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97:寮の大浴場
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カディンとシュクレは先生たちに回収され、私とカマルは合流し――
夕刻になり、試合終了の魔法花火が打ち上がった。雨は止み、渓谷にはオレンジ色の夕日が差している。
集合場所へ向かう途中でミスティやハイネも見つかり、一緒に帰還した。
ヨーカー魔法学園同士では争わなかったので、メダル数はシント魔法学園に勝利したときのままだ。
ハイネ・ミスティ、16枚
カマル、75枚
私、113枚
(……優勝しちゃった)
自分の活躍というより、たくさんメダルを集めたカディンを倒した部分が大きい。
集合場所へ着くと、リタイアした学園の仲間たちが歓声をあげて迎えてくれる(ただし、Aクラスを除く)。サリーとミシュピ魔法学院の生徒たちは、なぜかまた睨み合っていた。
カディンとシュクレも私たちをねぎらってくれる。
他校交流会は、生徒の疲れが取れるよう、明日行われる予定だ。
本戦に出た全学年の生徒が参加するので、オリビアやリアムも来るだろう。
部屋に戻った私はシュエにご飯をあげ、思い切りベッドにダイブした。
「疲れた~!」
びっくりしたシュエが、部屋の中を元気に走り回る。続いて部屋がノックされ、ミスティとハイネが私を呼んだ。
「アメリー、お風呂に行くよ! 体が冷えているでしょう?」
「風邪……ひいてしまう……」
起きあがった私は、お風呂セットを片手に慌てて廊下へ飛び出す。
黒撫子寮のお風呂は一階の奥にある、男女別に分かれた大浴場で、ここも魔法で部屋の中が広くなっている。
ジュリアスに魔法で乾かしてもらったものの、長時間雨に晒されたせいで、全身が冷たい。
私たちは、いそいそと大きな湯船に飛び込んだ。今日のお湯は、綿あめの湯。
パステルピンクに薄い紫と水色の混じった、泡が多くて甘い香りのする湯だ。寮の風呂の湯は、日によって変わる。
二年生のマデリンが作った入浴剤を、日替わりでブラウニーがいじっているらしい。
「アメリー、シント魔法学校の生徒からメダルを奪うなんてすごいね! あいつら、超危険じゃん!」
「私……危ないから、洞窟に逃げた……」
「生徒相手にヘドロを使っちゃった」
メダル争奪戦のあらましを話すと、二人とも膝を抱えて大笑いした。
「そうそう、話は変わるけれど、三年生の優勝は赤薔薇寮のアーサー先輩で二位がオリビアさん、二年生の優勝はリアムさんなんだって」
「黒撫子寮、すごいね!」
「不正や妨害でいい成績が出しづらいだけで、実力なら赤薔薇寮にも負けていないんだよ」
湯船から出て、体を洗いながらミスティが教えてくれる。
たしかに、ボードレースのときは酷い目に遭った。
浴場の棚には、ありとあらゆるシャンプーやリンスやボディーソープ、美容ケアの薬品が並んでいる。
これらもマデリンが作ったアイテムで、男湯と女湯の両方に設置されており、寮生は自由に使えるのだ。
感想を聞かれることも多いので、なるべく色々試すようにしている。
今日はミント風のシャンプーとリンス、マシュマロの石鹸、チョコレートのボディークリームを試してみた。
「アメリー……明日の交流会で着る服……決めた?」
「まだだよ。制服でいいかなと思ったんだけど」
話していると、ミスティが不満げに言った。
「それでも大丈夫だけど、皆、お洒落してくるよ? カマルも、お洒落したアメリーが見たいんじゃない?」
どうして、そこでカマルが出てくるのだろう。たしかに、仲良しだけれど。
「アメリーは貴族の養女になったし、全く服がないということはないよね? 見繕ってあげるよ。明日は早起きして、ハイネの部屋に集合!」
「……なんで……私の部屋?」
「ハイネの部屋は手作り化粧品も多いし、色々と便利だもの。アメリーを着飾って遊……身支度を手伝おう!」
「……面白そう」
友人二人は、にやりと悪い笑みを浮かべた。
お風呂で散々騒いだあと、私は男子の浴場から出てきたカマルとばったり出くわした。
ミスティとハイネは、ニマニマしながら「お先に~!」と寮の階段を駆け上がっていく。
湯上がりのカマルに近づくと、フローラルな匂いが鼻をかすめた。
「カマル、今日は花の香りだね」
「アメリーは、甘い匂いだね。チョコミント?」
「シャンプーとリンスはミント風で、ボディークリームがチョコレート」
「ふぅん、おいしそう」
目を細めたカマルは、十三歳とは思えぬ艶めいた微笑みを浮かべている。
ちょっとドキドキした。
「ところで、明日の他校交流会、一緒に回らない?」
カマルの問いかけに、私は即答する。
「うん、いいよ。回ろう!」
知り合いは少ないし、一人よりも二人の方が心強い。
カマルと一緒に行動すると約束した私は、今度こそ自室のベッドに直行した。
夕刻になり、試合終了の魔法花火が打ち上がった。雨は止み、渓谷にはオレンジ色の夕日が差している。
集合場所へ向かう途中でミスティやハイネも見つかり、一緒に帰還した。
ヨーカー魔法学園同士では争わなかったので、メダル数はシント魔法学園に勝利したときのままだ。
ハイネ・ミスティ、16枚
カマル、75枚
私、113枚
(……優勝しちゃった)
自分の活躍というより、たくさんメダルを集めたカディンを倒した部分が大きい。
集合場所へ着くと、リタイアした学園の仲間たちが歓声をあげて迎えてくれる(ただし、Aクラスを除く)。サリーとミシュピ魔法学院の生徒たちは、なぜかまた睨み合っていた。
カディンとシュクレも私たちをねぎらってくれる。
他校交流会は、生徒の疲れが取れるよう、明日行われる予定だ。
本戦に出た全学年の生徒が参加するので、オリビアやリアムも来るだろう。
部屋に戻った私はシュエにご飯をあげ、思い切りベッドにダイブした。
「疲れた~!」
びっくりしたシュエが、部屋の中を元気に走り回る。続いて部屋がノックされ、ミスティとハイネが私を呼んだ。
「アメリー、お風呂に行くよ! 体が冷えているでしょう?」
「風邪……ひいてしまう……」
起きあがった私は、お風呂セットを片手に慌てて廊下へ飛び出す。
黒撫子寮のお風呂は一階の奥にある、男女別に分かれた大浴場で、ここも魔法で部屋の中が広くなっている。
ジュリアスに魔法で乾かしてもらったものの、長時間雨に晒されたせいで、全身が冷たい。
私たちは、いそいそと大きな湯船に飛び込んだ。今日のお湯は、綿あめの湯。
パステルピンクに薄い紫と水色の混じった、泡が多くて甘い香りのする湯だ。寮の風呂の湯は、日によって変わる。
二年生のマデリンが作った入浴剤を、日替わりでブラウニーがいじっているらしい。
「アメリー、シント魔法学校の生徒からメダルを奪うなんてすごいね! あいつら、超危険じゃん!」
「私……危ないから、洞窟に逃げた……」
「生徒相手にヘドロを使っちゃった」
メダル争奪戦のあらましを話すと、二人とも膝を抱えて大笑いした。
「そうそう、話は変わるけれど、三年生の優勝は赤薔薇寮のアーサー先輩で二位がオリビアさん、二年生の優勝はリアムさんなんだって」
「黒撫子寮、すごいね!」
「不正や妨害でいい成績が出しづらいだけで、実力なら赤薔薇寮にも負けていないんだよ」
湯船から出て、体を洗いながらミスティが教えてくれる。
たしかに、ボードレースのときは酷い目に遭った。
浴場の棚には、ありとあらゆるシャンプーやリンスやボディーソープ、美容ケアの薬品が並んでいる。
これらもマデリンが作ったアイテムで、男湯と女湯の両方に設置されており、寮生は自由に使えるのだ。
感想を聞かれることも多いので、なるべく色々試すようにしている。
今日はミント風のシャンプーとリンス、マシュマロの石鹸、チョコレートのボディークリームを試してみた。
「アメリー……明日の交流会で着る服……決めた?」
「まだだよ。制服でいいかなと思ったんだけど」
話していると、ミスティが不満げに言った。
「それでも大丈夫だけど、皆、お洒落してくるよ? カマルも、お洒落したアメリーが見たいんじゃない?」
どうして、そこでカマルが出てくるのだろう。たしかに、仲良しだけれど。
「アメリーは貴族の養女になったし、全く服がないということはないよね? 見繕ってあげるよ。明日は早起きして、ハイネの部屋に集合!」
「……なんで……私の部屋?」
「ハイネの部屋は手作り化粧品も多いし、色々と便利だもの。アメリーを着飾って遊……身支度を手伝おう!」
「……面白そう」
友人二人は、にやりと悪い笑みを浮かべた。
お風呂で散々騒いだあと、私は男子の浴場から出てきたカマルとばったり出くわした。
ミスティとハイネは、ニマニマしながら「お先に~!」と寮の階段を駆け上がっていく。
湯上がりのカマルに近づくと、フローラルな匂いが鼻をかすめた。
「カマル、今日は花の香りだね」
「アメリーは、甘い匂いだね。チョコミント?」
「シャンプーとリンスはミント風で、ボディークリームがチョコレート」
「ふぅん、おいしそう」
目を細めたカマルは、十三歳とは思えぬ艶めいた微笑みを浮かべている。
ちょっとドキドキした。
「ところで、明日の他校交流会、一緒に回らない?」
カマルの問いかけに、私は即答する。
「うん、いいよ。回ろう!」
知り合いは少ないし、一人よりも二人の方が心強い。
カマルと一緒に行動すると約束した私は、今度こそ自室のベッドに直行した。
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