最強勇者と他二名は再び異世界に飛ばされる~この世界は望まぬ御都合主義で廻ってる~

滓神 紙折

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第1章 再来の勇者

第1旅 あなたの望まぬ御都合主義1

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ピ、ピ、ピピ、ピピピピピ...ダンッ!!


「....うる....さ.....。」




何か夢を見ていたような気がする。

長い夢。それこそ一生よりも長い夢を。


「頭痛い....」


重い頭を強引に働かせ俺は起床する。



とりあえず靄のかかった思考を覚醒させるため、洗面台へと向かう。

向かうといっても一人暮らしの狭いボロアパートだ。

二歩も進めばすぐに着く。




鏡に映る自分。

途端に涙が零れる。


「んぁ........?」


いつも通りの朝。

いつも通りの自分の顔。

そこに映る平凡な顔と何の変哲も無い黒髪が堪らなく懐かしく思えて....


......8時27分。しまった。完全に遅刻だ。

確か今日は......何かあったか?

いや、まて。

そもそも俺は昨日何をしていた......?



....憶えて、いない...?



俺は昨日までの記憶が無い事に気が付き思考を巡らせる。

記憶が無いと言っても完全な記憶喪失というわけではない。

思い出せないのはここ一週間の記憶だけだ。


....さっきも意味も無く涙が出たし、どこか体が悪いのかもしれない。


病院に行くか....



俺はいつも通り都合の悪い事から目を背け問題を先送りにした。







学校に着いた。

遅刻した。

怒られた。

めちゃくちゃ。



いつもなら怯えて立ち竦むであろう鬼教頭の怒鳴り声が聞こえているのに俺はそれを聞いてどこか微笑ましい気持ちになって...

「大体、君はいつもいつもそうやって、って聞いているのかね!」
「はい。次からは気をつけます。」

本当に微笑んでしまった。

「う、うむ。しっかりと聞いているのだな。ならば良い。さっさと教室に戻りたまえ。」
「はい。」

急に微笑んだ俺を教頭は気味悪く思ったのだろうか.....。

今日は何かおかしい。

頭にかかった靄も消えないし、それなのに感覚だけはひどく冴えて研ぎ澄まされている。





教室。

ドアを開けると上から水の入ったバケツが降ってきた。 

俺は後ろに跳びながら落ちてくるバケツを掴み、その中に宙を舞う汚水を納めた。

一滴も零す事無く。


「・・・・・・。」

やはり今日はおかしい。

教室がではなく、俺が。

汚水の入ったバケツが落ちてくる事も。教室の奴らがこんな事が起きたのに誰も話しかけてこないのも。驚きつつもヒソヒソと此方を窺っているのもいつも通り。

だからこの場合おかしかったのは俺だ。

なんだ今の動き。

自分でも何が起きたのか分からなかった。


「流石に先送りには出来ないか....今日はもう帰ろ.....!」


後ろから敵意を感じ反射的に振り返る。

後ろにたっていたのはクラスの中心、えっと、何だったか。名前なんて憶えてない。というか知らない。話したことも無い。



今の敵意。恐らくこいつが主犯なのは間違いないだろう。


けど......そんな敵意じゃ脅しにもならない。


少し殺意を込めて睨み返す。


「.....お前か?」
「ヒッ....!?」

額に脂汗を滲ませて去って行くイケメン君(仮)。


何だこいつ...............いや待て。違うだろ、何だこいつは俺だ。


敵意?殺意?

俺は何を言っている?

確かにアニメやライトノベルは好きだがここまで拗らせてはいなかったはずだ。


.....どうやら本当に病院に行かないといけないみたいだ。


俺は教室を出ようと足を踏み出したがその足が地を踏む事は無かった。

何故なら教室の中心に青く輝く円があったから。

その輝きに目を奪われ足は宙に浮いたままだ。


「魔法陣.....」


誰かが呟く。


然し俺の思考は固まったままでその呟きを聞き取る事は出来なかった。



ガチリ

何かが噛み合ったような鍵が開いたような、そんな音がして、青い光は赤く変色する。


「!!....これはあの時の....!」



遥か過去を想いながら俺は意識を失った。



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