夫に家を追い出された女騎士は、全てを返してもらうために動き出す。

ゆずこしょう

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再び戦場に!

まさかの大隊長ですか!?

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ドラゴンに出会った時はどうなるかと思ったが、無事に帰ってくることができて、あっという間にここに来てから4年が経とうとしている。いつの間にか自分も古株だ。

「隊長!ここにいたんですね。」

木の上で手紙を読んでいると、ルエルが声をかけてきた。昔から隠れ鬼をして負け無しだったから、見つかった時はびっくりしたものだ。ルエル曰く、4年も一緒にいれば何処にいるのか分かるらしい。

「あぁ。兄から手紙から届いたから読んでいた。」

定期的に兄や弟からは連絡が来るものの夫でもあるはずのアドルフからは一切連絡が来ることは無かった。

兄からの手紙にはアドルフの事が細かく書かれていた。なんだかんだ頼んだことはしっかり行ってくれるいい兄だ。


「ルエルはここの任期を終えたらどうするんだ?傭兵にでもなるのか?」

「いや、僕はやらないといけないことがあるので元の仕事に戻りますよ。」


徴集される時は国からの支持のため仕事は休暇扱いになる。だから元の仕事に復帰することは簡単だ。
「私も帰ったら仕事探さなきゃならないな。」出来れば傭兵とか出来たらいいんだが、女ということもあり難しいかもしれない。それに父さんにバレたら拳骨が落ちそうだ……。


「僕いい仕事知ってるんですけど、紹介しましょうか?」

そもそもルエルがなんの仕事をしてるのかも知らないが…洋食屋での仕事は人手が足りているだろうし、何故か昔から台所に立つなと言われてきたから難しいだろう。

全て給金が手元に帰ってきたら田舎で、1人ゆっくり暮らすのもありかもしれない…

「まぁ、仕事が見つからなかったらその時は頼むよ。」


「了解です!いつでも仕事紹介するんで言ってくださいね!それにしてもあとすこしで任期満了だとおうと…なんだか寂しいですね。」


「そうだな…と言ってもまだあと1年はあるんだ。他の隊では最近魔物討伐で死者が出ていると聞く。最後まで気持ちを切らさないようにしよう。」

この隊ではまだ幸い大きな怪我をする人が出ていないが、他の隊では結構な死者が出ているそうだ。

ルエルと話しながら隊の元に戻ると、団長が声を掛けてきた。

「エル。ちょっとこっちに来い。」

無愛想な物言いは変わらないが、いつも気にかけてくれているということはわかる。

「団長、なんですね?」

「急遽で申し訳ないんだが、お前に大隊長を務めてもらいたい。そしてこのSランクのドラゴンを討伐してきてくれないか…。」

中隊長ですら荷が重いと言うのに…なぜ私が大隊長なんだ……しかもドラゴンってSランクだったのか。てっきりトカゲの延長だからAランクかと思っていた。

「私に大隊長は荷が重過ぎるのですが…」


「Aランクのドラゴンを1人で倒すやつが何を言っている。」


ん?ドラゴンは全てSランクでは無いのか?

私の心の声が聞こえていたのかギロリとこちらを見る団長…でも大丈夫。父さんが怒った時の方が怖いからな。

「全て声に出てるぞ…ハァ…お前人の話聞かないのも大概にしておけよ。ドラゴンにもランクがあるんだ。」

まさか全て声に出ていたとは…団長の呆れた声をきいて、「すみません」と返した。

「お前がこの間倒したのは、Aランクドラゴンだな。サラマンダーが進化したものだ。」

「え!?サラマンダーが進化するんですか?」

「そこからか…」と言って説明をしてくれる団長。全て覚えられるだろうか…。

団長が言うのは一体のサラマンダーが共食いしたことでドラゴンに進化するらしい。ちなみにスライムなどもスライムが共食いすることでビッグスライムに進化をするのだとか…

「知らなかったっす…」


「大体進化した魔物は、その特性を受け継いでいることが多い。お前が倒したドラゴンもその特性を持っていたはずだが…」

1年前のドラゴンを思い出す。

「確かにドラゴンの丸焼きになってました…」

ドラゴンがブレスをしようとしたタイミングで、レイピアを刺したから火が体の中を巡ってそのまま自分で自分を焼いていた。

「ここからが本題だ。今回の進化したドラゴンではなく、古からいるドラゴンと言われている。グラスドラゴンだ。」

グラスということは氷か…。

「普段は大人しいドラゴンなのだが魔物化したことにより暴れている。死者も何人か出ているほどだ。早急に何とかしなければならない。」

「で、なんで私が大隊長なんですか?」


「大隊長だったハンスが、足を怪我して戦えない状態なんだ。中隊長も負傷しているものばかりで元気なのはお前くらいだからだ。」

なるほど。思ったよりちゃんとした理由だった。適当に大隊長にしとけばドラゴン討伐くらい行くだろう。的なノリかと思っていたけど違ったようだ。

「分かりました。団長にはお世話になってますし!ドラゴンの1匹や2匹。倒してきますよ!」

それだけを団長に伝えて隊員の場所に戻った。


⟡.·*.··············································⟡.·*.


オディロン・ダックワーズ視点


「良かったんですか?大隊長は後ろで指揮をとらなくてはならないと思うんですけど…あのじゃじゃ馬は理解出来てるんですかね?」

いつもの如くひょっこりと顔を出すのはバルコだ。

「そうなんだが…あいつの場合は自分が戦うだろうな。笑顔で笑いながら殴っている姿が目に浮かぶ。」

あいつは昔から獲物を見つけると笑顔で殴り掛かってくるくらい好戦的だ。
だから後衛から陣頭指揮なんてことはしないだろう。

「もう少し戦闘について勉強させとくべきだったか…」

「でも、他の隊は結構負傷者が出ているものの、エルのところはないんですよね。」

確かに隊員全員がピンピンしているのはあいつのところくらいだが。それはルエルが上手く立ち回っているというのもあるのだろうし、エルが桁違いに強いということなのだろう。

「あぁ、あの兄弟は皆バケモノじみてるからな。本当に人間なのかと疑いたくなるほどだ。取り敢えず今回はあいつに任せてみよう。」

「本当は好きな女を戦いになんか出したくないと思っているくせに。」

確かにあいつの事は昔から好きだが、1番好きなのは笑いながら戦っている姿なのだ。だからあいつから戦うことを奪わせたくは無い。


「いいんだ。あいつは戦っている時こそ一番輝くのだからな。」

今回の戦いは結構は厳しい戦いになるかもしれない。無事戻ってくるよう、ただ祈る他なかった。


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