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永久就職!?
久しぶりの再会。
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何を仕事にしようか考えているとあっという間に3ヶ月が過ぎていた。
その間は特に仕事をしていなかったが、今まで稼いだお金があったので何とかなった。
実家でこのまま暮らし続けるなら、魔物討伐出もらった銀貨があれば仕事をしなくても全然生きていけるが、それはそれでアドルフ達と同じようになってしまうのが何となく嫌だった。
10年間はアドルフからお金が帰ってくる予定だけど、戻ってこない可能性も大いにあるだろう。あくまでも予定であって、生き残れなければ意味が無いからだ。
傭兵団に入ることも考えたが、入ってしまえばなかなか戻って来れないだろう。
で、あれば衛兵の仕事をするか…だが、衛兵は男性のみの職場だ…
仕事について考えていると、マウロが部屋にきた。
「エル姉。今いい?」
「どうしたんだ?」
「ちょっとお店に顔出して欲しいんだけど…」
今考えることで忙しいのに、なんで店に顔を出さなきゃ行けないんだ。
「今考え事で忙しいから無理。」
「どうせ考えても答えの出ないことをぐるぐると考え続けているんだろ。ここの所ずっとそうなんだから分かるよ。とりあえず気分転換だと思って出て。待ってるからね!絶対だよ!」
それだけ言うとわざと大きな足音を立てながら階段を降りていった。
「仕方ない…降りていくか。」
私は寝間着から着替えて、髪をポニーテールに結んでから階段をおりていくと、洋食屋にしては珍しい大きな笑い声が沢山響いていた。
「今日はなんだかうるさい…え…?」
厨房から店内へ向かって歩くと、知っている面々が貸切にして集まっていたらしい。
「た、た、た、たいちょぉぉぉぉ!!!」
「エル大隊長!お久しぶりです!」
「お前ら、帰ってきたのか…?あれからもう半年も経ったのか…?」
「「「はい!!任期を終えてただいま戻りました!!!」」」
皆が声を揃えて言う姿をたった半年見ていなかっただけなのに、どこか懐かしく感じた。
「そ、そうか。無事帰還してくれて良かった。今日はゆっくりしてけよ!」
「隊長にも話したいことがいっぱいあるんです!一緒に飲みましょう!今日は、団長の奢りで貸切ですよ!」
団長がこんなところに来るなんて珍しい感じもするが、兄さんとも友人なくらいだ。それにダックワーズ辺境伯家の人だ。
ダックワーズ。最近どこかで聞いたような…
ダックワーズ…
「ダックワーズぅぅぅ!?兄さん、もしかして…。」
私が急に大声を出したからか皆が一斉にこっちを向く。
「あぁ、オディたち辺境伯家は俺たちの雇い主だ。」
何年も聞いていたのにすっかり忘れていた。しかもダックワーズ家が辺境伯家だと知っていたのにだ。
昔から、兄さんと喧嘩ばかりしていたし、まさかそこまでの関係だとは思っていなかった…
「だっていつも喧嘩ばかりしていたじゃないか。」
「それはそれだ。なっ!オディ。」
「あぁ、そうだな。今は喧嘩もほとんどしない。」
兄さんは陽気に団長と肩を組んでいるが、団長は若干煩わしそうだ。何度も肩に乗せていた手を振り払っている。
2人を見て本当に仲良くなったんだなとしんみりしているとルエルに呼ばれた。
「エル隊長!こっちきて一緒に飲みましょぉー!!」
ルエルの所に行くと、ヘッディー、ヤーコフ、それにバルコ副団長が1つのテーブルを囲んで飲んでいた。ルエルが隣を開けてくれたのでそこに座りながら私も飲み始めた。
「そう言えば、アドルフはどうなった?」
「全然使えませんでしたね…そもそもウチらの知ってるアドルフくんはかなりの猛者だったんで、まさかって感じでした。」
バルコ副団長は酒を片手にすごい勢いで話し出す。普段はそんなに話すイメージがなかったが…酒が入るとすごい話上戸になるらしい。
「俺たちの知っているアドルフは、お前だからよォ。正直見た目がナヨナヨしていても戦うと人が変わるんじゃないかって思って楽しみにしてたんだがな。」
「確かに初めて会った時は皆にバカにされてたな…」
会ったばかりの頃のことを思い出す。ヘッディーは心配してくれていたがヤーコフなんかは笑っていたもんな。
「僕は初めからいなかったのが残念ですよ。」
実際、この中で国から初徴集を受けたのは私とルエルでヘッディーやヤーコフは自己志願者だ。自己志願者の場合は自分で魔物討伐に行く期間を決められるため、最後までいたという感じだ。
「そうか?見ても何も変わらないと思うがな。」
「いや、お前は知らないだろうがノッラっていう隊長いたろ?」
確か、初めだけ見かけ他がその後見かけなくなったような…私はこくりと頷くと、代わりにヤーコフが話し出した。
「あぁ、あの時は面白かったよなー。こいつが武器にレイピアを選んだらよ女男とめちゃくちゃ笑ってやがったんだよ。本当に戦えるのかってな。」
確かに、初めの頃はレイピアを持っているだけで笑われていたな。いつの間にか何も言われなくなったが。
「へぇー、隊長笑う奴なんているんすね。」
「見た目こんなだからよ。それでいざ戦闘が始まるとさ、陣形なんか関係なしに突っ込んでいくしよ、なんならCランクの魔物までなら素手で倒していくからよぉ。あの時の皆の顔は、見ていて傑作だったわ。」
ケラケラ笑いながら話すヤーコフも大分酒が回っているようだ。
「でもノッラ隊長は次の日に居なかったよな。」
「それはですね、「自分にはあいつを制御することは出来ません」って魔物討伐から足を洗ったからですよ。」
まさかのそんなことがあったんで知らなかった。バルコ副団長もあの時のノッラの顔は忘れられないですねーって笑っている。そんなにやばかったのだろうか。
「話が脱線したが、それを見ていたから本物のアドルフにも期待していたんだがな…まさかだったよな…半年いて、スライムすら倒せなかったんだぜ。」
確かにスライムは打撃攻撃は有効では無いが、投擲や剣などがあればすぐ倒すとができる。
私はまさかと思い、ルエルを見ると…ヘラりと笑いながら、
「いやぁ、半年間武器も使えるようにならないし投擲もやっとスライムに届くようになったくらいで…石のひとつも当たらない人始めてみましたよ。ちなみに半年間で倒した魔物討伐数は……ある意味で歴史に残るんじゃないですかね……0でした…。」
「「「「もしかしたらもう生きていないかもな…」」」」と笑う4人はなんだか遠い目を見ていた。
その間は特に仕事をしていなかったが、今まで稼いだお金があったので何とかなった。
実家でこのまま暮らし続けるなら、魔物討伐出もらった銀貨があれば仕事をしなくても全然生きていけるが、それはそれでアドルフ達と同じようになってしまうのが何となく嫌だった。
10年間はアドルフからお金が帰ってくる予定だけど、戻ってこない可能性も大いにあるだろう。あくまでも予定であって、生き残れなければ意味が無いからだ。
傭兵団に入ることも考えたが、入ってしまえばなかなか戻って来れないだろう。
で、あれば衛兵の仕事をするか…だが、衛兵は男性のみの職場だ…
仕事について考えていると、マウロが部屋にきた。
「エル姉。今いい?」
「どうしたんだ?」
「ちょっとお店に顔出して欲しいんだけど…」
今考えることで忙しいのに、なんで店に顔を出さなきゃ行けないんだ。
「今考え事で忙しいから無理。」
「どうせ考えても答えの出ないことをぐるぐると考え続けているんだろ。ここの所ずっとそうなんだから分かるよ。とりあえず気分転換だと思って出て。待ってるからね!絶対だよ!」
それだけ言うとわざと大きな足音を立てながら階段を降りていった。
「仕方ない…降りていくか。」
私は寝間着から着替えて、髪をポニーテールに結んでから階段をおりていくと、洋食屋にしては珍しい大きな笑い声が沢山響いていた。
「今日はなんだかうるさい…え…?」
厨房から店内へ向かって歩くと、知っている面々が貸切にして集まっていたらしい。
「た、た、た、たいちょぉぉぉぉ!!!」
「エル大隊長!お久しぶりです!」
「お前ら、帰ってきたのか…?あれからもう半年も経ったのか…?」
「「「はい!!任期を終えてただいま戻りました!!!」」」
皆が声を揃えて言う姿をたった半年見ていなかっただけなのに、どこか懐かしく感じた。
「そ、そうか。無事帰還してくれて良かった。今日はゆっくりしてけよ!」
「隊長にも話したいことがいっぱいあるんです!一緒に飲みましょう!今日は、団長の奢りで貸切ですよ!」
団長がこんなところに来るなんて珍しい感じもするが、兄さんとも友人なくらいだ。それにダックワーズ辺境伯家の人だ。
ダックワーズ。最近どこかで聞いたような…
ダックワーズ…
「ダックワーズぅぅぅ!?兄さん、もしかして…。」
私が急に大声を出したからか皆が一斉にこっちを向く。
「あぁ、オディたち辺境伯家は俺たちの雇い主だ。」
何年も聞いていたのにすっかり忘れていた。しかもダックワーズ家が辺境伯家だと知っていたのにだ。
昔から、兄さんと喧嘩ばかりしていたし、まさかそこまでの関係だとは思っていなかった…
「だっていつも喧嘩ばかりしていたじゃないか。」
「それはそれだ。なっ!オディ。」
「あぁ、そうだな。今は喧嘩もほとんどしない。」
兄さんは陽気に団長と肩を組んでいるが、団長は若干煩わしそうだ。何度も肩に乗せていた手を振り払っている。
2人を見て本当に仲良くなったんだなとしんみりしているとルエルに呼ばれた。
「エル隊長!こっちきて一緒に飲みましょぉー!!」
ルエルの所に行くと、ヘッディー、ヤーコフ、それにバルコ副団長が1つのテーブルを囲んで飲んでいた。ルエルが隣を開けてくれたのでそこに座りながら私も飲み始めた。
「そう言えば、アドルフはどうなった?」
「全然使えませんでしたね…そもそもウチらの知ってるアドルフくんはかなりの猛者だったんで、まさかって感じでした。」
バルコ副団長は酒を片手にすごい勢いで話し出す。普段はそんなに話すイメージがなかったが…酒が入るとすごい話上戸になるらしい。
「俺たちの知っているアドルフは、お前だからよォ。正直見た目がナヨナヨしていても戦うと人が変わるんじゃないかって思って楽しみにしてたんだがな。」
「確かに初めて会った時は皆にバカにされてたな…」
会ったばかりの頃のことを思い出す。ヘッディーは心配してくれていたがヤーコフなんかは笑っていたもんな。
「僕は初めからいなかったのが残念ですよ。」
実際、この中で国から初徴集を受けたのは私とルエルでヘッディーやヤーコフは自己志願者だ。自己志願者の場合は自分で魔物討伐に行く期間を決められるため、最後までいたという感じだ。
「そうか?見ても何も変わらないと思うがな。」
「いや、お前は知らないだろうがノッラっていう隊長いたろ?」
確か、初めだけ見かけ他がその後見かけなくなったような…私はこくりと頷くと、代わりにヤーコフが話し出した。
「あぁ、あの時は面白かったよなー。こいつが武器にレイピアを選んだらよ女男とめちゃくちゃ笑ってやがったんだよ。本当に戦えるのかってな。」
確かに、初めの頃はレイピアを持っているだけで笑われていたな。いつの間にか何も言われなくなったが。
「へぇー、隊長笑う奴なんているんすね。」
「見た目こんなだからよ。それでいざ戦闘が始まるとさ、陣形なんか関係なしに突っ込んでいくしよ、なんならCランクの魔物までなら素手で倒していくからよぉ。あの時の皆の顔は、見ていて傑作だったわ。」
ケラケラ笑いながら話すヤーコフも大分酒が回っているようだ。
「でもノッラ隊長は次の日に居なかったよな。」
「それはですね、「自分にはあいつを制御することは出来ません」って魔物討伐から足を洗ったからですよ。」
まさかのそんなことがあったんで知らなかった。バルコ副団長もあの時のノッラの顔は忘れられないですねーって笑っている。そんなにやばかったのだろうか。
「話が脱線したが、それを見ていたから本物のアドルフにも期待していたんだがな…まさかだったよな…半年いて、スライムすら倒せなかったんだぜ。」
確かにスライムは打撃攻撃は有効では無いが、投擲や剣などがあればすぐ倒すとができる。
私はまさかと思い、ルエルを見ると…ヘラりと笑いながら、
「いやぁ、半年間武器も使えるようにならないし投擲もやっとスライムに届くようになったくらいで…石のひとつも当たらない人始めてみましたよ。ちなみに半年間で倒した魔物討伐数は……ある意味で歴史に残るんじゃないですかね……0でした…。」
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