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カズチカの手帳
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ー第五章 カズチカの手帳ー
~~2階、カズチカの部屋~~
カズチカは呆気に取られていた。
なぜなら、あんなに怒ったユウキを見たのは初めてだったからである。
しかし、カズチカは最早そんなことどうでもよく思えてしまうほど不思議な高揚感の中にいた。
今すべきことは、休息をとることでもユウキに謝りに行くことでもない。
誰が"クロ"なのか……彼の頭にはそれしか無かった。
そして彼は再び机に向かうと、奴を犯人と仮定して今までの出来事を順に追っていった。
その集中力は凄まじいもので、彼は一心不乱にペンを動かし続けた。
そして、ユウキが出て行ってからしばらくして、彼の推理は完成した。
時刻は午後7時を既に回っていた。
カズチカは今すぐにでもこの推理を犯人を含めたみんなに聞いてもらいたかった。
そうすれば犯人も動きづらくなる、と思ったからだ。
善は急げ。
そんな言葉を頼りにカズチカは椅子から立ち上がると、ドアの方へと歩き出した。
しかし、ここで予期せぬことが起こった。
"ドンドンドンドン"
今まさに部屋を出ようという時に何者かがドアをノックしたのだ。
「またユウキか………」
カズチカはそう言うと鍵を開けようとした。
しかしその時、突然何ともいい難い負の感覚が身体中をかけ巡った。
一瞬身体が固まる。
なんだか良く分からないけが、このドアだけは開けてはいけない……そんな気がした。
「だ、誰だ……」
彼は固唾をのんでドアの向こうの人間と対峙する決意をした。
~~1階、リビングルーム~~
時刻は午後7時過ぎ。
そこにはフユノの姿があった。
彼女は窓に打ちつける雨の音を聞きながら読書をしていた。
彼女は夕刻に軽く食べられるものを用意したのだが、こんな状況もあって、食べてくれたのはケイスケとタスキだけだった。
それに、カズチカ、ヨシヒト、ユウキ、シホの4人は部屋に篭もりっぱなしだったのでフユノは少し彼らのことが気になっていた。
正直、今の雰囲気はお世辞にもいいとは言えない。
年長者として、この状況をどうにかしたかった。
そんなことを考えていると、突然リビングのドアが開かれる音がした。
フユノがドアの方に目をやるとそこにはユウキの姿があった。
彼女はフユノの存在に驚いたのか、明らかにはっとしたような顔をした。
「ユウキちゃん……何かあった?」
フユノは尋ねる。
「いえ……その……少しお腹がすいて……」
ユウキはうつむいたままそう答えた。
「夕方に作ったサンドイッチならあるけど……良かったら食べる?」
「は、はい……」
そう言うと2人はダイニングの方へと向かった。
フユノはラップをして置いておいたサンドイッチをユウキに差し出した。
ユウキはお礼をすると黙々とサンドイッチを食べ始めた。
しかし、その顔はどこか浮かない様子だった。
最初はあまり深く詮索するのもよくないと思い読書に没頭するフユノだったが、沈黙に照ることができず思わずユウキに話しかけた。
「ユウキちゃん………落ち込んでいるみたいだけどなんかあったの?……まぁ、今日だけでも色々あったから落ち込まない方が変だけど……」
「別に……」
ユウキは少し不機嫌になった。
「ひょっとして、カズチカくんのこと?」
「な、なんでそんな話になるんですか!!別に何でもないですよ……それにあんな人……もう知りませんし………あ………」
ユウキはしまったと思った。
「ふふ……図星ね……私で良かったら相談にのりますよ?」
「ふざけないでください!」
すると突然ユウキが怒り始めた。
フユノは少しからかいすぎたかなと少し反省した。
「あなたがあんなこと言ったから……」
ユウキは今度、少ししょんぼりした様子でそう言った。
「あんなこと………?」
「この館に犯人がいるってことですよ!」
フユノはユウキのその一言で、昼間の自分の発言を思い出した。
そして、彼らの間に何が起こったのかも大体予想がついた。
「あなたがあんなこと言ったから、カズチカくんが友達を疑うようになったんだ……」
そう言う彼女の手は固く握られていた。
「私の発言があなたたちの仲違いを生んだことには謝るわ……でも間違いじゃない」
フユノは毅然と返す。
「友達が友達を疑うのが間違いじゃないってどういう意味ですか!?」
「そのままの意味よ……過信は身を滅ぼすわ……それは今に限らずどんな時にもそう……じゃあ逆に、あなたは今まで一度も友達を疑ったことがないと言える?」
「それは………」
ユウキは言葉に詰まった。
「あなたが今言っていることは詭弁でしかない………この状況下なら自分以外の人間全てを疑いの目で見るくらいがちょうどいいんじゃないかしら」
フユノはそう言い切った。
「だからって………友達を疑うんですか?……みんなはそんなに簡単に割り切れるんですか?」
「…………」
フユノはただ黙っていた。
「私、カズチカくんだけは信じてたんです……なのに、どうして自分を含めて誰も信じるな、なんて言えるんですか?」
ユウキは泣き始めた。
「もう……嫌です」
それは紛れもなくユウキの本音だった。
すると、フユノは優しくユウキの手を握った。
「あなたは優しい子なのね……だから友達を疑うことに嫌悪感を覚える……きっと、カズチカくんはそのことを見抜いていたのね……だから彼は自分も疑えってあえて強く言ったんじゃないかしら」
ユウキはその言葉を聞くとはっとした顔をした。
「そうだとしたら私……」
ユウキはカズチカとの別れ際に吐いた言葉を思い出した。
そして、ひどく後悔した。
「私……謝らなくちゃ………」
ユウキはそう言うと椅子から立ち上がり、ダイニングを出ようとした。
「ちょっと待って!」
フユノは不意に彼女のことを呼び止めた。
「せっかくだから……これ持っていって」
フユノはダイニングの奥のほうからまたサンドイッチを取り出した。
「ありがとうございます」
ユウキはそうお礼をすると急ぎ足でリビングルームをあとにした。
「頑張ってね……」
フユノはユウキが出ていったドアに向かって呟いた。
~~1階、リビングルーム~~
7月20日、午前7時。
外の天気はいいとは言えないが、雨も大分弱くなってきていた。
そんな中、リビングルームにはカズチカとユウキ以外の全員が集まっていた。
「あいつら遅いなぁ……今日は早起きしてここを出ようって言ってたのに……」
タスキがあくび混じりにそう言った。
「まぁ、色々あったし多少はな……?」
ケイスケはそう言ってタスキをなだめる。
「ふふふ………」
フユノはというと何故か終始ニヤついていた。
だが、彼らの中にひときわ浮かない顔をした人がいた。
「…………」
それはヨシヒトだった。
今朝、彼はみんなにおはようと声をかけた以来一言も喋っていない。
そんな彼の様子を心配したのか、シホが声をかけた。
「あなた……どうかしたの?ひどい顔してるわよ……」
「……ああ、ちょっと疲れてるのかな……ははっ……」
シホはそんなやつれたヨシヒトの姿を見ていたたまれない気持ちになった。
すると今度は突然、タスキがソファーから立ちたがった。
「あいつら遅すぎるっ!!……起こしてくる」
そう言うと彼はリビングルームを出ていった。
「全く……そんなに慌てなくたって」
ケイスケは呆れた様子でソファーにさらに深く座った。
しかし、その時は突然訪れた。
さっき出ていったばかりのタスキがもう帰ってきたのだ。
「おお、早かった………な………」
ケイスケはそう言いながらドアの方を向いたが、そこにいたのは血相を変えて息を荒らげたタスキの姿だった。
「はぁはぁ………大変だ!」
「何が………?」
ケイスケは聞き返す。
「し、死んでた………」
彼のその言葉を聞いた瞬間、ヨシヒトは無言でリビングルームを飛び出した。
「おい!ヨシヒト!」
ケイスケもそう叫ぶと、ヨシヒトのことを追いかけた。
~~2階、カズチカの部屋~~
ヨシヒトはカズチカの部屋の前に来ていた。
しかし、その顔の表情は今から死体を拝む人間の顔とは思えないほど希薄だった。
そして、恐れる訳でもなくノブに手を掛けると普通にドアを開け、彼に会いに来たかのように普通に部屋に足を踏み入れた。
しかし、ヨシヒトの目の前に広がっていた光景は普通とはかけ離れていた。
そこにあったのは椅子に麻縄で固く縛られたまま全身赤に染まってうなだれるカズチカの姿と、彼同様に身体中が真っ赤で、彼に寄り沿う形で息絶えたユウキの姿だった。
しかし、不思議なことにこんな光景はヨシヒトの中では普通のことになってしまっていた。
だから彼は、ああまたか、くらいにしか感じなかった。
すると今度は、ケイスケも部屋の中へと入ってきた。
彼はひどく驚いた様子でこの惨状を見るやいなやすぐに部屋を出て行ってしまった。
しかし、ヨシヒトは特に驚いたり、悲しんだりすることなく部屋の中を調べ始めた。
そして、答えるはずもないカズチカに話しかける。
「ふっ……お前のことだ……犯人の手掛かりくらい遺してから寝てるんだろ?」
しかし、当然のごとくカズチカは喋らない。
すると、ヨシヒトは机の上に手の付けられていないサンドイッチと手帳を見つけた。
そして、ヨシヒトは手帳をペラペラめくった。
そこには今までの事件の詳細やカズチカの推理などが書かれていた。
その推理はなかなかに完成されていた。
しかし、その内容に唯一納得出来ないところがひとつあった。
「なんだよこれ……」
そうつぶやくとヨシヒトはその手帳をぱたんと閉じ、ポケットにしまった。
今まで無表情だったが、その内容を見たときの彼は明らかに動揺した様子だった。
しかし、奴は彼をさらに追い詰めた。
また、メールが届いたのだ。
ヨシヒトはまたか……と思った。
多分このメールはカズチカとユウキの分だ。
そして、ためらうことなく添付ファイルを開く。
それは、ケイナ、ショウコ、タクマ、ユウヤの時と同様の内容のものであった。
ヨシヒトは黙ってその様子を眺めた。
そして、最後まで目をそらさずに見届けた。
さぞかし無念であっただろう。
ヨシヒトはそう思った。
そして部屋を去る時、ヨシヒトはまたカズチカに話しかけた。
「お前の結論には納得できない……でもお前の集めた証拠は無駄にはしないから……」
~~1階、リビングルーム~~
ヨシヒトはカズチカの部屋を調べ終えみんなのいるリビングルームへと戻ってきた。
しかし彼は次の瞬間、誰も予想だにしなかった行動にでた。
ヨシヒトは突然フユノの胸元を掴んだのだ。
「お前が犯人だっていうのは分かってるんだ!!」
「落ち着いて……私は犯人じゃないわ」
フユノはひどく驚いた様子でそう返した。
「犯人はみんなそう言うんだっ!!それに証拠ならある!!」
「おい!落ち着けヨシヒト!」
ケイスケは慌ててヨシヒトをフユノから離した。
「離せっ!そいつが……そいつがみんなを……」
すると、今度はシホが話し始めた。
さっきヨシヒトがフユノに襲いかかった時に落としたのか、彼女の手にはカズチカの手帳が握られていた。
「待って……ヨシヒトの言う証拠ならもう一人当てはまる人がいるわ」
「シホっ!それはっ!」
ヨシヒトは必死にシホがその名を口にするのを止めようとした。
「タスキ………あなたまさか人殺しなんて趣味はないわよね?」
「あ………」
ヨシヒトを含めその場にいた全員が唖然とした。
「はぁ………シホ……冗談がキツいなぁ……俺が人殺しなんてする訳無いだろ……」
タスキはシホの発言に呆れたような笑顔で返した。
しかし、一方のシホは真顔でさらに続ける。
「合宿初日にあなたを襲うこと、電話線を切ることが出来るた人物………確かにそれは渡辺さんが当てはまるわね。それに彼女はトンネルが土砂で埋まってたなんて言うにわかに信じ難い話までした……だから、まず彼女を疑ったヨシヒトの推理も分からなくはないわ」
「……だったら渡辺さんが犯人なんじゃないの?」
「いいえ、この2つの証拠はタスキ、あなたにも当てはまるのよ……」
「は?……電話線はまぁ出来たとして、自分で自分をどうやって襲うんだよ……」
タスキはすこし機嫌が悪くなってきた。
「ええ……最初から全て話すわ。カズの推理はこうよ………まず、あなたは"襲われた"とメンバーに認識させる必要があった。これは犯人がメンバー外の第三者であると思わせるためには必要不可欠な要素よ……」
「………」
タスキは黙って聞いていた。
「そして、この"襲われた"という状況を作るためには、合宿に遅れる必要があった。だからあなたは前もってカズに館の詳細な情報と鍵を渡していた……」
他のメンバーも固唾をのんでシホの話に耳を傾けていた。
「そしてあなたは館への道中で自分自身の体を刃物で切りつけて、あたかも襲われたように館に倒れ込んだ………これは傷が体の急所や背中には無かったことから判断したようね………だって自分で自分の背中は切れないもの……でも考えてみて?普通相手を襲おうと思ったら後ろから襲わない?………」
「それは、突然目の前に変な奴が現れて……」
タスキは弁明を始めたが、シホは構わず続けた。
「そして、この手帳にはこの館の各部屋は防音性の高い構造になっていたことが書かれているわ………おそらくそのことを知っていたのは館の詳細情報を持っていたカズかあなただけね……」
「防音性が高いから何だっていうんだよ……」
「私はてっきり闇討ちでみんな殺されたと思い込んでいたけど、防音性の高さは目撃さえされなければ時間に縛られずにいつでも犯行を可能にするってことなのよ?……つまりこの事実は館内部の人間にこそ有利な条件なの………好きなときに部屋に呼んだり、訪れたりして殺せるんだから」
「それなら誰にだって出来ただろ……」
「あなた私の話聞いてた?防音性の高さを知っていたのはカズが死んだ今、あなただけなのよ………まぁ、いいわ……そして最後は予告せずに行われたユウヤの死よ」
「はぁ……予告が無かったら何かあるのかよ……」
タスキは呆れた様子だった。
「ええ、大いに……殺人予告を怠らずにしていた犯人による突然の予告なしの犯行……つまりこれは殺人予告を出す前に殺さなくてはいけなかった状況だったってことを意味するわ」
「そんなの……ユウヤが犯人の顔を見たから殺されたんだろ……それに予告なら殺したあとにユウヤの携帯に送っても、俺たちは予告があったって思うんじゃないのか?」
「ええ、その通りよ……でもこれほど予告に固執していた犯人が殺人予告を出さないなんてことあるのかしら……あなたは今、偽装工作で殺人後に殺人予告メールを送ればいいって言ったけど、どうして犯人はそうしなかったのかしらね?」
「それは……偽装工作の前に遺体が発見されたからだろ」
「ええ、でも遺体がどのタイミングで発見されるたかを正確に知りうるのは館内部の人間だけなのよ……でもこれって矛盾してるわよね………」
そして、シホはさらに続ける。
「それにこの予告メール………カズは電波妨害がこの館の周辺にかけられてる可能性を書いているの………確かにこの仮説が正しいなら、圏外でもメールが届く理由が説明できるわ………メールしたい時に電波妨害を切ればいいもの……でもこんな機械の取り付けができるのも、この館の所有者であるあなただけよね?」
つまり、カズチカの推理を要約すると、"タスキが最初から遅れるのを予期したように事前に鍵や図面をカズチカに渡していたこと"、"タスキの傷はすべて急所を外れ、かつ背中側には一か所もなかったこと"、"各部屋にしっかりした防音工事が施されていたこと"、"ユウヤの殺人予告メールがなかったこと"
この4つを総合的に考えると一番犯行が可能だったのはタスキではないかという結論に至ったというものであった。
「ふっ…………そんなの状況証拠でしかないだろ」
タスキはシホの推理を鼻で笑った。
「そうだよシホ………タスキが犯人なわけないよ」
ヨシヒトはタスキの肩を持つ。
しかし、この2人以外はタスキのことを少なからず疑い始めていた。
「ええ、物的確証がないのも事実よ………だからタスキ……あなたの部屋を見せて?……そこで何もなかったら謝るなりなんなりしてあげるから」
「………………」
タスキは黙り込んだ。
「おい、タスキ……どうしたんだよ黙り込んで……潔白を証明してやろうよ」
ヨシヒトがタスキに話しかける。
しかし、タスキは黙ったままだった。
「分かったよ、見せればいいんだろ……」
タスキはそう言うとリビングルームのドアの方へと歩み出した。
しかし、みんなは固まっている。
「………俺の部屋………見るんだろ?」
「ええ……行くわ」
そう言って先陣を切ったのはシホだった。
そして、メンバーはタスキのあとについて彼の部屋へと向かった。
~~2階、タスキの部屋~~
館の中にいる人間は全員、タスキの部屋の前に集結していた。
タスキはというと、疑われている人間とは思えないほど普通の様子でドアを開けた。
そして、みんなも彼のあとについて行った。
しかし、部屋の中は至って普通でこれと言って怪しいものは見当たらなかった。
「ほらっ……やっぱり何もないじゃないか!」
ヨシヒトはタスキの潔白が証明できたと思ったのか、少し嬉しそうな様子だった。
ところが、シホは納得がいっていないのか、ズカズカと中の方へ入っていった。
そして勢い良くクローゼットを開いた。
そこにあったのは、あまりにも不自然なものだった。
「あぁ…………やっぱり」
シホは静かにそうつぶやいた。
そこには、様々な凶器や工具……そして、血が乾いて赤茶けた色になった服や布があったのだ。
「な、なにかの間違いだよ……な、なぁ?タスキ?」
ヨシヒトはタスキに尋ねる。
「……………」
タスキは無言になった。
「おい!否定しろよタスキ!」
ヨシヒトは大きな声をあげた。
「ふっ……ふっふっ………あーっはっはっはっはっ!!!」
すると突然タスキが大きな声で笑い始めた。
みんなは突然のことに思わず身構えた。
「あーあ……ばれちゃったか………まったくカズは結局最後まで俺の足を引っ張るんだねぇ………」
そう言うとタスキはクローゼットの方へと歩み出した。
「嘘だっ!お前が犯人なんてありえない!」
ヨシヒトは未だに事実を否定し続ける。
「はぁ………」
ヨシヒトの問いに答えるのもめんどくさくなったのか、タスキはため息をつくとクローゼットから刃渡りが30cmほどの刃物を取り出した。
みんなは固まった。
逃げなくては、と心の中では思っているのに身体が動かない。
「本当は……誰にもバレないでみんな殺りたかったんだけどなぁ………まぁ、必要な分は殺れたからいっか……」
タスキは総独り言を言うと、その刃物を構えシホのほうめがけて走り出した。
一方、シホの表情は一瞬で恐怖に変わった。
「あはははっ!いいね!その顔だよっ!」
今にもシホの体を刃物が突き刺さろうとしていた時だった。
シホの眼前に何かが飛び込んだ。
「ダメっ!!」
そして次の瞬間、フユノがその場に倒れ込んだのた。
「渡辺さん!」
シホとケイスケの2人は急いで彼女の元へと駆け寄る。
フユノは腹部に深く刃物が突き刺さり、苦しいそうな表情で悶えていた。
「うっ………大丈夫………だから」
「今抜きますっ!」
シホは慌てた様子でその刃物を抜こうとした時だった。
「ふふふ……抜いちゃっていいのかなぁ?」
タスキが不気味な笑い声をあげた。
その声に驚いて少し正気に戻ったのか、シホはこういう時は刃物を抜いてはいけないことを思い出した。
「お、おい………なんだよこれ」
ヨシヒトもかなり混乱しているようで、シホやケイスケたちとは少し離れたところでうろたえていた。
「はぁ……あんたやっぱりダメダメさんだなぁ………」
タスキは心底呆れたといった様子だ。
「え……?」
ヨシヒトは呆然とする。
「あーあ……なんか興ざめだなぁ………そうだ、ヨシヒト……今からいいもの見せてあげるよ………」
タスキはそう言うと窓を開けて、バルコニーへと出た。
そして、手すりの上に乗った。
突然の彼の奇行にみんなは言葉を失う。
「ヨシヒト………お前がダメダメだからこんなことになっちゃったんだよ?お前がリーダーとしてちゃんとやれなかったからみんなは死んだ………そして、これから起こることも……ね?」
「タスキ……なに言って」
ヨシヒトはタスキの言ってる意味がわからなかった。
「あっはっはっはっは………ヨシヒト……やっぱり君は最高だっ!」
そう言うとタスキは上体を後ろに倒した。
「待てっ!タスキーーっ!」
それは一瞬の出来事だった。
タスキは一瞬でみんなの視界から消えた。
そして、この世からも消えた。
ただ、ヨシヒトは最期の彼を見た。
そして、彼は確かにこう言った。
「さようなら……」
8月3日、午後2時。
ケイスケとシホの2人はとある場所にいた。
そこは、市立病院だった。
そして、2人は608号と書かれた部屋の中へと入っていった。
「こんにちは………調子の方はどうですか」
シホが尋ねる。
「あら、こんにちは、わざわざ来てくれてありがとうね………調子の方は大分痛みも無くなったし、もう大丈夫じゃないかしら」
ベッドの上にいたのはフユノだった。
「良かったですね……」
ケイスケも彼女の回復に嬉しそうな様子だ。
しかし、何と言うか。
そこには、素直に喜べないところがあった。
すると今度は別の話題になった。
「ところで……ヨシヒトくんの調子の方はどう?………少しは良くなってるといいんだけど………」
しかし、2人は黙り込んだ。
そう、今一番まずい状況にあるのはヨシヒトなのだ。
あの日、タスキがバルコニーから身投げした後すぐに消防のヘリがやってきて、生き残ったメンバーを救助したらしいのだ。
らしい……というのも、フユノはお腹に刃物が刺さっていてそもそも意識が薄く、ケイスケとシホの2人もあまりのことに記憶が曖昧になっているのだ。
そして、どうも話によるとヨシヒトは完全に発狂した状態で保護されて、今も尚その状態が続いているのだとか。
そんな状態での面会は当然叶うはずもなく、あの日以来彼とは誰も会っていない。
結局その後、館には警察の捜査が入り、だんだんとその全貌が明らかになってきたのだが、どうもカズチカがした推理で大体合っていたようだ。
それに、最近頻発していた動物大量死や女児殺害事件も警察の捜査でタスキの関与が認められた。
しかし、彼をそこまでさせた根本的な原因は明らかになっていない。
そんな話を一通り終えるとシホはフユノに質問をした。
「あの……」
「どうしたの?」
「あの時、どうして私を助けてくれたんですか……?」
ほんの少しだけ病室は沈黙に包まれた。
すると、フユノが静かに話し始めた。
「……人を助けるのに理由なんている?」
「………」
シホはしばし黙り込んだ。
「あなたは何も気に病むことはないのよ……これは私が勝手にやったことだもの」
「でも一生消えない傷を負ったんですよ………」
「ふふふ……あなたも優しい子なのね……大丈夫、この程度の傷であなたの命が救えたならむしろお釣りがくるくらいの儲けよ」
「…………すみません」
シホはそう言うとうつむいた。
「でも、ひとつだけ約束して」
フユノは急に真面目な顔になった。
「必ず天寿を全うするのよ……これは命の恩人からの命令だからね?」
「はい……ありがとうございます」
シホはぺこりと頭を下げた。
その後3人で他愛のない話をして過ごしたが、あまり長居もフユノに悪いだろうということでしばらくした後シホとケイスケの2人は病院をあとにした。
~~病院近くの公園~~
シホとケイスケの2人は病院近くの公園のベンチに座って休憩していた。
「フユノさん元気そうで良かったな……」
ケイスケはベンチの上で伸びながらそう言った。
「そうね…………」
しかし、一方のシホはあまり元気がない。
「元気ないな……」
確かにシホの様子はしょぼくれていた。
「私……今でもこの状況が良く分からないの……学校に行けば今でもそこにみんながいる気がしてるし、メールをすれば返ってくる気もしてる……」
「俺もだよ………」
ケイスケは静かに頷く。
「でも結局、私は無力だったのね……何もできなかったし、誰も救えなかった」
「………そんなことないだろ………それを言ったら俺なんて本当に何もできなかったぞ?」
「…………」
シホは浮かない顔でうつむいた。
そんな彼女の様子を見てケイスケは何とかして慰めてあげたいと思った。
だからケイスケは精一杯の勇気をふりしぼって言葉を発した。
「なぁ……シホ」
「なに………?」
「シホは俺の命を救ってくれたっていうのじゃダメかな………きっとシホがいなかったら今俺は生きてないと思うんだ………だから誰も救えなかったなんて悲しいこと言うなよ……」
「………」
シホはしばらく黙り込んだ。
ケイスケはこの沈黙が辛くなり、シホから少し顔をそらして天を仰いだ。
すると、シホはクスっと笑うとベンチから立ち上がり、ケイスケの正面に立った。
「ふふっ………くっさいセリフね」
「なっ!?」
ケイスケは赤面した。
すると、シホは今度ケイスケに背を向けた。
「でも、まぁ………ありがと」
二人はお互いのやり取りに少しはにかんだ。
しかし、この柔らかな時間はそう長く続かなかった。
シホとケイスケの携帯が同時にメールを受信したのだ。
二人は同時に携帯を確認する。
だが、そのメールはあまりにも不可解なものであった。
なぜなら、それは死者からのメールだったからである。
二人は顔を見合わせた。
そして、互いの表情から同じメールが届いたことを察知した。
「……なぁ、シホ……これって」
「ええ……まだ終わってないってことね……」
差出人:池永タスキ
件名:おめでとう
本文:素晴らしいチームワークで見事僕に勝利したようですね。しかし、勝利とはいったい何をもって勝利とみなされるのでしょうか?僕は個人的に、勝利とは真理に到達することであると思っています。
例えば、君たちは犯人である僕を突き止めるのに何人の友達を犠牲にしたでしょうか?そして、なぜあのような悲劇が起きてしまったのか、その理由はご存知でしょうか?
では、何も手に入れることもできずに仲間の命を浪費した君たちは本当の意味で僕に勝利したといえるのでしょうか?
この問いに対する答えはNOである僕は思います。すなわち、このゲームはまだ終わっていないのです。数多の命を犠牲にした君たちには、真理に到達する義務があるはずです。
命が最高の輝きを放つとき、天の目によって扉は開かれます。
それでは、ゲームの続きを始めましょう。
「ゲームの続き……」
シホは思わずそう口にした。
そして、あの惨劇をゲームと称す彼に対し、憤りと悲しみを抱いた。
「俺たちの因縁は……まだ終わってなかったんだな……」
ケイスケはあの日とは対照的な澄んだ青い空を見つめながらそう言った。
To be continued...
~~2階、カズチカの部屋~~
カズチカは呆気に取られていた。
なぜなら、あんなに怒ったユウキを見たのは初めてだったからである。
しかし、カズチカは最早そんなことどうでもよく思えてしまうほど不思議な高揚感の中にいた。
今すべきことは、休息をとることでもユウキに謝りに行くことでもない。
誰が"クロ"なのか……彼の頭にはそれしか無かった。
そして彼は再び机に向かうと、奴を犯人と仮定して今までの出来事を順に追っていった。
その集中力は凄まじいもので、彼は一心不乱にペンを動かし続けた。
そして、ユウキが出て行ってからしばらくして、彼の推理は完成した。
時刻は午後7時を既に回っていた。
カズチカは今すぐにでもこの推理を犯人を含めたみんなに聞いてもらいたかった。
そうすれば犯人も動きづらくなる、と思ったからだ。
善は急げ。
そんな言葉を頼りにカズチカは椅子から立ち上がると、ドアの方へと歩き出した。
しかし、ここで予期せぬことが起こった。
"ドンドンドンドン"
今まさに部屋を出ようという時に何者かがドアをノックしたのだ。
「またユウキか………」
カズチカはそう言うと鍵を開けようとした。
しかしその時、突然何ともいい難い負の感覚が身体中をかけ巡った。
一瞬身体が固まる。
なんだか良く分からないけが、このドアだけは開けてはいけない……そんな気がした。
「だ、誰だ……」
彼は固唾をのんでドアの向こうの人間と対峙する決意をした。
~~1階、リビングルーム~~
時刻は午後7時過ぎ。
そこにはフユノの姿があった。
彼女は窓に打ちつける雨の音を聞きながら読書をしていた。
彼女は夕刻に軽く食べられるものを用意したのだが、こんな状況もあって、食べてくれたのはケイスケとタスキだけだった。
それに、カズチカ、ヨシヒト、ユウキ、シホの4人は部屋に篭もりっぱなしだったのでフユノは少し彼らのことが気になっていた。
正直、今の雰囲気はお世辞にもいいとは言えない。
年長者として、この状況をどうにかしたかった。
そんなことを考えていると、突然リビングのドアが開かれる音がした。
フユノがドアの方に目をやるとそこにはユウキの姿があった。
彼女はフユノの存在に驚いたのか、明らかにはっとしたような顔をした。
「ユウキちゃん……何かあった?」
フユノは尋ねる。
「いえ……その……少しお腹がすいて……」
ユウキはうつむいたままそう答えた。
「夕方に作ったサンドイッチならあるけど……良かったら食べる?」
「は、はい……」
そう言うと2人はダイニングの方へと向かった。
フユノはラップをして置いておいたサンドイッチをユウキに差し出した。
ユウキはお礼をすると黙々とサンドイッチを食べ始めた。
しかし、その顔はどこか浮かない様子だった。
最初はあまり深く詮索するのもよくないと思い読書に没頭するフユノだったが、沈黙に照ることができず思わずユウキに話しかけた。
「ユウキちゃん………落ち込んでいるみたいだけどなんかあったの?……まぁ、今日だけでも色々あったから落ち込まない方が変だけど……」
「別に……」
ユウキは少し不機嫌になった。
「ひょっとして、カズチカくんのこと?」
「な、なんでそんな話になるんですか!!別に何でもないですよ……それにあんな人……もう知りませんし………あ………」
ユウキはしまったと思った。
「ふふ……図星ね……私で良かったら相談にのりますよ?」
「ふざけないでください!」
すると突然ユウキが怒り始めた。
フユノは少しからかいすぎたかなと少し反省した。
「あなたがあんなこと言ったから……」
ユウキは今度、少ししょんぼりした様子でそう言った。
「あんなこと………?」
「この館に犯人がいるってことですよ!」
フユノはユウキのその一言で、昼間の自分の発言を思い出した。
そして、彼らの間に何が起こったのかも大体予想がついた。
「あなたがあんなこと言ったから、カズチカくんが友達を疑うようになったんだ……」
そう言う彼女の手は固く握られていた。
「私の発言があなたたちの仲違いを生んだことには謝るわ……でも間違いじゃない」
フユノは毅然と返す。
「友達が友達を疑うのが間違いじゃないってどういう意味ですか!?」
「そのままの意味よ……過信は身を滅ぼすわ……それは今に限らずどんな時にもそう……じゃあ逆に、あなたは今まで一度も友達を疑ったことがないと言える?」
「それは………」
ユウキは言葉に詰まった。
「あなたが今言っていることは詭弁でしかない………この状況下なら自分以外の人間全てを疑いの目で見るくらいがちょうどいいんじゃないかしら」
フユノはそう言い切った。
「だからって………友達を疑うんですか?……みんなはそんなに簡単に割り切れるんですか?」
「…………」
フユノはただ黙っていた。
「私、カズチカくんだけは信じてたんです……なのに、どうして自分を含めて誰も信じるな、なんて言えるんですか?」
ユウキは泣き始めた。
「もう……嫌です」
それは紛れもなくユウキの本音だった。
すると、フユノは優しくユウキの手を握った。
「あなたは優しい子なのね……だから友達を疑うことに嫌悪感を覚える……きっと、カズチカくんはそのことを見抜いていたのね……だから彼は自分も疑えってあえて強く言ったんじゃないかしら」
ユウキはその言葉を聞くとはっとした顔をした。
「そうだとしたら私……」
ユウキはカズチカとの別れ際に吐いた言葉を思い出した。
そして、ひどく後悔した。
「私……謝らなくちゃ………」
ユウキはそう言うと椅子から立ち上がり、ダイニングを出ようとした。
「ちょっと待って!」
フユノは不意に彼女のことを呼び止めた。
「せっかくだから……これ持っていって」
フユノはダイニングの奥のほうからまたサンドイッチを取り出した。
「ありがとうございます」
ユウキはそうお礼をすると急ぎ足でリビングルームをあとにした。
「頑張ってね……」
フユノはユウキが出ていったドアに向かって呟いた。
~~1階、リビングルーム~~
7月20日、午前7時。
外の天気はいいとは言えないが、雨も大分弱くなってきていた。
そんな中、リビングルームにはカズチカとユウキ以外の全員が集まっていた。
「あいつら遅いなぁ……今日は早起きしてここを出ようって言ってたのに……」
タスキがあくび混じりにそう言った。
「まぁ、色々あったし多少はな……?」
ケイスケはそう言ってタスキをなだめる。
「ふふふ………」
フユノはというと何故か終始ニヤついていた。
だが、彼らの中にひときわ浮かない顔をした人がいた。
「…………」
それはヨシヒトだった。
今朝、彼はみんなにおはようと声をかけた以来一言も喋っていない。
そんな彼の様子を心配したのか、シホが声をかけた。
「あなた……どうかしたの?ひどい顔してるわよ……」
「……ああ、ちょっと疲れてるのかな……ははっ……」
シホはそんなやつれたヨシヒトの姿を見ていたたまれない気持ちになった。
すると今度は突然、タスキがソファーから立ちたがった。
「あいつら遅すぎるっ!!……起こしてくる」
そう言うと彼はリビングルームを出ていった。
「全く……そんなに慌てなくたって」
ケイスケは呆れた様子でソファーにさらに深く座った。
しかし、その時は突然訪れた。
さっき出ていったばかりのタスキがもう帰ってきたのだ。
「おお、早かった………な………」
ケイスケはそう言いながらドアの方を向いたが、そこにいたのは血相を変えて息を荒らげたタスキの姿だった。
「はぁはぁ………大変だ!」
「何が………?」
ケイスケは聞き返す。
「し、死んでた………」
彼のその言葉を聞いた瞬間、ヨシヒトは無言でリビングルームを飛び出した。
「おい!ヨシヒト!」
ケイスケもそう叫ぶと、ヨシヒトのことを追いかけた。
~~2階、カズチカの部屋~~
ヨシヒトはカズチカの部屋の前に来ていた。
しかし、その顔の表情は今から死体を拝む人間の顔とは思えないほど希薄だった。
そして、恐れる訳でもなくノブに手を掛けると普通にドアを開け、彼に会いに来たかのように普通に部屋に足を踏み入れた。
しかし、ヨシヒトの目の前に広がっていた光景は普通とはかけ離れていた。
そこにあったのは椅子に麻縄で固く縛られたまま全身赤に染まってうなだれるカズチカの姿と、彼同様に身体中が真っ赤で、彼に寄り沿う形で息絶えたユウキの姿だった。
しかし、不思議なことにこんな光景はヨシヒトの中では普通のことになってしまっていた。
だから彼は、ああまたか、くらいにしか感じなかった。
すると今度は、ケイスケも部屋の中へと入ってきた。
彼はひどく驚いた様子でこの惨状を見るやいなやすぐに部屋を出て行ってしまった。
しかし、ヨシヒトは特に驚いたり、悲しんだりすることなく部屋の中を調べ始めた。
そして、答えるはずもないカズチカに話しかける。
「ふっ……お前のことだ……犯人の手掛かりくらい遺してから寝てるんだろ?」
しかし、当然のごとくカズチカは喋らない。
すると、ヨシヒトは机の上に手の付けられていないサンドイッチと手帳を見つけた。
そして、ヨシヒトは手帳をペラペラめくった。
そこには今までの事件の詳細やカズチカの推理などが書かれていた。
その推理はなかなかに完成されていた。
しかし、その内容に唯一納得出来ないところがひとつあった。
「なんだよこれ……」
そうつぶやくとヨシヒトはその手帳をぱたんと閉じ、ポケットにしまった。
今まで無表情だったが、その内容を見たときの彼は明らかに動揺した様子だった。
しかし、奴は彼をさらに追い詰めた。
また、メールが届いたのだ。
ヨシヒトはまたか……と思った。
多分このメールはカズチカとユウキの分だ。
そして、ためらうことなく添付ファイルを開く。
それは、ケイナ、ショウコ、タクマ、ユウヤの時と同様の内容のものであった。
ヨシヒトは黙ってその様子を眺めた。
そして、最後まで目をそらさずに見届けた。
さぞかし無念であっただろう。
ヨシヒトはそう思った。
そして部屋を去る時、ヨシヒトはまたカズチカに話しかけた。
「お前の結論には納得できない……でもお前の集めた証拠は無駄にはしないから……」
~~1階、リビングルーム~~
ヨシヒトはカズチカの部屋を調べ終えみんなのいるリビングルームへと戻ってきた。
しかし彼は次の瞬間、誰も予想だにしなかった行動にでた。
ヨシヒトは突然フユノの胸元を掴んだのだ。
「お前が犯人だっていうのは分かってるんだ!!」
「落ち着いて……私は犯人じゃないわ」
フユノはひどく驚いた様子でそう返した。
「犯人はみんなそう言うんだっ!!それに証拠ならある!!」
「おい!落ち着けヨシヒト!」
ケイスケは慌ててヨシヒトをフユノから離した。
「離せっ!そいつが……そいつがみんなを……」
すると、今度はシホが話し始めた。
さっきヨシヒトがフユノに襲いかかった時に落としたのか、彼女の手にはカズチカの手帳が握られていた。
「待って……ヨシヒトの言う証拠ならもう一人当てはまる人がいるわ」
「シホっ!それはっ!」
ヨシヒトは必死にシホがその名を口にするのを止めようとした。
「タスキ………あなたまさか人殺しなんて趣味はないわよね?」
「あ………」
ヨシヒトを含めその場にいた全員が唖然とした。
「はぁ………シホ……冗談がキツいなぁ……俺が人殺しなんてする訳無いだろ……」
タスキはシホの発言に呆れたような笑顔で返した。
しかし、一方のシホは真顔でさらに続ける。
「合宿初日にあなたを襲うこと、電話線を切ることが出来るた人物………確かにそれは渡辺さんが当てはまるわね。それに彼女はトンネルが土砂で埋まってたなんて言うにわかに信じ難い話までした……だから、まず彼女を疑ったヨシヒトの推理も分からなくはないわ」
「……だったら渡辺さんが犯人なんじゃないの?」
「いいえ、この2つの証拠はタスキ、あなたにも当てはまるのよ……」
「は?……電話線はまぁ出来たとして、自分で自分をどうやって襲うんだよ……」
タスキはすこし機嫌が悪くなってきた。
「ええ……最初から全て話すわ。カズの推理はこうよ………まず、あなたは"襲われた"とメンバーに認識させる必要があった。これは犯人がメンバー外の第三者であると思わせるためには必要不可欠な要素よ……」
「………」
タスキは黙って聞いていた。
「そして、この"襲われた"という状況を作るためには、合宿に遅れる必要があった。だからあなたは前もってカズに館の詳細な情報と鍵を渡していた……」
他のメンバーも固唾をのんでシホの話に耳を傾けていた。
「そしてあなたは館への道中で自分自身の体を刃物で切りつけて、あたかも襲われたように館に倒れ込んだ………これは傷が体の急所や背中には無かったことから判断したようね………だって自分で自分の背中は切れないもの……でも考えてみて?普通相手を襲おうと思ったら後ろから襲わない?………」
「それは、突然目の前に変な奴が現れて……」
タスキは弁明を始めたが、シホは構わず続けた。
「そして、この手帳にはこの館の各部屋は防音性の高い構造になっていたことが書かれているわ………おそらくそのことを知っていたのは館の詳細情報を持っていたカズかあなただけね……」
「防音性が高いから何だっていうんだよ……」
「私はてっきり闇討ちでみんな殺されたと思い込んでいたけど、防音性の高さは目撃さえされなければ時間に縛られずにいつでも犯行を可能にするってことなのよ?……つまりこの事実は館内部の人間にこそ有利な条件なの………好きなときに部屋に呼んだり、訪れたりして殺せるんだから」
「それなら誰にだって出来ただろ……」
「あなた私の話聞いてた?防音性の高さを知っていたのはカズが死んだ今、あなただけなのよ………まぁ、いいわ……そして最後は予告せずに行われたユウヤの死よ」
「はぁ……予告が無かったら何かあるのかよ……」
タスキは呆れた様子だった。
「ええ、大いに……殺人予告を怠らずにしていた犯人による突然の予告なしの犯行……つまりこれは殺人予告を出す前に殺さなくてはいけなかった状況だったってことを意味するわ」
「そんなの……ユウヤが犯人の顔を見たから殺されたんだろ……それに予告なら殺したあとにユウヤの携帯に送っても、俺たちは予告があったって思うんじゃないのか?」
「ええ、その通りよ……でもこれほど予告に固執していた犯人が殺人予告を出さないなんてことあるのかしら……あなたは今、偽装工作で殺人後に殺人予告メールを送ればいいって言ったけど、どうして犯人はそうしなかったのかしらね?」
「それは……偽装工作の前に遺体が発見されたからだろ」
「ええ、でも遺体がどのタイミングで発見されるたかを正確に知りうるのは館内部の人間だけなのよ……でもこれって矛盾してるわよね………」
そして、シホはさらに続ける。
「それにこの予告メール………カズは電波妨害がこの館の周辺にかけられてる可能性を書いているの………確かにこの仮説が正しいなら、圏外でもメールが届く理由が説明できるわ………メールしたい時に電波妨害を切ればいいもの……でもこんな機械の取り付けができるのも、この館の所有者であるあなただけよね?」
つまり、カズチカの推理を要約すると、"タスキが最初から遅れるのを予期したように事前に鍵や図面をカズチカに渡していたこと"、"タスキの傷はすべて急所を外れ、かつ背中側には一か所もなかったこと"、"各部屋にしっかりした防音工事が施されていたこと"、"ユウヤの殺人予告メールがなかったこと"
この4つを総合的に考えると一番犯行が可能だったのはタスキではないかという結論に至ったというものであった。
「ふっ…………そんなの状況証拠でしかないだろ」
タスキはシホの推理を鼻で笑った。
「そうだよシホ………タスキが犯人なわけないよ」
ヨシヒトはタスキの肩を持つ。
しかし、この2人以外はタスキのことを少なからず疑い始めていた。
「ええ、物的確証がないのも事実よ………だからタスキ……あなたの部屋を見せて?……そこで何もなかったら謝るなりなんなりしてあげるから」
「………………」
タスキは黙り込んだ。
「おい、タスキ……どうしたんだよ黙り込んで……潔白を証明してやろうよ」
ヨシヒトがタスキに話しかける。
しかし、タスキは黙ったままだった。
「分かったよ、見せればいいんだろ……」
タスキはそう言うとリビングルームのドアの方へと歩み出した。
しかし、みんなは固まっている。
「………俺の部屋………見るんだろ?」
「ええ……行くわ」
そう言って先陣を切ったのはシホだった。
そして、メンバーはタスキのあとについて彼の部屋へと向かった。
~~2階、タスキの部屋~~
館の中にいる人間は全員、タスキの部屋の前に集結していた。
タスキはというと、疑われている人間とは思えないほど普通の様子でドアを開けた。
そして、みんなも彼のあとについて行った。
しかし、部屋の中は至って普通でこれと言って怪しいものは見当たらなかった。
「ほらっ……やっぱり何もないじゃないか!」
ヨシヒトはタスキの潔白が証明できたと思ったのか、少し嬉しそうな様子だった。
ところが、シホは納得がいっていないのか、ズカズカと中の方へ入っていった。
そして勢い良くクローゼットを開いた。
そこにあったのは、あまりにも不自然なものだった。
「あぁ…………やっぱり」
シホは静かにそうつぶやいた。
そこには、様々な凶器や工具……そして、血が乾いて赤茶けた色になった服や布があったのだ。
「な、なにかの間違いだよ……な、なぁ?タスキ?」
ヨシヒトはタスキに尋ねる。
「……………」
タスキは無言になった。
「おい!否定しろよタスキ!」
ヨシヒトは大きな声をあげた。
「ふっ……ふっふっ………あーっはっはっはっはっ!!!」
すると突然タスキが大きな声で笑い始めた。
みんなは突然のことに思わず身構えた。
「あーあ……ばれちゃったか………まったくカズは結局最後まで俺の足を引っ張るんだねぇ………」
そう言うとタスキはクローゼットの方へと歩み出した。
「嘘だっ!お前が犯人なんてありえない!」
ヨシヒトは未だに事実を否定し続ける。
「はぁ………」
ヨシヒトの問いに答えるのもめんどくさくなったのか、タスキはため息をつくとクローゼットから刃渡りが30cmほどの刃物を取り出した。
みんなは固まった。
逃げなくては、と心の中では思っているのに身体が動かない。
「本当は……誰にもバレないでみんな殺りたかったんだけどなぁ………まぁ、必要な分は殺れたからいっか……」
タスキは総独り言を言うと、その刃物を構えシホのほうめがけて走り出した。
一方、シホの表情は一瞬で恐怖に変わった。
「あはははっ!いいね!その顔だよっ!」
今にもシホの体を刃物が突き刺さろうとしていた時だった。
シホの眼前に何かが飛び込んだ。
「ダメっ!!」
そして次の瞬間、フユノがその場に倒れ込んだのた。
「渡辺さん!」
シホとケイスケの2人は急いで彼女の元へと駆け寄る。
フユノは腹部に深く刃物が突き刺さり、苦しいそうな表情で悶えていた。
「うっ………大丈夫………だから」
「今抜きますっ!」
シホは慌てた様子でその刃物を抜こうとした時だった。
「ふふふ……抜いちゃっていいのかなぁ?」
タスキが不気味な笑い声をあげた。
その声に驚いて少し正気に戻ったのか、シホはこういう時は刃物を抜いてはいけないことを思い出した。
「お、おい………なんだよこれ」
ヨシヒトもかなり混乱しているようで、シホやケイスケたちとは少し離れたところでうろたえていた。
「はぁ……あんたやっぱりダメダメさんだなぁ………」
タスキは心底呆れたといった様子だ。
「え……?」
ヨシヒトは呆然とする。
「あーあ……なんか興ざめだなぁ………そうだ、ヨシヒト……今からいいもの見せてあげるよ………」
タスキはそう言うと窓を開けて、バルコニーへと出た。
そして、手すりの上に乗った。
突然の彼の奇行にみんなは言葉を失う。
「ヨシヒト………お前がダメダメだからこんなことになっちゃったんだよ?お前がリーダーとしてちゃんとやれなかったからみんなは死んだ………そして、これから起こることも……ね?」
「タスキ……なに言って」
ヨシヒトはタスキの言ってる意味がわからなかった。
「あっはっはっはっは………ヨシヒト……やっぱり君は最高だっ!」
そう言うとタスキは上体を後ろに倒した。
「待てっ!タスキーーっ!」
それは一瞬の出来事だった。
タスキは一瞬でみんなの視界から消えた。
そして、この世からも消えた。
ただ、ヨシヒトは最期の彼を見た。
そして、彼は確かにこう言った。
「さようなら……」
8月3日、午後2時。
ケイスケとシホの2人はとある場所にいた。
そこは、市立病院だった。
そして、2人は608号と書かれた部屋の中へと入っていった。
「こんにちは………調子の方はどうですか」
シホが尋ねる。
「あら、こんにちは、わざわざ来てくれてありがとうね………調子の方は大分痛みも無くなったし、もう大丈夫じゃないかしら」
ベッドの上にいたのはフユノだった。
「良かったですね……」
ケイスケも彼女の回復に嬉しそうな様子だ。
しかし、何と言うか。
そこには、素直に喜べないところがあった。
すると今度は別の話題になった。
「ところで……ヨシヒトくんの調子の方はどう?………少しは良くなってるといいんだけど………」
しかし、2人は黙り込んだ。
そう、今一番まずい状況にあるのはヨシヒトなのだ。
あの日、タスキがバルコニーから身投げした後すぐに消防のヘリがやってきて、生き残ったメンバーを救助したらしいのだ。
らしい……というのも、フユノはお腹に刃物が刺さっていてそもそも意識が薄く、ケイスケとシホの2人もあまりのことに記憶が曖昧になっているのだ。
そして、どうも話によるとヨシヒトは完全に発狂した状態で保護されて、今も尚その状態が続いているのだとか。
そんな状態での面会は当然叶うはずもなく、あの日以来彼とは誰も会っていない。
結局その後、館には警察の捜査が入り、だんだんとその全貌が明らかになってきたのだが、どうもカズチカがした推理で大体合っていたようだ。
それに、最近頻発していた動物大量死や女児殺害事件も警察の捜査でタスキの関与が認められた。
しかし、彼をそこまでさせた根本的な原因は明らかになっていない。
そんな話を一通り終えるとシホはフユノに質問をした。
「あの……」
「どうしたの?」
「あの時、どうして私を助けてくれたんですか……?」
ほんの少しだけ病室は沈黙に包まれた。
すると、フユノが静かに話し始めた。
「……人を助けるのに理由なんている?」
「………」
シホはしばし黙り込んだ。
「あなたは何も気に病むことはないのよ……これは私が勝手にやったことだもの」
「でも一生消えない傷を負ったんですよ………」
「ふふふ……あなたも優しい子なのね……大丈夫、この程度の傷であなたの命が救えたならむしろお釣りがくるくらいの儲けよ」
「…………すみません」
シホはそう言うとうつむいた。
「でも、ひとつだけ約束して」
フユノは急に真面目な顔になった。
「必ず天寿を全うするのよ……これは命の恩人からの命令だからね?」
「はい……ありがとうございます」
シホはぺこりと頭を下げた。
その後3人で他愛のない話をして過ごしたが、あまり長居もフユノに悪いだろうということでしばらくした後シホとケイスケの2人は病院をあとにした。
~~病院近くの公園~~
シホとケイスケの2人は病院近くの公園のベンチに座って休憩していた。
「フユノさん元気そうで良かったな……」
ケイスケはベンチの上で伸びながらそう言った。
「そうね…………」
しかし、一方のシホはあまり元気がない。
「元気ないな……」
確かにシホの様子はしょぼくれていた。
「私……今でもこの状況が良く分からないの……学校に行けば今でもそこにみんながいる気がしてるし、メールをすれば返ってくる気もしてる……」
「俺もだよ………」
ケイスケは静かに頷く。
「でも結局、私は無力だったのね……何もできなかったし、誰も救えなかった」
「………そんなことないだろ………それを言ったら俺なんて本当に何もできなかったぞ?」
「…………」
シホは浮かない顔でうつむいた。
そんな彼女の様子を見てケイスケは何とかして慰めてあげたいと思った。
だからケイスケは精一杯の勇気をふりしぼって言葉を発した。
「なぁ……シホ」
「なに………?」
「シホは俺の命を救ってくれたっていうのじゃダメかな………きっとシホがいなかったら今俺は生きてないと思うんだ………だから誰も救えなかったなんて悲しいこと言うなよ……」
「………」
シホはしばらく黙り込んだ。
ケイスケはこの沈黙が辛くなり、シホから少し顔をそらして天を仰いだ。
すると、シホはクスっと笑うとベンチから立ち上がり、ケイスケの正面に立った。
「ふふっ………くっさいセリフね」
「なっ!?」
ケイスケは赤面した。
すると、シホは今度ケイスケに背を向けた。
「でも、まぁ………ありがと」
二人はお互いのやり取りに少しはにかんだ。
しかし、この柔らかな時間はそう長く続かなかった。
シホとケイスケの携帯が同時にメールを受信したのだ。
二人は同時に携帯を確認する。
だが、そのメールはあまりにも不可解なものであった。
なぜなら、それは死者からのメールだったからである。
二人は顔を見合わせた。
そして、互いの表情から同じメールが届いたことを察知した。
「……なぁ、シホ……これって」
「ええ……まだ終わってないってことね……」
差出人:池永タスキ
件名:おめでとう
本文:素晴らしいチームワークで見事僕に勝利したようですね。しかし、勝利とはいったい何をもって勝利とみなされるのでしょうか?僕は個人的に、勝利とは真理に到達することであると思っています。
例えば、君たちは犯人である僕を突き止めるのに何人の友達を犠牲にしたでしょうか?そして、なぜあのような悲劇が起きてしまったのか、その理由はご存知でしょうか?
では、何も手に入れることもできずに仲間の命を浪費した君たちは本当の意味で僕に勝利したといえるのでしょうか?
この問いに対する答えはNOである僕は思います。すなわち、このゲームはまだ終わっていないのです。数多の命を犠牲にした君たちには、真理に到達する義務があるはずです。
命が最高の輝きを放つとき、天の目によって扉は開かれます。
それでは、ゲームの続きを始めましょう。
「ゲームの続き……」
シホは思わずそう口にした。
そして、あの惨劇をゲームと称す彼に対し、憤りと悲しみを抱いた。
「俺たちの因縁は……まだ終わってなかったんだな……」
ケイスケはあの日とは対照的な澄んだ青い空を見つめながらそう言った。
To be continued...
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