和風ファンタジー世界にて、最強の武士団の一員になる!

烏丸英

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第二章・少女剣士たちとの出会い

エピローグ~一方その頃、ようやく学校に帰還した順平は……~

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「はぁ、はぁ……やっと、帰ってこられた……」

 同じ空の下で、順平はボロボロの格好になって学校の正門前に辿り着いていた。

 案の定、洞窟内で迷いに迷い、脱出するまで時間が掛かった上、てんやわんやの別府屋から「もう二度と来るな」と喚き散らかされて追い出された彼は、昇陽からここまで慣れない一人旅を行い、疲れ果てていたのである。

 八百長勝負で使った金を桔梗の作品を売ることで補填しようとしていた別府屋は、勝負に負けたことで大きな負債を抱えることになってしまった。
 店を畳むほどの被害ではないが、間違いなく経営が傾くレベルの問題を抱えてしまった彼らには、武士団を結成して英雄の仲間入りをするだとか、そんな余裕は残されていなかったのである。

 そうなれば当然、彼らにとって順平は無用の存在だ。
 あれだけ順平に媚びを売っていた金太郎もストレスのあまりか、散々に罵倒の言葉を浴びせかけてから彼を追い出し、店先に塩を撒く始末。

 一気に目論見が崩れた上に、何も得ることもなく骨折り損のくたびれ儲けになってしまった順平は、一人とぼとぼと学校に戻るしかなかったのである。

「畜生、あの商人め……! 上手いこと言って俺を騙しやがって、あいつのせいで酷い目に遭ったぜ」

 自分を誘った銀次郎や別府屋の責任者である金太郎への恨み言を口にしながら、ようやく安住の地へと帰ってこられたことに安堵する順平。
 とにかく、今回のことはすぐに忘れてしまおう。部下たちに自分の世話をさせて、暫くは静養の期間を取ろうなどと、彼が考えていると……。

「……よう、竹元。随分と遅い帰還だな」

「な、なんだ、石動か。わざわざ俺を迎えに来てくれたのか?」

 正門のすぐ近くで自分を待ち受けていた石動慎吾の登場に、順平は少し顔を綻ばせた。
 自分たちのNO.2の立場にいる人間が、こうして自分を迎えに出ている……それはつまり、まだ仲間たちの中での自分の地位はそれなりのものをキープ出来ているということだろう。

 などと、栞桜の時のように早とちりをする順平に向け、慎吾はただでさえ厳つい顔に怒りを込めた眼差しを浮かべると、彼へと詰問を始めた。

「お前、西の街で何をしてきた? こっちの方にまでお前の悪評が届いてるんだぞ!?」

「は、はぁ!? な、なんだよそれ!? お、俺は、なにも――」

「女を手籠めにしようとしただとか、八百長勝負に乗っかっただとか、妖と遭遇した時に恐れをなして逃げ出したとか……他にもまだまだ、お前の悪い噂が届いてる! お陰で同じ立場の俺たちも白い目で見られるようになってるんだ!」

「う、うわぁっ!?」

 サッカー部の正ゴールキーパーを務める巨体の慎吾に胸倉を掴まれ、引き寄せられた順平は、彼の怒りに満ちた表情に腰が抜けんばかりの恐怖を感じていた。
 そうやって、ガタガタと震える情けない彼に対して、慎吾は低く唸るようにして恫喝の言葉を口にする。

「いいか? お前が何を考え、どう動くかを制限するつもりはない。だが、自分の行動にはそれなりの責任を持て。王毅はお前を甘やかしているが、俺はそんなことはしない。お前が俺たちにとって悪影響を及ぼすと判断したら、武神刀を取り上げて下働き組にぶち込むぞ!」

「わ、悪かった、俺が悪かったよ! もう下手な真似はしないから、許してくれ!」

 燈にも負けず劣らずの威圧感を放つ慎吾からの恫喝に、順平は涙目になりながら許しを請うた。
 そのあまりにもだらしのない姿を鼻を鳴らして嘲笑った慎吾は、ぽいと順平を放り投げると地面に尻もちをついた彼に向けて、冷たく言い放つ。

「……お前みたいな奴に軍勢を率いらせるわけにはいかない。竹元軍は既に解体した。所属してた奴らは各々他の部隊に配属させてもらったぞ」

「は、はあっ!? ま、待てよ! そんなこと、リーダーである俺の許可なしにやって良いはずがねえだろ!?」

「そのリーダーであるお前に問題があるからこうなったんだろうが! それに、お前の部下も全員転属を希望したよ。お前の下で働くのは真っ平御免だとさ。竹元、お前は人の上に立つのに向いてなかったみたいだな」

「あ、あ、あいつらぁっ! 誰のお陰で、武神刀を手に入れられたと思ってやがるんだっ!?」

 同じ秘密を抱えた仲間たちの裏切りに激怒する順平であったが、時すでに遅し。
 軍の解体も、一兵卒への格下げも、既に執行された後なのだ。ここで彼が喚いたとしても、何の意味も為さない。

「というわけだ。軍団長としての特権も剥奪するから、以後は勝ってな真似を慎めよ。次に似たようなことをしてみろ、その時は……わかってるな?」

「ひいっ!?」

 仁王立ちし、自分を見下ろす慎吾の姿に小さく悲鳴を上げて震えだす順平。
 そんな彼を見つめながら、慎吾は再び低く唸るような声を出し、彼を脅す。

「二度と、俺たちの……王毅の足を、引っ張るんじゃねえ。あいつはこの世界を救う英雄になる男だ。その邪魔をする奴は、俺が排除する。どんなことをしてでもな」

 そう言い残して、彼への処遇を伝えるという仕事を終えた慎吾が去っていく。
 その背を見送り、泣きっ面に蜂とばかりに立て続けに起きた悪い出来事を思い返した順平は、後ろにばたりと倒れ込むと泣きそうな表情で空に向かって叫んだ。

「最悪だ……どうしてこうなっちまったんだよ、ちくしょ~~っ!!」

 何も得られないどころか、失うばかりの自分の運命を嘆き、悲しむ順平。
 雲一つない綺麗な青空に舞う鳥たちは、そんな彼を嘲笑うかのように鳴き続け、それがまた彼のプライドを傷つけるのであった。
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