠と、赤いマントのようなものを羽織っているのが見えた。


"ブォー!!"


「た、たしかに…?皇帝にも見えなくはない…わね?」


アンネリーゼの言葉に、イアンとケルネリウスは無言で頷く。


棍棒を振り回す姿は、どう見ても皇帝らしくはないのだが…


神殿内に入り込もうとしているのか、棍棒で結界を壊そうとブンブン振り回すオークエンペラー。


中聖女で結界を得意とするアレットも、必死に抵抗しているようだが、限界を迎えるのも時間の問題だろう。


アレットが結界を強化している間、神殿ではエリザベッタが聖女たちを一つにまとめ、いつでも逃げられるよう準備を進めていた。


「大丈夫かしら…」


「大丈夫。きっと騒ぎを聞きつけてアンネリーゼたちが戻ってくるわ。だから、あなたたちはあなたたちにできることをしてちょうだい」


エリザベッタが微笑むと、他の聖女たちも安心したのか、先ほどよりも落ち着いた様子でできることを進め始める。





……


………


一方、裏でそんな会話が繰り広げられていることを知らないアンネリーゼたちは…


「……行くのか?」


イアンの問いに、アンネリーゼは静かに頷き、それに合わせてケルネリウスも立ち上がる。


「えぇ。だって、あっちの方角には畑があるんだもの!! それに、その先には田んぼもある。絶対、破壊なんてさせないんだから!!」


そう言って歩く後ろ姿は、頼もしくもあるのだが…


なんだろうか。アンネリーゼの言葉が、まったく腑に落ちていないイアンなのであった。


「そ、そうか…お前なら大丈夫だと思うが…気を付けて行ってこい。」


イアンの言葉を聞いて、後ろ手に手を振り返すとアンネリーゼはピョンピョンと跳躍して神殿の屋根の上へと昇った。


(せめて…嘘でもいいから聖女たちを助けてくれるって言ってくれれば、かっこいいんだがな…。まぁ、それもアンネリーゼということか…?)



***


その頃、王都ではーー


「エルネスト…お前、何をしたかわかっているのか!?」


エドワーズ王の怒声が、王宮の広間に響き渡った。


エルネストは、殴られた頬をさすりながら、まだ状況を理解していない様子で目を泳がせている。


「え、えっと…アンネリーゼを追放したこと、ですか…?」


「それだ!!一年前に追放しておいて、なぜ誰にも報告しなかった!? なぜ、私にすら伝えなかった!?」


「だって…誰も聞いてこなかったし…そもそも悪いのは全部あの女なんですよ?」


アンネリーゼが王都内で別の男と歩いている姿を目撃したという話を持ち出すと、エドワーズは「信じられない…」というような目でエルネストを見た。


そもそも、アンネリーゼが王都内を歩いていたのは神官騎士を連れていたからだ。


大聖女は一人で行動することを許されていない。護衛である神官騎士が常に付き添っている。


そんなアンネリーゼが浮気などするはずがなかった。


「はぁ…浮気か。それは誰が言ったんだ?」





……


………


呆れて怒る気力も失せたエドワーズは、ため息を吐きながら再び椅子に腰を沈めた。


「…大聖女レリアです」


(レリア・ゴモリーか。あの父親はやたらと権力を欲しがっていたな……確か、聖女としての力もほとんどなかったと聞くが)


名前を聞いて、すべての辻褄が合った気がした。


エルネストは、レリアに騙されたのだろう。


とはいえ、アンネリーゼを追放した代償は大きい。しかも一年も経っているということは、ルシフェール国にはすでに瘴気が広がり始めているはずだ。


「はぁ……この国が瘴気に埋め尽くされるのも、時間の問題か……」


何とかしなければならない——そう思ったエドワーズは、エルネストに命じた。


「何としてでも、アンネリーゼを連れてこい。わかったな? 連れて帰ってくるまで、戻ってくるなよ?」


それだけ言うと、エルネストを部屋の外へと追い出した。


「な、なんで僕が……」


外へ追い出されたエルネストは、地面を叩いて怒りをぶつける。


しかし、誰一人として、それを助ける者はいなかった。




そして、そんなことを知らないアンネリーゼは…


今日の夜ご飯のことしか考えていなかった。


「んふふ……今日は豚丼にしようかしら。でも、久しぶりにトンカツも食べたいわね……生姜焼きとかもあり?豚汁は外せないわね。きっと“エンペラー”というくらいだもの、絶品に違いないわ!」


目の前にいるオークエンペラーを見ても、ひるむことなく軽やかなステップで進むアンネリーゼ。


彼女の視線は、敵ではなく…


すでに今夜の食卓に向けられていたのだった。

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