最強勇者と他二名は再び異世界に飛ばされる~この世界は望まぬ御都合主義で廻ってる~

滓神 紙折

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第1章 再来の勇者

第1旅 あなたの望まぬ御都合主義2

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『私達を救ってください』


一番最初に聞いたのはそんな言葉だった。

訳が分からず混乱しているといつの間にか手に握り締めていた一枚の紙に気付く。


そこには俺が既に死んでしまっている事、死んだ俺は異世界に勇者として召喚された事など、現在の状況を説明する文が記されていた。


そして...


枝折叶夢えだおり かなとさん。

今アナタには2つの選択肢があります。

一つはこのまま勇者としてその世界で生きていく事。

勇者ですからきっと魔王討伐なんかを頼まれる事でしょう。

文字通りの命懸けの人生になると思いますが成功すれば富と名誉と女はあなたのモノ!....になるかもしれません。

2つ目は1つ目の選択肢の延長線なんですが、この世界だけでなく他の世界も救う旅に出てもらいたいのです。

勿論見返りもあります。

もしあなたが私の指定した世界を全て救って下さったのなら、あなたを元の世界で生き返らせてあげましょう。

なんなら元の世界で生き返った時に巨万の富もつけちゃいます。

さらに、此方の選択肢には命の危険は全く御座いません。

私の力であなたに勇者として相応しいスキルを授けます。これさえあればどんな馬鹿でも絶対に死ぬことは御座いません。

どうです?素晴らしいでしょう?win winですよね?

嘘だと思うでしょ?思いますよね?

大丈夫私生まれてこの方、嘘だけは吐いたことないんです。ほらだから信じて下さい。今すぐに。

さあ、私と契約して物語の主人公になってよ!


あ、あと言い忘れ、元い書き忘れなんですが、1つ目の選択肢を選んだ場合、3度目の転生は絶対に無いので、気を付けてくださーい。




















私、嘘だけは吐かないんで。



              女神より





途中完全にキャラを見失った自称女神とやらが最後の最後に落としていった爆弾発言により俺は主人公にならなくちゃいけないみたいだ。


いや、違う。

多分俺は最後の一言が無くてもこの選択をしただろう。

数々の世界を渡り、人々を助ける絶対に死なない主人公。

今までの人生よりも、家族も友人も目標も何もない、ただ生きているだけだった貧乏生活よりも、絶対に楽しいはずだ。


差し当たっては、先程から黙りこくっている俺を見て狼狽えている王女様らしき人から救ってやろう。



『あ、あの』
『分かりました。俺がこの世界を救ってみせましょう。』

こうして俺は勇者......主人公になった。









一年後


『流石勇者様!』

『素晴らしいですわ!』

『これからも宜しく頼むぜ!』



俺は王国民から絶賛されていた。

二日前、王都に魔王の軍勢が攻めて来た。
魔物達は建物を壊し、民を殺し、暴虐の限りを尽くした。

魔王軍の強さは圧倒的で、名の知れた冒険者や、王宮魔術師達ですら次々に死んでいった。

そんな時、颯爽と登場したのが勇者である俺だ。

俺は全ての魔物を一人で狩り尽くし、魔王軍を退けた。

負ける訳が無い。
俺には女神から貰ったスキルがある。

主人公補正:勇者 常時発動型

女神の加護により因果をねじ曲げ勇者として、あらゆる場面で補正が掛かるようにする。

これさえあれば俺は最強。
誰にも負ける気がしない。
魔王討伐だって余裕だ。
そう思った。

これが一つ目の歪み『増長』だった。



その後、俺は各地を周り、頼れる仲間を集めた。

戦士オルテガ。魔術師オリヴィエ。僧侶イリーナ。とても良い奴らで、信頼できる大切な仲間逹だ。

因みにミラも俺達の旅に同行している。

ミラの本名はミラージュ=クレシス=シーザー。シーザー王国の第三王女。

この世界に来て最初に会った王女様だ。

愛称で呼んでいる事からも分かるようにミラとは特に仲が良い。

というか、有り体に言えば付き合っている。

勇者として活動を始めた頃に俺は国王に気に入られ、たまに元の世界の事について話しているうちに、是非娘をと、縁談を持ちかけられた。

その時には既に彼女とは付き合っていたので、俺は二つ返事で承諾した。

この時点で、俺は女神との契約など忘れて、魔王を討伐した後の事ばかりを考えていた。




それから約半年の月日が流れた。

俺達はその後も各地を周り続け、レベルを上げ、遂に魔王城の頂に辿り着いた。

緊張など無い。

この最高の仲間逹と俺のスキルがあれば必ず勝てる。


そう確信し、俺は重い扉を開け.......



















失敗した。




失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した
失敗した失敗した失敗した



何故
...何故だ
何故負けた!?
一体どこで?
いや、どこから間違えていた!?

俺は明確な理由が分かっているはずなのにそれでも自分に問い続ける。






まず、扉を開け、中に入った瞬間敵に囲まれた。

後ろには気配遮断を持つ魔物達。
完全に包囲され、退路は断たれた。

「クソっ話が違うじゃねぇか!」

オルテガが舌打ちをする。

飛んでくる無数の矢。

狙いは俺。
完全に油断していた。
この軌道。
確実に喉に突き刺さる。

致命傷だ。

その矢はゆっくりと、俺の首へと吸い込まれていき........途端に俺の視界がぶれる。
同時に体に強い衝撃が走る。



「痛っ.....!」

どうやら誰かに突き飛ばされたようで、俺に矢は刺さらなかったようだ。

「助かった、ありが.....と......う...」
「ハッ!油断してんじゃねぇよ!」

朧気な瞳。
いつも通りの口調。
なのに感情が一切読み取れない平坦な言葉。
そして、彼の頭に刺さる鋭い矢。



俺に刺さる筈だった矢はオルテガの頭部を貫いていた。

「お、おま、え........それ.......」
「あ?それって、なに.......が.....だぁ....?」


糸が切れたように崩れ落ちるオルテガ。

「あ、ぁあ?なんで、俺、倒れ......」

次第に瞳からは光が無くなりオルテガは完全に動かなくなった。


俺はそれをただ呆然と眺めている事しか出来なかった。

「オル、テガ......?」

仲間の死を直視出来ない俺。

そんな俺を叱責する声が一つ。

「馬鹿者!貴様がそんな有り様でどうする!今は戦いに集中せんか!」

その声で現実に戻された俺は再び剣を構える。

「我の最大威力の魔術なら、魔王を一撃で屠れるはずじゃ!少しの間でよい!時間を稼げ!」

「わ、わかった...!」
「了解です!」
「私にも何か出来る事は......」
「お主は邪魔にならんよう隅にでも行っとれ!」
「は、はい!」

俺は戦えないミラを柱の影まで連れて行き、オリヴィエが魔術を発動出来るまでの時間を稼ぐため最前線へと躍り出る。

「お、オルテガの死んだ穴は大きい!俺が魔王を止めるから、イリーナは雑魚の足止めを.....!」

何かが俺の方へと飛んでくる。

サッカーボールよりも、少し小さいぐらいの.......

「イリーナ......?」

それは苦悶の表情を浮かべた僧侶の首だった。

「う、うわぁあああ!!!」
「落ち着いて下さい!エダオリさん!敵をよく見て!」
「で、でも!い、イリーナが...!」
「大丈夫!大丈夫ですから落ち着いて下さい!オリヴィエさんの準備が整ったそうです!戻って下さい!」

恋人の声で我に返る。

いつもはオドオドとしているミラだが、こういう土壇場では一番物事がよく見えている娘だ。

『彼女が大丈夫だと言うのだから大丈夫なのだろう。』
何が大丈夫なのかも分からないまま、そんな自己暗示にも似た言い訳で俺は自分の気持ちを無理やり押さえつける。

「......よ、よし。もう大丈夫だ。打ってくれ!」
「分かっておる!....『偉大なる雷よ!我が敵を穿ち、灰燼と化せ!聖雷の剣が墜ちたらカレドヴルーフ!!』」


瞬間目の前が真っ白になり、肌を焼き尽くすような熱波と衝撃が迫る。

文字通り音すら置き去る光速の大規模魔術攻撃。確実に殺った。そもそも、この規模の魔術を生物に向けて撃つなど正気の沙汰ではない。

本来なら、城や都市そのものを壊滅に追い込む為のモノなのだ。その威力をこの狭い範囲に圧縮して撃つなど、有り得ないし不可能だ。そんな発想を常人は持たない。



天才魔術師オリヴィエ。

この規模の魔術式を一人で、それもこんな短時間で構築できるのは大陸全土を見渡しても彼女くらいだろう。

「オリヴィエ、やったな...」

声をかけたが返事が返ってこない。

.......?おかしい。いつもなら

『我を舐めるでない。この程度造作もないわ。』

とか、言ってくるんだが。

流石に魔力切れか?


次第に光で潰れていた視力も回復し、煙も晴れ、オリヴィエの姿が目に入る。





........ああ、なんとなく予想はしてたんだ。

返事が返ってこなかった時から嫌な予感はしていた。

なのに。それでも、俺は動けなかった。動かなかった。

その結果が、これだ。これなんだよ。










そこには、無数の紅く染まった剣を突き立てられた魔術師の少女がいた。
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