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 ハウンさんと知り合って以降、月に1度の頻度で、彼女と話す機会が得られることになった。なんでも、月1で来る日を僕が村へ卸しに行く日と重なるよう調整してくれてるらしい。
 その御蔭で、彼女とも仲良くなり、この世界の情報を教えてもらうことが出来た。

 まず、この村だが、山の中腹にあるらしく、近くの町からは丸4日かかる。王都までは最低でも2週間かかるといっていた。

 どうやらかなりの田舎らしい。

 所属する国は、南側に海があり、北に僕達の住む山、残る両サイドを他国と陸続きで面している。

 陸続きの2国とは戦争状態で、山の向こうの1国とも良い仲とは言えないとのことだ。

 幸いなことに隣国も国内外に多くの敵がいるらしく、どちらも頻繁にはせめて来ないらしいが、いずれまた侵攻してくるだろう。

 要するに世界の大陸全体で、戦国時代真っ只中である。

 ……もうちょっと、平和な世界がよかったよー神様ー。

 この年まで魔物をまったく見なかったため忘れかけていたが、この町付近では少ないだけで、国全体を見ると魔物は居るらしい。
 ちなみに、魔物と動物は魔玉と呼ばれる魔力が固まった石が心臓付近から発見されるかで区別されるとのこと。

 倒したら、魔玉も卸して欲しいと言われたが、動物と比べれば遙かに強いらしく出来れば出会いたくない。


 日々の弓に加え、ハウンさんからの情報収集も日課に加わっていたある日こと。目の前には、10年近く生活していた中で1番であると思われる豪華な夕食があった。
 それに食器の並べ具合を考えると、4人前ある。

「ばーちゃん、どうしたの? 今日はなんだか豪勢だね。それに4人前あるってことはお客さん?」
「いんや、3人だけさね。ほんらぁ、冷めないうちにたべんしゃいな」

 あれ? お客さんじゃないの? けど、4人前あるよ? 

「……そうなんだ、まぁ、いいや。それじゃぁ、頂きます。」

 豪華な食事は飛びっきりおいしかった。それに、僕が好きなものばかり、食後のデザートにリンゴまで出てきて、今日は本当に大満足だ。

「おいしかったかい? そうかい、そうかいそりゃよかった。
 今日はクラッドが生まれてから10年目だからね。腕によりをかけてみたんだよ」

 そっか、今日は僕の誕生日だったか。忘れてたなー。

 ……、?? 誕生日? この世界って、年明けに全員一斉に年を取るって考え方で、誕生日なんてなかったよな?

「それでな、クラッドには話しておくことがあるんじゃ。それに謝らねばならないこともあるしのぉ」
「あやまること? それに話って? どうしたのじーちゃん」
「ばーちゃんたちは、神様に会ったことがある。10年くらい前のことだったよ」
「そして、言われたんじゃ。戦争に巻き込まれ、家に魔法があたり、赤子以外はみんな亡くなった。このままだと、その赤子も死ぬことになるじゃろうとな」
「え? ……それって、どういう」
「そして神は仰ったのじゃ、わしらジジババなら、10年だけ命を延長できるとな。その頂いた10年で、クラッドを育てさせてもらったわけじゃ」
 
 どこか申し訳なさそうに話すじーちゃんの体が、うっすらと光りだした。ばーちゃんも光に包まれているように見える。

「ちょっと、まってよじーちゃん、ばーちゃん。それじゃぁ、2人が今夜いなくなるみたいじゃないか」
「ほほほ、さすがはグラッドじゃ、理解が早いのぉ。そういうことじゃ」
「そういうことじゃって、……ねぇ、ばーちゃん」
「10年間、ばーちゃんたちは幸せだったよ。そして、クラッドは立派に育ってくれた」
「そうそう、さすがわしらの孫じゃてぇ。どこに出しても恥かしくはないわい。
 じゃから、わしらは不安なく、あちらへいけるというものじゃ」
「お迎えを10年も待たせてるしね。そろそろ、いってやらねばねぇ」
「今日まで黙っていてすまんのぉ。
 わしらが居なくなった後は、村で暮らすとええ。村長には言ってあるからのぉ」

 2人を包んでいた光は、淡く揺らめいていた。その光が今にも2人を連れて行ってしまいそうで、僕は2人を強く抱きしめた。

「……やだよ。じーぢゃん、なんの恩も返せてないのに、いくなんて、いわないでよばーぢゃん」

「クラッドや、泣かずに笑っておくれ。ばーちゃんたちの孫なんだからね」

 涙でぼやけた目に、やさしく微笑む顔が映る。

「教えれることは全部教えたからねぇ。クラッド、胸を張って歩いていくんだよ」
「グラッドなら大丈夫じゃ。村の人達と助け合いながら、精一杯生きるんじゃ。わし等は影ながら見守っておるからのぉ」

 僕の腕からすり抜けるように、2人はいなくなった。
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