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堂崎に男の影?
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「それにしても由利さん、開店直後のこんな早い時間からアマンダにいるなんて珍しいですね。まさか鉢合わせするとは思いませんでした」
「最近早くからここに愚痴りに来るのよ、由利くん。今日も鬱憤が溜まってたらしくて……あら、溜まってるのは鬱憤じゃなくてアレだったかな?」
堂崎の問いかけにママが勝手に返し、余計な情報を付け足す。
やめろ、こいつにいらんことを言うな。
絶対確信犯の彼女をギロリと睨んだ俺の隣で、堂崎が納得したように頷いた。
「由利さん、A君に操立てして、全然浮気してないですもんね。もともとの頻度を考えれば、そりゃあ溜まりますよね」
「A君って由利くんの捜し人? ……へえ~、操立てとかしてるんだあ」
「……別にそういうんじゃねえ。他の奴に勃たねえだけ」
「どっちにしろ、由利さんが僕に勃たないという事実は、今も以前も変わりないんですけど」
少し拗ねたように言う堂崎に、ママが苦笑する。
「どうかなあ? 家に帰ったら由利くんの前で裸エプロンとかやってみたら? 結構面白いことになるかもしれないわよ」
「裸エプロン……」
「馬鹿言うなやめろふざけんな面白いわけあるか絶対すんな」
彼女の堂崎への提案を即座に至極念入りに却下する。何だか堂崎が興味ありげな反応なのが恐ろしい。
正直こんな状態の俺の前でこいつにそんな格好をされたら、洒落にならない事態が起こる未来しか見えない。
「そんなに嫌がらなくても。そりゃあ僕の裸なんて貧相ですけど、お尻の形は良いねって褒められるんですよ。見てみます?」
「見っ……そ、そのうちな……」
見たい、なんて言えるか! 見たら触りたくなって、触ったら弄りたくなって、弄ったら突っ込んでぐっちゃぐちゃに犯したくなるに決まってんだろ! もちろんゆくゆくはじっくりと味わいたいけれど!
つい欲求不満が顔に出て眉を顰めると、ママが面白がって俺の眉間のしわを突っついて来た。
「由利くん、イライラしてる~。早く欲求不満解消したらいいのに」
「確かに最近の由利さん、しかめっ面が多いんですよね。A君に会えたら変わるのかな。……由利さん、最近A君捜してます?」
「ああ、まあ……適当に」
もちろん捜しているわけがない。今目の前にいるんだから。
「僕の方は同好会のメンバーに当たってみたんですけど、みんな真面目に聞いてくれなくて……。二年前に大学生で、身長低めででさらさら黒髪お目々ぱっちりのデータ好き人間を知らないかって聞いたら、みんな口を揃えて『それってお前じゃねーの』って、適当なこと言うばっかりで。全く、僕だったら苦労しないですよ。仕方ないんで今はS区の大学に知り合いがいる先輩に捜してもらってます」
「……ああ、……そう」
同好会メンバー、正しい。
「……あー、堂崎、その先輩とやらに頼んでる捜索、止めてもらっていいわ。後は俺が自分で始末付けるから」
「へ? でもそれだと由利さんの欲求不満と、僕の直接対決が……」
「いいのよ、堂崎ちゃん。もともと由利くんの問題なんだから。あなたはあなたで由利くんにアピール頑張りましょ」
ママのフォロー、ありがたい。しかし、何だ? アピールって。
「今日来たのも、本当はそっちの話でだったんでしょ?」
「うん、まあ、そうだったんだけど」
「何の話だ」
俺が訊ねると、堂崎が答える前にママが口を出した。
「色気を出すにはどうしたらいいかって話。由利くんが堂崎ちゃんに色気付けろって言ったらしいじゃない」
「……ああ、言ったな」
「だから勉強するんですって。さっきの可愛いお願いもその一つ」
「由利さんには効かなかったけどね」
少し不満げに口を尖らす堂崎が、ジンジャーエールをちびりと飲んだ。
「でも先輩には効いたんでしょ? 由利くんがおかしいのよ、きっと」
「んー、でも先輩は大学時代から僕に甘い人だったから。あんまり当てにならないかな」
「……先輩って、さっきS区の大学の捜索を頼んでるって奴? 仲良いのか?」
堂崎の親しい人物っぽいな。何となく気になって訊ねると、彼はあっさりと首肯した。
「大学の同好会の先輩なんですけど、僕が飼ってる黒柴に似てるって言ってすごく可愛がってくれてたんです。由利さんほどじゃないけどイケメンだから合コンによく誘われてて、他の大学の知り合いが多いんですよ」
「へえ……」
堂崎を可愛がるイケメン。何だか嫌な予感しかしない。
「そのイケメンさん、お勉強の練習相手にもなってくれるって言ってるんでしょ? 優しいわねえ」
「……練習相手?」
ママが俺にちらちらと意味ありげな視線を送りながら堂崎に確認する。何だこの展開。まさかこいつに男の影が……。
「うん。好きな人に色気がないって言われてるって愚痴ったら、『俺がお前のエロスを引き出してやる!』ってすごい乗り気で、ちょっと引いてるんだけど」
あ、でも堂崎は引いてた。それにちょっとだけ安堵して、それでも思わぬ伏兵に気を揉む。一体相手はどんな奴なんだ。
「でも一人じゃ勉強するにも限界があるしなあ……」
「堂崎ちゃん、最終的にはご奉仕まで覚えたいんでしょ? そりゃあ相手が必要よね」
「ごほ……っ!?」
ママの科白にいきなり入った単語に、思わず口にしていた二杯目のウイスキーを噴いた。
「最近早くからここに愚痴りに来るのよ、由利くん。今日も鬱憤が溜まってたらしくて……あら、溜まってるのは鬱憤じゃなくてアレだったかな?」
堂崎の問いかけにママが勝手に返し、余計な情報を付け足す。
やめろ、こいつにいらんことを言うな。
絶対確信犯の彼女をギロリと睨んだ俺の隣で、堂崎が納得したように頷いた。
「由利さん、A君に操立てして、全然浮気してないですもんね。もともとの頻度を考えれば、そりゃあ溜まりますよね」
「A君って由利くんの捜し人? ……へえ~、操立てとかしてるんだあ」
「……別にそういうんじゃねえ。他の奴に勃たねえだけ」
「どっちにしろ、由利さんが僕に勃たないという事実は、今も以前も変わりないんですけど」
少し拗ねたように言う堂崎に、ママが苦笑する。
「どうかなあ? 家に帰ったら由利くんの前で裸エプロンとかやってみたら? 結構面白いことになるかもしれないわよ」
「裸エプロン……」
「馬鹿言うなやめろふざけんな面白いわけあるか絶対すんな」
彼女の堂崎への提案を即座に至極念入りに却下する。何だか堂崎が興味ありげな反応なのが恐ろしい。
正直こんな状態の俺の前でこいつにそんな格好をされたら、洒落にならない事態が起こる未来しか見えない。
「そんなに嫌がらなくても。そりゃあ僕の裸なんて貧相ですけど、お尻の形は良いねって褒められるんですよ。見てみます?」
「見っ……そ、そのうちな……」
見たい、なんて言えるか! 見たら触りたくなって、触ったら弄りたくなって、弄ったら突っ込んでぐっちゃぐちゃに犯したくなるに決まってんだろ! もちろんゆくゆくはじっくりと味わいたいけれど!
つい欲求不満が顔に出て眉を顰めると、ママが面白がって俺の眉間のしわを突っついて来た。
「由利くん、イライラしてる~。早く欲求不満解消したらいいのに」
「確かに最近の由利さん、しかめっ面が多いんですよね。A君に会えたら変わるのかな。……由利さん、最近A君捜してます?」
「ああ、まあ……適当に」
もちろん捜しているわけがない。今目の前にいるんだから。
「僕の方は同好会のメンバーに当たってみたんですけど、みんな真面目に聞いてくれなくて……。二年前に大学生で、身長低めででさらさら黒髪お目々ぱっちりのデータ好き人間を知らないかって聞いたら、みんな口を揃えて『それってお前じゃねーの』って、適当なこと言うばっかりで。全く、僕だったら苦労しないですよ。仕方ないんで今はS区の大学に知り合いがいる先輩に捜してもらってます」
「……ああ、……そう」
同好会メンバー、正しい。
「……あー、堂崎、その先輩とやらに頼んでる捜索、止めてもらっていいわ。後は俺が自分で始末付けるから」
「へ? でもそれだと由利さんの欲求不満と、僕の直接対決が……」
「いいのよ、堂崎ちゃん。もともと由利くんの問題なんだから。あなたはあなたで由利くんにアピール頑張りましょ」
ママのフォロー、ありがたい。しかし、何だ? アピールって。
「今日来たのも、本当はそっちの話でだったんでしょ?」
「うん、まあ、そうだったんだけど」
「何の話だ」
俺が訊ねると、堂崎が答える前にママが口を出した。
「色気を出すにはどうしたらいいかって話。由利くんが堂崎ちゃんに色気付けろって言ったらしいじゃない」
「……ああ、言ったな」
「だから勉強するんですって。さっきの可愛いお願いもその一つ」
「由利さんには効かなかったけどね」
少し不満げに口を尖らす堂崎が、ジンジャーエールをちびりと飲んだ。
「でも先輩には効いたんでしょ? 由利くんがおかしいのよ、きっと」
「んー、でも先輩は大学時代から僕に甘い人だったから。あんまり当てにならないかな」
「……先輩って、さっきS区の大学の捜索を頼んでるって奴? 仲良いのか?」
堂崎の親しい人物っぽいな。何となく気になって訊ねると、彼はあっさりと首肯した。
「大学の同好会の先輩なんですけど、僕が飼ってる黒柴に似てるって言ってすごく可愛がってくれてたんです。由利さんほどじゃないけどイケメンだから合コンによく誘われてて、他の大学の知り合いが多いんですよ」
「へえ……」
堂崎を可愛がるイケメン。何だか嫌な予感しかしない。
「そのイケメンさん、お勉強の練習相手にもなってくれるって言ってるんでしょ? 優しいわねえ」
「……練習相手?」
ママが俺にちらちらと意味ありげな視線を送りながら堂崎に確認する。何だこの展開。まさかこいつに男の影が……。
「うん。好きな人に色気がないって言われてるって愚痴ったら、『俺がお前のエロスを引き出してやる!』ってすごい乗り気で、ちょっと引いてるんだけど」
あ、でも堂崎は引いてた。それにちょっとだけ安堵して、それでも思わぬ伏兵に気を揉む。一体相手はどんな奴なんだ。
「でも一人じゃ勉強するにも限界があるしなあ……」
「堂崎ちゃん、最終的にはご奉仕まで覚えたいんでしょ? そりゃあ相手が必要よね」
「ごほ……っ!?」
ママの科白にいきなり入った単語に、思わず口にしていた二杯目のウイスキーを噴いた。
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