ステラチック・クロックワイズ

秋音なお

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1話②

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 そして件の昼休み。彼が、僕はちょっと……と席を外したため、司書室は今現在俺一人である。先に食べていいと言われていたため遠慮なく昼食を済ませたが、三十分以上経った今も彼は帰ってこない。彼はよくこのようにして部屋を留守にすることがあったが、ここまで長引くのは稀である。というか、今日に限ってそれをされても困る。彼が留守の時に例の女子生徒が来ても対応ができない。そもそもどんな人が来るかも、なんなら名前すら聞いていないというのに。
 第一、長いことこの閉鎖された空間で孤独的に過ごしてきたコミュ障に人並みの対応ができると思っているのか? 答えは勿論否。そしてそれは相手が女子生徒であるとなると尚更である。
「……ったく、なに考えてんのかわかんないな」
 俺は近くに積んであった本の一番上にあった文庫本を手に取ると流し読みをするようにパラパラとページを指で弾く。カラーの表紙や文章の間に挟まる挿絵には派手な髪色をしたヒロインたちのイラストがちりばめられている。たしか、今期のアニメの中で爆発的にヒットしているものの原作だっけ。見ていないから詳しいことはわからないが、彼も毎週欠かさずリアタイで見ているんだとか。
「……にしてもここらへん趣味全開過ぎるだろ」
 彼は見た目、性格だけに留まらず仕事の面でもちゃんとと言うべきか、予想を裏切らずと言うべきか、まぁとにかく変人だった。最初に言っておくが、彼は仕事ができないわけではない。むしろできる側の人間であったが、考えることが少し一般論からずれていた。
 例えば、近年問題視されている若者の活字離れを解決すべくために用意したいくつもの案によって結図書館利用者を大幅に増やしたため、よく校内で賞賛されていた。

『高校生の視点に立った考え方が的を得たんだよ』
 
 彼は遠慮するようにそう言っていた。
 彼が出した案の一つにライト文学の大幅導入というものがあった。これは文字通り、図書室の新規蔵書として本を買う際に占めるライト文学の割合を増やすというものであった。現代の若者の多くは小説などの活字を全く読まないわけではない。読むには読むのだが、読むジャンルが学校の図書室の蔵書に少ないのだ。一概に言えるわけではないが、活字を読む若者の大体はライト文学を好む傾向があった。好き嫌いはあるにしろ、堅苦しくない文章に場面の想像のしやすい挿絵、キャッチ―なイラストはあまり本を読まないタイプの人間からしても敷居が低かった。実際、ライト文学の蔵書が増えたことで利用者は増えたし、利用者の貸し出し履歴の集計をとってもそれらが占める割合は大きかった。
 一部教員からは、もっと一般文学も同じようにプッシュアップして欲しいとの要望があったらしいが、彼はきっぱり断ったらしい。時代には時代のやり方とトレンドがあるんだと返事をしたんだとか。なんとも仕事のできる人間のセリフである。
 ……だが。
「……妹と結婚、妹とキス、妹とデート。こっちは後輩と同棲……。これ、どう考えても絶対あいつの趣味だろ」
 それは半分彼の建前だった。蓋を開けてみれば彼が読みたいためだけに蔵書になったのではないかというような本が毎回の新規入荷本の中に含まれていた。偶然にも、毎回、だ。
 彼は自他共に認める重度のシスコンだった。
 話を聞く限り、彼には実際に歳の離れた妹が一人いるらしい。何かの度に、僕の妹はかわいいんだと自慢をしてくるため俺は普段から聞き流していた。が、彼は仕事場で変人であるように自宅でも変人らしく、シスコンであることもあって家では妹から一定の距離を保たれているんだとか。彼はよく、もっと甘えてくれたら、とアニメと現実の区別のつかないようなことをぼやいていたが一向に叶う気配はないらしい。それもあって、妹キャラや後輩キャラの出てくるライト文学を読みふけることで落ち着かせているんだとか。
 ……重症である。
 ならば社会人でお金にも不自由をしていなさそうなので、自分で買えばいいのではないかと尋ねたことがあるが、その解答もまた、変人らしいものだった。

『そんな本が部屋に並んでるような人=お兄ちゃんって思われたくないだろ? だって考えてごらんよ、そんなの妹からするときもいじゃん』

 ……だったら最初から読むなよ。
 自覚があるのであれば読まなければいいだけだが、読まないとやってられないらしい。
 いや、だからって学校のお金で読むなよ。
 ばれたって本当に知らないからな。

「いやぁ、遅くなってごめんね~」
「遅い、って、……その人」
 ガララとドアの開けられる音がしたため目線をドアの方へと向けるとそこには例の変人が立っていた。そしてその陰に隠れるように、もう一人立っているのが見えた。三分の一ほどしか見えないため顔はわからないが、綺麗な銀髪が印象的だった。
「あぁ、そうだよ。この子が今日からここで君と一緒に過ごす、もう一人の特殊登校生徒。さ、入って入って」
 彼が中に入るように手で促すと、件の女子生徒は遠慮がちに一歩足を踏み入れ、彼と女子生徒が横に並んだ状態になる。見比べるように二人を眺めると、どこかで二人には共通点があるように思えた。それは目に見える視覚的なものではなく、本当に直感的なもの、だが。
「この目の前にいるちょっと目つきの悪い人が君の一つ年上の先輩。ほら、少年。彼女に挨拶して」
「……ども、烏屋。烏屋琉斗」
「……少年、君はどんだけコミュ障なんだい。この子がびびっちゃうだろ? ……まぁいいや。彼は目つきが悪いし無愛想だけど、言うほど悪い人じゃないから大丈夫だよ」
 うるさい、と反論未満の言葉を口の中で粗雑に噛み砕くとそのまま飲み込む。あと目つきが悪いとかそういう余計なことは言うな。あと悪い人じゃないっていうのも何のフォローにもなってないぞ、多分。
「じゃあ次は君の番だよ」
「……はい」
 彼がそう言うと女子生徒は軽く一歩前に出た。
 まるで転校生が教室で挨拶をするような様子だった。
「一年一組。白樫ステラ、です。よろしくお願いします、烏屋先輩」
 女子生徒は一つの作法のように一礼した。そして上がった顔をもう一度見る。
 彼女はとても整った容姿をしていた。
 ほのかに幼さの残る顔はどのパーツの比率も最適でどこを見ても欠点が無かった。ほのかに幼さの残る表情も、澄んだ花緑青の瞳も、真っ直ぐな鼻筋も、甘すぎないショートカットも、細く長い四肢も、彼女のためのオーダーメイドのようだった。ブラウスの上から羽織られた男物の黒いパーカーは髪型のせいかクールビューティーな印象を与える。
 だが、ただボーイッシュなだけではなく甘さもあった。背負ったリュックサックにはころっと丸い、うさぎのようなマスコットキャラクターのぬいぐるみがついている。そしてそれと同じキャラクターのヘアピンがストレートな髪のワンポイントになっていた。もしかすると、見かけによらずかわいいものが好きなのかもしれない。
 彼女には、不思議な可憐さがあった。
「あ、少年。最初に言っておくけど、いくらこの子がかわいいからって変なことはしちゃダメだからね?」
「するわけがないだろ。あんたは変な小説の読み過ぎ。…………って待て」

 今、彼女なんて言った。
 たしか……白樫って、言ったよな……?

「……もしかしてあんたの妹?」
 さっき直感的に感じた共通点って言うのは、まさか。
「正解。僕の愛してやまない妹ちゃんだよ」
 彼はしてやったり、とわざとらしく笑って見せた。
「い、妹って……」
「あれ、少年。もしかして本当に彼女が僕の妹なのか疑っている?」
「いや、そういうことじゃなくて」
 あんたに妹がいることは今まで散々話を聞いているから疾うに知っている。
 そういうことじゃなくて、あんたは一体どういうつもりだ?
 妹をこんなところまで連れてきて。
「あんたの本心がわからない」
「本心? 僕はただ、ここに連れて来るべきと判断した生徒を連れてきただけだよ。それがたまたま、僕の妹だっただけさ」
「あんたの判断ってところに引っかかってるんだ」
 確かに俺だってあんたの判断でここに連れてきてもらったが、と言葉を付け加えるがそれは弁明でもなんでもなかった。彼は変人なのだ。勿論、恩もある。彼の選択を真っ向から否定したいわけでもない。ただ、彼は本当に突拍子もないことをする。今回妹をここに連れてきたことも、別の理由があるのではないかと思った。
「……あぁ、少年。君はつまり、僕が恣意的な理由で妹をここに連れてきたと思っているわけだ」
「……いや、まぁ、端的に言えばそうだな。別にそれだけでもないが」
「それは、ないです」
 妹が口を開いた。女子生徒にしては少し低く、されど不快感の無い綺麗な声だった。そんな声が俺の言葉を遮った。思わず本人の顔を見る。怒っている様子ではないが、花緑青の瞳がすん、と真っ直ぐに俺のことを捉えていた。
「……私は、その、兄さんのわがままに付き合うつもりはない、ので。そんなに兄さんのこと、好きじゃない、から」
「うんうん、つまりはそういうことだよ、少年。……って、ステラ⁉ 一体どういうことかな⁉」
「……そのまんまの意味」
「あ、あれれ、お、おかしいな……。小さい頃はあんなにもお兄ちゃんのお嫁さんになるって言ってたと言うのに……」
「……兄さんはいつまで子供の戯言を信じてるの」
 ほんと、兄さんったら、と冷たい対応で場を流す妹に、大袈裟なくらいのリアクションにて落胆する兄。なんなら彼はその場に倒れ込み、四つん這いになっている。
 ……一体俺は何を見せられているんだ。
 妹の方は至って差し支えの無い反応だが、変人の兄の方は見てて痛いほどに落ち込んでいる。一体、俺はこの状態でどうしろと。
「……こんな感じで。まぁ、私は確かに初めは兄さんに誘われましたけど、最終的にはちゃんと自分の意志でここに来たので」
「わ、わかった……」
 礼儀正しいのか、感情の起伏が少ないのかよくわからない口調だった。多分、悪い子ではないのだろうけど。こちらを威圧するような素振りもないのだが、どうしてかこちらの方が年上だというのに萎縮しそうになる俺がいた。
「改めまして、よろしくお願いしますね、先輩」
「よ、よろしくな、白樫」
「……あの」
「ん?」
「……その呼び方、できればやめてもらえませんか」
 怪訝そうな顔でこちらを見てきた。
「白樫、だとここには二人いるので」
「あぁ、それは安心してくれ。あの変人のことは基本名前で呼んでいないからな。一応そういう意味では差別化になっている」
「……全然大丈夫じゃないです。先輩から見ても変人という認識の兄さんと同じだと思われるのが嫌なんです。できれば、ステラと呼んでもらえるとありがたいです」
「あぁ……なるほど。それは確かに嫌かもしれないな、ごめん。今後はステラって呼ぶよ」
「ねぇ君たち!? もう既にオーバーキルだからね!?」
 もはや彼の言葉の端はなにかで濡れてるようにも思えた。感情のままに言葉を口にする変人の兄。なるほど、彼は普段あのようにして余裕に満ちているが、妹の前ではこんなにも弱くなるのか。ここまで来るとこのシスコンは気持ち悪いというよりは憐れに思えた。
「……ん、まぁ、とりあえず、そんなこんなで僕の妹がここに通うようになったから、よろしく頼んだよ、少年。ちょっと無愛想に感じる部分があるかもしれないけれど、不器用なだけで悪気はないから、さ」
「わかった」
「兄さん、言わなくていいことを……」
「それじゃ、僕はちょっと……」
「おい、どこに行くつもりだ?」
 よろよろとぎこちない千鳥足で立ち上がると、そのまま部屋を出ようとする彼に声をかければ、ちょっと外の空気でも、という言葉が返ってくる。どう見たって作られたであろう不気味な笑みを浮かべると彼は言葉通り部屋を出ていく。
 って、さっきのでそんなにもダメージを受けていたのか。
 俺と妹は二つ返事で受け取ると片手だけ振る。部屋は二人だけになり、会話も無く静かになった。沈黙を破るように先に口を開いたのは妹だった。
「あの、すみません。うるさかった、ですよね」
「いや、大丈夫だが、なんか…………いつも、家であんな感じなのか?」
「い、いつもっていうわけではないんですけど。……その、見た通り、兄さんは妹離れが全然できてなくて……」
「どうもそのようだな……」
 確かに今までも耳にタコができるくらいにそのような妹関連の話を彼はしていたが、本物のシスコンを目の当たりにするとどうも言葉を失ってしまう。
「すみません、お見苦しいものを……」
「気になくていい。……にしても、悪くはない、かもな」
「え?」
「いや、そうやって兄妹でわちゃわちゃできるのって羨ましくてな」
 俺、一人っ子なんだよ、と言葉を続ける。
 俺は口にした通り、一人っ子だった。もっと言えば母親は幼い頃に亡くしていたし、父親は仕事が多忙で未だにほとんど家に帰ってこない。ゆっくりと顔を合わせて会話した記憶なんて数えられるほどしかなかった。家族の温もりというものは、他人の家族や小説の世界で疑似的にしか知ることができなかった。
 そんな俺からするとさっきの一部始終だってどこか温かい家族のワンシーンに見えてしまう。どこかで彼を羨ましいと思っている自分すらいた。
「先輩、一人っ子だったんですね」
「そうそう。だからさっきのもなんだか見てて羨ましかったんだよ。兄妹がいるからできることだよなぁって」
「まぁ、それはそうかもしれませんけど、妹からするとああいう兄って結構困ったりするんですよ? あんなにべたべたされると窮屈ですし」
「そりゃ、それはわかってるよ」
 さすがにあんなシスコンな兄になりたいわけではない。
 あくまで俺は、気を張らずに会話のできる兄妹の温もりに憧れただけで。
「……あ、もしかして」
「ん?」
 彼女は俺の手元を指さすと、あぁ、と少し冷めたような視線を送ってくる。
「だから先輩はそういう本を読んでいたんですか?」
 そういう本? ……あ。
 俺は嫌な予感がして恐る恐る手元に視線をずらす。そこには読みかけの本があった。
「……いや、別に、そういうわけでは、無くて、な」
 俺が持っていたのは、あの変人の趣味で蔵書になっていたライト文学だった。妹とイチャイチャする描写が多く書かれたライト文学。
 俺の弁解が難航したのは言うまでもない事実だった。
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