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132:謎の先輩が放浪中
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翌日の放課後、私とカマルは魔法都市にある冒険者ギルドへ向かった。
ギルドカードが光ったので、昇級してもらいに行くのだ。
カードのランクが上がると、より割のいい仕事を得ることができる。
ハリールさんの養子になったので、金銭面の心配をする必要はなくなったけれど、いつ何が起こるかわからない。しっかり自分のお金は貯蓄しておきたいのだ。
カマルは私が心配なのと、ギルドの興味があるという理由で同行してくれている。
魔法都市、『石壁と竈のエリア』の中心部にある、巨大樹と一体化した建物へ入り、魔法陣に乗って二階へ上る。
すると、いつぞやの、シルクハットが似合う受付のおじさんが昇級手続きをしてくれた。
ギルドのランクは『種』、『根』、『葉』、『花』、『実』と別れていて、私とカマルは一番始めの『種』からスタートしている。
「いやあ、さすがだねえ。学生のうちに昇級とは。君たちの実績を鑑みるに『根』では物足りない気がするな。『葉』への昇級で問題ないだろう。『葉』からは魔物退治にも携わることができる。もちろん、『種』や『根』向けの依頼を受けることも可能だからね。学生さんは授業を優先すべきだから、無理はしないように」
そう言い置いて、彼は新しくなったギルドカードを私たちに手渡す。
カードには葉っぱのマークが描かれており、私とカマルは思わず顔を見合わせて微笑んだ。
「君たちはランクが『葉』になったから、四階にある使用可能な転移陣の種類が増えたよ。詳しくは、この説明書を見てね」
「ありがとうございます」
おじさんは『冒険者ガイド(葉編)』を手渡すと、「頑張ってね」と声をかけてくれた。
「カマル、四階の転移陣を調べに行ってみようか」
「そうだね、確認したいし」
再び昇降用の魔法陣に乗り、さらに上の階を目指す。
四階へ着くと、沢山のカラフルな扉が私たちの前に姿を現した。それぞれ、転移陣がある部屋の扉なのだ。
その中には、いつも「薬草採取」で入る、黄緑色の扉もある。
私は、もらった『冒険者ガイド(葉編)』に目を通した。
「新しく行けるようになったのは、『シララ水源』と『ミピ雪原』だって」
「水源が水色、雪原は白の扉みたいだね。黄色と赤と紫の扉は、まだ入れなさそうだ。アメリー、どうする?」
「まずは、水色に入ってみよう」
扉を開けると、中に魔法陣があった。小部屋の中心に、扉と同色の魔法陣が光っている。
いつもの要領で魔法陣に足を踏み込むと、淡い光が体を包み、『シララ水源』へ私を転移させる。
着いた先は粉砂糖のように真っ白な砂地と、明るい空の色を反射した透明な広い川だった。近くから澄んだ水が流れ出ている。
辺りは静寂に包まれており、綺麗だけれど寂しい場所だ。
カマルも、同じことを思ったらしい。
「わあ、世界には、こんな場所があるんだねえ」
今日は特に仕事をしに来たわけではないので、辺りを散策して回る。
砂と岩が多いけれど、少し進むと淡い色の草が生える平原や白い洞窟も現れた。
わくわくしながら、洞窟の中を覗くけれど……
「ん? 何これ?」
正面に無造作に誰かの荷物が置かれている。
焚き火の準備をしている形跡も発見した。
(人がいるの?)
不思議に思っていると、背後で足音が聞こえた。
「あれー、ヨーカー魔法学園の学生じゃん。制服を着て、こんな場所で何をしているわけ? しかもその小物、黒撫子寮だろ?」
見ると、銀髪のワイルドなお兄さんが、魚の入ったバケツを持って立っている。
誰かに似ている気もするが、思い出せないから気のせいだろう。
(年齢は近そう。少し上くらいかな? どうして、学園の寮のことまで知っているのかは、わからないけれど。寮の小物の色って有名なの?)
バケツを地面に置いた彼は、洞窟内の荷物をゴソゴソと漁り始め、無造作に紫色のネクタイを取り出す。
「ほれ、俺も黒撫子寮なんだよ。と言っても、寮には、ほぼ帰っていないけどな。今年の歓迎会には行けなかったし……もしかして、君らは新一年生?」
私とカマルは無言で頷きながら、ワイルドなお兄さんを見つめる。
(この人、行方不明の先輩の一人なんじゃ……)
黒撫子寮には、会ったことのない先輩が二人いた。
リアムさん曰く、一人は音信不通で、もう一人はフラフラしていて捕まらないという話だったけれど……どっちだろう?
「二年生か、三年生の先輩ですか?」
尋ねると、お兄さんはにかっと笑って頷いた。
「俺は二年生だ。学園内の空気が嫌いで旅に出たんだよ。本当は退学したいけど、親が許さなくて籍だけ置いてる。実地のほうが役に立つんだけどなあ」
私は、以前リアムさんから聞いた説明を思い返す。
二年生は貴族のリアムさんと平民のマデリンさんの他に、もう一人貴族の生徒がいるらしかった。彼こそが、その人物なのだろう。
ギルドカードが光ったので、昇級してもらいに行くのだ。
カードのランクが上がると、より割のいい仕事を得ることができる。
ハリールさんの養子になったので、金銭面の心配をする必要はなくなったけれど、いつ何が起こるかわからない。しっかり自分のお金は貯蓄しておきたいのだ。
カマルは私が心配なのと、ギルドの興味があるという理由で同行してくれている。
魔法都市、『石壁と竈のエリア』の中心部にある、巨大樹と一体化した建物へ入り、魔法陣に乗って二階へ上る。
すると、いつぞやの、シルクハットが似合う受付のおじさんが昇級手続きをしてくれた。
ギルドのランクは『種』、『根』、『葉』、『花』、『実』と別れていて、私とカマルは一番始めの『種』からスタートしている。
「いやあ、さすがだねえ。学生のうちに昇級とは。君たちの実績を鑑みるに『根』では物足りない気がするな。『葉』への昇級で問題ないだろう。『葉』からは魔物退治にも携わることができる。もちろん、『種』や『根』向けの依頼を受けることも可能だからね。学生さんは授業を優先すべきだから、無理はしないように」
そう言い置いて、彼は新しくなったギルドカードを私たちに手渡す。
カードには葉っぱのマークが描かれており、私とカマルは思わず顔を見合わせて微笑んだ。
「君たちはランクが『葉』になったから、四階にある使用可能な転移陣の種類が増えたよ。詳しくは、この説明書を見てね」
「ありがとうございます」
おじさんは『冒険者ガイド(葉編)』を手渡すと、「頑張ってね」と声をかけてくれた。
「カマル、四階の転移陣を調べに行ってみようか」
「そうだね、確認したいし」
再び昇降用の魔法陣に乗り、さらに上の階を目指す。
四階へ着くと、沢山のカラフルな扉が私たちの前に姿を現した。それぞれ、転移陣がある部屋の扉なのだ。
その中には、いつも「薬草採取」で入る、黄緑色の扉もある。
私は、もらった『冒険者ガイド(葉編)』に目を通した。
「新しく行けるようになったのは、『シララ水源』と『ミピ雪原』だって」
「水源が水色、雪原は白の扉みたいだね。黄色と赤と紫の扉は、まだ入れなさそうだ。アメリー、どうする?」
「まずは、水色に入ってみよう」
扉を開けると、中に魔法陣があった。小部屋の中心に、扉と同色の魔法陣が光っている。
いつもの要領で魔法陣に足を踏み込むと、淡い光が体を包み、『シララ水源』へ私を転移させる。
着いた先は粉砂糖のように真っ白な砂地と、明るい空の色を反射した透明な広い川だった。近くから澄んだ水が流れ出ている。
辺りは静寂に包まれており、綺麗だけれど寂しい場所だ。
カマルも、同じことを思ったらしい。
「わあ、世界には、こんな場所があるんだねえ」
今日は特に仕事をしに来たわけではないので、辺りを散策して回る。
砂と岩が多いけれど、少し進むと淡い色の草が生える平原や白い洞窟も現れた。
わくわくしながら、洞窟の中を覗くけれど……
「ん? 何これ?」
正面に無造作に誰かの荷物が置かれている。
焚き火の準備をしている形跡も発見した。
(人がいるの?)
不思議に思っていると、背後で足音が聞こえた。
「あれー、ヨーカー魔法学園の学生じゃん。制服を着て、こんな場所で何をしているわけ? しかもその小物、黒撫子寮だろ?」
見ると、銀髪のワイルドなお兄さんが、魚の入ったバケツを持って立っている。
誰かに似ている気もするが、思い出せないから気のせいだろう。
(年齢は近そう。少し上くらいかな? どうして、学園の寮のことまで知っているのかは、わからないけれど。寮の小物の色って有名なの?)
バケツを地面に置いた彼は、洞窟内の荷物をゴソゴソと漁り始め、無造作に紫色のネクタイを取り出す。
「ほれ、俺も黒撫子寮なんだよ。と言っても、寮には、ほぼ帰っていないけどな。今年の歓迎会には行けなかったし……もしかして、君らは新一年生?」
私とカマルは無言で頷きながら、ワイルドなお兄さんを見つめる。
(この人、行方不明の先輩の一人なんじゃ……)
黒撫子寮には、会ったことのない先輩が二人いた。
リアムさん曰く、一人は音信不通で、もう一人はフラフラしていて捕まらないという話だったけれど……どっちだろう?
「二年生か、三年生の先輩ですか?」
尋ねると、お兄さんはにかっと笑って頷いた。
「俺は二年生だ。学園内の空気が嫌いで旅に出たんだよ。本当は退学したいけど、親が許さなくて籍だけ置いてる。実地のほうが役に立つんだけどなあ」
私は、以前リアムさんから聞いた説明を思い返す。
二年生は貴族のリアムさんと平民のマデリンさんの他に、もう一人貴族の生徒がいるらしかった。彼こそが、その人物なのだろう。
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