夫に家を追い出された女騎士は、全てを返してもらうために動き出す。

ゆずこしょう

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永久就職!?

仕事が決まっていないのは私だけ!?

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※申し訳ございません。こちら再構しており、内容が少し変わっております…



「アドルフの話はこのくらいにしておいて、そろそろ隊長の話を聞きたいです。隊長は仕事決まったんですか?」


「わ、わ、私か!?仕事はな…見つかりそうではあるのだが…」


4人がこちらを同時にみて「やっぱりまだ見つかっていないのか…」というような顔をしてくる。失礼な奴らだ。今まで全く求職活動をしてこなかったわけではないんだ。ただ、自分に見合う仕事がなかった…というだけのこと。

「そうなんですねー。見つかりそうだったならよかったです。もし見つかっていないのであれば、以前お話していたお仕事を紹介しようかなと思っていたんですけど…」

ルエルはこちらをチラチラ見ながら話してくる。この顔は本当は紹介してほしいんでしょ?という目だ。


「ゴホン。ル、ルエルもしよければ参考までに、その仕事の内容だけでも教えてくれないか?」


「えぇ。参考ですか?そんなの面倒くさいですよ!守秘義務というのもありますし、ここではお伝えは難しいですね。それに隊長は仕事見つかりそうなんですよね?でしたら必要ないじゃないですか。」


「た、たしかにそうなんだが…な…その…すまない…仕事はまだ決まっていないんだ…」
正直言ってルエルが仕事を紹介してくれるというのは渡りに船だった。半年間色々面接は受けたもののうまくいかず、最近では本当に仕事ができるのかさえ不安になってくる始末だ。

「最悪、自分で傭兵団を作るのかもありかなと思っていたところだ。」

傭兵団に入ることも何度か考えたが、女性が入れる傭兵団は限られておりあまりいい噂を聞かないところがほとんどだった。で、あれば自分で傭兵団を作るのが一番手っ取り早いのではないかと思ったのだ。
ただ、運営は苦手だから他の人に運営をお願いしないといけない…というデメリットはあるのだが…。


「隊長の作る傭兵団か。それは面白そうだな。もし傭兵団を作るなら、俺も入れてくれよ!隊長もついに団長か…」
と酒を飲みながら絡んでくるのはヤーコフだ。

「ヤーコフ。お前は確か大工の息子じゃなかったか?戻ってきたら大工の仕事をするといっていただろう?」

「確かに大工の息子だけどな。まぁ俺がいなくても何とかなるだろ。5年間魔物討伐でいなくても何も起きなかったんだしよ。それに弟がいるから、弟に継がせればいいんだ。」

確かに継いでくれる人が他にいるのならいいかもしれないが、できる仕事があるのはうらやましいことだ。


「そうだな。俺も隊長が傭兵団なら作るなら入りたいところだ。魔物討伐部隊の時のようで面白いじゃないか。それに毎日宴会もできそうだしな。」

毎日宴会なんてしたら、酒代だけでいくらかかるかわかったものではない。それにヘッディーだって、帰ってきたら漁師に戻るといっていたくらいだ。
「いや、ヘッディーには漁師の仕事があるだろ?」

「まぁな。漁師の仕事はあるが、傭兵団の方が稼げるなら足洗ってもいいんだ。家族を食わせていければいいからよ。」
ヘッディーが以前家族が多いという話をしていた。弟や妹がまだ小さくお金がかかるんだそうだ。

こういう時に、一緒に傭兵団をしようといってくれる仲間がいるのは嬉しいことだが、ちょっと待ってくれ…

「もしかして、仕事がないのは私だけ…なのか?」


4人の顔を見渡すとコクりとうなずく。


「いや、こんな時だけ揃えなくていいから!仲よしかよ!!!」

思わず4人につっこむとゲラゲラと笑い出した。
ルエルは元々の職場に戻るといっていたし、バルコ副団長も騎士団にそのまま戻ることになるのだろう。


私はルエルの方に向き直り、ルエルに頭を下げて、就職先を紹介してもらうことにした。

「ルエル様。お願いがございます。それはそれはそれ~は切実なお願いなのですが…」


「言ってみたまえ。」

「私に仕事を紹介していただけないでしょうか…」
簡潔にそれだけ伝えると、ルエルは「いいですよー」とのんびりした声で返してくる。

「明日、この地図の場所に行ってもらえますか?門兵には僕から伝えておきますので…ついたら自分の名前と僕の名前を門兵に伝えてください。」

「わかった、明日だな。私は殴ることと切ることくらいしかできないんだが、大丈夫だろうか?針仕事や、料理関係は昔から苦手だ。掃除や洗濯はできるんだが…」
少し女として恥ずかしい部分ではあるが、自分ができるものを正直に伝える。

「大丈夫ですよ!殴ることと切ることが得意な隊長にはとてもあっているお仕事だと思いますので、明日よろしくお願いしますね!折角だしここからはしんみりした話はやめて飲みましょう!」

私はルエルの言葉に頷いてから皆で飲み始めた。


⟡.·*.··············································⟡.·*.


ルエル視点


「ん~~もうのめましぇん。むにゃむにゃ」

酒瓶を抱え込んだまま眠ってしまったエル隊長の顔を見ながらお酒を飲んでいると急に大きな影ができた。


「なんだ、オディロン様でしたか。どうしたんですか?」


「ここ座ってもいいか?」

折角エル隊長の寝顔を独占したというのに…少し残念に思いながら「どうぞ」と声をかける。

「オディロン様。エル隊長のことが好きなら早く気持ちを伝えてくださいよ。もし伝えないなら僕がもらってしまいますからね!」

正直言って5年近くエル隊長とは魔物討伐で死地を歩いてきたのだ。エル隊長の笑顔や、寝顔、酔っぱらった顔、色々な顔を見てきた。そんな姿を見てきて惚れない男はほとんどいないだろう。それに、素直でまっすぐな性格で変に曲がっていないところも魅力的だ。

「お前も好きなのか…?」

「ええ。恐らくエル隊長の部隊にいたほとんどの人は隊長のことを好きだと思いますよ。形は色々あると思いますがね。」
ブラウンの髪をいつもポニーテールに結んでいて、少し毛先がくるんとなっているところも、たれ目でおっとりとした性格に見えるのに実際話してみると男勝りな性格。こういうのをギャップというのだろうか。そういったところも好感が持てる。

「離縁したばかりだから余裕あるだろうと思っていたら横から搔っ攫われるからな。ルエルの言う通り、もたもたしている時間はないと思うぞ。本人は気づいていていないが、昔からエルは男に人気なんだ。だから急いだほうがいいぞ。」
僕と、団長の間に、軽く割って入って来たラウルさんはそのまま「俺少し寝るわ~!おやすみ~!」といって店の奥へと消えていった。

「とりあえず明日一人お仕事紹介しているんで、面接に伺うと思いますが、対応よろしくお願いしますね。」

あえて誰が行くか言わないのは自分なりの抵抗だ。

「じゃあ僕も少し寝ます!おやすみなさい~」

そう言ってエル隊長の横で机に突っ伏して眠りについた。

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