5 / 29
2話③
しおりを挟む
「ごめん遅くなったよ……って、あれ? 少年、僕の妹ちゃんは?」
「あ? さっき帰ったぞ」
午後の仕事の大半をすっぽかして外の空気を吸いに行った彼が、いつもの調子に戻って帰ってきた。あれから時間は進んで、もう放課後になっている。
ステラには俺の方から放課後のなった際に帰るように促していた。あの後の距離感がわからなかったからである。ステラが泣く間、俺は何かをするわけでもなくただ窓の外をひたすらにぼーっと見ていた。沈黙の漂う中、何か言われれば言葉を返し、またしばらくを沈黙が空間を制する、そして気が向けば少しの言葉を交わす、それだけだった。無理に言葉を交わすことなく時間を潰すことが最善策だと思っていた。
それはあくまで、俺にできる選択肢の中での最善策、になるが。
「そっかぁ。一緒に帰って、そのまま今日のことでも聞こうと思ったんだけどねぇ。……まぁいいや。家でも聞くことはできるだろうし。…………ところで少年」
「ん?」
「初日だというのに妹ちゃんを君一人に任せてしまってすまなかったね」
「あ、あぁ、別にそれくらい」
「悪い子じゃないんだけどさ、ほら、なんて言うんだろう、ちょっと人付き合いというかなんというか、その、……まぁ、とにかく、下手くそだから、さ」
「……あんたも下手くそだな」
妹のことが大切なのはわかるけどさ、あんたがそんなにもあたふたしたらダメだろ。
「な、なにがだい?」
「ステラから全部聞いた、多分、それなりには理解してるつもり、だから」
あんた、妹絡みになるとてんでダメだな。
空回りしっぱなしじゃないか。
そんなに目を泳がせるなよ。
「……そうかい、なら、よかったのかな」
彼は表情のない顔をすると、微かに首を傾け、何もない部屋の隅っこを見つめた。
「妹を、君に会わせたのは正解だったのかもしれない」
「なんだよ、それ」
変な言い方だと思った。
「そのまんまの意味だよ」
「そんなのはわかっている」
俺はその言葉の先、裏側に隠れた本意を知りたいんだが。
「……僕は、妹には元のように笑っていてほしいだけなんだ」
君はこの言葉の意味が分かるだろう? と淋しそうに言った。
「シスコンや過保護、僕のことは言いたいように好き勝手言ってもらって構わない。現に僕はそう言われたっておかしくないような立ち振る舞いをしているからね。今更言い返すつもりもないよ。でも、僕はそういう邪な感情を差し引いたとしても、妹には前のような妹らしい、オリジナルの妹でいてほしいんだ。今の妹だってもちろんかわいい僕の妹だ。でも、今の妹は僕の知らない、どこか偽物のような妹だよ」
彼の顔には彼の内心を表した半透明な文字が書かれているように見えた。いくつもの文字はどれも寒色のような意味合いばかりで、そんな文字に縛られたように彼はどこか苦しそうだった。
「……少年なら、色恋抜きに妹に対等に向き合ってくれると思っていた。君は良くも悪くも人を対等に評価するからね。君となら妹も少しは心を開くと思ったけど、……でも、本当によかった」
「……勘違いするな、俺は何もしていない」
俺がしたことなんて何もない。
「じゃあ、妹はどうして君に心の内を話せたんだろうね」
「……偶然みたいなもん、だろ」
「少年、人生なんて所詮偶然の積み重ねだよ。僕と君が出会ったのだって偶然だったじゃないか」
「それ、は……」
「だから。僕は偶然だろうとなんだろうときっかけはなんだっていいんだ。妹の居場所になってくれてありがとう。感謝するよ」
「……別に」
むず痒い言葉の感触はどうも慣れなかった。
「ところで少年。妹はどうだい?」
「どう、って、別にどうもないが」
「そうじゃなくて。妹、かわいかっただろう?」
「おいシスコン。さっきまでの良い話は一体どこに行った」
どうしてあんたはこうも妹のことばっかり話すんだ。
「まぁそういう暗い話はもうやめでもいいじゃないか。それでどうだい? あんなことで悩むくらいだ。髪は短くなったと言えど見てくれは悪くないと思わないかい?」
『……私は、どうしたら、よかったんでしょうか』
浮かんだのは、あの濡れた瞳だった。じとーっとした顔でも、花緑青でもなく、濡れたからこそベールの剥がれたエメラルドの瞳だった。弱く脆く、儚いからこそ、そこには引かれる何かがあった。親近感として片付けるにはいささか無理矢理感のある何か、だった。
「……さぁな」
「かわいいね、少年は」
「どこがだよ」
「初心な男の子みたいだ」
「意味がわからん」
そういうのじゃない、と聞かれてもない答えを押しつける。
俺はそういうのじゃなくて。
そういう理由じゃなくて。
どこか、新鮮だったんだ。
誰かの心の深部に触れ、弱さを目の当たりにしたのはあれが初めてだった。俺は他人との関わり方、距離感、人の持つ温もりとやらがどうも人並みにわからない。全くもって知らないとまではいかないが作られたストーリーからしか得たことがなかった。インプットばかりでアウトプットも実践も無かった。
初めて見た、人の傷ついた心はどうしてか綺麗に思えた。
そして、それを見る機会に巡り合えたことが幸せなことだと思えた。理由はわからない、感覚的なものだった。これが、人の繋がりというものなのだろうか。
「だけど少年。覚えててくれよ」
「なんだ」
「もし妹を傷つけるのであれば、それは君だとしても、そこにどんな理由があったとしても僕は君を許さないよ。どんな手を使ってでも、僕は君に報復させてもらう」
「そんなつもりはねぇよ、シスコン」
「確認だよ。だって僕はシスコンだもの」
「そうだったな」
ドン引きするくらいには知ってるけど。
でも、それがどこか羨ましく思えるのは、俺にもシスコンという不名誉な素質があるからなのか。家族、兄妹間の愛情という憧憬を見てしまったからか。前者である場合、それは衝撃の事実となってしまうが、それはそれで悪くないかもしれないと思ってしまう。
……まぁ、だからって俺は妹の出てくる本を読み漁ったりはしないけど。
「っていうことで少年。改めて僕の妹をよろしく頼んだよ」
「わかった」
「あの子はあんなだけど、根は寂しがり屋で弱いからね。もしかすると君にも迷惑をかけるかもしれない」
「……かもな」
もう既にそんな素振りは見たけどな。
「先に謝っておく」
「……そうか」
別に俺としてはいいんだけどな。
俺の知らない家族の温もりってやつみたいで。
「君もそろそろ帰るかい?」
「そうだな、明日もあるし」
「話、聞いてくれてありがとね」
「気にするなよ」
「妹のことで何かあったら、些細なことでもいいから教えてくれないか?」
「考えとく」
「それじゃ、また明日」
「おう……。あ」
「ん?」
「思い出した」
あんたの妹のことで一つ、謝らないといけないことがあるんだった。
「あんた、妹にライト文学読み漁ってんのばれてんぞ」
「え⁉ 待ってくれ!? そんな。嘘、だろ……?」
「……」
「嘘だと言ってくれよ! 少年!?」
「……俺は知らん」
口を滑らせたのはもちろん俺だが、都合の悪い部分は伝えずに部屋を出る。
そして翌日、俺の口からそれを耳にしたとステラから聞いた彼が激怒したのは言うまでもなかった。
「あ? さっき帰ったぞ」
午後の仕事の大半をすっぽかして外の空気を吸いに行った彼が、いつもの調子に戻って帰ってきた。あれから時間は進んで、もう放課後になっている。
ステラには俺の方から放課後のなった際に帰るように促していた。あの後の距離感がわからなかったからである。ステラが泣く間、俺は何かをするわけでもなくただ窓の外をひたすらにぼーっと見ていた。沈黙の漂う中、何か言われれば言葉を返し、またしばらくを沈黙が空間を制する、そして気が向けば少しの言葉を交わす、それだけだった。無理に言葉を交わすことなく時間を潰すことが最善策だと思っていた。
それはあくまで、俺にできる選択肢の中での最善策、になるが。
「そっかぁ。一緒に帰って、そのまま今日のことでも聞こうと思ったんだけどねぇ。……まぁいいや。家でも聞くことはできるだろうし。…………ところで少年」
「ん?」
「初日だというのに妹ちゃんを君一人に任せてしまってすまなかったね」
「あ、あぁ、別にそれくらい」
「悪い子じゃないんだけどさ、ほら、なんて言うんだろう、ちょっと人付き合いというかなんというか、その、……まぁ、とにかく、下手くそだから、さ」
「……あんたも下手くそだな」
妹のことが大切なのはわかるけどさ、あんたがそんなにもあたふたしたらダメだろ。
「な、なにがだい?」
「ステラから全部聞いた、多分、それなりには理解してるつもり、だから」
あんた、妹絡みになるとてんでダメだな。
空回りしっぱなしじゃないか。
そんなに目を泳がせるなよ。
「……そうかい、なら、よかったのかな」
彼は表情のない顔をすると、微かに首を傾け、何もない部屋の隅っこを見つめた。
「妹を、君に会わせたのは正解だったのかもしれない」
「なんだよ、それ」
変な言い方だと思った。
「そのまんまの意味だよ」
「そんなのはわかっている」
俺はその言葉の先、裏側に隠れた本意を知りたいんだが。
「……僕は、妹には元のように笑っていてほしいだけなんだ」
君はこの言葉の意味が分かるだろう? と淋しそうに言った。
「シスコンや過保護、僕のことは言いたいように好き勝手言ってもらって構わない。現に僕はそう言われたっておかしくないような立ち振る舞いをしているからね。今更言い返すつもりもないよ。でも、僕はそういう邪な感情を差し引いたとしても、妹には前のような妹らしい、オリジナルの妹でいてほしいんだ。今の妹だってもちろんかわいい僕の妹だ。でも、今の妹は僕の知らない、どこか偽物のような妹だよ」
彼の顔には彼の内心を表した半透明な文字が書かれているように見えた。いくつもの文字はどれも寒色のような意味合いばかりで、そんな文字に縛られたように彼はどこか苦しそうだった。
「……少年なら、色恋抜きに妹に対等に向き合ってくれると思っていた。君は良くも悪くも人を対等に評価するからね。君となら妹も少しは心を開くと思ったけど、……でも、本当によかった」
「……勘違いするな、俺は何もしていない」
俺がしたことなんて何もない。
「じゃあ、妹はどうして君に心の内を話せたんだろうね」
「……偶然みたいなもん、だろ」
「少年、人生なんて所詮偶然の積み重ねだよ。僕と君が出会ったのだって偶然だったじゃないか」
「それ、は……」
「だから。僕は偶然だろうとなんだろうときっかけはなんだっていいんだ。妹の居場所になってくれてありがとう。感謝するよ」
「……別に」
むず痒い言葉の感触はどうも慣れなかった。
「ところで少年。妹はどうだい?」
「どう、って、別にどうもないが」
「そうじゃなくて。妹、かわいかっただろう?」
「おいシスコン。さっきまでの良い話は一体どこに行った」
どうしてあんたはこうも妹のことばっかり話すんだ。
「まぁそういう暗い話はもうやめでもいいじゃないか。それでどうだい? あんなことで悩むくらいだ。髪は短くなったと言えど見てくれは悪くないと思わないかい?」
『……私は、どうしたら、よかったんでしょうか』
浮かんだのは、あの濡れた瞳だった。じとーっとした顔でも、花緑青でもなく、濡れたからこそベールの剥がれたエメラルドの瞳だった。弱く脆く、儚いからこそ、そこには引かれる何かがあった。親近感として片付けるにはいささか無理矢理感のある何か、だった。
「……さぁな」
「かわいいね、少年は」
「どこがだよ」
「初心な男の子みたいだ」
「意味がわからん」
そういうのじゃない、と聞かれてもない答えを押しつける。
俺はそういうのじゃなくて。
そういう理由じゃなくて。
どこか、新鮮だったんだ。
誰かの心の深部に触れ、弱さを目の当たりにしたのはあれが初めてだった。俺は他人との関わり方、距離感、人の持つ温もりとやらがどうも人並みにわからない。全くもって知らないとまではいかないが作られたストーリーからしか得たことがなかった。インプットばかりでアウトプットも実践も無かった。
初めて見た、人の傷ついた心はどうしてか綺麗に思えた。
そして、それを見る機会に巡り合えたことが幸せなことだと思えた。理由はわからない、感覚的なものだった。これが、人の繋がりというものなのだろうか。
「だけど少年。覚えててくれよ」
「なんだ」
「もし妹を傷つけるのであれば、それは君だとしても、そこにどんな理由があったとしても僕は君を許さないよ。どんな手を使ってでも、僕は君に報復させてもらう」
「そんなつもりはねぇよ、シスコン」
「確認だよ。だって僕はシスコンだもの」
「そうだったな」
ドン引きするくらいには知ってるけど。
でも、それがどこか羨ましく思えるのは、俺にもシスコンという不名誉な素質があるからなのか。家族、兄妹間の愛情という憧憬を見てしまったからか。前者である場合、それは衝撃の事実となってしまうが、それはそれで悪くないかもしれないと思ってしまう。
……まぁ、だからって俺は妹の出てくる本を読み漁ったりはしないけど。
「っていうことで少年。改めて僕の妹をよろしく頼んだよ」
「わかった」
「あの子はあんなだけど、根は寂しがり屋で弱いからね。もしかすると君にも迷惑をかけるかもしれない」
「……かもな」
もう既にそんな素振りは見たけどな。
「先に謝っておく」
「……そうか」
別に俺としてはいいんだけどな。
俺の知らない家族の温もりってやつみたいで。
「君もそろそろ帰るかい?」
「そうだな、明日もあるし」
「話、聞いてくれてありがとね」
「気にするなよ」
「妹のことで何かあったら、些細なことでもいいから教えてくれないか?」
「考えとく」
「それじゃ、また明日」
「おう……。あ」
「ん?」
「思い出した」
あんたの妹のことで一つ、謝らないといけないことがあるんだった。
「あんた、妹にライト文学読み漁ってんのばれてんぞ」
「え⁉ 待ってくれ!? そんな。嘘、だろ……?」
「……」
「嘘だと言ってくれよ! 少年!?」
「……俺は知らん」
口を滑らせたのはもちろん俺だが、都合の悪い部分は伝えずに部屋を出る。
そして翌日、俺の口からそれを耳にしたとステラから聞いた彼が激怒したのは言うまでもなかった。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】純血の姫と誓約の騎士たち〜紅き契約と滅びの呪い〜
来栖れいな
恋愛
「覚醒しなければ、生きられない———
しかし、覚醒すれば滅びの呪いが発動する」
100年前、ヴァンパイアの王家は滅び、純血種は絶えたはずだった。
しかし、その血を引く最後の姫ルナフィエラは古城の影で静かに息を潜めていた。
戦う術を持たぬ彼女は紅き月の夜に覚醒しなければ命を落とすという宿命を背負っていた。
しかし、覚醒すれば王族を滅ぼした「呪い」が発動するかもしれない———。
そんな彼女の前に現れたのは4人の騎士たち。
「100年間、貴女を探し続けていた———
もう二度と離れない」
ヴィクトル・エーベルヴァイン(ヴァンパイア)
——忠誠と本能の狭間で揺れる、王家の騎士。
「君が目覚めたとき、世界はどう変わるのか......僕はそれを見届けたい」
ユリウス・フォン・エルム(エルフ)
——知的な観察者として接近し、次第に執着を深めていく魔法騎士。
「お前は弱い。だから、俺が守る」
シグ・ヴァルガス(魔族)
——かつてルナフィエラに助けられた恩を返すため、寡黙に寄り添う戦士。
「君が苦しむくらいなら、僕が全部引き受ける」
フィン・ローゼン(人間)
——人間社会を捨てて、彼女のそばにいることを選んだ治癒魔法使い。
それぞれの想いを抱えてルナフィエラの騎士となる彼ら。
忠誠か、執着か。
守護か、支配か。
愛か、呪いか——。
運命の紅き月の夜、ルナフィエラは「覚醒」か「死」かの選択を迫られる。
その先に待つのは、破滅か、それとも奇跡か———。
——紅き誓いが交わされるとき、彼らの運命は交差する。
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
悪魔な義理弟《ボディーガード》~ヤンキー校最凶犬男子の独占欲が強過ぎる~
Kore
恋愛
「余計なこと考えさせないくらい愛せば、男として見てくれる?」そう囁く義弟の愛は重くて、危険で、究極に甘い。
———勉強が大の苦手であり、巷で有名なヤンキー高校しか入れなかった宇佐美莉子。そんな義理姉のボディーガードになるため、後追いで入学してきた偏差値70以上の義理弟、宇佐美櫂理。しかし、ボディーガードどころか、櫂理があまりにも最強過ぎて、誰も莉子に近寄ることが出来ず。まるで極妻的存在で扱われる中、今日も義理弟の重い愛が炸裂する。———
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる