継母と妹に家を乗っ取られたので、魔法都市で新しい人生始めます!

桜あげは

文字の大きさ
26 / 108
連載

61:実家に帰ってきました

しおりを挟む
 学園から転移魔方陣でレルクの街へ飛び、そこからグロッタに向かう。
 来たときと逆の行程を辿り、私はメルヴィーン商会に到着した。
 今回はカマル……と、その保護者のトールも一緒。彼らは名前を誤魔化し、平民のふりをしている。
 二人のおかげで、ボロくない部屋に泊まれた。
 カマルは大叔父と同室なのを嫌がっていたが、そういうお年頃なのだろう。
 
 彼らに言われたとおり、メルヴィーン商会には、事前にカマルが行くことを伝えていない。あとでトールも合流するのだけれど、それも黙ったままだ。
 サリーは別行動で、先に家へ帰ってきているようだった。
 私たちも、メルヴィーン商会へ向かうが、カマルはなぜか平民の格好を継続していた。
 お客さん連れなので、屋敷の正面入り口に回ると、困惑顔の警備員さんに止められる。

「東の裏口から入ってください、困ります」
 
 やはり、駄目だったようだ。
 やり取りを見ていたカマルが、不思議そうに首を傾げる。

「どうして、裏口に回るのかな?」
「私、継母に正面入り口からの出入りを禁止されているの。屋敷から出ること自体が、ほとんどなかったんだけど。ごめんね、カマルも平民の子供だと思われているみたい」
「気にしないで。黙っているようにお願いしたのは、僕のほうなんだから。それにしても、アメリーはどこへ向かっているのかな? どんどん庭の方へ進んでいるけど」
「私の部屋だよ」

 そう言って、私が指し示したのは物置小屋だ。狭いけれど、こまごまと改良したので、少しは人間が暮らせる状態だった。
 平民姿のカマルをドリーが受け入れるとは思えないので、呼ばれるまでここで彼に待ってもらうことにする。
 カマルは絶句しているけれど、部屋を拡張する魔法を使えば、彼にも入ってもらえるだろう。

「ごめんね。身分が内緒だと、継母が客間に案内してくれないと思うから。外よりも、こっちの方が日陰になるし」
 
 本当は、カマルは外国のすごい貴族なのだ。
 本人が詳しく教えてくれないので、それ以上はわからないけれど。
 魔法で部屋を大きくした私は、比較的きれいな木の椅子にカマルを誘導する。

「お茶も出せなくてごめん」
「魔法アイテムを持ってきたから大丈夫」

 カマルが取り出したのは、最近魔法都市で流行っている「いつでも冷たい紅茶が飲めるポット」だ。前世の魔法瓶みたいな形で、際限なく紅茶が出てくる。紅茶の他にハーブティーバージョンや水バージョンなどもあった。けっこういいお値段がする。

「えっと、今、ティーカップを……」
「それも、持ってきたよ」

 鞄の中を探ったカマルは、部屋の内装を変える種を取り出して、物置の中心に置いた。
 すると、部屋全体が落ち着いた高級カフェ風になる。棚には、ティーカップなどの食器類も揃っていた。

「すごいね」
「『部屋の種』は、何個か買っておいたんだ。模様替えも楽しみたいし」
 
 ボロい物置が、高級な空間に変わってしまった。
 私の部屋が、こんなことになっているなんて、ドリーもビックリだろう。
 
 カマルとお茶を飲んでいると、ドリーの使いだという使用人が私を呼びに来た。
 同行すると言って聞かないカマルも連れて行く。
 
「嫌な思いをするかもしれないし、ここで休んでいていいよ?」
「だからこそ、行くんだよ」
 
 使用人が特に注意しないので、私はカマルを連れて屋敷に足を踏み入れた。
 通されたのは一番狭い客室で、主に業者の人たち用の部屋だ。家族として扱われないのには慣れているので気にしないけれど、カマルに申し訳ない。
 やってきたドリーは私とカマルを見下しつつ、煙管に火をつけた。
 彼女の後ろから、サリーも入ってくる。
 
「まったく、この家の主たる私に許可も取らず、どこの誰ともしれない他人を家に上げるなんて、どういう教育を受けたらそうなるのかしらね。やっぱり、あなたを魔法学校に通わせても無駄だわ」
 
 フゥと煙を私に向かって吐き出しながら、ドリーは目を細めた。
 自分たちで勝手に私を学校へ行かせたくせに、酷い言い草だ。
 おかげで、得たものは多かったけれど。

「その子とはどこで知り合ったの? どうせ魔法都市でしょうけれど、学園外で不純異性交遊だなんて、さすがあの女の子供だわ」
 
 ドリーは、私を貶めてあざ笑う。まあ、いつものことだ。
 けれども、彼女の後ろにいたサリーはカマルを見て青ざめた。

「お、お母様……彼は……!」

 しかし、ドリーはサリーの言葉を気に留めず話を続ける。
 
「アメリーの結婚前に変な噂が立ったら困るのよ。どうせ変態に売り飛ばすから関係ないけど、メルヴィーン商会の恥になるのは嫌。アメリー、今後は家の外に出るのは禁止よ! 結婚まで、物置で大人しくしていなさい。心配しなくても、来週には迎えが来るわ」
 
 特大の嫌がらせが成功して気分がいいのか、煙管を吸うドリーは満足そうな表情で私を見た。

「そうそう、最後だから素敵な秘密を教えてあげる。実は、メルヴィーン商会は、先日までアメリーのものだったのよ? 法律を知らないあなたに言っても無駄でしょうけど、あの男は忌ま忌ましいことに、死に際にあなたへ商会を渡したの。だから、私へ権利を譲渡するように手続きして、先日ついにメルヴィーン商会は完全に私の持ち物になった。だから、あなたのものは、もう何もないの」
 
 ドリーは、野心に目をぎらつかせている。彼女の話は、カマルに知らされた内容と同じなので、驚かずにすんだ。

「長かったわ。ライザー・メルヴィーンは私を蚊帳の外に置いて、自分の実験ばかり……サリーを生んだのは私なのに! でも、ざまあないわね。あの男の持ち物は今、全部私が持っているの!」
 
 愉快でたまらないというように高笑いを続けるドリー。今の彼女の目には、可愛いサリーも映っていないようだ。
 だが、サリーも黙っていない。
 
「お母様、アメリーはともかく、彼に雑な対応をされては困るわ! 平民の格好をなさっていらっしゃるけど、この方は砂漠大国の王子なのよ! 同じヨーカー魔法学園の生徒なの! あそこは、うちの取引先でもあるでしょう?」
 
 サリーに言われて、ドリーは急に笑いを引っ込めた。
 
(というか、砂漠大国の王族って、どういうこと? カマルは外国出身の、ただの貴族だと思っていたのに)
 
 引きつった顔で、ドリーはサリーと会話している。

「まさか、そんな相手がアメリーなんかと一緒にいるわけがないわ」
「本当なのよ。ああ、カマル様、申し訳ありません……気の利かないお姉様が、事前に連絡してくださらないものだから」
 
 サリーの態度を見て、ドリーは自らの失態を悟ったようだ。慌てて煙管を置いて弁解した。

「申し訳ございません! 私ったら、なんて失礼な真似を。アメリーなんかと一緒におられるから、てっきり」
 
 そして、恥をかかせたと、私をにらみつけるのも忘れない。

「アメリー! お前という人間は、ここまで馬鹿だなんて! この方は砂漠大国の王族なのよ!? ろくに客の案内もできない、失敗作のお前なんかと一緒にいていい相手ではないの! 今すぐ離れなさい!」

 百八十度異なる笑みを浮かべ、カマルににじり寄るドリー。

「カマル様、一番よい部屋へご案内しますわ。無礼なアメリーには、あとでよく言って聞かせます。いくらでも罰していただいても構いませんわよ」

 かなり露骨だが、ドリーの行動なので今更気にしない。
 驚いたのはむしろ、いつも優しいカマルが、氷のように冷たい目でドリーとサリーを見ていることだった。
しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。