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連載
80:アウトドアを楽しむ二人
しおりを挟む「新しいボード、すごく操作がしやすい。スイスイ動くよ」
「うん。アメリーのボードは、十年前の子供向けのモデルだったからね」
ボードで空を飛んでいると、すぐに岩山が見えてきた。
森全体は、魔法都市ほどの大きさだろうか。
ちらほらと、Aクラスの生徒もいる。皆、我先にスライムを退治しようと躍起になって低空飛行していた。
(そういえば、サリーは絡んでこなかったな)
いつの間にか彼女は出発しており、顔を合わせていない。
互いに気まずい思いをするだろうから、その方がいいのだけれど。
飛び続けていると、岩山の一角に平らな場所が見つかった。
高所だがテントを張って余りあるほど広く、安全面も問題なさそうだ。
じめじめと湿っていないので、快適そう……
ちなみに、シュエはお留守番。公平を期すために、使い魔は禁止されていた。
寮で、オリビアやリアムが面倒を見てくれている。
「念のため、この一角に魔法で壁を張っておこう。勝手にテントを撤去されたら嫌だからね」
「そうだね……」
ないと思いたいけれど、Aクラスの妨害の可能性も考えておいた方がいい。
特に、私は過去に散々痛い目に遭わされているので……
空間魔法の得意なカマルが、完璧な壁を作ってくれ、私はテントの入った魔法玉を地面に投げる。
二つの小さなテントが完成した。
たき火セットは夜のために置いておき、私は自分の鞄を開く。
支給されたポーチの他に、学校指定の鞄も持ってきたのだ。
中には、布団やらクッションやら……色々詰め込まれている。
「アメリー……何が入っているの!?」
カマルは、私の荷物の多さに驚いているようだ。
でも、学校指定の鞄には、ものを縮小する魔法が掛かっているので、全く問題ない。
「布団でしょ? 枕でしょ? 着替えとか、お泊まりセットとお菓子と、お弁当と水筒も……カマルの分もあるよ」
「えっと……」
私は、敷き布団を二つ取り出した。
「はい、カマルの布団。寮で使っていない部屋の敷き布団だけど、オリビアさんが持って行っていいって。残念ながら、ベッドマットは鞄に入らなかったの」
「……ありがとう。じゅうぶんだよ」
テントだけだと、地面の固さがダイレクトに伝わるので背中が痛い。
そこで敷き布団の出番だ。
もと物置部屋の住人を嘗めてもらっては困る。
少しでも快適に過ごすため、ありとあらゆる工夫をしてきたのだ。
「ポーチの魔法アイテムなしでも過ごせそうだね。これは……先生たちも、想定外じゃないかな」
「大丈夫。敷き布団を持ってきてはいけないというルールはなかったよ」
「そうだね、さすが、アメリー!」
ひとまずお弁当を食べ、一服してから出発する。
「どこを目指そうか」
「僕に任せて! 新しい空間魔法を試せるかも!」
カマルを中心に透明な壁が広がっていく。
彼曰く、壁の中の魔物の気配が把握できる魔法らしい。
夏休みに砂漠大国へ行った際、私に内緒で特訓していたのだとか。
もともと魔法のセンスがずば抜けていたので、少しの練習で能力が開花したみたい。
「すごい、広い壁だね!」
「魔法学園の大きさくらいまで広げられるよ。それ以上は、まだ厳しい」
気配を探るカマルを見守る。
「あ、たくさんいた! 岩山の下が洞窟になっているみたい」
スライムは、割と早く発見できた。
二人でボードに乗り、岩山を下っていく。
持ってきた魔法アイテムのライトで中を照らしながら、小さな洞窟を進んでいく。
穴場なのか、まだ他の生徒に見つかっていないようだ。誰とも会わない。
「あ、いた!」
洞窟の中に水場があり、そこにスライムが密集している。
目や口はなく、透明な体の中央に「核」と呼ばれる丸い玉が見えた。
核を壊せば、スライムを倒すことができる。
「じゃあ、囲むね」
カマルが魔法の壁でスライムを覆っていく。壁の中では大量のスライムがうごめいていた。
「潰すね」
カマルがパンッと手を叩くと、同じように壁がギュッと縮まり……中にいたスライムたちがブチュッと潰れた。重力の魔法ではないけれど、これはこれですごい。
私は何もしていないけれど、早くもたくさんのスライムを倒すことができた。
「奥にも気配があるけれど。道が狭くて進めないなぁ」
生き物の気配を探る壁は透過する仕様のため、魔物を囲めないらしい。
「よし、私に任せて!」
ようやく役に立てるときが来た。
「ヘドロぬりかべ、変形バージョン!」
私は前方にヘドロを放出した。ハリールやアキルと練習した魔法の一つだ。
洞窟の隙間を縫って、ヘドロが奥へ進んでいく。
このヘドロに触れた生き物は、全部中へ吸収されてしまう。
魔法を解けば、ヘドロの中から取り込んだものが出てくる。
カマルが囲める範囲にスライムが集まるよう操作すればいい。
「共同作業、楽しいね」
カマルの言葉に、私も頷いた。
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