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正義を煮つめてジャムにして〜5
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「さて、そろそろ呼吸は整ったか?」
気遣う視線を向けられたけど、霊力も直感もない私は、そもそも何が起きているのか全体像が見えていなかったりする。
えっと……、はい、まあ。
あいまいな答えを返すと瑞獣さまは小鳥みたいに首をかしげた。
「心拍音が大きく乱れているようだったから、浄化を急いだのだが……」
それは、あなたの大人の姿にときめいたからですよとは言えず、ワタワタと両手を振ってごまかした。
「瑞獣さまって、私のこと案外ちゃんと気にかけてくれてますよね!」
ニンゲンふぜいがうぬぼれるなとか言われるんだと覚悟していたのに、瑞獣さまは否定せず胸を張る。
「当然だろう。お前ひとり護りきれないなら、吉祥の獣とは名乗らぬわ」
以前とは色々違ってるしナーフされてる!!
みたいなことボヤいていたくせに、時々急に凛々しくなるのはやめて欲しい。
心拍音を感知するとか聞いてないし、護ってやるとか言葉にされると気恥ずかしい。
町を守るなら、その中に私も含まれているんだけど、特別枠に入れてもらってるのはなんだか……。
「心音がまたうるさいのだが、やはり具合が悪いのか?」
「ひぁ!? い、いえ……、全然そんなことはナイです」
おかしなやつだと目を細めて笑う瑞獣さまには、この定まってない感情を暴かれたくない。
もしかしなくてもこれは、燈子が夏凪に対して抱えてる恋心とディテールが似ている?
頬を両側からつぶすようにして、私はひんやりした海の底で遊ぶウミウシたちを想像する。
小さくてかわいい奇跡の生物たちが浮遊したり、くっついたりしてる様子を思い描くだけで、いやされて落ち着いた。
ついでに深呼吸をしようとした私に、瑞獣さまが声を荒げる。
「待て、息を止めろ。この気はお前には負担となる」
険しい顔をした瑞獣さまが対峙しているものが私には見えない。
一点を狙って弓をひくと無数の光の矢が対象に向かって放たれる。
私の目には映っていない戦闘はきっと派手なんだろうけど、未加工のアクションシーンみたいに瑞獣さまの奮闘しか見えていない。
言いつけを守って呼吸を止めるのにも限界がある。口元を手でふさぎ少しずつ呼吸を再開していると、瑞獣さまに声をかけられた。
「見えないというのは不便だな。このあたりの邪気は片付けた。安心して息継ぎをするといい」
必要な酸素をしっかり取り込んだあと、聞きたかったことを瑞獣さまにぶつける。
「私みたいに普通の子でも、見えるようになるコツとかってあるんですか?」
ぎゅっと目の端を指で押して集中力を高めるポーズをとったら瑞獣さまが苦笑した。
「伊桜里は気負いすぎだ。それでは見えるものも見えないだろう」
「だったら、どうすればいいか教えてくれませんか?」
はあと息を吐いて、瑞獣さまは額の髪をかきあげた。
生えぎわに紋章みたいなものが浮かび上がり、その中央にはきれいな【翠】の宝石が配置されている。
『翠玉さま』
柏翁さんが瑞獣さまをそう呼ぶ理由がここにあったのだと私は知る。
「…ま、って……」
気づいたら瑞獣さまの顔が近づいてきていた。
まさか唇を合わせることで力を分け与えるとか?
動揺しすぎてテンパっていたら、コツンとやさしく額同士が触れ合った。
「オレに同調しろ。オレとお前が見えている世界を重ね合わせる」
言い聞かせるように囁いて、接触した部分がしずかに離れていく。
こういうことに耐性があるわけがない私の顔が真っ赤になった理由に瑞獣さまは気づかない。
気遣う視線を向けられたけど、霊力も直感もない私は、そもそも何が起きているのか全体像が見えていなかったりする。
えっと……、はい、まあ。
あいまいな答えを返すと瑞獣さまは小鳥みたいに首をかしげた。
「心拍音が大きく乱れているようだったから、浄化を急いだのだが……」
それは、あなたの大人の姿にときめいたからですよとは言えず、ワタワタと両手を振ってごまかした。
「瑞獣さまって、私のこと案外ちゃんと気にかけてくれてますよね!」
ニンゲンふぜいがうぬぼれるなとか言われるんだと覚悟していたのに、瑞獣さまは否定せず胸を張る。
「当然だろう。お前ひとり護りきれないなら、吉祥の獣とは名乗らぬわ」
以前とは色々違ってるしナーフされてる!!
みたいなことボヤいていたくせに、時々急に凛々しくなるのはやめて欲しい。
心拍音を感知するとか聞いてないし、護ってやるとか言葉にされると気恥ずかしい。
町を守るなら、その中に私も含まれているんだけど、特別枠に入れてもらってるのはなんだか……。
「心音がまたうるさいのだが、やはり具合が悪いのか?」
「ひぁ!? い、いえ……、全然そんなことはナイです」
おかしなやつだと目を細めて笑う瑞獣さまには、この定まってない感情を暴かれたくない。
もしかしなくてもこれは、燈子が夏凪に対して抱えてる恋心とディテールが似ている?
頬を両側からつぶすようにして、私はひんやりした海の底で遊ぶウミウシたちを想像する。
小さくてかわいい奇跡の生物たちが浮遊したり、くっついたりしてる様子を思い描くだけで、いやされて落ち着いた。
ついでに深呼吸をしようとした私に、瑞獣さまが声を荒げる。
「待て、息を止めろ。この気はお前には負担となる」
険しい顔をした瑞獣さまが対峙しているものが私には見えない。
一点を狙って弓をひくと無数の光の矢が対象に向かって放たれる。
私の目には映っていない戦闘はきっと派手なんだろうけど、未加工のアクションシーンみたいに瑞獣さまの奮闘しか見えていない。
言いつけを守って呼吸を止めるのにも限界がある。口元を手でふさぎ少しずつ呼吸を再開していると、瑞獣さまに声をかけられた。
「見えないというのは不便だな。このあたりの邪気は片付けた。安心して息継ぎをするといい」
必要な酸素をしっかり取り込んだあと、聞きたかったことを瑞獣さまにぶつける。
「私みたいに普通の子でも、見えるようになるコツとかってあるんですか?」
ぎゅっと目の端を指で押して集中力を高めるポーズをとったら瑞獣さまが苦笑した。
「伊桜里は気負いすぎだ。それでは見えるものも見えないだろう」
「だったら、どうすればいいか教えてくれませんか?」
はあと息を吐いて、瑞獣さまは額の髪をかきあげた。
生えぎわに紋章みたいなものが浮かび上がり、その中央にはきれいな【翠】の宝石が配置されている。
『翠玉さま』
柏翁さんが瑞獣さまをそう呼ぶ理由がここにあったのだと私は知る。
「…ま、って……」
気づいたら瑞獣さまの顔が近づいてきていた。
まさか唇を合わせることで力を分け与えるとか?
動揺しすぎてテンパっていたら、コツンとやさしく額同士が触れ合った。
「オレに同調しろ。オレとお前が見えている世界を重ね合わせる」
言い聞かせるように囁いて、接触した部分がしずかに離れていく。
こういうことに耐性があるわけがない私の顔が真っ赤になった理由に瑞獣さまは気づかない。
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